【再稿】ペルソナ3でハム子のヒーローアカデミア! 作:Cran
誤字ご指摘いただいてその分、注意したと思ってたのにまだまだあったわと。こればっかりは書いて投稿する以上は離れられないのでしょうね。
お気に入り、ご評価、ここ好き、ご感想などいただけたら嬉しい生き物です。どうぞ、よろしくお願いします!
それはまあ、突然の音だったのです。
キミちゃんが唐突の離脱となったので、悲しくなりながらも女の子たちと一緒に学食に入って、ご飯を食べていたときのことです。
それはもう、相当な大音量でした*1。
お隣にいた響香ちゃんなんて耳を抑えてうずくまってしまうほどです。この子は音関係の個性でして、単に耳がいいだけでなくその聴診器みたいな耳たぶから伸びたプラグ*2で普通の人が聞き取れないほどに小さな音でも捉えることができるということでしたから、こんな大音量はとってもよくない。お犬さんにスカンク、菜食主義者に血の滴るようなレアステーキといったところでしょうか。あ、トガは好きですよ、ステーキ。私は肉食系女子なのです。吸血系女子と近似性があると思いません?
サイレンにかぶせるように響いたのは、同じくらいの音量のアナウンスでした。
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください』
それで、それまでにぎやかに食事をしていたほかの生徒さんたちも一斉に動き出し、我先にと出入り口のほうに向かおうとします。あまり秩序だった感じではなく、シマウマの群れが、自分たちを狙ってくるオオカミに気がついたときのようなフリーダムな様子です。
「まずそうです」
ランチラッシュのご飯を目当てに、全校生徒の半分以上は集まっているんじゃないかってくらいになっているところに慌てて避難しようとどうなるかといったら、避難経路がもちろん目詰まりするでしょう。ただ詰まるだけならいいのですが、セキュリティが突破というならヴィランか何かの襲撃があったと考えるのが自然ですし、それが動けなくなったことで焦っちゃってパニックを起こす子たちが出てきたら、こちらも当たり前のことですが押し合いへし合いになってしまいますよね。
私やキミちゃんたちは、防犯ブザーとかサイレンとか偽物ですけど銃声や爆破音が聞こえたときのための訓練をお父さんからこれでもかというくらいにしてもらっています。訓練のなかには、冷静さを失わないこととか周囲の情報を的確にキャッチして安全を確保したりすることも含まれていますけど、ヒーロー科ならともかく、ほとんどの生徒はそんな訓練をがっつり受けるようなことなんてないのでしょうし。
さて、いま私と一緒にいたのは、響香ちゃん、三奈ちゃん、透ちゃんです。クール系1名と元気印2名です。みんなカァイイですが、響香ちゃんはすっごく痛そうな顔で耳を抑えていますし、三奈ちゃんはなになにって感じで周りを見ていますし。透ちゃんはどうなんでしょう。たぶん身構えているのだと思うのですが服の動きでしか判断できないのでなんとなくです。
「セキュリティ3っていっていましたけど、まだ具体的なこと聞いていないですよね?」
響き続けるサイレンに、私がひとまず、ほとんどうずくまりそうな響香ちゃんを胸に抱きよせて、耳を抑えている手ごと包んであげるようにしながら訊ねるのですが――。
「わぷっ、うぐ、格差を心に刻み込んでくるスタイル……」
「うん、聞いてない。非常事態だっていうのはわかるけどさー……、避難しようにもどうにもなんなくない?」
「あ、私、ちょっとよくない。ひとまずテーブルの下に隠れとくね。みんなもそうした方がいいかも」
なぜかじとっとした目で胸元から私を見上げる響香ちゃんに、へっちゃらそうでもありつつもどこか不安そうな三奈ちゃんです。そして、ひしめき合う子たちに身の危険を感じたらしい透ちゃんですが、こちらは隠れて動かないことをお勧めしてきます。そうですね、私たちも小柄な部類ですし、透ちゃんは目につきにくいのでなおのこと、何かあったら巻き込まれる危険性が特に高いです。3人はここにいたほうがいいかもしれません。
ですが、本当にヴィランの襲撃があったのなら、隠れているだけなのも危ないかもしれません。とにかく情報が足りません。なので、私は響香ちゃんをテーブルの下におろしてから、上履きを靴下ごと脱ぎ捨ててテーブルの上に飛び乗ります。
「ひぇっ!? はやっ」
おろすときの移動で響香ちゃんがなんだか悲鳴をあげましたが、大丈夫です。私もキミちゃんと一緒に鍛えてますから、響香ちゃんくらいなら羽みたいに軽いとまではいえなくても、痛くないようにおろすのなんて簡単です。耳塞いどいてねといいながら、まあ、それで周囲を確認すると、これはこれは。
「うーん」
これ、本当に大変ですね?
出入り口のところに、どこにそんなにいたのって思うくらいに大量の生徒さんたちが、なんといいますか、ほら、サーモンさんのおなかから大量に集めたイクラさんたち、テレビで見たことありません? バケツにたっぷり入ったあれを、サイズの合わない漏斗に突っ込もうとしているような。うまいたとえじゃないですが、そんな具合です。しかもうごうごとしています。
イクラさんはあれで案外しっかりしてますから大丈夫かもしれませんが、人間はそうでもないので、転んだひととかがいたらプチっとつぶれて割れちゃうかもしれません。割れはしなくても死んでもおかしくはなさそうです。ですが、困りましたね。お父さんの格好になって呼びかけたら、案外簡単にいうことを聞いてくれるかもしれませんが、ここで勝手に個性を使ってしまうのはよくないことだっていうのは私もわかります。飲んであった分のストックは持つかもしれませんが、トガの繊細な心が持たない結果になりそうです。
あと、食堂の中にきれいな氷のドームが食堂の一角に建設されているのが見えます。なじみのあるあれはショートくんのでしょうね。
氷が半透明だからはっきりとは判別できませんけど、ドームの中に10人くらいは保護されているとわかります。ちなみに、ショートくんはその気になれば氷を透明にもできるんだそうですよ。氷を出すときに周りの空気とかの不純物を巻き込むから半透明になるので、不純物を除外するように丁寧に個性を遣えばガラスみたいにきれいになるんだそうですよ。見てわかる氷と見てわかりにくい氷とを使い分ける訓練で繊細なコントロールを磨くって聞きましたから知ってます。今は、当然ですが見てわかる氷のほうが断然にいい状況ですね。ガラスに気がつかないでビルにぶつかっちゃう鳥さんみたいになったら大変ですから。おかげで、さすがに見て一発でわかる障害物を突き破ってまで強行しようとする生徒さんはいないみたいで周囲を通ろうとしていますね。これ、個性の不正使用で怒られないですかね?
さて、ここで見ていてもまだ状況は分かりません。両腕の制服の袖をめくってそこに巻いてあった《布》の結び目を解くと、天井に通っている水道か何かの配管に放ってその近くに着地――地? 着天でしょうか――して、ざっとルートをチェックしてから、みんなの頭の上を通って食堂を抜けて、廊下へ行きます。
ざっと通路を確認しますが、同じように天井に張り付いている生徒さんはいません。瀬呂くんあたりはいるかもしれないと思いましたが、彼の場合はテープは個性ですから遠慮しているのかもしれません。お父さんもいませんから、職員室とか、もしかしたら侵入者に対処しているのでしょうか。それにしても、こうやって見ると、アリさんが大量にうごめいているみたいですね。みろ、ひとがごみのようだーなんて。駄目です、思っちゃいけません。そんなことをしてないで、ヒーローの卵ならきちんとすべきことをしないと、キミちゃんに叱られちゃいます。
照明のはまっている天井のくぼみの角に両脚を差し入れて、足の指先やひざの部分も使って、ぐっと突っ張らせて身体をしっかりと保持しながら、両腕をぶらーんと垂らします。探すのは、人混み*3につぶされそうになっているような危険な目にあったりあいそうな子がいないかどうかですけど、見たらさっそくいました。って、あれは本当にまずいです。
「うぉおおお、死ぬっ、オイラ死ぬっ、死ぬっていってんだろダロおおぉぉぉ!! ――え、あれッ」
「大丈夫ですかね、変態ブドウくん」
「渡我ぁ!?」
大量の避難生徒の波にのまれて、今にも踏み砕かれそうになりつつも意外なくらい機敏な動きで回避を続ける変態ブドウくんこと峰田くん、もとい色魔くんに捕縛布を飛ばして、その両脇に絡みつけると一気に引っ張ります。身体がとても小さいから視界に入りにくいのが仇になったのと逆で、そのぶん体重が軽いから救助する側としてはよかったです。針孔を通すような操作は必要でしたが。でも、両脚だけの保持ですからバランスが悪いので、負荷が集まったところの筋肉や骨がみしみしとしています。釣り上げた彼の手を取ると*4、頭のもぎもぎを2個つかませて、天井とその両肩とをくっつけます。
「そのまま収まるまでくっついててくださいね」
制服でくっつけたから、降りようと思ったら上着を脱げば大丈夫。制服は一日はくっついたままになりますけど、何とかなるんじゃないですかね。たぶん。
「お、おう。悪い、ありがとな!」
「ごめんねぇ、キミちゃんならもっとうまくできたと思うんですけど」
にしても、なんだか私は峰田くんと縁があるのでしょうか。造形とかシルエットがコミックのキャラっぽくって愛嬌があるのはいいのですが、言動がカァイイとは真逆の方向にタキオン粒子の速度で走っていくスタイルなのは好みではありません。あ、意外かもしれませんが、実はキライではないんですよ? キミちゃんやクラスの女の子たちに邪な目を向けるのはさておき、彼にとっての普通を突っ走って周囲の目線を気にもしないところ、好感が持てますしちょびっと尊敬してます。パパママはどう考えているのか、ご意見を聞いてみたい好奇心もうずきますけど。もしかしたら、おふたりもこんな感じなんですかね? そうではなくって邪街道から引き戻そうとしていたのだとして、それでもこんな言動を貫いているのなら、尊敬度合いも増すというものですが。
ほかに危なさそうな子とかクラスメイトがいないかなと探していると、いました。あの背が高い眼鏡の子は飯田くんですね。おや? なんだか飯田くんの様子が……。
あっ、チャコちゃんもいますね。手を伸ばしあって、……あ。
「――っ!」
タッチし合ったと思ったらすぐにぴょーんって飛び上がる彼の顔から眼鏡が外れて飛んでいきそうになったので、反射的に捕縛布で回収します。目線は飛び上がった飯田くんのままですので、それを巻き取りながら様子を追いかけると――。
「わぁ」
フンッ! という掛け声とともに空中でドリルのミサイルみたいになった飯田くんがみんなの頭の上を貫いてあっという間に出入り口の真上の壁まで移動すると、大きな音を立てて体当たりをするようにぶつかり、貼り付きました。あれ、かなり痛いと思う。すごい衝突音がしましたし。けれど気にした素振りもなく、すかさず右手で配管をつかんで、両足は“EXIT”の照明の上。きちんと3点支持で身体を安定させています。
そして、かっと目と口を開きます。
「大丈ーーーーーーーー夫!」
俺が来た! ってところでしょうか。
いいですね。声の音量自体がものすごく大きいというわけではないですが、みんなの注目を引き付けたうえであれだけ堂々とアナウンスされたら、「あ、そうなのかも?」ってなっちゃうでしょうね。キミちゃんだったらどうしたかなーと考えると、どうするでしょうね、ホイッスルを鳴らすでしょうか? いつも身に付けてますし……って。私もそうでした。この位置から鳴らすのもよかったかも。
でも、そうだったら飯田くんのイイところをみんなが見ることにはならなかったかもしれませんし、結果オーライです。
無事にあの空中ジェットは飯田くんとチャコちゃんの個性の使用によるものなのでしょうが、たぶん、先生たちも叱ったりはしないでしょうね。とってもヒーローっぽいですもん。かくいうトガは蜘蛛女な感じで救助ガールです。とりあえず、峰田くんと眼鏡が割れなくてよかったねって思います。このレスキューについてはあとでキミちゃんに褒めてもらうことにします。
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そんなことがあった昼休みの後、放課後前のホームルームで、緑谷くんが委員長を辞退して飯田くんを推薦しました。あれぇ。緑谷くんが辞退するのもいいですけど、そうしたら、次点の得票数のキミちゃんが委員長になるのが筋ではないでしょうか? 飯田くんが委員長向きだっていうのもあの避難のときの様子を見ればみんな文句がないっていうのはそうなのでしょうけど、キミちゃんの立つ瀬がないといいますか。次々点の百ちゃんも。まあ、キミちゃん当人は副ならともかく正のリーダーは私向きじゃないってうそぶいてますから気にしなさそうですが、せめて緑谷くん抜きで再投票とかしたほうがいいんじゃないですかね。
と提案したら、再投票することになりました。
結果、得票数トップが飯田くん。次点が百ちゃんとトガになり、委員長1名と副委員長2名の体制になりました。
……あれぇ……?
「オイラを助けてくれたときの行動力すげーって思ったから入れたぜ! 再投票の提案も説得力あったしな」
峰田くん、気持ちはうれしいのですが。
「被身子は判断力も行動力も凄ぇからな。補講とかで公子が忙しくなるってことだから、お前に入れた」
「あ、私もヒミちゃんに入れたよー」
おお、キミちゃん、ショートくん、あなたたちもですか。
「まあ、なんだ。慣れてないだろうがいい勉強だ。がんばれ」
お父さんもいってくれますし! それは頑張りますけど!
一緒にいられる時間がさらに減っちゃうじゃないですか、ヤダー!
委員長:緑谷イン
副委員長:公子イン
↓
委員長:緑谷アウト、飯田イン
副委員長:公子アウト、百・被身子イン
となりました。
次は、またちょろっとエピソードを挟みます。