【再稿】ペルソナ3でハム子のヒーローアカデミア! 作:Cran
なんでしょうね、この全体的な低調子状態。
何とか更新ペースを取り戻したいとは思うのですが、ううむ。入院してたとは書いたと思うのですが今は退院後の療養期間で、医療機関に通いながらの職場復帰のためのリハビリ中なのですよね。これがもう少し経って復職したら尚のことまとまった時間がとりにくくなるので、なるべく早めのペースで進めておきたいところです。
そして、誤字等ご指摘(最近またポカミスが増えました)、お気に入りやご感想など、ありがとうございます! ブーストいただいています!
楽しい楽しいお昼休み。
というのも、公子はまだ――と言っても、入学して正式な生徒になってから数日も経ってすらいないのだが――雄英高校の名物のひとつとして知られた、“クックヒーロー”ランチラッシュ謹製の学食を食べたことがなかった。とはいっても、学校内で保護されている間の食事は彼が提供していたし、それも十分以上に美味だったのだが。
それでも、学食の味を声高く語るクラスメイトたちの感想を聞いていると楽しそうであるし、お弁当じゃなくてもいっかなーという気分になろうというものである。そのようなわけで、
「キミちゃん、明日もお弁当なんです? そうしたら、私も一緒に――」
「あ、ごめんね、今度は学食行ってみようと思うんだ」
「キミちゃんもデビューなのですね!」
「そうそう、みんなの感想を聞いてたら久しぶりに食べたくなってきたし」
「お父さんのは、あ、良いんでしたっけ」
「うん、おけー」
「じゃあ一緒に学食行きましょう、そうしましょう!」
「嬉しそうだねー」
と、彼女の頭を撫でたのが昨夜、寝る前のことである。
なお、お父さん云々の件であるが、以前に触れた消太の身だしなみに加えて、公子が介入して変えられた部分に関連する。
消太はもとからお昼ご飯をきちんと食べるというまっとうな人間らしい習慣を持っておらず、せいぜいが自宅にも教員用のキャビネットにも山ほど備蓄してあるゼリー飲料*1を、職員室での仕事の合間にですらなく、学校内外の見回りなどをしながら摂取することで済ませてしまうような生態をしていた。
公子が校内で保護されていた短期間のうちで、消太が目の前でゼリー飲料をすすっているのは彼女も何度も見ており、どこかできちんとしたものを食べているのだろうと考えていたがまさかそれが主食だなどとは思っておらず、真実は実に悲しく、完全な勘違いであった。それに気が付いたのは消太が引き取るということが決定してからであり、同居するにあたって重要なこととしてさんざんに彼の先輩である香山や同輩の山田から最優先で与えられた各種の情報の中でも、確かに非常に重要な事項だと大いに納得した公子により、消太に関する改革プランの中でも最優先とすべきもののひとつとして食生活の改革計画が立案、実行された次第だ。なんでここまで彼女がするのかといえばもちろん話は簡単だ。一宿一飯どころか今後の生活も安全も保障してくれる相手にこれくらいしないで何をしろと、ということだ。今でこそ愛情はあるものの最初は恩義である。なお、身だしなみについては、本人より誰より私が恥ずかしくなるからそこはきちんとしてといった思いもきっちりと存在している。
そうしたわけで食生活に関して公子が始めたのが、とにかく朝昼晩の食事を用意することだった。朝と夜については公子の監視が目が届くが、問題は昼だ。何しろ、30歳前の男性の大人に口やかましくきちんと食事をしろと言い聞かせたところで、そうやすやすと聞いてくれるとは考えにくい。これまでも同僚からさんざんに言われていただろうに改善されていないというところからもそれは明らかで、きっと仕事が忙しいだとか何かと理由をつけてないがしろにするに違いないと踏んだ。香山や山田に「お父さんがちゃんと食べるように見張っていてください」などとお願いするという案もないではなかったが、その手間をかけさせるのも申し訳ないし、消太もそれは不快だろう。そこで選択したのが、愛妻弁当ならぬ愛娘弁当である。
子供がそんなに気を遣う必要はないと消太は遠慮している様子だったが、残念ながらその子供がわざわざ手ずから作った弁当をよもや食べずに終わらせるような非道は働くまいと、消太の性格を読んだ公子の策である。実際、これまで消太がお弁当を残して帰ってきたことはない。香山や山田から聞くには、本当に時間がないときなどにいったんは残してからまた隙間を見て食べるといったことをしていたらしい。
そんなこんなと3年以上にわたって続けられた消太のお弁当生活だが、公子の雄英高校入学からの通学開始に伴い学校が始まったら毎日は作らなくてもいいかと方針の転換を見て、両名とも合意に至る。消太も昼食をとるのがすっかりと習慣になっているのもあるし、公子の監視の目も届くようになったためでもある。職員も朝に注文しておけば学食と同等の値段で、学食の日替わりメニューとほぼ同じ内容のお弁当を提供してもらえるので、わざわざ食堂に行く手間もない。それなのになんで彼はゼリー昼食で済ませていたんですかねという疑問もわかないでもないが。ということで、消太の朝の行動は、お弁当が用意されているなら持っていくか、用意されていないなら朝に学校に弁当を注文するかのどちらかに決定されている。
さて、そこで改めて。楽しい楽しい昼休み。
だったのだが。
(私はなぜこんなところに)
υ´• ﻌ •`υ
この高校の中で公子が特に馴染んでいた場所といえば此処、というところがある。
保健室およびその関連施設だ。
リカバリーガールの定位置である診察用のモニター付きデスクだとか、その近くに設置されたカーテン付きの数台のベッドだとがフロント部分。奥には職員の利用を主に想定した仮眠室だとか、数十人単位で療養できる区画だとかまあそういった諸々がある場所である。これだけでも、普通の高校とはずいぶんと違いがあるが、そこはそれ、ここはヒーローを育成する学校機関の中でもそのトップを行く高校であるからして、必然的に、それに追随する様々な物理的負傷者や精神的要治療者なども取り扱うわけだから、むしろこの程度のものがなければ、毎年毎年、
それらのうち、より秘匿性を高く保たれた療養スペースの一角で公子は昏睡していたのだが、彼女はまた、そこに来ていた。お昼休みに入るや否や、学食に行こうとしていたところにすまんが、と公子と被身子に申し訳なさそうに詫びる消太に、公子のみ連行されたのである。
「えっと、あのー?」
消太の先導で入室した公子が周りを見ると見覚えのある顔とない顔の人物が数名。椅子に腰かけている馴染みのおばーちゃん*2にネズミ。それからベッドに腰かけている、何かやつれて生命力も薄――いや、薄くはない。見た目に比べると格段に強い。どこか、大きなダメージを受けていながらも毅然と前を向く仲間たちを思い出させるような不思議な存在感をまとった謎の男性だ。
「なんだ、公子」
特段の説明もないまま消太に連れてこられた公子に、額を抑えながらようやくのことで消太が告げる。
「こちらの男性も、お前の事情は他の教師たちと同程度には知っている」
「あ、そうなんだ」
やあ、と手をあげて見せるその謎の男性に挨拶を返しつつも、公子は少し視線をさまよわせる。
知っているとされた彼女の事情だが、まず、個性か何か不明なよくわからない現象によって、本人主張の異世界という不思議なところから意図せずにやってきたらしい、個性とも個性じゃないともどちらとも言い切れない、よくわからない不思議な力を使いこなす、社会に害をなすのかなさないのかも判断が付きにくいよくわからない何かが公子であるということ。
そして、雄英高校が保護をするために用意された主張。それは、ヒーロー社会にひびを入れるため、これまで幾度も繰り返されたヴィラン犯罪に巻き込まれたと思しき、記憶も素性も曖昧な不憫な子供に対して大人でありヒーローとして彼女にきちんとした教育を与えるとともに彼女を現在の状態に陥らせた原因であるヴィランが存在する可能性も否定できない中での保護も含めて最も高いレベルで実行できるのが雄英高校とその教員たちであり、特に保護当初は暴走を続けていた個性を抹消により管理できるイレイザーヘッドによる監督は不可欠であるところ少女も自身を保護したイレイザーヘッドに特に懐いているため監視も含めて彼が主に面倒を見ることにする、といった少し無理のある内容であること。
そうしたうえで、彼女の個性が戦闘にもそれ以外にも尋常ではないほどに応用が利く、ヒーローとしてはもちろんだが何よりよろしくないのはヴィランとしても手を出したくなるほどであろう大いに有用なものであり身に危険が及ぶ恐れもあると認められるため曖昧になった記憶の補足ができ、社会常識を身に付け、戦闘に関しても実行力や判断力も含めて一定以上の練度で自衛できる能力を身に付けられたと判断できない限りは、彼女の異世界云々や個性を含む情報は可能な限り伏せるべしとして既に知っているものを除いて口外禁止にされてきたという特殊な個性に関していえば雄英高校の実技試験で解禁はされたがまだ軽々しく大っぴらにはしないようにとされているところを踏まえると、これらがあったうえで消太が、こうしてこの人物を公子に関与させるということには、相応の意味があると思ってしかるべきであるはずだ。まあ、いわば隔離エリアであるこの場所に連れてこられている時点で間違いない。といったこと。
などといったことを、つらつら考えた。それじゃあ何かというと、あまり考える必要もないことであるわけで。ふいっと視線を消太に戻して男性を示しつつ、
「“ペルソナ”で何かをしてあげればいいんですよね?」
と、あっけらかんと聞いた。
υ´• ﻌ •`υ
当初より、ここだけの話としては聞いていた。
私の母校であり、これからの勤務先になる雄英高校に、人生としては後輩であるが教職としては先輩にあたるイレイザーヘッドが保護し育成している女生徒が入学する予定であり、その子には極めて異質な個性があるということを。その能力は、戦闘面では直接的な攻撃や防御といったものから、自分や味方の支援まで幅広く行えるものであり、
別段、その話を疑っていたわけではないが、実感したのはイレイザーヘッドに共有された個性把握テストや戦闘訓練などを見させてもらってからだ。特に治療については、個性把握テストでの緑谷少年の指の傷をたちどころに癒し、そして戦闘訓練では、大きな自傷をした彼に応急的な処置をしたのちにリカバリーガールの補助を受けながらも骨折まで治してのけた。
彼女ならば、もしかしたらという希望は、私自身もそうだし私の事情を知っている少ない面々もそうだっただろう。自慢するでもないが、数世代に続けて受け継いできた聖火による常識の埒外の力。皆の希望になってきた象徴としての存在はそれほど軽くはないのだから。聖火の輝きは今となってはわずかな残り火でしかないが、それでも、もしもこの欠陥だらけの肉体を少しでも癒すことができるなら、まだまだ私は象徴として立ち続けることができるはずだ。むむ、ちなみに残り火についてはそれこそごくごく僅かなものにしか知られてはいけないので、これは秘密だ。いいかい、ここだけの話だぞ?
そうして、私は根津校長や塚内くん、リカバリーガールとも相談したうえで、彼女の力を借りられないか頼んでみることを決めた。それには、もちろん彼女の父親であり担任教師でもある相澤くんにも話をとおす必要がある。思い立ったが吉日、私は早々に頼み込んだ。私は彼のことは少々苦手にしているのだが、彼のヒーローとしての活躍振りは伝え聞いているし、校長たちも太鼓判を押してくれている。特に不安はなかった。
とても、そう。とても嫌がられてしまったが。一番の理由はもちろん、ただでさえヴィランに目を付けられやすいと考えられる相澤少女に、重症患者を治すということでまたぞろ余計な要素を付け加えることになってしまうかもしれないからだ。二番目の理由? それはね、今日のランチラッシュの学食を楽しみにしていたようだから、だって。なんというか、彼を近くで見たり彼と話をしたりしたのはそれほど多くも長くもなかったが、すっごくお父さんっぽくってね、ちょっと胸がキュンとしてしまったよ。HAHAHA。
「“ペルソナ”で何かをしてあげればいいんですよね?」
思い出している場合ではなかったな。
「そうだね。まず、改めて、私は八木というんだ。よろしくね、相澤少女!」
オゥ、Shit!
リカバリーガールと相澤くんが冷たい目で私を見ている。いかんいかん。
「ゴホン、よろしくね、相澤さん」
「はい。初めまして、相澤公子です! よろしければ、公子って呼んでください」
相澤先生と混ざっちゃうのでと笑う少女はなるほど、授業でもそうだったが朗らかで快活で、確かに相澤くんと父娘とは思われないだろう。とりあえず、私が相澤少女というのを言い直したことに特に突っ込みが入らないのは助かる。
「ああ、よろしくね、公子さん」
「ちゃんでいいですよ」
いや、さすがにそこまで馴れ馴れしくはなれないからね?
「はいはい、挨拶はそれくらいにしな、昼休みの時間が終わっちまうよ。公子、お前さんには、あんたのペルソナでそいつの傷を治せやしないか試してみてもらいたくってね」
と、リカバリーガールが代わりに説明をしてくれる。数年前にヴィランの起こした事件に巻き込まれて生死の境を彷徨う重傷を負ったこと、内臓の各部も大きな損傷を受け、胃袋に至っては全摘出までしていることなどだ。シャツをめくりあげてみせると、相澤少女も不憫そうな表情をする。あまり怖そうな感じではないのは、さすがにヒーローの卵なだけはあるね。グロ耐性とか強そうだ。
「うーん」
「難しそうか?」
相澤少女はリカバリーガールがモニターに映した私の身体の画像などを見ながらうなっている。
「ディア系だと厳しい……リカーム系と、アムリタ……?」
奇妙なフレーズが出るが、相澤くんやリカバリーガールは慣れているのか、平然と見守る構えだ。やがて、彼女はすっと顔をこちらに向けた。
「――解剖から始めていいですか?」
「ゴバァ!」
よく吐血する一年だなあ。
υ´• ﻌ •`υ
「なるほど、イメージの問題だと」
「はい。普通の負傷とかと同じように、骨折とかも本当はおばーちゃんの手伝いがなくても、きちんと私がイメージして回復をコントロールできれば治せるんだと思うんですよね。変にくっつくのが怖いからしてませんけど」
「それでカエルの解剖かい」
「……私のじゃなくてよかったよ」
「腑分けできるんなら一番ですけど」
「それは主に死体にやるやつだ」
「HAHAHA! どのみち死に体だけどね!」
爆笑アメリカンジョークがむなしく響く中、構わず公子が続ける。
「私が普段使ってるのはディアっていう系列の力なんですけど、これ使うときは、えいやって回復の力でビンタしているみたいなものなんです。私が何も考えなくても、叩き込まれた力を治るほうに治るほうにって肉体が自分でやっている感じですね。これも、使っていて思うのは、ビンタする段階でコントロールしてあげたほうがもっと効率がよさそうなところがあるんです」
「それは、私の“治癒”も同じだね。正確に診断する力がないと無駄になるか逆にダメージを与えかねない力さ」
なので、解剖して生きている間に傷をつけて治して、などを繰り返して臓器を回復させる鍛錬を積めば何とかなるかもしれない、ということだ。
「それで、他にも系列があるんです」
「ほう?」
「こっちはリカームっていって、傷を癒すというより言葉通りその人物を蘇生させるような力です。内臓までダメージが行っているんじゃないかみたいなのも治せましたし、何なら、死んでさえなければどんな重傷だろうと治せるような気がします。ただ、今のところ、四肢が消し飛んだみたいなものまで治療したことはないですから、実際のところはやってみないとわかりませんけど」
「それでも、死んでなければとはすごい力だね」
「死体には効かない蘇生というのも皮肉なもんさね」
「蘇生させるみたいに治す、といったほうが正しいかもしれませんね」
「お前がそういうんならそうなんだろうが……」
公子が異世界で生きてきたと知っている雄英教師、その中でもさらに数少ない、異世界で公子がどういった生活をしていたかを知る消太が無精ひげの生えていない顎を指でさする。
「その口ぶりだと、無茶をする必要がありそうだな?」
「さすがお父さん。察しがいい」
あははと笑う。ペルソナの力はまさしく魔法のようなもので、全適した内臓だろうと古傷だろうと治せるはずだ。まずは臓器の半壊や喪失を補うための施術などを
「多分、【アムリタ】と【サマリカーム】という力でいけると思うんですが、それを使えるペルソナたちを簡単に呼び出せるほどまだ私の《記憶》が回復してないみたいで」
しれっと、前世での全盛期でなら割と容易にできたが、まだそこまでの力が戻っていないことを、八木には通じないように記憶の部分として絡めてぼかし、消太に伝える。
「無理ではないですけど、たぶん、そのあと寝ちゃいます」
「数日か?」
「半日いるかいらないかくらいかな」
「……なるほど」
じゃあ、明後日の放課後にうちに来てもらうか。
え、私そのあと寝ちゃうのに? せっかくの金曜日なのに?
人命救助だと思え。
目線でやり取りする父と娘。
なんとなくやり取りの内容を読み取って温かいまなざしのおばあちゃんに、肉体が回復できる可能性を示されて期待に目を輝かせているらしい八木。目の影に宿された白い光が力を増している。
「それでは、明後日の学校終了後にうちに来てもらうってことでいいですかね?」
「ああ、もちろんさ!」
「やってみて駄目だったら解剖から始めましょうね! 期待外れだったら申し訳ないですけど」
「HAHAHA、ノープロブレム! また特盛カレーを残さず食べられるかもしれないっていう希望が持てるだけでも十分にお釣りがくるほどさ!」
「ちょうどいい、前から考えちゃいたんだ。公子には医療関係の特別授業をしてやろうね。そうさね、解剖訓練に週に1回の補講に、他学年含めて怪我人が出そうなときの医療補助、あとは大きめの怪我をした子がいたときには臨時で入ってもらおうとしようか」
「頑張りまぁす」
学業に訓練にと忙しくなるだろうということはもちろん入学前から覚悟していたが、本当にのっけから全力疾走の毎日になりそうだなあと、今夜の献立や余暇の使い方の計画を頭の中で組み立てながら、公子は思う。
そんなときだった。
――ウウウウウウウウウウウウウ!!!!
けたたましいサイレンが学校全体に轟いた。
何とか日付が変わる約30分前にですが、投稿できました。死んでしまったパソコンの代わりが使いにくかったのですが、外付けキーボードの採用でようやく使いやすくなりました。キーボードの問題は大きいですね。
次は、単に続きですね。