この素晴らしい世界に"元"呪いの王を!   作:蠅頭

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第2話

 

 宿儺はカズマ、めぐみん、アクアと共に街に向かう。

 因みにめぐみんは魔力切れで動けないのでカズマに背負われている。

 向かうのはアクセルという駆け出し冒険者の街である。その街には低レベルの冒険者が多数在籍しているという。

 宿儺がカズマやめぐみん等から聞いた話では冒険者には様々なクラスというものがあるらしい。

 

 どんなスキルでも習得できるが本職には及ばない冒険者。

 多数の魔法を使いこなし、高火力のアタッカーであるアークウィザード。

 どんな攻撃にも耐えうるタンク、クルセイダー。

 どんな傷でも癒し、味方に支援……バフを行い、アンデッドや悪魔には滅法強いアークプリースト。

 多数の職業の存在を宿儺は聞き取った。

 

 そして冒険者とはモンスターを倒す事で生計を立てる者達の事を差す。

 モンスターという絶対的な人類の害を倒す事や、ジャイアントトードという倒せば食肉となるモンスター等を倒す事で冒険者ギルドから報酬が出、それを糧とする者達だ。

 

 さて、自分は受けいれられるのだろうか、と宿儺は疑問を抱きながら街へと歩く。

 

 最悪、逃げ出して適当な砦でも奪って生きて行けばいいか、と宿儺は軽く考えながら歩いていると直ぐに街、アクセルに辿り着いた。

 

「デカいな」

 

 アクセルの街には城壁があり、街をぐるりと囲っている。

 宿儺はこういった街に行くのは初めてではないが、何しろ壁が高い。

 平安の世にも壁に囲われた街というのはあるが精々が一、二メートル程度の壁だ。十何メートルとある壁に覆われた街は始めてみる。

 

 四人は門に向かい、中に入る。

 

「ちょ、ちょっと待て! 其処のお前!」

 

 そうするとやはりというべきか、声をかけられる。

 軽装鎧を纏った男だ。手には槍を持っている。

 

「どうした?」

 

 宿儺が何でもない事のように男に返す。

 

「どうしたって、お前、モンスター、魔族だろ! この街に何の用だ!」

 

 男は槍を構える。

 それに待ったをかけるのは佐藤カズマだ。

 

「待ってください! この人はモンスターではないです、人間です!」

 

 カズマが訴えかける。

 

「な、なんだと?」

 

 男はそうなのか? と宿儺はまじまじと見る。そのことに宿儺は不快感を感じるが抑える。

 

「……いや、騙されんぞ! 魅了の術でも使っているんじゃないか!」

 

「あら、この私も居るのにそんな術は通じないわよ!」

 

 アクアが冒険者カードを手に男に近づく。

 

「あんたは……アークプリースト?! じゃ、じゃあ本当に?」

「えぇ。彼が人間であることはこの女神アクアが保証するわ!」

「め、女神アクア?! あのアクシズ教の?!」

 

 うわぁ! という目で男は臆し一方後ろに下がった。

 女神であるというのを信じた訳ではない。女神アクアの名に臆したのだ。

 

「ほ、本当に人間なんだな?」

「くどい。俺は人間だ」

 

 元呪いだが。と宿儺は隠す。

 

「そうか……よし。すこし待ってろ。いいな、ここで待ってるんだぞ!」

 

 男はそう言うと小走りに去ってしまう。

 

「どうする?」

「用があるのは俺だろう。お前達は先に行っていて構わんぞ」

 

 宿儺の言葉にそうね、とアクアは去ろうとしてしまう。

 それに待ったをかけたのはカズマだ。

 

「いや、乗りかかった舟だ。最後まで付き合うよ」

「そうか……」

 

 そうして待つ事五分。男は複数の衛兵を連れて戻って来た。その手にはコングにも似たベルがある。

 

 衛兵たちは宿儺を見るなり「本当にいた」「魔族じゃないのか?」等と疑問を口にする。

 

「さて、これは知っているだろうが嘘を感知する魔道具だ」

「そんなものがあるのか」

 

 珍しい呪具──道具だと宿儺は感心する。

 

「知らないのか? 嘘を言えばベルが鳴る。試してみろ」

「ふむ……俺は女だ」

 

 チーン、とベルが鳴った。

 

「成るほど。事実のようだ」

「よし。なら問いかけるぞ。お前は魔族か?」

「魔族ではない」

 

 ベルは鳴らなかった。

 

「じゃあ、魔王軍に関わりはあるのか?」

「無いな。魔王軍等露ほども知らない」

 

 ベルはまたも鳴らない。

 

「……人を害そうとする気はあるか?」

「無い。今の俺に人を進んで殺そうという意思はない」

 

 ベルは鳴らなかった。

 

「……どうやら本当に人間らしいな」

「言っただろう? 俺は人間だと」

 

 当然のようにベルは鳴らない。

 

「えーと、じゃあ、街に入ってもよし!」

「そうか、感謝する」

 

 宿儺は颯爽と街に入ろうとする。

 

「いや、いいのか?」「いいんじゃないか? 彼を拒絶するってことは……ほら、あの店もどうにかしないといけなくなるし……」

 

 等という衛兵達の会話を聞き流しながら。

 

 

 

 

 宿儺達四人が街に入るとやはり注目を受けた。

 宿儺が単に異形の風貌であり視線を集めるのと、美少女二人がぬるぬるになっているからだ。因みに視線の集まり具合はアクアとめぐみんの方が多い。

 

「取りあえず俺は冒険者として登録したいと思うんだが」

「そうするといいと思うぜ。道はここを真っすぐ行って──」

 

 カズマは宿儺に冒険者ギルドまでの道を説明する。

 

「しかし、めぐみん。爆裂魔法は強力だが、次からは別の魔法を使ってくれよな」

 

 カズマがふと話題を切り出した。

 

「使えません」

「なんだって?」

「私は爆裂魔法以外の魔法を使えないのです」

「なん……だと……」

 

 カズマが絶望した様な表情を浮かべる。

 

「ふむ。その爆裂魔法とやらの威力を低下させじゅ……魔力消費を抑え放つ等は出来ないのか?」

 

 宿儺がそう問いかける。

 

「出来ませんししたくありません! 爆裂魔法は全てを破壊する究極の魔法! 意図的に威力を下げるなどやってはなりません!」

 

 くわっ! とめぐみんはカズマに背負われたまま強く主張する。

 

「そうかー、それは残念だな。じゃあ今回はご縁が無かったという事で…………」

「いえいえいえいえ! 私はまだピッチピチの十四歳の美少女! ここは将来性を見込んでどうでしょう!」

「いやいや俺には君のような強大な魔法使いは荷が重いかなって! ほかにもっといい所が見つかると思うようん!」

「いえ! 私の魔眼が告げている! あなたの所以外無いと!」

「魔眼は嘘とか言ってたじゃねぇかこんな不良債権要らねぇからな俺は!」

 

「何をそんなにごちゃごちゃ言っている。別に受けいれてやればいいではないか」

 

 宿儺はそう言い合う二人に告げる。

 

「「え」」

 

 二人の声が重なった。

 

「一日に一回しか魔法を使えないなど大した欠点ではあるまい。それにあの威力、強敵用としておけば使い道もあろう」

 

「それは……そうかもしれないが……」

 

 カズマはうーんとうねる。

 

「ナイス援護です宿儺さん! それにいいんですかカズマ! 貴方が捨てるというのなら大声で叫びますよ! この男は人をぬるぬるにしたうえで捨てる鬼畜外道だと!」

「おいそれはなしだろつうか既に叫んでるじゃねぇか!」

 

 めぐみんの声に釣られ、周囲の人のカズマを見る目がゴミを見る様な目に変わっていく。

 

「えーいちくしょう! 分かったよパーティメンバーにしてやるよ!」

「ひゃっはー! ありがとうございます!」

 

 かくしてカズマとアクアのパーティに紅魔族の少女が加わるのだった。

 

 

 

「じゃあ俺はここで。こいつら風呂にぶち込んでからギルドに行くわ」

「まぁ、そのままいけば捕まりかねんからな」

 

 宿儺は納得する。

 

「ではなカズマ、また会う事もあるだろう」

 

 宿儺はそう言い残し、一人冒険者ギルドに向かう。

 

(この視線……鏖殺したくなるな)

 

 まぁしないんだが、と一人考えながらギルドを見つける。

 宿儺の想定よりは大きい建物だ。木造の一階建ての建物である。

 ドアは無く、門が解放されている中に宿儺は入って行く。

 

 中に入ると案の定、宿儺は視線を集めた。

 面倒だな、という思いと皆殺しにしてやろうかという思考が生まれるも直ぐにかき消す。

 

「宿儺様!」

 

 そこに声を出して宿儺に近づく者が居た。

 この世界では自身以外に見た事が無い和服を来た女だ。白い髪に一部赤く染まった髪を持っている。

 華奢な体を持つ美少女は宿儺が良く知る少女だ。

 

「裏梅か!」

「おひさしゅうぶりです。宿儺様」

 

 裏梅は片膝を付いて宿儺の前に平伏する。

 

「良い、立ち上がれ。視線を集めるだろう」

「はっ……宿儺様は何をしにここに?」

「俺は冒険者として登録しに来たのだ」

 

 宿儺は他の人間にも聞こえるように大声で話す。

 

 その声に他の冒険者達がざわつく。

 

「本当か? あいつモンスターじゃないのか?」「いや、裏梅ちゃんと知り合いっぽいし人間じゃないのか?」「あんな外見の人間がいるか?」「裏梅ちゃん可愛い結婚して」「殺すぞ」

 

 声には宿儺に関して疑いを持つ声が多いが、今すぐに襲ってやろうという声は無かった。

 

「畏まりました。受付はあちらになります」

「そうか」

 

 宿儺は裏梅を連れて受付の方に歩く。

 受付は複数あり、何故か一つだけ列が出来ている。

 宿儺は列に並ぶ気はないので開いている受付に行き、声をかける。

 

「冒険者として登録したいのだが」

 

 宿儺の声と外見に受付嬢は驚愕と恐れに顔を染めながらなんとか対応する。

 

「は、はい。登録料千エリスになります」

 

 エリスというのはこの国の国教の神であると同時に通貨の名である。

 だいたい一エリスイコール一円である。

 

「ここは私が」

 

 宿儺が神から貰った鞄から出そうかとした時裏梅が懐から財布を出す。

 断る理由もないため宿儺は裏梅に出させる。千エリス紙幣を裏梅が受付嬢に支払った。

 

「はい。確かに頂きました。ではこちらの魔道具に触れてください」

 

 受付嬢が水晶玉にも似た魔道具を受付から差し出す。

 宿儺は大人しく水晶に触れる。

 すると水晶は輝き出す。

 

「これは……凄いですよ! 圧倒的な高ステータス……これなら王都……いえ、最前線でも活躍できる程です!」

「そうか」

 

 この世界の王都とやらは危険なのだろうかと宿儺は場違いな感想を抱く。

 

「どうしますか? 職業はアークウィザードにエレメンタリスト、クルセイダー等上級職に最初から就けますよ!」

「ふむ……」

 

 宿儺はどの職業に就くか考える。

 

(ふむ……冒険者に成りたいが……クラス補正が無いのがな……よし)

 

「アークウィザードで頼む」

「畏まりました」

 

 宿儺はアークウィザードで登録し、冒険者カードを受け取る。

 其処には両面宿儺と異世界語で書かれていた。

 

「では冒険者ギルド一同、両面宿儺さんの活躍を祈っています!」

 

 

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