この素晴らしい世界に"元"呪いの王を!   作:蠅頭

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第4話

 

「うわぁぁぁん! カズマさんのクズマさん! 少しぐらいくれたっていいじゃない!」

「うっせー! 最初に一人ずつにしようって言ったのはお前だろうが!」

 

 宿儺は冒険者ギルドに入るなり聞こえて来た声にはぁ、とため息を吐く。

 佐藤カズマと自称女神アクアの言い争いはもはや冒険者ギルドの風物詩のようになってきている。

 

「黙らせますか?」

 

 裏梅がしかめっ面で物騒な事を言う。

 

「そこまでせんでよかろう。クエストを探すぞ」

「はっ」

 

 宿儺は裏梅を連れてクエストボードの前に行き、何かいいクエストが無いか探す。

 

「これは……高レベルのクエストしかありませんね」

「確かにな。何かあったのか?」

 

 宿儺がクエストボードを見ていると其処にあるのは高レベル向けの依頼ばかりだ。何時もあるジャイアントトード討伐の依頼すらない。

 

「受付に聞いてみるか」

 

 宿儺はそう言うと受付に移動する。

 

「あ、宿儺さん。どうされましたか?」

 

 そう返すのは受付嬢のルナだ。金髪碧眼の優れた容姿をしている。

 

「クエストを見たんだが高レベル向けの物しかなくてな。何か理由でもあるのか?」

「実は、近くの廃城に魔王軍の幹部が来たんです。それで周囲のモンスターが恐れて活動を停止したり、逃げ出したりしちゃって、クエストが無くなっちゃったんですよ」

「なるほどな。魔王軍幹部か……」

 

 面白いのが来たな、とニヤリと宿儺は笑った。

 

 

 ■

 

 宿儺と裏梅は廃城近くの森に来ていた。

 崖の上に建てられた廃城を見上げる位置に二人は居る。

 

「さて、このまま魔王軍の幹部とやらを倒すぞ──」

 

 宿儺がそう言った時、突如として廃城が爆発した。

 轟音が響き、熱波が生じる。

 巨大な黒煙を上げ、城が揺れる。

 だが頑丈なのか、罅一つ城には入っていない。

 

「……何が起こったのでしょうか」

「……これは恐らく爆裂魔法だな。とすると……めぐみんか? ふむ。周囲を見て見るか」

 

 宿儺は鵺の掌印をし、飛行能力を獲得して空に飛びあがる。

 滞空し、視力を強化し廃城周辺を見る。

 廃城からずれた森の中の道にはカズマに背負われるめぐみんの姿があった。

 

「くくっ。魔王軍幹部が居る城に爆裂魔法を放つか……流石は紅魔族だな」

 

 宿儺は笑うと裏梅の元に飛んでいく。

 

「帰るぞ、裏梅。他人の獲物を横取りする気はない」

「そうですか……わかりました」

 

 宿儺と裏梅は大人しく、冒険者ギルドに帰って行った。

 

 

 ■

 

 それから数日が経ち、宿儺はまたしても冒険者ギルドで酒を飲んでいた。

 飲んでいるのはネロイドという路地裏で良く発見される生物である。

 生物が飲み物とかこの世界は大分狂っているなと宿儺は改めて感心する。

 

『緊急警報! 緊急警報! 冒険者の皆さんは至急正門前に来てください!』

 

 急に警報が鳴り響く。

 

 またか、と思いながら宿儺は席から立ち上がり正門に向かう。

 今度は白菜でも飛んできたのだろうかと思いながら正門前に着くと其処には既に多数の冒険者が居た。

 

「宿儺さんが来た! これで勝てる!」「裏梅ちゃんもつえぇし安心だ!」「宿儺さん鬼つえええ! このまま魔王軍の奴ら皆殺しにしようぜ!」

 

 宿儺はこの数日の間でも高レベル向けの討伐系依頼をこなし、ギルドに貢献してきた。

 そのことを知っている冒険者各位は宿儺が来たことに安心する。

 

(ふむ。俺が来たことで安心するという事は何かしらの敵か)

 

 というか、自身は異形であるはずなのにこうも受け入れられているとはどういうことなのだろうか、と宿儺は一瞬考えるも直ぐに思考を振り払う。

 

 宿儺が正面を見ると、そこには異形が居た。

 

 首から上が無い馬に乗った全身鎧を纏った男。だが雰囲気は異常だ。

 まず、左手で自身の首を持っている。この時点で人間ではない。

 更には纏うオーラも禍々しい。少なくとも善に属する存在では無いだろう。

 

「うお、何あれデュラハン?!」

 

 遅れて来たカズマ達一行が正面に居る人物を見て叫んだ。

 

「あれはデュラハンというのか」

 

 宿儺はそうカズマに問いかける。

 

「あ、はい。アンデッド系のモンスターでも最上位の奴だと思います」

 

 カズマは大人しく答える。

 

「なるほど。最上位モンスターか……面白い」

 

 少しばかり戦ってみたくなる宿儺だが、闘争心を抑える。

 

 冒険者達が何をするわけでもなく黙って見ていると、デュラハンがプルプルと震えながらこちらに近づいてくる。

 一定の距離で止まると、デュラハンは首を掲げながら叫んだ。

 

「ま、毎日毎日、俺の城に爆裂魔法を打ち込む馬鹿は、どいつだぁぁぁぁぁ!!!」

 

(ああ、やっぱり、あの廃城に居た奴か)

 

 という事は、カズマ達の獲物だ、と宿儺がカズマを見るとカズマの顔がさーと青くなっているのが目に見えてわかった。

 

「……貴様、気づいて無かったのか」

 

 宿儺がえぇ、という表情をする。

 ギルドに聞くなり冒険者に聞くなりすればすぐに分かる事を知らなかったという事に宿儺は驚愕するしかない。

 

「俺は魔王軍幹部デュラハンのベルディア! 俺の城に爆裂魔法を打ち込む奴も名乗りを上げろ! 今なら謝罪だけで済ませてやる!」

 

 ベルディアは馬から降り、ダンダンと地面を蹴りながら絶叫する。

 

「爆裂魔法が使えるのなんて……」

 

 冒険者の一人がそう呟き、めぐみんの方に顔を向ける。

 釣られて他の冒険者の顔も向いて行き、視線を浴びためぐみんは顔を横に反らした。

 

 全員の視線が何の罪もないだろうウィザードの少女に向かった。

 

「わ、私? 私爆裂魔法なんて使えません!」

 

 少女は慌ててそう否定し、再度めぐみんに視線が戻った。

 

「ぐ、仕方ありませんね……」

 

 めぐみんはそう言いながら前に出る。

 冒険者の集団を抜け、ベルディアの前に出たのだ。

 

「お前か! お前が俺の城に爆裂魔法を打ち込んでいるのか!」

 

 すぅ、とめぐみんは息を吸う。

 

「その通り! 我が名はめぐみん! アークウィザードにして爆裂魔法を操りし者! よくぞのこのことやってきましたねベルディア!」

 

 めぐみんの名乗りにベルディアは怪訝な顔をする。

 

「めぐみんってなんだ。馬鹿にしてるのか……いや。その髪に瞳の色、貴様紅魔族か! やっぱり紅魔族は頭が可笑しいじゃないか!」

 

 全く! とベルディアというアンデッドは憤慨する。

 

「ふふん! ここに来たが百年目! ここで倒してやります!」

「俺は戦いに来た訳じゃない。だが──そっちがやるというのならこっちも殺らせてもらうぞ」

 

 ベルディアは濃厚な殺気を放つ。

 アンデッドという死してなお動く屍であるからこそはナテル濃厚な殺意に駆け出しの街の冒険者各位は動けなくなる。

 動けるのは気にも留めてないアクアと殺意にニヤリと口角を上げる宿儺、涼しい顔で済ませる裏梅ぐらいのものだ。

 

「いいか、俺はこんな駆け出しの街を襲撃するようなみっともない事をするつもりはない。ただ俺は俺の城に爆裂魔法を打ち込むのを辞めて欲しいだけだ」

 

 ベルディアはそうきっぱりと言い放つ。

 

 殺意の波動から気を取り直しためぐみんはかっ! と眼を見開いて言う。

 

「それは駄目です。紅魔族は爆裂魔法を一日一回撃たないと死んでしまうのです」

「そんなわけあるか! 紅魔族がそんなイカレポンチな種族であってたまるか!」

 

 ベルディアはそう怒りの声を上げる。

 傍から聞けば正当なのはベルディアのの方だろう。自宅への爆撃を辞めて欲しいという真っ当な事しか言っていない。

 

 カズマが正気を取り戻し、めぐみんに駆け寄り肩に手を置く。

 

「おいこらめぐみん、デュラハンさんに謝れ!」

「はー?! なんですかカズマも! 敵の首魁が目の前だというのにそんな情けない事を言うとは!」

 

 くわっ! とめぐみんはカズマに抗議する。

 

「ふん、そちらがその気ならば此方も相応の対応をさせてもらおう──!」

 

 ベルディアは首を持っていない方の手をめぐみんに向ける。

 

「汝に死の宣告を! 汝は一週間後に死ぬだろう!」

 

 そしてベルディアの指先から黒い靄状の呪いが放たれる。

 

 めぐみんに当たるかと思われた瞬間。ダクネスが射線上に割り込み、ダクネスがその呪いを受け止めた。

 

「ぐわぁぁぁ!」

 

 ダクネスが声を上げる。

 

「ふん。狙った人物には当たらなかったが……だが充分だろう。先程宣言した通りその娘は一週間後に死ぬ!」

 

 などと、ベルディアは絶望的な事を宣言する。

 

 アンデッド、デュラハンの持つ種族スキルの一つ、死の宣告。

 受けた場合、防ぐ方法は一つしかない。

 転生者に与えられるチート。それでのみ防ぐことが出来る。

 事実過去ベルディアの死の呪いは聖鎧(せいがい)アイギスのあらゆる魔法やスキルを防ぐというチートを持ってのみ防ぐことが出来た。

 それ以外にどうにかする方法など無い。

 例え高位のプリーストが何十人集まろうと解呪する事は出来やしない死の呪いだ。

 つまるところ。それは受けたダクネスが一週間後には死ぬという事を意味している。

 

「そんな……つまり私は呪いの解呪をネタに脅されるという事だな?!」

「は?」

 

 ダクネスが素っ頓狂な事を言い出す。

 

「私は城の深い地下牢獄に入れられ、呪いを解呪したくばと奉仕を命じられる……くぅ! 私はいったいどうなってしまうんだ!」

「何もしないしどうにもしないが?!」

 

 ベルディアは抗議の声を張り上げる。そんな変態なこと誰がするか、と。

 

「え、ええい! とにかくその娘の呪いを解いて欲しくば俺の城に爆裂魔法を打ち込むのを辞めろ! いいな! 俺の城に正式に謝罪しに来れば解呪してやらんことも無い!」

 

「くく。実に大変な事になっているじゃないか」

 

 そんな漫才みたいな事をしている場に宿儺が参戦する。

 

「お、お前……異形か? 何故人に付いている? ……いや。勇者の力か?」

 

 ベルディアは宿儺の姿を見て何故魔族が人側にいる、と思ったが直ぐにチートという理不尽を思い出し警戒する。

 過去戦ってきたチート持ちには白と赤で構成されたボールを投げつけた相手を絶対服従にするという神器で魔物の軍勢を作り出した転生者が居たのだ。

 

「そこら辺はどうでもよかろう。大事なのは、俺が貴様の敵だという事だ」

 

 くく、と宿儺は笑う。

 

「……悪いが俺は戦う気はないぞ。とっとと城に帰りたいんだ」

「そのような事を言うな。少しぐらいは──遊んでくれてもいいだろう?」

 

 宿儺は見えざる斬撃、解を放つ。

 知覚不能の斬撃がベルディアに命中するも、少しのけぞらせるだけに終わった。

 

「さぁ、戦いといこう。久方ぶりの本気の戦いだ──ー!」

 

 かくして"元"呪いの王、両面宿儺と"勇者殺し"ベルディアの戦いが始まる。

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