この素晴らしい世界に"元"呪いの王を!   作:蠅頭

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月一更新しようと思ってたら二ヵ月経ってたので初投稿です


第6話

 

 

『緊急警報! 緊急警報! 冒険者の皆さんは至急正門前に来てください! 特に佐藤カズマさんのパーティと宿儺さんは直ぐに正門前へ!』

 

 街を歩いていた宿儺は聞こえてくる警報を前にまたか、とため息をつく。

 ウィズの魔道具店に向かっている途中での警報である。

 ベルディアが来てから数日が経ったが、またしても来たのだろうかと宿儺は思いながら足を正門前に向ける。

 

「行くぞ、裏梅」

「はっ」

 

 裏梅を連れて宿儺は正門前へと走っていく。

 十分もかけずに正門前に着くと其処には多数の冒険者が。そして門の向こうには前と同じように首なしの馬に乗ったベルディアが居た。

 

 ベルディアはプルプルと震え、カズマ達一行──ダクネスは今いない──を見るなり叫んだ。

 

「この、人でなしどもがぁぁぁ! 何故、俺の城に来ない?!」

 

 大声で叫び、宿儺は顔を顰めた。

 

 カズマがなんで、と口を開く。

 

「なんで? もう爆裂魔法を打ち込んでないのに……」

「爆裂魔法を打ち込んでいない?! 何を言っているんだ!」

 

 ベルディアは怒りに任せ自分の頭を地面に放り投げようとし、寸前自分の頭である事に気づき辞めた。

 

「あれからも毎日そこの紅魔の娘が打ち込んできてるわ!」

 

「おいこらめぐみんどういうことだ!」

 

 カズマは怒りめぐみんの頬を引っ張る。

 めぐみんは「やめてくらはい!」と主張する。

 一通り引っ張って満足したのかカズマは辞め、めぐみんに訳を話すよう促す。

 

「最初は我慢しようと思ったんです! ですけど硬くて大きい物にぶっ放す快感を知ってしまい、そこら辺に撃つだけでは満足できなくなり……!」

「んな理由で人の城に爆裂魔法を放つんじゃありません!」

 

 宿儺と裏梅はめぐみんを馬鹿を見る目で観る。というか馬鹿だろう。なんで勝てもしない相手の住宅に爆撃をするのかわからない。やはり紅魔族はいかれている。

 

「それに! 俺が怒っている事は他にもある!」

 

 ベルディアは再度怒りの声を上げる。

 その声に冒険者達一同視線を向ける。

 

「俺が怒っているのは仲間の為に呪いを引き受けたあのクルセイダーに着いてだ! 仲間がその身で庇ったというのに貴様らは俺の城に解呪の為にこない! あの騎士の鑑のような──」

 

 ベルディアはそこまで言うと、冒険者の群れからダクネスが出てくるのを見て言葉を失った。

 何で生きてるんだ、という驚愕である。通常デュラハンの死の宣告を解呪するのは術者しか出来ないはず。だというのに一週間経っても平然と生きている。

 

「あっるえぇぇぇ?!」

 

 ベルディアは驚愕の声を上げる。その姿にカズマはなんかすいません、と心の中で謝罪した。

 

「ま、要するにもう一回殺し合うという訳だ。腕が鳴るな」

 

 宿儺はニヤリと笑う。

 

「……ええい。ここまで来たら実力行使だ! 来い、アンデッドナイトたち!」

 

 ベルディアはスキルを行使し、手下のアンデッドナイトを十六体召喚する。

 

 すかさず宿儺が突撃する。

 

「雑魚共は任せた!」

 

 言いながら宿儺は苦笑する。自分一人で何でもやって来たのに、異世界に来て急に他人に頼るという事を覚え始めた。

 人というのは案外変われる物なのだな、と宿儺は思った。

 

 宿儺の拳とベルディアの大剣が衝突した。

 

 膂力、パワーでは宿儺が上回っている。じりじりとベルディアの剣が押されていく。

 宿儺はすかさず残る腕でベルディアの鎧を殴る。

 魔力で強化し、この世界に来て何度かレベルアップしたことで更に上昇した宿儺のパンチはベルディアの鎧を砕く事はないが、内部まで衝撃を伝える事は出来る。

 ベルディアは少なくないダメージを負う。

 

 ベルディアは後ろに跳躍し距離をとろうとし──すかさず宿儺も駆け出す事で距離を取らせない。

 

 宿儺は下の腕二つで掌印を結ぶ。

 結ぶのは玉犬の掌印だ。

 

 これにより宿儺は玉犬のパワーとスピードをその身に宿す事が出来る。

 鵺の掌印を結ぶことにより飛行能力を得たのと同じ、式神の力を召喚せず引き出す技法だ。宿儺だから出来る高度な呪術運用である。

 

 更に速度が増した宿儺の拳をベルディアはさばききる事が出来ない。

 何しろベルディアは片手が塞がっており、右手の剣でしか攻撃出来ないというのが悪い。

 無論足を使う事は出来るだろうが、純粋な騎士であるベルディアは剣術に重きを置き、足技をあまり使わない。無論素手になった時に戦えない、という訳ではないが。

 それでも武器を持っているので攻撃手段が武器になってしまうのである。

 

 怒涛の拳の殴打にベルディアは徐々に体力を削られていく。

 

「くっ、アンデッドナイトたちは──!」

 

 ベルディアが視線を向こうに向ければアクアを追うアンデッドナイト達が居た。

 なんでやねん、と突っ込む暇もない。

 

 宿儺は持ち前の感知能力でアンデッドナイトの状態を把握しながら休むことなくベルディアに襲い掛かる。

 

 

 

 

 ■

 

「おい! 俺の方に走って来るんじゃない!」

 

 カズマはアクアに追いかけられながら叫んだ。

 後ろを見ればアクアを追うアンデッドナイトたち。アクアがカズマを追う事で更にカズマも追われてしまっている。

 

「だってだって! こいつら私の浄化魔法効かないんだもん! ──ターンアンデッド!」

 

 アクアは走りながら器用に対アンデッド魔法を発動する。

 だが効果は無く、アンデッドナイトたちは元気に走る。

 これはベルディアが魔王から対浄化魔法の加護を受けているのが原因だ。ベルディアの眷属であるアンデッドナイトにも魔王の加護の力が及んでいる。

 無論女神アクアの浄化魔法を完全に無効化出来ている訳ではない。何十発か放てば浄化されるだろう。だが、アクアは自らの浄化魔法に絶対の自信を持ち、一発、二発と防がれた事で効かないモノだと思い込んでしまった。

 

「さがっていろ。下郎ども」

 

 そこに裏梅が参戦する。

 

「裏梅さん! よろしくお願いしまぁぁぁす!」

 

 カズマは叫びながら走り去る。

 

「氷凝呪法──霜凪(しもなぎ)!」

 

 裏梅は生得術式を発動しアンデッドナイトの群れを凍らせる。

 アンデッドは基本冷気に対して耐性を持っている為大したダメージには成らないが、氷結による拘束は通じる。

 

「うお、すげぇ!」

 

 カズマは走るのを辞め、止まって振り返り凍り付いたアンデッドナイト達を見る。

 全身が完全に凍り、身動き一つ出来ない状態である。

 

「さて、宿儺様は……」

 

 裏梅は凍らせたアンデッドナイトに一瞥することなく、宿儺とベルディアの戦いを観戦しに行った。

 

 

 ■

 

 

 宿儺はベルディアを追い詰めていた。

 

「ぐっ……この強さ、勇者を超えているのか……?!」

 

 ベルディアは圧倒されていた。

 ステータスという点で、宿儺はベルディアを上回っている。

 それ以上に、宿儺は魔力を使い自己強化を可能としている。これはこの世界には無い技法だ。

 レベルアップやスキルによる強化しかないこの世界で、魔力を使っての自己強化魔法の様な芸当は現状宿儺と裏梅しか使えない技術だ。

 ただ元呪力使いしか使えない、などという事は無く他者に伝授すれば技術として伝わるだろう。宿儺も裏梅も他者に教える気はさらさらないが。

 

 宿儺は蹴りを放ち、ベルディアを蹴り飛ばす。

 五メートル以上吹っ飛び、ベルディアは膝をつく。

 

「この程度か、魔王軍幹部とやらは……存外呆気ないな」

 

 宿儺は溜息を押し殺しながら言い放つ。

 実際、ベルディアは宿儺の想定より弱かった。

 ただ実際のところは強い。等級に換算すれば特級呪霊並みの力を持つ。アンデッドナイトの召喚能力次第だが人間での特級にも届きうるだろう。

 だが、その程度だ。五条悟のような異次元な強さを持っていない。

 人間が技術を極め果てた先の強さであり、特殊な能力などによる無法染みた強さでは無かったのだ。

 

「いいのか……? 俺を倒して」

 

 ベルディアがふっと笑いながら、宿儺に話しかけた。

 宿儺は何となく話を聞く気になり、続きを促す。

 

「どういう意味だ?」

「古今東西、強すぎる力は軋轢を生む……更にその異形の外見……人から忌避され、いずれは邪悪と認定されるだろう……かつての俺のようにな……」

 

 ベルディアは元騎士団の団長だった。

 強く気高くはないが高名な騎士であったのだ。

 だがベルディアは強すぎた。本来騎士団総出で倒すべきモンスターすら単独で倒せるほどに。

 故に恐怖され、畏怖され、忌避された。その力が貴族たちに向かう事を恐れたのだ。

 無実の罪で咎められ、ベルディアはついには処刑された。そしてその恨みを持ってデュラハンとなったのだ。

 

 

「……そうなったとしてもかまわない。俺は俺だ、何があっても変わる事はない」

 

 宿儺はベルディアの言葉を鼻で笑う。

 元から恐怖されるのは慣れている。今更力で恐怖だ何だとされたところで、という話だと宿儺は決めつける。

 そうなれば裏梅と共に適当に世界をぶらつけばいいのだと。

 

「それに……そんなことにはならんかもしれんぞ」

「なんだと……?」

 

 そして二人の元にカズマパーティが走って来る。

 

「そこのデュラハン! よくも私を怖い目に合わせたわね! 浄化してあげる!」

 

 ベルディアは立ち上がり、再び剣を構える。

 

「ふん。駆け出しの浄化魔法が通じる訳が──」

「ターンアンデッド!」

 

 アクアはベルディアの台詞が言い終わる前に魔法を発動する。

 青い魔法陣が出現し、ベルディアが光に包まれた。

 

「ぐわぁぁぁ──!」

 

 ベルディアは浄化の痛みに悶えた。

 もだえ苦しみ、地面をごろごろと転がった。

 

「わ、私の浄化魔法が通じてない?!」

「いや、結構通じてるんじゃないか?」

 

 アクアはまたしても一発で浄化できなかったことに驚き、カズマはごろごろ転がるベルディアを見て聞いてるんじゃないかとツッコミを入れる。

 アクアの浄化魔法はアンデッドの頂点の一つ、リッチーにすら通じるほどに強大だ。そのはずなのにデュラハン相手に効いていない、という事にアクアは驚くしかない。

 

「ぐ、駆け出しのはずが……何故俺に浄化魔法が通じて……!」

 

 ベルディアは驚愕し、アクアを睨む。

 赤い目で睨まれたアクアは負けじと睨み返す。

 ベルディアはアクアを観察し、その身に流れる魔力以外の力──神聖なる力に怖気が走った。

 

「おい、小僧共。共にこいつを倒すぞ」

 

 かつての自分ならば決して言わなかった台詞に自信も驚きながらも宿儺は次の構えをとる。

 何故自分はこんなにも変わったのだろうか、と少し考えるが答えは出ない。

 

 宿儺は上の手で閉じる様にし、百斂(びゃくれん)の構えをとる。

 宿儺は万象の式神の力を発動し、穿血を放つ。

 

「あぶね!」

 

 ベルディアは大げさに騒ぎ、ローリングして宿儺の穿血を避ける。

 初速から音速に迫る穿血だが高レベルの者にとっては不意にでもなければ避けるのは可能だ。

 あからさまに両手を合わせ何かしますよ、と宣言してるようなものだったので回避も出来たのだ。

 

 宿儺はベルディアが慌てて避けた事に疑問を抱く。

 自分が相手の立場ならば多少受けるのを覚悟して突っ込むが、何故避けたのか、と。

 

 その答えは二人同時に出た。

 

「……もしかして、水が弱点?」

 

 宿儺は持ち前の洞察力の高さを以てして、カズマはゲームや漫画の知識と先の行動から答えを導き出した。

 

「アクア! お前宴会──じゃなかった水の女神だろ! 水を出す事は出来るか!」

「はぁ?! 宴会じゃなくて水の女神よ水の女神! 水ぐらい幾らでも出せるわよ!」

 

「おい、何を──」

 

 ベルディアと宿儺は嫌な予感がする。

 

「見てなさい! 水の女神の本気ってものを見せてやるわ! ──セイクリッド・クリエイトウォーター!」

 

 アクアは魔法を行使する。

 空に暗雲がかかり、途端暗くなる。

 そして──空から大量の水が降って来る。

 一トンや二トンどころではない、大洪水、大津波と表現できる量だ。

 咄嗟に宿儺は地を蹴り飛び上がり、鵺の掌印で飛行能力を会得する。

 遅れて裏梅も氷の柱を自身の足元から生成し上へと避難し、城壁の上に乗る。

 

「凄まじいな」

 

 地上は阿鼻叫喚だ。

 アクア自身も大量の水によって流され、冒険者達も水に流される。

 無事なのは空に避難した宿儺と裏梅ぐらいのもので、ベルディアも水で流されている。

 

 数分経つと水は流されて霧散し、地上に緑が戻って来る。

 宿儺と裏梅は濡れた地面に降り立つ。

 

「どうやら、だいぶ効いているようだな」

 

 宿儺は自分の頭を探しているベルディアに向かって言い放つ。

 見れば、ベルディアは結構な弱体化を受けていた。

 女神アクアが生み出した神聖なる水だ。アンデッドならば弱点でないはずがない。

 

「くそ……どいつもこいつも、この街の冒険者は頭が可笑しいのか?」

 

 ベルディアはぐちぐちと文句を言う。

 

「さぁ、最終ラウンドといこうか」

 

 宿儺は駆け出し、ベルディアに迫る。

 ベルディアもどうにか体制を持ち直し、剣を構える。

 

 瞬間、衝突。剣と拳が衝突し合う。

 

 宿儺は攻撃しながらちらり、と杖を使って立ち上がろうとしているめぐみんに視線を向けた。

 めぐみんは察し、詠唱を始める。

 

「今更魔法等──」

「どうかな!」

 

 宿儺は攻撃の手を緩めない。

 習得したばかりの上級魔法ではベルディアに有効打に成らない。その為自らの身体能力と御廚子のみを用いて戦う。

 ただ解では大したダメージにならない。鎧によって防がれる。

 

 ベルディアは膨大な魔力の高まりを感じ取る。

 

「この魔力……爆裂魔法か?! こんな街のすぐ近くで?!」

 

 ベルディアも察し、距離をとろうとする。だが、宿儺がそれを許さない。

 四つの腕を用いて打撃を与え、行動する暇を与えない。

 

 

「めぐみん! やれぇー!」

 

 カズマの雄たけびと同時に宿儺はベルディアの腹を一発殴ると同時に後ろに大きく跳ぶ。

 

「はっはー! 最高のシチュエーションです! 感謝しますよ、宿儺さん! ──エクスプロ―ジョン!」

 

 そして、爆裂魔法が放たれた。

 

 

 爆音が響き、土煙が舞う。

 

(こうして近場で見るとすさまじいな、爆裂魔法は)

 

 宿儺は爆裂魔法の威力の高さに舌を巻く。

 想定以上の力だ。直撃すれば自分とて危ないだろう。

 

 そして煙が晴れた後に居たのは──ボロボロになったベルディアだ。

 

「しぶといな……だが、終わりだ」

 

「セイクリッド・ターンアンデッド!」

 

 女神アクアの浄化魔法がベルディアに直撃し──ついに魔王軍幹部ベルディアは打ち取られた。

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