【再稿】ペルソナ3でハム子のヒーローアカデミア! 作:Cran
今話より新章開幕です。時間は2年近く飛んでいます。
そして、評価にコメント、お気に入り登録などありがとうございます!
いつまで(ほぼ)毎日更新できるかはわかりませんが、気張っていきたいと思います!
実技試験①~相澤公子の場合~
「今日は俺のライヴにようこそー!!! エヴィバディセイヘイ!!」
「Yokosoーーーー!」
「よーこそー……?」
プレゼントマイクの呼びかけにばっとハンズアップをしながらすかさず応えるリスナーの
「オーケー! 受験番号7108の彼女も他のリスナーも気合入れつつ適度にリラックスして試験に臨もうぜー!!!」
「Yeaaaah!」
「キミちゃん……さすがに、ちょっと恥ずかしいです……」
雄英高校の一般入試、学科試験を無事に終えて臨む実技試験。初っ端からの公子の飛ばしっぷりに、相方の被身子は少し引いていた。ほかの受験生たちも「マジかよこいつ」といった視線を向けている。
――10分間の模擬市街地演習
――持ち込みは自由
――仮想的の行動不能によるポイント稼ぎ
そんなプレゼントマイクの説明を聞きながら、父親であり雄英高校の教師でもある
υ´• ﻌ •`υ
「そういえば、実技試験についてだが」
「うん」
「はい!」
「…………」
3人で作った酢豚を食べながらの一幕である。
「正直にいうが、俺は公子もヒミコちゃんも合格することを疑っていない」
「うんうん」
「私は学科は結構危なかったと思いますけど……」
「俺も一般入試がよかった」
「
仲間外れにされた気持でもあるのか今更そんなかわいいことをいう焦凍は、早々に推薦入試を通過してしまったので、2人と同じ試験を受けることはかなわないのである。
「ヒミコちゃんの学科については公子と答え合わせもしてただろう。大丈夫なはずだ」
「ヒミちゃんの一年間の浪人生活は無駄じゃなかった」
「前もいいましたけど浪人って呼び方かぁいくないです」
「プータローならかわいいんじゃねえか」
「浪人は進学希望者だから間違いですもーん。少しカァイイですけど」
酢豚の付け合わせのあまり辛くないマーボ豆腐*1の器をテーブルに置きつつ、「それはさておきだ」と、消太が話を続ける。
「推薦での受験を蹴った*2公子はもちろん、ヒミコちゃんも他の受験生にとっては非常に大きな壁になるだろう」
いわば経験者の公子だけではなく、被身子についても上澄みだと消太は断言する。プロヒーローの直々の指導を受けつつの数年間のトレーニングで得られた実力は伊達ではない*3。公子は全体的に高い実力を備えた万能型であるし、被身子についても、彼女と同等に体術で競り合えるものは同年代にはごく少数だろうとすらいえるほどだ。個性で姿を変え、間合いの幻惑などを織り交ぜた攻防もしだすと、その厄介さも数段増す。
そして、それがどうしたかといえば――。
「だからといって、遠慮したり手加減したりはしないように、といっておく」
「いいんです?」
「構わん」
にやりと口元に笑みを浮かべる。
「うちの校訓は“Plus Ultra”。さらに向こうへ、だ。心をへし折ってやるくらいのつもりで、二人とも全力でいけ」
上をみて心が折れるようならそれまで。受け入れて、それでも、と自身の最大限を発揮できるように力を発揮してみせてこそヒーローだ。気にせず、存分にみせつけてやれ。
υ´• ﻌ •`υ
スタートの掛け声と同時に飛び出す。
「ブッころ――」
何かをいいかけたロボを、持ち込んだ薙刀を振るって走り抜けざまに斬り倒す。
疾走しながらの索敵、迎撃などは慣れたもの。建物の位置関係を把握しながらもののついでとばかりにまた2体を切り倒し、開始位置からまだ散りきっていない集団からは距離を取る。
「【ガル】……っと」
目を付けたその場所に疾風の技を移動力と浮力に転用しながら素早く移動。マンションを模した建造物の屋上、縁ぎりぎりに陣取ると、試験場を見渡す。
「んー、みえるみえる、全部で20体くらいかな。きて、≪タムリン≫」
紡いだ呼び声に応えその背後に降り立つのは、槍持つ銀髪の妖精騎士。ゆっくりと精神を集中させ、慎重に標的を選定し、そして、気合一閃。
「【マハジオ】【マハジオ】【マハジオ】【マハジオ】【マハジオ】!」
掛け声に合わせた妖精騎士が、公子が目を付けた複数の小集団のそれぞれに、狙いすました雷撃の渦を立て続けに放つ。相手が機械であること、アンチヒーロー的な他の受験生を巻き込むような行為を避けること、そして時間が限られていることなどから公子が選んだのは、高所からの稲妻での狙撃であった。それも、対集団用の範囲攻撃を用いてだ。
「―――――――――!!!!」
一撃で3から5くらいの数の仮想敵の集団が完全にショートし、音もなく動きを停止させる。それが5回分。その殲滅劇を引き起こした存在に気が付いたのか、受験生の数名が驚いたような顔でこちらを指さしている。使命を果たして消え去っていくタムリンを背にしたまま笑顔と一緒に手を振ると、さっと身をひるがえして助走をつけ、再び疾風をまとって離れた位置にある同様の場所へと降り立つ。
「―――――――――!!!!」
一回目の再現。仮想敵が沈黙し、路上に墓標のようにたたずむ。通りすがりの受験生が、訝しげに近づいて、念のためとばかりに攻撃をしているが、当然ながら動く気配もない。
「機械には電気ってね*4。
少し息をついてからまた移動するが、さっと索敵をした限り、この短時間で開始位置から散らばった受験者たちがそれぞれ交戦に入っており乱戦の中では範囲攻撃は使えないこともあって、先ほどのような都合のいい群れは見当たらないが……。
「【マハジオ】。……もう怪我人がでちゃってるね」
とりあえず目についた2体をつぶしつつ、別の場所に目をやってつぶやく。公子は視力が抜群にいい。これがペルソナを宿しているからかは不明ながら、動体視力も含めてとてもよろしい。後者については戦闘の中で自然と鍛えられたものかもしれないが。そうして見つけた血を流した足を引きずるようにしながら、持った鉄パイプを杖代わりに歩いている怪我人のもとへたったと走って急いで移動する。歩き方は遅いが幸い骨折等には至っていないようだし、彼が倒したと思われる仮想敵も行動不能にできており、転がったまま動かない。
「大丈夫?」
「あ、悪い……」
屈み込みつつ、腰のポーチから取り出した消毒液と滅菌ガーゼで傷を綺麗にして、さくっと
「【ディア】」
「お、おお? 治療系の個性、妖精か……?」
「私が妖精みたいってことかなー?」
「そっちじゃねえ。でもありがとう」
紫色の髪の少年が噴き出すのを見てほほえみを返すと、公子はさっさと立ち上がって、ふと笑った。
「いいよ、困ったときは助け合い。それがきみの武器?」
「ちぇっ、笑うなよ。木刀持ってきてたんだけどな、一体目に刺しちまって抜けなくなったから、拾った」
弟が一時期に愛用していた武器*5を思い出したのがつい漏れてしまったのだが、誤解されてしまったようだ。憮然としている。思わず、ケラケラと笑った。
「ちょっと懐かしくなっただけ。カッコいいじゃん。じゃあ、私は次いくね、お互い頑張ろう!」
「ああ……、またな」
あまり話しているのはお互いにとって時間の浪費につながる。別れを告げると、公子はまた走り出した。
そうやって、仮想敵をみつけては倒し、怪我人をみつけては癒し、などを繰り返すこと数分。
轟音とともにそれは現れた。
「0ポイントね。ドッスンにしては大きすぎな気もするけど」
ビル並みに大きいってどういうことなんだろう。
むしろ感心した公子だが、することは決まっている。周りの受験生の様子を確認すると、予想通り、驚愕や恐怖、混乱に支配されている。落ち着いて整然として避難するということは期待できまい。それは少し都合が悪いので、他のグッズと同様に腰のベルトにぶら下げている小型の拡声器と笛を手に取る。
――ピイイィィィィイイイイイイ!!
災害時等の救難用ホイッスルは、遮蔽物が多く悲鳴や怒号に包まれた中でもよく響く。甲高い大音量に恐怖などもリセットされ、驚いて立ちすくむ受験者たちに、次は拡声器を通した声を投げつける。
「わーたーしーがー、きたー!!!」
渾身のオールマイトの真似である。とりたてて似ていないがそれは意に介さずに、一拍おいてから続ける。
「はい、落ち着くまでに3秒かかりましたね! 受験生の皆さん、その落ち着きで、余裕をもって静かに0ポイントから距離を取ってください。私が大規模な範囲の個性で受け持ちますから、あわてず騒がず冷静に。転んだりしないようにして、避難してください。余裕があったら周りをみて、動けなさそうなひとがいたら助けてあげてください。繰り返します。周りと助け合って、落ち着いて避難してください」
自分が逃げるということばかり考えるのはいろいろな意味でよくない。周りに要救助者がいるかもしれないと告げることで、冷静さをより取り戻させる効果も見込んでのメッセージを含めている。
「あの子、プレゼントマイクにノリノリだった……」
「だからスピーカー持ってんのかな」
「大規模個性っていっても、ひとりで大丈夫?」
「オールマイトの真似をするにはちょっと声がかわいすぎるよな」
などなど、それぞれ好き勝手なことをいいながらも、しっかり避難していく。ちゃんと、転倒してしまった受験生に肩を貸したり、おぶったりするような様子も見て取れた。
公子はうなずきながら、大音量を立てたのが大いに効いたのかこちらに目標を定めたらしく、音を立てながら近づいてくる巨大敵を見据える。
(これは大きすぎるから、単にショートさせるのはよくないね)
転倒事故が怖い。
「じゃあ、まずはショートはさせずに焦凍を真似て……」
呼びだすのは、そう、アレだ。公子は決めた。
「まだちょっと負担が重めだけど、“キングフロスト”!」
ずももも、という効果音を背景にしょっていそうな巨体。一言で表現すれば、王冠を頭に乗せたでっかい雪だるまだが、雪だるまというには不釣り合いな威厳と荘厳さをまとっている。何も考えていなさそうで、深遠な考えもあるのかもしれない表情も人間離れした雰囲気*6に一役買っているといえるだろう。
「いくよ、【マハブフーラ】。もういっちょ、【マハブフーラ】!」
巨大な雪だるまの王様が手にした錫杖を掲げ、巨大敵の身体の両側に冷気をまとう巨大な氷塊の雨をたたきつける。砕けた氷のつぶてはすぐさま巨大敵と周囲をまとめて凍り付かせていき、まさしく、巨大敵を周囲の建造物に縫いとめるような格好だ。それを確認すると続けて別のペルソナを呼び出す。
「とどめ! おいで“ハイピクシー”! 【ジオンガ】!」
呼ばれて飛び出た、可憐さを凛とした美しさに昇華させた妖精が、太い稲妻を巨大敵に放つ。雷もかくやいわんばかりに、とどろく轟音。公子は複数回は必要かと危惧していたが、その一撃だけで巨大敵は動作を停止した。
公子が知る由もないが、1ポイントの仮想敵もそうだが、特にこの0ポイントは非常に高性能なセンサー類を多数搭載しており、つまりは中身は非常に繊細な代物なのである。バッチリとショートしており、あっさりと機能を停止させた。少し体勢が崩れかけたが、公子が事前に仕掛けた氷塊たちが土台になっており、巻き込み事故も防げたようだ。
「ふう……」
さすがにこれ以上は大技出したくないなーと彼女が胸中でひとりごちたところで。
『終~了~!』
実技試験が終わったのだった。
「おらっ!」
「グワー!」
「足をやっちまったときはどうなるかと思ったけど、冷静になってみると意外と弱いな。個性使ってる連中の方がへばってるようにも見えるし、意外とやれるか……?」
「目のクマスゲエ! コロス!」
「うるせえ!」
「グワー!」
「また雷が聞こえた、あっちか。姿だけじゃなくって音や光にも反応するみたいだから、そっちの方にいきゃロボが集まってくるってのは助かるけど、いいよな、攻撃系の個性がある奴は。相性ばっちりじゃん。なぁおい!」
「グワー!」
「鉄パイプ結構使いやすいな。……あの子、治療系の個性なら、攻撃はあの薙刀でやってんだよな。ヒーローになんのに武器使っちゃいけないってルールもないよし、俺も入試終わったら練習してみるかな、っと!」
「グワー!」
「そうだよな、情報系とか隠密系のヒーローだっていんだから、何も戦闘系の個性がなきゃヒーローになれないっ、て! いう、わけでもねえよな!」
「グワー!」「グワー!」
「ふう、これで何ポイントだ……あっ、やべえ!」
「グワー!」
「思わず鉄パイプ投げちまった、おい、大丈夫か? 気にすんな、困ったときは助け合うもんだろ」
公子の実技試験でした。ペルソナ関連はゲームそのまま準拠というものにはしてません。ご都合的な面もありますが、ヒロアカ世界に転生したことによる影響など、設定的な根拠も持たせてはいます。
次は、被身子の実技試験と入試の結果です。