【再稿】ペルソナ3でハム子のヒーローアカデミア!   作:Cran

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すっかり1週間タームになってしまっていますが、こんにちは。

前回、いっぱいご指摘頂戴しました! わぁい!
いえ、喜んでいる場合ではありませんし、本当に助かりました。

今回は、前話と違う方向性のあの子です。

閑話っぽいのばかり続いていますが、理由についてはあとがきの方で。


暗かった世界で光明に出会った少年は

 あー。なんてんだろうね、これ。

 

 朝靄にけぶるなかの鍛錬とでも表現したら格好もつくんだろうか。

 

 息が切れて立ち止まりたくなるたびに、入試のときにであった同じ受験生の女の子のことを思い起こす。俺が心が折れかけてたときに、本当にヒーローみたいにやってきて、おそらく治療系の個性で怪我を治してくれたうえに、カッコいいって発破をかけてくれた子だ。

 

 それからすぐに、走り去っていっちゃったけど、きっと、ああやって、俺へのときと同じように笑いながら当たり前のように他の連中を助けて、また走っていたんだろうなって思う*1

 

 格が違うって思わされた。

 

 俺の個性はヒーロー向きじゃない。“洗脳”だなんて、どう考えても悪の組織に所属するやつ向けで、頑張ってもヒーローになんかなれない。実際に、俺の個性を知ったやつらはみんな俺のことを遠ざけたし、そうでなくてもあからさまに嫌悪感を示してきた。勝手に、俺が悪人の卵だみたいなことを押し付けてきた。

 

 そりゃそうだ。誰だってそうだろうよ。

 

 例えば、クラスメイトの個性が透明人間とかだったりしたとして*2、それを知った際に覗きだとかの悪さをしないかとか、万引きし放題じゃんだとか思うようなやつになっていた可能性がなかったかと問われれば、胸を張って否定することはできない。

 

 でも、俺はヒーローになりたいんだけどな。だから、そんなことしねえのに。

 

 そんなことを身勝手にも思ってしまうが、まあ、そっか。そりゃそうだよな。そう思われるような個性だし、憧れたヒーローたちみたいに戦えるような個性じゃないもんな。だから、きっと俺にはヒーローなんて本当は無理だ。そう思ってた。それで勝手に腐ってた。

 

 でもどうだ。

 

 あの子は治療系の個性*3なのに、間違っても戦闘向きじゃないはずなのに、あんなふうに走って、持っていた薙刀っぽいもんも、それはきっと存分に扱いながら、試験に立ち向かっていたんだ。

 

 そこまで思い返して考えてみれば、あの子は全く息を切らしていなかった。武器以外にも救命用の物資っぽいものをぶら下げて、相応に重いだろうに、俺のところにいきなり走ってきて治療までするのをしたうえで、それなんだ。彼女と俺の違いを考えたとき、答えは自明だった。

 

 あの子は、きちんとヒーローになるための研鑽を積んできてきたんだろうって。男よりも女の方が持久力に優れる場合があるっていう話もあるが、そんなもんとは関係ないことだ。

 

 そうすると、すとんと納得がいった。というか、見ようともしなかったあたりまえのことだったのかもしれないが。リカバリーガールとかって天上の存在みたいな治療系のヒーローだっているし、別に戦闘向けの個性じゃなくても誰かのヒーローになることができるはずだ、そんな風に思えて、納得がいったっていうことだ。単純に、俺には努力が足りなくて、あの子は努力を十分としてきたということだ。

 

 それがどういった気持ちからということはさすがにわからないけど、それでもヒーローを目指すための理由があったんだと思う。それが、リカバリーガールとか、それこそ単純に医者へのあこがれでもなんでもだけれど、何かが原動力になって鍛えてきたはずだ。それは、俺にはあったか? あこがれだけであきらめてなかったか? 納得したら、次には悔しくなった。そして恥ずかしくなった。俺は腐ってた、そのとおりだ。俺はあきらめかけてた、そのとおりだ。今は無理かもしれないが、でも、いつかはなれるようなやつになれるって信じることはできていなかった。

 

 でも、信じて突き進むか、信じられなくってあきらめるかは、だれに何をいわれたところで決めるのは自分自身だ。だから、俺は胸を張ってヒーローを目指している、そのために励んでいるっていえなきゃいけないし、いわなくちゃならない。そのためには、少なくともあの子のように、しっかりと身体を鍛えてないと話にならない。個性がなくても、きっちり自分の仕事が果たせると考えられるくらいには。

 

 だから、それから。入試終了後から。俺は、毎日の筋トレと走り込みをがっつりとするようになった。これまでもやってはいたけど比べものにならないくらいの気合を込めてだ。どっかのジムにでもいきたいとは思ったけど、ヒーロー科じゃなくても普通科に合格したら地元からは遠出になるから辞めることになるだろうし、それはしなかった。それでも、って、自分でできる範囲で鍛錬した。もしヒーローにはなれなくてもあの日のあの子みたいに笑いながら人助けができるような人間にはせめてなりたくて。最初に1時間のマラソン、それから運動公園に移動して、全速力で10分を走り回り、10秒だけ休んだらまた10分を走り回ることを3回。あとは走る代わりに公園のアスレチックコースに10分間、全力で1回取り組んだら10秒休んでまた取り掛かる。一日の終わりに筋トレをして、寝る。そんなことを延々とやった。合否の通知が来るまでの間ずっと。

 

 通知が来るときには、平静だった。普通科すら落ちていたら仕方ないから別の学校に通いながらヒーローの修練んを積んで、どこかの事務所に売り込んで、成人してからでもヒーローになってやろうって心を決めていたから。

 

 だから――。

 

『はじめまして。俺は国立雄英高等学校の教師を担当しているプロヒーローのひとり、イレイザーヘッドだ。俺から、きみへの当校ヒーロー科への受験の合否の通知をさせてもらう』

 

 黒髪に黒尽くめの、灰色っぽいマフラーを巻いた、見たことのないヒーローが言葉を続ける。

 

『まず、きみの合否だが、合格だ』

 

 いきなりの言葉に、は? って、思った。

 

『出だしこそ躓いたが、直接戦闘向けの個性でないながらヴィランポイントもしっかり稼いでいる。なにより、きみの個性“洗脳”の強みを十全に活かした、立ちすくんだ受験者たちへの働きかけの行動が大きい。ヒーローとは、救助・避難・撃退、その三つの原則を満たしてこそ成り立つ。きみは撃退を行いながら、救助も避難もあわせてこなしてみせた。それを俺たちプロヒーローが評価しないなどあるはずもない。隠し要素として、救助と避難を表すレスキューポイント、《ひとを助けた》という証の点数が評点に用意されていたということだ。そして、それがきみの合格を決定づけた』

 

 淡々と、そのヒーローはこちらに手を伸ばして見せる。

 

『来なよ、ヒーロー科に。これから味わうのはヒーローになるための艱難辛苦。血反吐を吐くほどつらいだろうが、それに耐えられるなら、ここがきみのヒーローアカデミアだ』

 

 そんな言葉に。

 

「イレイザー、ヘッド……!」

 

 ――だから、俺は、涙をこらえることができなかった。

 

 

 υ´• ﻌ •`υ

 

 

 心操人使は雄英高校への受験から本日まで、小雨が降る夕方の道を走っていた。彼は雨の日だろうとなんだろうと欠かさず続けているトレーニングの一環として、通学先の近くに借りたアパートから足を延ばせる範囲での走り込みを行ってきている。雨が降るとか、降っているなどがわかっていればレインコート程度は羽織ったが、途中で降ってきたときも気にせずに走ってきた。今も、別段小雨は気にしていない。

 

 携帯はすでに防水防塵防圧仕様のものに機種変更をしてあるため、豪雨だろうと問題ない。機種変更をわざわざした理由はまあ、自分へのご褒美の一環であるのと、万歩計その他のバイタルの様子を計測するツールのひとつとして使えるというのを、結局通うことはなかったが体験教室をさせてくれたジムのトレーナーが教えてくれたというのもあった。単なる日常生活でのモニタリングなら腕時計型が一番だそうだが、こちらに電話機能やコミュニケーションの道具として一本化した方が分かりやすいと感じたし、たまに走っている最中に猫などを見かけると、走りながらついでに写真を撮るくらいには楽しんでいる。

 

 走り続けてから1時間は過ぎて、商店街にでも寄って帰ろうかという頃に、侵入しようとした大通りを横切っていく、同じように走っている同年代らしき姿が見えた。

 

(雨が降ってるのに、ご苦労なことだな)

 

 思い切り自分を棚に上げて、同じ方向に向かって曲がっていくと、その姿が立ち止まってこちらを見ていることに気が付く。

 

「あ?」

「あー。やっぱり」

 

 こちらの姿を上から下まで見やってから、曰く。

 

「受験のときにあった子だよね、久しぶり!」

 

 買い物用らしいエコバッグを肩にぶら下げて、雨のしずくを髪にまとわせながら笑ってくるのは、とても見覚えのある顔だった。

 


 

「合格おめでとう!」

「あんたも。まあ、あんたは合格だって思ってたけど」

 

 そう? といいながらも、すぐにもちろん自信あったよ! とケラケラするこの子に、よく笑う子だよなって思う。なんというのか、表現するとひまわりだろうか、違うな、ガーベラとかになるかな。惹きつける明るさがこっちまで元気になるようなそんな感じだ。

 

「このスーパーよく来んの?」

「いつもはもうちょっと違う時間だけどね」

「家の手伝いとか?」

「そうだねー」

 

 聞くと、父親と2人暮らしだが、よく友達連中が食べにくるそうだ。寝起きというのは昼寝でもしていたのだろうか。

 

「人使くんは?」

「あー、俺は1人暮らしだから。トレーニングがてら買い出しして帰ろうかと思って」

 

 名前呼びはむず痒いのだが、同年代にはたいていがそうで、苗字呼びに違和感があるらしい。自分のことは好きに呼んでもいいが、「公子」「公子ちゃん」「キミちゃん」などと選択肢をあげられてもそれはそれでこちらは困る。異性間で名前呼びだと、なんだか戸惑う。まあ、あれだ。ネットで見たけど、そういった関係をどうしても勘ぐってしまう傾向のある、年代の習性めいたものかもしれない。男女でそろっているとカップルってはやし立てたりするやつ。

 

「ふうん……」

 

 少し考えたらしい公子に、俺は意識して表情を整える。どうにも、油断すると愛想笑いとか、無表情な顔だとか、考えていることとか感じていることとかとは別のものが出てくるんだよな。もっと幼いころはそんなことなかったはずだけど、小学生以降の写真で俺が浮かべている笑顔にはどこか薄っぺらいものを感じる。鏡を見ながらやったことあるか、表情を繕う練習ってやつ。ヒーローになるんなら笑顔の練習くらいはしなきゃって思ってやってたんだけど、どうにもならない。誰かにいわれたっけな、いつもなんかひねくれたようなあきらめたような顔してるってさ。正しいよ。まあ、今はあきらめる必要はないんだけど、身体に染みついちまったのはなかなかうまくいかない。

 

「それじゃあ、せっかくだし夕飯食べに来ない?」

「はい?」

 

 そんな考えを置いていきなり踏み込んでくるな。やめてくれ、俺は同性の友だちはちょっとはいたが、異性のはさっぱりだったんだ。

 

「いや、今日、豚肉が安いんだよ」

「はぁ」

「豚しゃぶで鍋囲もうかなって思ってるんだけど、せっかくだし一緒に食べない?」

 

 何がどうしてそうなるんだろう。

 

「鶏肉も安いし豆腐は買ってあるし。トレーニングのあとはタンパク質重要だよ?」

「違うそうじゃない」

「ヒミちゃんもショートも今頃、お父さんにしごきまくられてるころだろうし、鍋4人から5人になっても大したことないからね。暇だし。私、今日は軽い運動以外は禁止されてるし」

「はぁ……」

 

 確かに、割引の弁当でもないかなって見てはいたけど、と頭をひねる。まあ、自分で作らなくていいし、何やらトレーニング後の食事として用意されているものにご相伴をあずかれるのならそれはそれでありではある。情動面はさておくとしても。にしても、なんでこの子はこんなに距離が近いんだろう。不愉快じゃあないんだけど。

 

「いや、ありがたいけどさ」

 

 保護者同伴ならまあ別に、大丈夫かと思いつつも、今度はようやく普通の遠慮の心が出てくる。

 

「お父さん、ヒーローだし。知らないと思うけどイレイザーヘッドっていうんだけど、こういうの許してくれるから気にしなくていいよ」

「まじか」

 

 一にも二もなく、ご相伴にあずかることを決めたのは、間違いなくその、あの日に知ったプロヒーローの名前だった。

 

 

 υ´• ﻌ •`υ

 

 

「へえ。面白い縁があったもんだ」

「あ! は、初めまして、こんばんは! 心操人使です!」

「知ってるよ。きみがヒーロー科に来てくれたのは俺たちとしても望外の喜びだ」

「あ、ありがとうございます!」

「もー。お父さん、とにかく座ってもらいましょー。あ、私、渡我被身子です。A組です」

「俺は轟焦凍。同じくA組だ……、人使って呼んでいいか? 俺は焦凍でいい」

「イレイザーヘッドがヒーロー名だが、ここでは相澤消太、相澤さんでも何でもいい」

「はい! ……って、相澤で、お父さん?」

「あー、うん。私のお父さん。ヒミちゃんもお父さんって呼んでるけど、私が娘ね」

「私は同居人です! ヒミコかヒミコさんか、ちゃん付とかヒミちゃんとかだと嬉しいです!」

「被身子は同居人じゃないだろ」

「でも焦凍くん、時間の問題です。ママたちの大好きは私とは別にあるみたいですし」

「……悪ぃ」

 

 何やら妙な会話がある中、心操は少しわたわたとしている。公子はさっさとキッチンに下がっているし。

 

「あの、俺、イレイザーヘッドの言葉で、救われました。あなたのおかげでヒーロー科に行けるようになったとも思ってます」

「俺は何もしてねえ。ブラドは俺と違って、しっかり見てくれるやつだ、その様子だと受験のときよりもだいぶ鍛えているんだろう。その調子を続けながら毎日さらに上にってやつを繰り返していけば、もっと良くなるだろ」

「……はい!」

 

 イレイザーヘッドこと消太はちらっと、キッチンに立って鼻歌をしながら夕飯の準備をしている娘を見やった、それから、騒がしい連中を除いて、少し声を落として問う。

 

「きみは、その“洗脳”の個性にコンプレックスがあるな?」

 

 その言葉に、心操はうつむいた。分かられているだろうことは分かっている。あの、合否通知のときにも、個性の名前を強調していたのは、何かの意味があるだろうと思っていたからだ。B組のみんなは受け入れてくれたが、それだけでこれまでの生のなかで築かれた気持ちがなくなるわけではない。

 

「俺にいわせればだが。まず、その名称を考えたやつは殴っていい」

「は?」

 

 合否通知のように結論から表明するスタイルに、今回も心操はぽかんとした。

 

「別にマインドコントロールするわけじゃないだろ。味方に使うなら、しり込みをする仲間を叱咤して何とか動かすための力になる、ヴィランに使うなら、強制的に捕縛に従うようにできる。そんな力は間違っても洗脳だなんていわん。候補は思いつくが、結局はお前が決めることだから俺からはいわん」

 

 横やりが入らないかなと周囲をうかがいつつも、消太は続ける。

 

「お前の力は、そんな汚い名称じゃない。断言してやる。もしかするとオールマイトよりもヒーローになれる力だ。誇れ。誇って、さらに磨け。心身も、その“個性”もな。そうすりゃ、お前はトップじゃなくても、ほかの誰にも真似ができないヒーローになれる。俺がいま、いえるのはそれだけだ」

 

 心操が涙をこらえられたのは、何回もあの通知の動画を再生した経験があったから、かもしれない。

*1
走り回っていたのは正しいけど、その子、治療もしてましたけど雷を雨あられと降らしてましたよ。ついでに空を滑空とかしていますね。

*2
葉隠「よんだ?」

*3
違ってはいない。十分ではない。




「ふむ」
「ふむ、じゃないのよ、あなた?」
「あー。それ、あれか。結局、だれか伝手で雄英に送った手紙の返信か、教員のやつ」
「お父さん、懲りてなかったのね……」
「臨時として授業に参加しろということだ。何やら雄英がヴィランに狙われているらしい」
「いつものことよね?」
「いつものことじゃないの?」
「いつものことだろ」
「雄英バリアが突破できるヴィランが相手にいるかもしれないと聞いてもそうか?」
「……?」
「………?」
「………雄英バリアってなんだよ、お父さん。ロボ系のゲームか何かか?」
「おのれ」
「おのれ、じゃないのよ、あなた。言葉なさ過ぎてこうなっているんだから、ちゃんと、一から十まで吐いてもらわないと困るわ」
「お母さん強くなったわよね」
「あの子たちには感謝しないとな」
「……うむ」
「うむ、じゃないわ。……はぁ、いつまでもこんなのだったら、この子たちに弟か妹ができるなんて言えないわね」
「……は?」
「…………は?」
「………………は?」
「れ、れれれれれれれ、れ」
「お掃除屋さんかしら、箒はいりますか?」
「冷、そうじゃない!」
「夏、焦凍とあの子たちにライン」
「もう送った」
「いや、な、あ? れ、冷!?」



せめて1週間というのをオーバーしてしまいましたが、外出が多くなってしまいまして。スマホでぽちぽちした後にパソコンで、というのが定着してしまいまして。

それはともかく。

閑話についてですが、原作からして、例の襲撃が水曜日なのは明確なんですけど、大抵の始業式が月曜日なのだとすると、月曜日に個性把握テスト、火曜日に戦闘訓練。間を見ると翌日に水曜日にマスコミ侵入なので、最低でも1週間かかるんですよね。というわけで、その間にどうだったのかというお話になるという。入学前に関係者を増やした私のせいです。ただ、閑話とは呼称しますけど、これも本編の一部といいますか。必要な部分でもあったりしまして。扱いには悩むところです。

あ、次は本編進みます。
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