この素晴らしい世界に"元"呪いの王を! 作:蠅頭
次があれば生き方を変えてみるのもいいかもしれない。
そうして呪いの王、両面宿儺は
はて、と宿儺は首を傾げた。
自身は既に死者。なのに意識が連続してある。
「ふむ……」
視線を少し下に向ければそこには変わらずある己の肉体。
顔の右側は歪に歪んだ骨が露出し、眼球が瞼も無く着いている。更には目は二つあり、左側にも二つある為合計四つも付いている。
腕もまた四つも。脇の下からもう一対腕が生えており、腹には口が付いている。更には全身に刺青が入っている。
身長は約二メートル程もある正しく異形と呼べる姿。ズボンと靴を履き、上半身は裸の半裸の姿。
呪いの王、両面宿儺の姿である。
「YOU DIED! 」
声がした。奇妙な声だ。男でも女でも、しわがれた老人にも幼子にも思える声だ。
声がした方に宿儺は顔を向ける。
其処にいたのは男であった。だが、奇妙な男だ。
外見は若いが、白髪を蓄えている。身長は百七十五センチ程だろう。
紫色の執事服を着ている姿は異様としか言いようがない。
「なんだ、貴様は」
宿儺は男にそう問いかけた。
「神、あるいは全知、あるいは一。あるいはゼロ。そういう存在だよ、呪いの王様」
「そうか。死ね」
宿儺は問答する気はないと宿儺の生得術式である御廚子を使い解を放つ。
綺麗に男の首に当たり、男の首が地面に落ちた。
「酷いじゃない宿儺ちゃん! 人の首斬り落とすなんて!」
斬り落とされた男の首が嘆いた。
「……何者だ、貴様。よく見れば呪力が一切ないな」
鬼人禪院真希の様に男からは一切の呪力を感じ取る事は出来なかった。
「言ったでしょう? ぼくちん神だって」
男はそう言いながら体を動かし、落ちた首を拾いくっ付ける。
「ふん……一応は納得してやろう。で、その自称神が俺に何の用だ」
「ちょっとした提案だよ。宿儺君。君、転生に興味はない?」
「……どういう意味だ?」
宿儺は考える。自身は何もしなくとも来世に向かう所だった。今更転生と言われてもいまする所だったが、としか思えない。
「ちなみにラノベ系の転生ね。異世界転生のお時間だよ!」
「異世界……ああ、なるほど。俺がそれに該当するのか?」
宿儺は器になった者の知識を汲み取る事が出来る。
その知識ではテレビで流行った作品があり、主人公が異世界に転生する作品もある。その為多少は知識があるといって良いだろう。正しCMで見た程度の知識だが。
「そう。君には今選択肢がある。呪いの王としてこのまま呪いとして終わるか。人に戻り、人の為に生きる生者両面宿儺になるか。どちらがいい?」
「……俺は呪いとして終わった身だ。今更次など……」
宿儺ははぁ、と溜息を吐いた。
既に虎杖悠仁に敗れた身だ。未練がましく足掻く気など無い。
「良いのかい? それだと君の子……裏梅君が地獄に落ちちゃうよ?」
「なんだと?」
「君の自認は呪いだ。だから呪いとして君は終わるだろう。だけど裏梅は人だ。だから人として地獄に落ちなければならない……君とは違ってね」
「俺が受け入れたら変わるとでも?」
「変わるというより変えるだね。君が転生したってあの子に伝えれば自分も行くと言うだろう。そうなれば君は異世界で裏梅ちゃんと合流できるという訳だ」
「なるほどな……」
両面宿儺は考える。このままどうするか、と。
自分が変わった切っ掛けの子。何をどうするか。
呪いとして終わるか、人に戻るか。
"次があれば生き方を変えてみるのもいいかもしれない"
「……いいだろう。俺にその転生とやらをしてみるがいい」
「良く言った呪いの王! 君を称賛しよう!」
ごほん、と男はワザとらしく咳ばらいをした。
「その世界は、魔王軍の脅威に晒されていた!」
男は仰々しく、演説のように語り始めた。
「日夜増え続けるモンスター、魔に属する者全てに支援を送れる魔王! そして魔王配下の八人の大幹部! デュラハンに地獄の公爵たる大悪魔にキメラにスライム! その世界は魔王軍の脅威に晒され続けている!」
「はぁ」
宿儺は冷めた反応を返す。
「だが人類も負けてはいない! 異世界から来た勇者達! チートと呼ばれる固有の能力や武器を手に魔王軍と戦い続ける! その世界の王族と子を成しより強い子を作り戦場へと送る! 世はまさに大戦国時代!」
ご清聴ありがとうございます、と男は優雅に礼をした。その姿に宿儺は斬り刻みたくなったが我慢した。
「で、俺がその世界に送られる、と」
「いくざくとりー。因みにちんもろ転生特典のチートはあるよ」
「……ふむ。俺は何を持って転生させられる?」
「事前特典としてその世界で一週間は生活できる資金。その世界の言語一式。生前君が得た能力、だね。具体的には呪物化する前の君の状態で御廚子と十種影法術が使える状態だね。呪力とかは異世界側に合わせて魔力にコンバートされるけど、まぁ能力の使い方は感覚で分かると思うよ」
「そうか……」
ふむ、と宿儺は考える。何を貰うべきか、と。
他者から施されるのは趣味ではない。
「……何も要らんな。さっき言ったそれだけで充分だ」
「あらそう。じゃあそうするね」
男が指を鳴らすと宿儺の足元に白く輝く魔法陣が出現する。
ぐるぐると回転しだし、僅かに発光していく。
「じゃあね。呪いの王──いや"元"呪いの王様。異世界でも元気で!」
男がそう言い切ると、宿儺の視界は白に塗りつぶされた。
■
「ここが異世界か」
宿儺は目を開けた先は草原だった。
何も無い草原、丘である。平安の世で腐るほど見て来た平野だ。
太陽が昇っている昼間、もしくは朝を少し過ぎた時刻に宿儺は草原に立っていた。
服装は死ぬ前と同じだが、腰には西洋風の革のバッグが付いている。
「ふむ……」
宿儺は腕をぐーぱーと開き体の感覚を掴む。
(呪力ではない別の何かが流れてるな。だが使い方は呪力と同じか)
宿儺は軽くジャンプし、空気の面を捉え空を蹴って跳んでみる。
(ふむ。空気の面があるのも同じか)
確認が終わった宿儺はそのまま空を蹴って跳んで周る。
(あれは……人か)
人を見つけた宿儺は少し離れた位置に着地する。
三人程の集団だ。男一人に女二人である。
「さて、どうするか」
殺して奪い取りに行くか。無視して進むか。
生前の宿儺ならばそのどちらかを取っただろう。
「む」
すこし悩んでいる間に状況は動く。
帽子を被った少女が杖を向けると巨大なカエルに向かって大爆発を起こしたのだ。
文字通り巨大なカエルだ。最低でも三メートルはあるだろう。
「凄まじいな」
単純な威力ならば五条悟の赫を上回るかもしれない。赫以上茈以下といったところだ。
実際は宿儺が知らない情報としてどんな存在にもダメージを与えれるという特性がある為五条悟の技以上の火力があるが。
爆発音によって地中から巨大なカエル達が顔を出して行く。
(あれがモンスターという奴か?)
カエル達から宿儺は呪力とはまた違うエネルギー、推定魔力が流れている。当然人にも流れているのが遠くても見てわかる。
(まぁ、あれだけの爆発を起こせるなら問題なく対処できるだろう──)
そう思って宿儺は爆発を起こした少女に視線を向ける。
其処には魔力を無くし倒れる少女が居た。
(は? 今の一撃で呪力……魔力切れを起こしたのか?)
なんて使い勝手の悪い術式持っているんだ。そして何故使ったと宿儺は疑問を抱いた。
まぁ周囲にいる他の奴らがどうにかするだろう。そう思って静観していると青い髪の女がカエルに向かって殴りかかってそのまま食われた。
あんまりにもあんまりな惨状に宿儺は無視して別のとこ行こうかと考えるが異世界に来て初の人間。情報を得るためには状況が良い、と宿儺は溜息と共に向かうのだった。
■
「食われてんじゃねぇー!」
少年、佐藤カズマは叫びと共に巨大なカエル──ジャイアントトードというモンスターに向かって斬りかかった。
何とか少女、めぐみんという名前の少女を食ったジャイアントトードの腹に傷を与えていく。
「苦戦しているな」
其処に声をかける者がいた。
「あ、冒険者の方ですか! ちょっときょうりょ──うひゃぁぁぁ!」
其処に居たのは正しく魔族、という外見の男だった。
身長は二メートル程。ピンク色の髪をしている。それだけならば単なる巨漢だろう。
だが男の顔には目が四つ付いている。更には顔の右半分は骨が露出し異形の風貌となっている。
更には脇のしたから腕がもう一対生えており合計四つの腕を持っている。更には腹に口が付いている。
逆に魔族じゃ無いなら何なんだ、と問いかけたくなる外見である。
「解」
男──宿儺はジャイアントトードに何かしらの魔法──術式──を当て斬り裂く。
ジャイアントトードは綺麗に縦に斬られ、崩れ落ちる。
「ぐへ」
そして胃の中に居た少女、赤い服を着ていた黒髪赤目の美少女、めぐみんが臓物に塗れる。
「どなたか知りませんが助けるならもっと綺麗に助けてほしかったです……」
「すまんな。以後気を付けよう」
「そうしていただけ……」
めぐみんは顔を上げ、自らを助けた者の姿を見る。
「どうした?」
宿儺はめぐみんに問いかける。答えは分かっているんだがな、と半ば嘲笑しながら。
「カッコいい……」
「「は?」」
宿儺とカズマの声が重なった。
「なんですかその姿! カッコいいったらありゃしないじゃないですか! 目が四つに腕も四つ! シンクロしてます!」
「そ、そうか」
異形の姿故恐れられることは成れていても褒められることは余りなかった宿儺は困惑しながらも称賛を受け入れる。
「馬鹿何言ってんだよ! どう見てもモンスターとか魔王軍とかそう言う類じゃねぇか! 直ぐ逃げないとまずいだろ!」
カズマはそう叫びながらめぐみんの元に走りよる。
「はー! カズマの方こそわかってないですね! このようにカッコいい方が魔王軍な訳じゃないないですか! 会っても異形ゆえ差別されたとかの悲しい過去をお持ちの正義の味方ですよ!」
「なわけあるかい!」
「そういう訳なんだがな」
「はい?!」
「俺は魔族じゃないしモンスターでもない。風貌こそ異形だがれっきとした人間だ。というかもう一人の仲間が食われたままだがいいのか?」
宿儺の言葉にカズマとめぐみんは仲間であるアクアが食われたままであることを思い出す。
「そうだった! あんなのでも助けないと!」
「俺が助けてやろう」
宿儺は足元で魔力による爆発を起こし超高速移動。アクアを食べたジャイアントトードに急接近する。
そのまま腹に魔力を込めてパンチ。ジャイアントトードを吹き飛ばす。
するとジャイアントトードが口を開け、中から青い髪の女が吐き出される。
「ぐへ!」
顔面から地面に着地したアクアは情けない声を漏らす。
「ちょっとカズマさん! もっと優しく助けて……あんた誰?」
アクアは顔を上げ、宿儺の顔を見るときょとんとした顔で問いかける。
「俺は……宿儺だ。何者かというと、まぁ……なんだ? 旅人という奴だ」
「旅人? てことは冒険者なのね!」
「冒険者?」
宿儺は聞きなれる職業に疑問を浮かべる。
よいしょっと、アクアは涎塗れの体で立ち上がる。
「知らないの? 冒険者ってのはモンスターを倒す職業よ! そして私は冒険者の中でもアークプリーストを生業とする上級職様よ!」
ふふん、とアクアは鼻を鳴らし自慢する。
「プリースト……聖職者か」
伏黒恵の記憶からプリーストという単語を引っ張り出し、該当する職業を言い当てる。
「ま、私の正体は女神アクアなんだけどね」
「女神だと?」
ふむ、と宿儺はアクアを注視してみる。
よく見れば魔力以外に妙なエネルギーがアクアの体内を巡っているのが見てわかった。
「あー、こいつのいう事は話半分で聞いてください。だいたい嘘なんで」
カズマはまた言ってる、という顔で溜息をつく。
「ちょっとクソニート! あんたは私の正体知ってるでしょうが!」
「うっせぇな! 殆ど信じられねぇだろ!」
アクアとカズマが言い争いになりかけた時、めぐみんが口を開く。
「あのー、体がべとべとなのでお風呂に入りたいです。連れてってはくれないでしょうか?」
「あ、ああ。ジャイアントトードも合計五体倒したし、いいぞ……えーと、宿儺さん、はどうします?」
「俺も近くの街まで行きたいが……この姿だからな」
さて、と宿儺は考える。
この格好で人の街に行けばまず間違いなく騒ぎになるだろう。
そしてそのまま敵、モンスターとして討伐対象になるに違いない。平安の世ではこの外見故敵と見される事が多かった。
「何言ってるの? 貴方は悪魔でもアンデッドでも無いんだから堂々といけばいいじゃない」
アクアがきょとんとした顔でそう言い放つ。
「いや、お前なぁ……」
カズマがえぇ、という顔でアクアに訴えかける。
「私の曇りなき
(良き人間? 俺が?)
はっ、と宿儺は内心鼻で笑う。
虐殺をこれでもかとしてきた己が良い人間であるはずがない。宿儺は自嘲する。
「ま、このまま行ってみよう。何かあれば、まぁその時どうにかするとしよう」
「あっと、自己紹介がまだでした、俺は佐藤カズマです」
「佐藤……なるほど。俺はさっきも名乗ったが宿儺だ」
宿儺はカズマの佐藤という名乗りに自身と同じく日本から来た転生者であるとあたりを付ける。
「我が名はめぐみん!アークウィザードにして爆裂魔法を操りし者!」
めぐみんが倒れ伏したまま名乗りをあげる。その様は少々シュールである。
「私はさっき言った通りアークプリーストのアクア。だけどそれ世を忍ぶ仮の姿。そう、本当の私は女神アクアなのです……!」
「そうか」
アクアの女神の名乗りに宿儺は軽く返す。
「ま、取りあえず街に行きましょうか」
カズマはそう提案し、一同断る理由もないので最寄りの街、アクセルに向かう事になったのだった。
かくして、宿儺の旅が始まる。
気が向いたら更新のスタイルなので不定期更新です
こっちは一期分は最低でもやります