【再稿】ペルソナ3でハム子のヒーローアカデミア! 作:Cran
消太の述懐は最後ダイジェスト的になりますが今回の後編で一度終わります。
今後も、合間合間で描写することはあります。
さておき。
高評価いただけました、わぁい!
誤字報告も、ありがとうございます!
少女が一度の目覚めを迎えたあの時を境に、それまで遅々として進まなかった少女の身元確認などの調査ははかどり……となるかといえば、そうは卸させてくれないのがこの世界の問屋である。
というのも、消太に何らかの個性らしきもので癒しをもたらした少女だったが、そこからいきなり回復したわけではなかったからだ。それは機械でもないのだから当たり前の話で、消太もリカバリーガールも、次の目覚めからいきなり少女が元気になり、事情聴取が実現して多くの問題が解決するなどといった楽観的な考えは持ってはいなかった。少しは状態は良くなったかなとは思っていたが。
だが、むしろ事態は斜め下の方に悪化した。
「うおお起きた起きてまた出たぞ相澤ぁ!」
「校内ではイレイザーヘッドと呼べ山田ぁ!」
「ごめん、けどお前もなぁ!」
見張りについていた山田ことプレゼントマイクの呼び声に応じて、消太がかっと目を光らせてベッド上の少女を凝視すると、彼女を取り巻いていた光輪は静かに光を落とし、やがて現れようとした何かとともに消えていく。それに合わせて、薄く開かれていた少女の瞼がゆらゆらと閉ざされていく。逆立っていた消太の髪の毛もゆらゆらと降りていく。
「……寝たか……」
はぁ、と息をついて、消太はつい先ほどまでもたれかかっていた椅子に再びぐったりと腰を下ろした。
「いや、つい謝っちまったがいまは俺らしかいねーから名前でよかったじゃねーか、おめーも俺も疲れてんのな。たたき起こすのこいつで何回目だっけな、体力保つ?」
勢い良く立ち上がった状態のままポケットに手を突っ込みつつ山田が時計を見ると、深夜3時である。彼が今回の見張りについてから3時間経過している。
場所はいつもの保健室、ではなく保健室の近くにある学内病院とでも呼べそうな大きな区域に用意された一室である*1。
リカバリーガールの居城ではなく、なぜそんな場所に少女と消太、ついでに山田がいるのかといえば、ことは単純である。
最初の覚醒と不可思議な力の発露以降、少女はうっすらと目を覚まし、また眠りにつくことを繰り返したが、それだけで収まらなかったのだ。
具体的には、半覚醒状態の際にあの小妖精*2以外にも、竪琴を持った怪人*3、グロテスクな顔らしきものを備えた粘体生物*4、踊り子のような異邦人女性らしきもの*5などを出現させるようになったのだ。これには消太*6は驚いた。リカバリーガール*7も驚いた。覚醒と治癒の連絡を受けて様子を見にやってきたネズミ*8たちも驚いた。
まず出てきたのが明らかに触ってはいけない系統の雰囲気を醸し出す粘体だったために、反射的に消太が抹消を発動*9させており、しかもそれが有効だったことでどこかにお帰りいただけたため事なきを得たものの、もしもあの粘体が何かしらの悪さ*10をしていたらどうなっていたかはわからなかった。
これは少女が意識の不明瞭な状態で無自覚に発動させている個性で、最初の覚醒時は消太の負傷という明確な動機付けがあったため癒しという結果で落ち着いていたのだろうというのがリカバリーガールと話を聞いた根津校長が意見を同じくするところだった。今はまさしく夢を見ているような状態が継続しているから、個性ビックリ箱になっているということだ。消太も山田も異存はなかった。
ということで、ここから消太の徹夜地獄が始まることとなった。
消太の個性でも完全に抹消できるわけではない――即消去するのではなく、召喚獣*11の出現状態をゆっくりと抑制して鎮めるような格好となる――ものの、おそらくは現時点で召喚*12に的確に対処できるのが消太だけであり、長い昏睡から徐々にとはいえ覚醒する状態に移行しようとしているとみられる現時点で、ミッドナイトの個性などで強制睡眠をさせるのも悪手だと判断されたためだ。
教師の仕事は遺憾ながら他の教師が代行し、消太は少女に張り付く。それだと限界もあるため他の教職員が交代でサポートにつき、消太の休息等を確保する体制だ。
幸い、この個室は洗面トイレ等の設備はあるし、くつろげるように高級なリクライニングチェアも運び込まれ、消太のプライバシー以外は完璧である*13。
人を堕落させそうな椅子の背もたれに頭を預け、目に手を当てつつ消太は疲れた声を出す。
「時間単位の覚醒回数はだいぶ増えたから、そう先は長くないはずだ……しかし、居心地が良すぎて眠気に耐えるのに疲れるぞ、こいつ……」
「相澤の先が長くないんじゃなきゃいいけどな」
洒落にもならんと返す気力もない消太の過酷な時間は、その夜の終わりと同時にようやく終わる。
トイレを済ませる一瞬の間に寝落ちしていた山田を起こそうと近づいたところで、やおら上半身を起こした少女とばっちりと目があったのである。
「……というわけで、おはよう?」
「……おはよう、ございます?」
少女は少しぼんやりとしていたが、これまでのような半覚醒状態ではなく、確かに目が覚めていることがうかがえた。ぱちぱちと瞬いており、睫毛がまるで蝶々のようなかすかな音を立てている。
「えっと……」
右を見て、左を見て、下つまり自分にかかった布団を見て、また消太を見る。
たっぷりと一呼吸は見つめ合ってから、ゆっくりと片手でポケットを探るような動きをしだす。
「とりあえず警察呼んでいいですか?」
「待てやめろ」
そもそもお前は今ケータイなんぞ持ってないだろうがという突っ込みより、ここでも不審者扱いかという情けない思いが頭をよぎる方が先だったそうだ。
そして。
少女が意識を取り戻したという知らせは速やかに学校側にも伝えられ、周囲はにわかに動き出す。
簡単な検査やヒアリング*14を行った結果、最初に判明したのは、彼女の正確な名前である。
結城公子。
学生証に書かれていたものと同じである。
次いでわかったこと。
名前以外の記憶がおぼろげで、ほかのことは夢の中の記憶のように判然としないことだ。警察等から返却された衣類や持ち物については、自分のものだったと思うともいっており、完全な記憶喪失というわけではなく、強いショックを受けたことによる解離性健忘と診断された。
それから、あの個性と思しき召喚能力については……。
『個性ですか?』
『ああ、君は覚えていないだろうが、俺が手に怪我をしていたのを治してくれたんだ。それが君の個性じゃないかと俺たちは考えているんだが』
『私の個性、ですか……よく、わからないですけど……』
『なんというかな、妖精みたいなのを呼び出していた。ピクシー、とかいってたか。君がそう呼んで、ディアと指示したら治った。ほかにも、寝ている間にいろんなもんを呼んでいたが』
『ピクシー……、これ、かな? ≪ピクシー≫……!』
『っ!』
呼ぶより、むしろ何かに呼ばれるように公子が目を閉ざして名を告げると、この数日で何度も消太たちが目撃した現象が生じた。その時は特に指示がなかったからか、妖精は単に宙返りを披露するだけで、公子にウィンクを返して消えていったのだが。
『ほかにも呼べそうか?』
『そうですね、たぶん、スラ』
『あー、いやいい、いまは呼ばなくていい』
『本当に不思議な個性よね。その、力の名前もわからないかしら?』
『うーん、個性といわれるとわからないんですけど。ペルソナ、って言葉が出てきます』
『ペルソナ、仮面かな。仮面を付け替えるように召喚を行うということだとすれば、なかなか興味深いものを感じるのさ』
『うん、ペルソナでしっくりきます。ペルソナ!』
『出てきた。ピクシーっていったわよね、やっぱりかわいい、一人欲しいわぁ、ぎゅっとしたい……』
『消えたね。動物虐待は良くないのさ』
『あれが動物だと、アレ*15はなにになるのかねえ』
この能力は公子が制御できることが分かったが、やはり困ったのは、公子の今後の扱いだ。身元がわからないことや、敵犯罪に巻き込まれているかもしれないという懸念は引き続き存在していることから、目を覚ましたからといって安易にどこかしらの保護施設に預けるわけにもいかない。
『何よりあの個性、ペルソナはいつ敵に目をつけられてもおかしくありません。ピクシーの治療以外にもそれぞれにどんな能力があるのかも俺たちはまだ知りませんが、やれることが多ければ多いほど、あの子に利用価値を見出す奴らが出てくる恐れがある』
『実年齢はともかくあのくらいの子供にしては落ち着いているけど、それでも不安はあるわよね』
『まあ、ウチでの保護は継続するにしても、ずっと閉じ込めたままにはできないのさ。子供は学んで大きくなる権利があるし、それを最大限に支えるのが私たちの義務ってものさ』
『今から小学校に通わせるというのも疑問があるね。本人は10歳よりはもっと大人だったはずなんていっていたけれど、確かに中学生でもおかしくはないさね*16』
『そうすると、来年度に合わせてウチ最寄りの中学校に通わせる方向で考える方がよさそうですね、本人の希望もありますが』
『可能なら、そこからウチに入学してもらえたらいいんだけどね。ヒーローになるかは別としてね。まあ、そっちも本人次第さ』
それまでは、知識や学力の程度の確認や必要に応じたフォローアップを図りながら、雄英高校の教職員の面々にもなじんでもらっていくこととされた。
一番の問題は生活を営む環境だったと思われたが、これがすんなりと話が進んだ。
『俺が引き取ろうと思います』
『その心は何かな、イレイザーヘッド?』
『そもそも最初に拾ったのは俺ですし、あの子がもしも個性を暴走させても俺なら止められます。近くの例のプロヒーロー向け物件に引っ越せば、防犯上も申し分ないでしょう。男世帯に女の子ってのは問題かもしれませんが……』
『あら、私は賛成するわよ。今日び男やもめで女の子を育ててるなんて話も珍しくないし、相澤くんなら変な犯罪には走らないでしょうしね』
『まあ……先輩なら僕も不安なことはありません。何か困ったら、僕もミッドナイトもいつでもお手伝いできますしね』
『助かる、13号』
『まあ、女性のほうがいいとは思わなくもないが、イレイザーなら構わんだろう。少なくとも俺よりは問題がないだろう』
『ブラドだったら反対したわ』
『おい』
『俺はどーよ!』
『マイクは駄目だ』
『シヴィー!』
消太が引き取ることを主張するに至った心理が追及されることはなかったが、縁の深い香山と山田には思うところもあったようだ。
『いっそのこと公子ちゃんと養子縁組しましょうよ』
『は?』
『悪くねーな!』
『身寄りのない子をヒーローが引き取るにあたっての優遇制度もあるし、私もお勧めするよ。ヒーロー公安委員会の余計な手出しを防ぐのに、いいけん制にもなるのさ』
『あなた、人には無茶をさせたがらないくせに、割と自分の安全はおろそかにしがちだもの。家で子供が待ってるとなったら、少しは変わってくるでしょ』
などと話は進み。肝心の公子はといえば、
『じゃあ、私は相澤さんのことをお父さんって呼べばいいんですね』
と、あっさりしたものであった。
υ´• ﻌ •`υ
(あれからもごたごたしちゃあいたが、悪くはなかったしな)
公子が社会や歴史等以外は驚くほどに学力が高かったり、運動をさせてみれば大人顔負けであったり、薙刀を所有していたということだから棒を持たせてみればヒーロー志望の若者とも渡り合えそうな腕前を見せつけたりするなど、何かと驚きと騒ぎにあふれ、話題に事欠かない次第であり、どちらかというと世捨て人めいた生活を送ってきていた消太からすれば、相当に人間らしい日々を送ることができたといえる。
なお、様々な驚きの中でも、消太の中での一番は、公子が「そういえば17歳だった!」と言い出したときのことである。それをあらかじめ知っていれば、引き取りを主張しなかった可能性は高い。
犯罪臭がやばい。思い出して、遠い目になる。
「どうしたの、お父さん? ご馳走様?」
「あー、いや、もう少し食う」
「今日はよく食うな!」
「私はそろそろパース。ワインとチーズへ移行するのよ~」
「終電大丈夫なんです?」
「大丈夫、今夜はキミちゃんと寝るから」
「あれ、私聞いてませんけど。まあいいですけど」
「さっすが、愛してるわ!」
「はいはーい、私も愛してますよ。ワイングラス持ってきますね」
「俺も相澤と寝る!」
「スタジオに帰れ」
入学は決定。もう月日が過ぎれば公子の2回目の中学校生活が始まる。
仮に雄英高校に入るとすればその日々はさぞ忙しいものになるだろうから、中学生時代は穏やかに過ごさせてやりたいものだと、父親らしいことを思いつつ、夜は過ぎていくのであった。
結城姓となりました。
なお、ペルソナは召喚コストの消費→眠りで回復→消費の繰り返しですね。
次回から、中学生時代の始まりです。合格からここまで長かったな?
結城公子さんのコミュの恋人関係は? 必ず設定に反映するというアンケートではなく、皆さんはどのように感じていらっしゃるかなというものなので、お気軽に。
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真田先輩(熱血アニキ、真田 明彦)
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乾くん(侮れないショタ、天田 乾)
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荒垣先輩(我らがオカン、荒垣 真次郎)
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男主人公(禁断の双子の弟、男主人公)
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いない
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全員
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全員-男主人公