【再稿】ペルソナ3でハム子のヒーローアカデミア!   作:Cran

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小説の参考になるかと思ってヒロアカのゲームについても調べたんですが、相澤先生の技紹介の動画がかっこよすぎてちょっとプレイしてみたくなりました。

またまた高評価をいただきました、嬉しいです!
評価いただいたとたんに気分がやたらと上向く私はもしかするとリーズナブルな人間かもしれません。


2回目の中学生時代④~赤白赤~

 元、結城公子。現、相澤公子は別世界の人間だった。まる。

 

 これは個性が存在しない世界であればお前は何をいっているんだと大方のひとには正気を疑われそうな字面であるが、残念ながらそんな世界ではない。この世界、この個性社会においては、個性が割と“何でもあり”なものであって、何が起きても早々驚くことではないということはすでに不文律になっているとさえいえる。

 

 なので、前述のような話をされたとしても、仮に驚いたとして「ふうん、そんなこともあるんだね」といったふんわりとした反応に落ち着くのがせいぜいだろう。

 

 とりわけ、消太をはじめとする公子の保護などにかかわっていた人間は、公子の“ペルソナ”についても通常の個性とは違う何かしら世界から浮いたような雰囲気を肌でなんとはなしに感じていたものだからなおさらであった。

 

 ちなみに、それが発覚したのは、セメントスと初顔合わせのときである。

 少しの疑問もなく、公子はセメントスの装いをゲームか何かに出てくるストーンゴーレム的なもののコスプレと思い込んでいたのだ。互いのあいさつの後で、よくできていると称賛し、「ちょっと触らせてもらってもいいですか?」とまで礼儀正しくたずねる次第であった。

 

 そこから、また改めて学力ではなく世界的なものの常識に関するすり合わせが行われた結果、「やっぱり私、この世界の人間じゃないっぽいです」とのコメントが出るに至り、「やっぱりそっかー」とすんなり受け入れられることになった*1

 

 かといって、驚かないことと対処が不要であることはイコールではないので、公子の育成計画には個性社会およびこの世界の歴史などといった時間ががっつりと盛り込まれることとなった。信号の赤青黄色がわからない子供を外に放り出すわけにはいかないのである。

 

 そういった訓練を経て、満を持しての中学校生活の開始。

 周囲は一定程度の心配はあれどそこまで不安視はせず、公子自身も「2回目だもんなー」とか「あんまり思い出せないけど何回も転校してた気がするしなー」といった認識で、せいぜいが「友達できるかなー」といった方面の懸念を抱くくらいだった。

 

 そして実際のところとはいえば。

 

「始まって一週間たつが、その後はどうだ?」

「ううん、まあ、変わらず……。授業はつまらない……、だるい……」

 

 という愚痴が出てくる状態だった。一見すれば一般的な学生がいいそうなものであるが、実情はそれとは少し異なる。 

 公子が用意してくれていた夕食をつまみつつ、それはそうだろうなと消太は思う。

 

 何しろ、合格通知が届いた際にも本人がこぼしていたことだが、学力レベルは確かに中身17歳であってもおかしくないどころか、その上澄みといっていい高い水準にある。本人曰く「大体は学年トップか5位以内のどっかだったはず」であり、だとすれば今更授業が退屈でどうしようもないものだったとしても、なんの不思議もない*2

 

「まあ、わかっちゃいたことだがな。きわめて優秀な頭脳を持って生まれた人間の気持ちを体験できる貴重な機会だと思って割り切れ」

「わざわざ体験しなくてもきわめて優秀な頭脳を持っているから不要ですう」

「はっ、いってろ」

 

 頭脳については公子自身、自分はどちらかといえば努力型だと思っているので、さすがにこれは冗談である。

 

「まあ、授業は置いておいても、クラスメイトと遊んだり部活入ったりできてたらマシかなとは思ったんだけど、そっちもちょっとね……」

「俺からすりゃ、そっちが驚きなんだがな。香山さんたちともそうだったが、お前は人と仲良くなるのは得意な方だろ」

 

 俺と違って、という注釈が付きそうな言葉に、公子もため息をつく。

 確かに同級生たちは子供っぽく思えるし、この社会に意識は溶け込めていないのだろうといったことを加味したうえでも、ここまでなじめないとは考えていなかった。表面上で仲良くすることはいくらでもできるのだが、なんとなく距離を感じてしまうのだ。彼女の魂めいたものに刻まれた大切なものとのギャップが、彼女がここで絆を深めることの阻害要因になっているのだが、当人は明確には気が付いていない。

 

「部活も久しぶりにバレーボールでもできたらとは思ったけどさ」

「今日、見学に行くっつってたろ、やっぱりだめか」

「みんながやってるのを見たらね……。手を抜くのは絶対に失礼だし、私も楽しくない」

 

 若返ったというか幼くなった身体であれば頭脳とは違って周りに無理に合わせる必要はないかと思えばさにあらず。早々に消太も理解したことだが、明らかに公子は身体能力が年恰好相応のものではない。楽々に薙刀を振り回せる膂力、柔軟性も瞬発力も持久力も兼ねそろえたしなやかかつ強靭な見事な肉体である。

 

 毎晩のように何時間も走り回ったり、飛んだり跳ねたりしながらの実戦を幾度となく、一年近くもこなしていたらそうもなるだろうなというのは、公子も消太も認識を同じくするところである*3

 傑出しすぎたチームメンバーなどはそのコミュニティにとっては害悪になることも多いため当初からあきらめてはいたが、友達と遊ぶのも難しく部活も無理となると後は暇を持て余すしかない。

 

 学校の宿題も終えてしまい、社会のテキストの自習も終えてしまい暇そうにカーペットの上で開脚前屈をしている様子を見ていると、消太としても気持ちが絆されるものであって。

 

「仕方ないな。飯食い終わったら訓練付き合ってやるから、予約確認しとけ」

「ぃやった!」

 

 いうやいなや、ぴょこんと開脚前屈からの前転飛び上がりを決め、いそいそとスマートフォンをチェックする。前の世界からの運動習慣はすっかりと生活に根差しており、ストレス解消手段ともなっており、たいていの鬱屈は消太との訓練などの歯ごたえのある運動があればどこかになくなってしまうのであった。

 

「仕事の続きをやるつもりだったが、まあ、たまにはいいだろ」

 

 最後の一口を飲み下すと、ご馳走様とつぶやく。

 公子との訓練は消太のカンがなまらないためにもいいのだが、仕事を片付けるペースが仕事が増えるペースに負けて負債になっていくのが悩みどころである。

 

 そんな悩みであるが、割と近いうちに、意外な解決を見ることになる。

 

 

 υ´• ﻌ •`υ

 

 

 公子との同居が始まってからしばらくの間はさておき、消太は変わらず朝も早いうちに出勤する。公子は、そんな消太の朝食の支度や見送りを済ませてから、登校時間まではこれまでは自宅で過ごすこととされていた。

 

 だが、今日は異なる。公子は消太を見送ったのちにジャージ姿に着替えて外出し、道路を結構な速度で走っていた。それも、何やら長いものが収納された肩掛けのバッグを装備してである。

 

 抹消ヒーロー・イレイザーヘッドの名のもとに*4、朝の運動が解禁されたのだ。

 

 公子のストレスへの対処として、というわけではない。公子が別の世界から来たということは、すなわち現時点において何らかの敵組織に身柄を追われている可能性は低いと判断でき、だとすれば、非常に特異な個性である“ペルソナ”さえ人目につかなければ、一般の子供と同程度の自由行動は問題ないだろうという考えは当初よりあった。とはいえ、可能性が絶対にないとも言い切れるわけでないので、ある意味でほとぼりが冷めるのを待つ時間を設けることとされており、このたび、目出度く消太によってそれが解禁されたのだった。もちろん、先だっての公子の愚痴もこのタイミングで解禁に至るきっかけにはなっている。

 

 そういうわけでさっそく、早朝の運動を兼ね、そこそこの距離のある場所の広い公園を目的地として、走ってきたのだ。

 

「おー」

 

 何キロか過ぎて、もう少しで公園に到着するというところで、わき道からルートに合流してきた人物が目に映る。

 角からそのまま曲がって、自分と同じ方向に向かって走っていく。

 

(同じくらいの子。いつもここ走ってるのかな?)

 

 自分と同じくジャージ姿で、赤と白のツートンカラーの髪が印象的である。

 ちらっと横顔が見えたが、なかなかの美少年であった。とはいえ別に気にするでもなく、そのままさっさかと走っていると距離が詰まったので、横から追い抜いていく。

 

「お」

 

 こちらの存在に気が付いていなかったらしく、何か声を漏らしたのが聞こえる。

 

(びっくりさせちゃってたらごめんねー)

 

 暦の上では春とはいえ、4月の空気は早朝ではまだ冷たい。

 ほどなくついた公園には様々な草木が花を咲かせていて、花弁から朝露を滴らせている。ほんのりとした冷気と甘みを感じさせる匂いとが相まって、実に運動意欲をそそらせる。事前にあたりをつけていた芝の広場にやってくると、いそいそとバッグを開く。取り出したのは、いつもの訓練用の薙刀だ。ここに持ち込むことは事前に公園のルールとあわせて消太にも確認し、許可を得ている。

 

「よーっし!」

 

 片手に薙刀を下げ、右足で地面をととん、とする。いつの間にか癖になった荒事に取り組む際のルーティーンだ。

 ジムも広さはあるからそれは文句はないけど……。

 

「青空の下で思いっきり振り回せるのは、気持ちいい!」

 

 消太との訓練以外ではいつも、朧な記憶の中から敵対者のイメージを呼び起こす。

 それを相手として仮想した動きで、薙刀を片手、両手と持ち替え、その手の中で滑らせながら、切っ先で突き、払い、引き切り、回転させて石突で打ち、時には地面に突き立ててそれを軸に蹴りを放つ。

 それは決して専門的な訓練を受けたような洗練されたものではないが、幾度もの命がけの戦いの中で磨かれてきた技は、記憶が封じられていてもなお熟達した武独特の圧を放つ。

 

 こうして走り、飛び跳ね、武器を振るっている間はどんな嫌な気持ちも消えてなくなる。

 

 公子とて、周囲の大人たちには感じ取られないように振る舞ってはいるが、自分が別の世界から来たと思われることや、大切な人や出来事の多くを記憶から手放してしまっていることに、不安や焦燥を感じていないわけではない。そういった気持ちは出しても意味がないものだから、出しても自身も周囲も辛くなるだけだから出さないだけだ。

 

(でも)

 

 今はそんなものは。

 

「どーでもいいー!!」

 

 盛大に繰り出す横薙ぎ、それからの切り上げ、そして両手で大きく万歳しながらの開放感あふれる咆哮。灰の中の空気が全部出し切られるまで、目いっぱい声を響かせる。ある程度の声量の加減はしているから、公園近くの住宅に聞こえたとしてもごく小さくだろうと期待する。

 

 そうして、吐き切った息を、今度はたっぷりと息を吸って、また吐く。

 大体1時間は動いたためか、十分に温まって薄っすらと汗を帯びた頬をぱたぱたと手であおぐ。

 

「あー、気持ちよかった」

「そうか、よかったな」

「うん!」

 

 うん?

 

 くるりと振り返ると、見覚えのある少年がいつの間にかそこに立っている。

 

「どちらさま?」

 

 見られてたのかとか聞かれてたとかは特に気にはならないが、とりあえず尋ねる。

 

「轟焦凍。あんたは?」

「私は相澤公子だよ。きみもトレーニング?」

 

 なんだか感情が読みにくい表情だったが、その轟くんは公子とその薙刀に興味を示しているようだ。

 

「ああ。なあ、あんたもヒーローを目指してるのか?」

「ん? あー、まあ、そうしようかなとは思ってるけど、どうして?」

「俺と手合わせしてくんねえか」

「聞いてる?」

 

 なんだかぐいぐい来る子だなあ。とは、公子の率直な感想。

 

「まあ……うん、いいよ」

 

 これが、これからだいぶ長い付き合いになる轟焦凍という少年と公子が初めてお互いを知ったときであり、公子のストレス等の問題が解消されるために重要な、ひとつの邂逅であった。 

*1
前話でも記述した消太のビックリ事案の発生はこれより後のことだが、そのときと比べれば非常につつましい反応であった

*2
ただし、社会科は除く。雄英教師直々に叩き込まれたとはいえ、ゼロからの習得ゆえに、さすがに手こずってしまうらしい。公子にとってはここ100余年の歴史も風俗も未知のものだったわけで、やむをえない

*3
ペルソナのせいでもある

*4
おおげさ




焦凍君のおうちは静岡県あたり。雄英高校は静岡県垢離里1-2だそうで(どこよ)。

またしても校正の時間が取れず修正入りそうです。こいついつも修正入れてますね。日々更新される既存部分の履歴日時よ。

評価とか頂戴すると舞い上がり文章が増える生き物です。
気が向いたときにでも感想とかもいただけるととてもうれしいです。

次回は、親御さんからのご挨拶です。

・2025/6/19:予告詐欺になりました。ご挨拶までいきませんでした。
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