【再稿】ペルソナ3でハム子のヒーローアカデミア!   作:Cran

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一瞬、焦凍くんがハム子さんの先輩になりかけましたけどそんなことはありませんでした(前話の前書き参照)。
気が付けばお気に入りが66件、評価件数が6件、あわせてナンバー666と獣数字です、ひゃっほう。

投稿前に確認したら、件数が増えており、獣が人間に戻りました。やったぁ。


2回目の中学生時代⑥~轟焦凍との友人付き合い・中編~

 公子に、この世界で初めて同年代の友人が生まれた。

 

 その日から、先だって消太に見せたような、だらついてカビが生えたような、それこそ山田が見れば即座に、「Hey, Kimiko. Hey, hey, hey, you're looking unusually down! What's the matter!?」*1などといった耳障りな鳴き声*2を上げること間違いなしなダウナー具合はさっぱりと消えてなくなった。

 

 それはもちろん、手軽にストレス発散ができるつながりができたからであり、また、同級生たちとは違って、なんとなく発生する気後れや隔たりのようなものがわいてこない相手ができたから、というのが主な原因だ。

 もちろん、消太を筆頭とした大人たちには割と気後れなどなく接することはできるのだが、訓練などの公子の都合に付きあってもらうといった部分では、どうしても「忙しいだろう」といった遠慮が出てきてしまうのが正直なところなのである。日常での相手の負担にならないであろう範囲での甘えというのはできているのだが。

 

 そこへいくと、あの表情の乏しい少年は訓練相手が欲しかったという点では完全に利害が一致しており遠慮をする必要などはなく、時間さえ取れれば体力の許す限りいくらでも立ち合い続けられるのは非常によろしかった。それに、やはり、ぽややんといった表現が似合う雰囲気になぜか親しみがわくこともあって、同級生たちに感じるようなネガティブな気持ちが出てこないのもある。

 それらに加えて、年季というよりは実戦の回数や密度の違いと、履いている下駄*3の問題もあってどうしても力量差の生じる公子から、少しでも何かを得ようと食らいつく、鬼気迫ったものさえ感じさせる焦凍の熱意は好ましいもので*4、公子としても気合が底上げされる、濃密な鍛錬になるといった点も大きい。

 総じて、焦凍との出会いは公子にとって、まったくもっていいところばかりのものであった。

 

 ちなみにであるが、轟焦凍と出会って短いながらも手合わせを行った初日などは、消太との訓練前でもないというのに家事をしながらの鼻歌や口笛などがやまない、塞いだ気持ちなど何もなさそうな公子の様子には、消太も安堵よりも困惑の気持ちの方が勝り心配してしまうほどであった。もっとも、そんな心配はそんなに自主訓練が楽しかったかという彼の問いに、ぱぁっとした笑顔とともに「うん! 訓練相手になってくれる友達もできたの!」という返事が戻ってくることで解消されるのだが。

 

 さて、そんな友達との訓練が終わり、恒例となった、例の木の根元に座り込んでお茶を飲みながら一息をつく時間。

 焦凍の希望で素手から切り替え、使っていた訓練用の薙刀の手入れをしながら、公子が口にするのは、今朝方に思いついて、この時間に話に出そうと思っていたことである。

 

「そういえば焦凍」

「どうした」

「今週末、お弁当持って昼までやろうっていってたじゃない」

「ああ、あと3日後か」

「でもね、予報を見たんだけど、ちょうど金曜日からしばらく結構な雨になるらしいんだよね」

「俺は見てねえが、そうなのか」

 

 おっと、こいつ少しがっかりしたな。

 と、まだともに過ごした時間は、数が多いわけでも期間が長いわけでもないながら、彼が表情の動きが乏しいだけで雰囲気のほうは割とわかりやすく、そちらに意識を割いてみているとなんとなく考えが読みやすいことに気が付いていた公子は、その感情の機微を的確に察知する。

 

「だから週末の予定キャンセルになっちゃうんだけど」

「そうなるな」

「あーっと……、少しじゃなくわりとがっかりしてるね?」

「まあな」

 

 別に意地悪じゃない、意地悪してないぞ、まだ続きがあるぞ、私。

 妙にわいてくる罪悪感を胸に抱くも、頑張ってわきに置いておく。

 

「それで、一応聞いてみるんだけど、もし可能そうだったらうちに来てみる? うちのマンションにジムがあるんだけど、これを振り回すこともできるくらい広いし、一緒に訓練できるよ」

 

 念のため、マンションの規約も消太への確認もしてある。

 

「いいのか?」

「うん。一応、土曜日か日曜日のどっちかだけならお父さんも付き合ってくれるみたいだから、個性もある程度は使っていいって。お父さんの個性なら何か制御ミスとかがあっても大体は止められるから」

「マジか……そいつは、いいな」

 

 あー、でも。と、見覚えのある期待をたたえた視線に少し焦り、急いで手を振る。

 

「ここからが問題でね、可能そうだったらって前置きした理由なんだけど。条件があって、そのね、親御さんの許可を取ってもらって来いって、ね?」

 

 いいづらそうに続けると、焦凍の顔にあからさまな影が下りた。漫画であれば、黒い縦線だとか靄とかが背後霊よろしくのしかかっているような絵がコマに描かれていただろう。

 

「クソ親父の許可か……」

「あはは……」

 

 苦悩といって差し支えない顔である。浮かべているのが美少年なので、一部のお姉さま方にはむしろご褒美になるかもしれないなどという埒もない考えが浮かぶ。

 

 出会った当初から焦凍は親との関係性の悪さをうかがわせていたが、それから、もう少し踏み込んだ話をされている。「いろいろ」あって、衣食住はともかく父親の世話には可能な限りなりたくないし、個性もそれ以外の訓練についても父親はやたらと指導をしたがるが絶対にその力は借りたくないのだそうだ。個性を使った訓練も少しはできるといった部分を公子がわざわざ提示したのも、余計な口出しをされるのが目に見えているから自宅にある訓練場は使いたくないし、間違っても公子を連れていきたくはないと焦凍が明言していたからである。

 

「さすがにね、家にあそびに来るだけならとやかくはいわないだろうけど、自宅マンションの施設を一緒に使っての訓練となると、そのあたりの筋は通さないといけないって」

「いや、まあわかる」

 

 外見でいろいろと勘違いされる消太だが、その中身は極めてまっとうで真面目で規律に対してストイックな大人である。公園で模擬戦のようなことをするのがオーケーなのは、子供同士で鍛錬ごっこのようなことを外でするのはよくあることで、その範疇だろうというやや微妙な線引きがあるらしい。当然、個性の使用は認められないが。

 

「嫌だが、やってみる」

「む、無理はしないでね」

「考えてみりゃ、友達の家にいったことなんてねぇし、俺もいってみたいからな」

「まあ、そんなご大層なものでもないけどね」

 

 そして、その日の夜。

 家事も宿題も終わってしまってはやることもないし、だらだらテレビを見るのも公子の性にはあわない。炬燵で仕事を再開している消太に、もうそろそろ片付ける時期だよなあと思いつつも、声をかける。

 

「じゃあ、私寝るね。おやすみなさーい」

「ああ、おやすみ」

「あんまり遅くなっちゃだめだよ?」

「わかってる」

 

 そんなことをいっても、ふと油断をすると日付をまたいで仕事をしてしまうのが自分の父親である。昨日もほぼ今日までやってたしなあ、と疑わし気な視線を向けてしまうのはやむをえない。

 

「わかってるわかってる、ほれ、とっとと寝ろ」

「はーい。おやすみ」

 

 部屋の扉を閉めてベッドに転がったところで、端末が振動を始める。

 

「あれ、珍しい」

 

 手を取ると、「ショート」の文字と盛り蕎麦の画像。轟焦凍からの着信だった。

 隣のリビングルームと共有したバルコニーに出つつ、電話に出る。

 

「もしもし、こんばんは」

「ああ、悪い、まだ寝てねえよな」

「もうそろそろ寝ようとは思ってたけど大丈夫だよ、どうしたの?」

「なあ……」

「うん」

「間違ってたら悪いんだが、公子の親父って、“イレイザーヘッド”で合ってるか?」

「ん? ああ、うん、そうだよ。そういえばいってなかったね」

「そうか……」

 

 合ってたか、マジか……。ぬおお、と呻きの副音声がつきそうな声だ。

 公子としては特にいう必要を感じていなかったし、何なら焦凍の父親のヒーロー名も知らない。はて、私の父親は彼のお父さんに何かしでかしたことでもあったのかしらと一抹の不安が出てくる。

 

「悪い……悪くて許可が出ねえってくらいしか思ってなかったんだが」

「うん?」

「クソ親父に週末の話をしたら、許可は出すけど自分も行くとか言い出しやがった……」

「は?」

 

 

 υ´• ﻌ •`υ

 

 

 焦凍が朝の鍛錬を終えて授業を受けて帰宅。ヒーローの業務で多忙な父親は当然ながら不在にしているため、顔を合わせる機会は非常に少ない。何時に帰ってくるかも、そもそも帰ってこないのかもわからない。むしろ帰ってこなきゃいいとさえ普段は思うところであるが、今回ばかりはそういうわけにもいかない。

 直接の連絡先も知らないし使いたくもないため事務所に伝言を頼もうと思っていたのだが、幸か不幸か今日は夕食時には帰ってくるということを姉の冬美に聞かされる。 

 

 まあ、ちょうどいいっちゃあちょうどいいが、夏兄が嫌がるな、とは思う。

 

 どのみち、あまり会話が弾まないのがこの家庭であり、兄の夏雄と冬美とでなされる会話が主。焦凍は何かを聞かれたら言葉少なく答えるといったのが通常だ。そして、そこに父親が来ると、会話は弾まないどころではなくなる。せいぜいが冬美が何かしらの会話が成立するように頑張るくらいで*5、夏雄は急ぐように食事を済ませてさっさと立ち去るし、雰囲気の重さといえば肩が凝りかねないほどだ。 

 

 なので、いざ父親である轟炎司を交えた夕食となったときに、

 

「おい、親父」

 

 と、食事開始から早々に、皿に視線を下ろしたまま焦凍が声を発したときには、炎司は眉を寄せて焦凍を見、夏雄は目を開けて焦凍を見、冬美は口元に手を当てて焦凍を見、という傍目には少し愉快に見える光景が展開されることになった。珍事である。

 

「なんだ、焦凍」

 

 内心は「珍しく焦凍から話しかけてきた!」という浮き足立ったものであることはおくびにも出さない。「中学校が始まって何か悩みでもできたか」とか「小遣いが足りんわけでもなかろうし」とか思考を走らせている。なお、悩みはともかく小遣いに関しては一介の中学1年生に使いきれる限度額ではない電子マネーを渡しており、全くの的外れな思索である。

 

「最近、一緒に訓練してる友達がいる。週末、そいつの家のジムで一緒に訓練するから、許可寄越せ」

 

 稲妻が走る。

 

――友達!?

――一緒に訓練!? 焦凍が!?

――友達の家!? 友達の家に行く!?

 

 走った稲妻に打たれ、枝葉は違えど三者三様に同じような驚愕に見舞われる。

 

「……友達の名前は?」

 

 許可を出すなら名前は教えてなければならないだろう。教えたくはないが教えざるを得ない。

 

「公子っつーんだ」

 

――友達って、女の子!? しかも名前呼び!?

――女の子と一緒に訓練!? 焦凍が!?

――いや待て、子が付いていても男子の可能性もある!!

 

「そうか。……だが、訓練なら、家の訓練場を使えばいいだろう」

 

 少し沈黙したが表情を変えないまま落ち着いて返答する父親の姿に、夏雄は少しばかり尊敬の念を覚えたかもしれない。そうだとしても、ほんの少しだけだが。

 

「絶対にてめぇが来るから断る」

「その友人も個性を使って構わんぞ」

「そいつの家でも使っていいっていってもらってるから、いらねえ」

「ふん、お前の個性は強力すぎる。仮にお前が力を暴走させたらどうする、ヒーローの監督でもなければ許可はできん」

 

 まっとうなことをいっているように見えるが、本音はそれだけじゃない*6だろうということを冬美の明晰な頭脳と残っている冷静な判断力が主張するが、言葉には出さない。

 焦凍は苛立たし気に炎司をねめつける。

 

「そいつの親父もヒーローで、個性柄、暴走も止められるんだってよ。お前の出る幕じゃねえ」

「……そういえば、許可を出すにも名前は聞いておらんが、なんという?」

 

 それはそのとおりなので、あまりいいたくはないが、口に出す。

 

「ヒーロー名は聞いてねえが、友達の苗字は相澤だから、同じなんじゃねえか」

「相澤……個性の対処、まさか“イレイザーヘッド”か?」

 

 ヒーロー同士なら知り合いでもおかしくはないなと、父親の反応に焦凍は思う。だが、炎司の反応はもう少し違うものであった。

 

「奴に子供がいたとは知らなかったが、まあいい。確かに奴なら暴走を止めることはできるだろう。だが、ちょうどいい。知らん顔でもない、許可は出すが俺も行かせてもらうぞ」

 

 そういうことになった。

 

 

 υ´• ﻌ •`υ

 

 

「は?」

 

 何やらバルコニーで電話をしていた公子が寝室から出てきて、やおら「なんか、エンデヴァーが会いに来るって」といわれたときの消太の顔は、焦凍に炎司の来訪を告げられた時の反応とそっくりだったという。

 

 エンデヴァーが焦凍の父親だということを含めた彼の紹介と事情説明をすると、消太は額に手を当てて頭痛をこらえるような格好をする。

 

『すみません……、止められませんでした』

 

 スピーカー設定にされたつながりっぱなしの端末が、消太の目の前に置かれている。

 

「いや、その気になったあのひとを止められるのはオールマイトぐらいだろうし、そいつは仕方ないが……なんでまた、わざわざうちに来るんだ?」

 

 そもそも、公子が親しくしていた友人がエンデヴァーの息子という時点から衝撃的だったのだが、よい意味でも悪い意味でも非常に熱い漢のご家庭訪問などは消太の想像の限界を超えている。

 

『イレイザーヘッドなら俺の個性も抑えられるのは信用してやってもいいが、本業が教師になってから腕がなまっている懸念もあるとかいってますが、本音は俺の訓練に口出ししたいからだと思います』

「くっそ、あのクソ親父、クソ忙しいだろうにそんな暇あんのか」

「お父さんステイ、見たことないくらいに口悪くなってる」

 

 両手で落ち着け落ち着けのポーズ。

 消太はため息をついて、観念した。エンデヴァーがそうすると決定したのなら、多少の無理は意に介さずに実行するだろう。ヒーロー同士という仕事での関係だけならともかく、付き合いのある子供同士とその保護者という間柄とあっては粗略にできない。

 

「まあ、わかった。事前に話はしておいた方がいいだろうし、エンデヴァーさんの都合がいい時にでも電話を」

『親父は今、俺の部屋の外で待機しています』

「……そうか……」

 

 ハァ……、と再度のため息。

 

「焦凍のお父さん、この会話も聞き耳立てたりしてそうなイメージになってきたんだけど……」

『あながち間違っちゃいねえよ。最初はこの電話にも入ろうとして来やがった』

 

 焦凍の声の先から、終わったか焦凍ォ、とか聞こえる。

 

「わかった。焦凍くん、替わってくれ」

 

 …………。

 …………。

 

 少し間があり、公子が聞くのは低く太く威厳のある男性の声だ。

 

『もしもし』

 

 あまりにも似合わない、いい慣れていなさそうな言葉だった。

 消太は速やかにスピーカーモードを切ろうかと思ったが、なんだか面倒くさくなったのでそのままにした。

 

「はい、相澤消太です。そちらは轟焦凍くんのお父さまですね」

『嫌がらせか何かか? イレイザーヘッド』

「今はヒーローじゃなくって親同士の立場での会話ですのでね」

 

 本音であり建前でもあり、実は嫌がらせの気持ちもある。

 

『まあいい、久しいな。こうした形で会話をする日が来るとは思ってもみなかったが』

「そいつはお互いさまですね。それで、週末にいらっしゃるそうで」

『ああ、公子といったな、お前の娘とやらも見ておきたい』

 

 だそうだとばかりに消太が横目で見ると、うえぇぇ、とでもいいそうな顔をする公子。

 

「まあ、お手柔らかにお願いします。時間は別途、こちらの予定を娘から焦凍君に送らせますので、都合のいい時間ですり合わせておいてください」

『わかった』

 

 ………。

 

「?」

 

 消太と公子と2人で沈黙した端末を覗くと、待ち受け画像に変わる。

 

「あのクソ親父、あれで切りやがった」

「焦凍に戻すんじゃないんだ……」

 

 ほどなく、焦凍から改めて着信があって詫びられ、ひとまずその場は終わりとなった。

 

 そんな、轟炎司との、保護者としての消太の初接触であった。

*1
「よお、公子。おいおいおい、どうしたよ、珍しく元気がねーじゃねえか、どーしたぁ!?」

*2
ひどい

*3
ペルソナ

*4
仮面の女性「好み!」

*5
それも大体において徒労に終わる

*6
無理強いでも個性強化の訓練をさせてくれなくなった焦凍の面倒を見られる機会を逃したくないしもっと構いたい、その女の子と思われる友達の確認もしたい




挨拶といっても、エンデヴァーのあいさつが巷のご家庭の保護者同士になるわけがないんですよね。
というわけで公子が接点となって、エンデヴァー周りの関係性も原作よりも変化することとなりました。

今話、途中で何度も消太くんと焦凍君が存在を入れ替えまくって難儀しました。AとOが入れ替わるだけで時空がゆがみます。

次回は今話よりも短めの(はず)後編、両家の対面です。
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