長命の加護を受けてからもう何年経っただろう、百年?いや二百年?まぁそれはいいとして…エルフ達には到底及ばないがヒューマンにとったらかなりの年数を過ごしていたと俺は思う。
そんなある日のことだった、いつも通り俺はベッドから起きる…白くて長い髪の毛を耳にかけ瞳を開く、よくその瞳の色は血の色とも評されるが俺は綺麗なルビーだと思っている。
住んでいる場所…魔法使いの塔の入り口であるドアの奥でガタガタバタバタと音がした。時刻は早朝六時と人によってはかなり早い時間だろう、こんな時間に何か依頼か?あの近隣都市の領主か?それとも金を持ってる
そこにいたのは…少女だった、その少女は俺を見るなりこう言い放つのだった。
「ああっあのっ…私を弟子にしてくださいっ!!」
俺はどうやら久々に見習いが来たことにかなり驚いたのか少しの静寂ののちに勢いで「別に良いが」と言い残して部屋へと戻ってきてしまった。
横には俺の使い魔である毛玉達が「もきゃー」と言いながら寄ってきた、ふわふわもふもふの白い球体に黒色のきゅるきゅる瞳がとてつもなく可愛らしい、極めつけはそれに付け加えられている動物(俺が呼び出したのは狐)の耳と尻尾なのだが。
今はそんな話をしている場合ではないか、あー…勢いで承諾してしまったと頭を抱えることになるがその抱えることすら暇を与えてくれないみたいだ。
「アゼム?アゼムはいるかい?」
「……リフレイ」
そこにいたのは同僚である魔法使いのリフレイだ、彼はエルフで俺よりもかなり年上ではあるが魔法使いになった時期はほぼ同じだからこうやって気軽に会話をする。
水色の髪の毛に同様の瞳の色、エルフにしてはよく見られるような長い髪は頻繁に切られ整えられておりさっぱりとした印象を与える。
あとはまぁ…
「どうしたんだそんな顔をして、朝からなんか厄介ごとでも押し付けられたか?」
「見習いができた」
「ん?見習い?」
「見習いが来るのは、たしか……五十年ぶりくらいか」
「はぁ!?見習い!!!??というかサバを読むなよ!前にお前に見習いができたのは百年は前だ!!」
「そうだったか、忘れていた」
「前の見習いが泣くぞ!!」
「泣かないとは思うが、あの子は強い子だ」
「違う!!!そう言う意味じゃなくてだな!?アゼムお前俺よりも百は年下だよな!?反応がもう歳のいったジジイなんだよ!!?」
「俺はまだ爺さんじゃない」
「あぁもういいからっ!その見習いはどこだ!?」
「……許可したまま入り口で、放置した」
「なにやっているんだ!?今すぐ向かうぞ!!!」
首根っこを掴まれて移動している、普通に痛いからやめてほしいがこうなるとコイツは俺には止められん。
塔の出入口に向かうとそこにはあわあわと落ち着かなさそうに焦っている少女がいた、さっきの見習い志願の若者だ。
「この子が例の見習いかい?」
「あっ…えっと…」
「あぁ…そうだ…。見習い、俺のことはアゼムと呼べ、呼びにくいなら他の名称で呼んでくれて構わない」
「はっはい…おっ、お師匠…様」
そういえば前の見習いも俺のことをお師匠と言っていたなと思い出した、まぁそれはさておきなのだが。
少女は青く毛先が桃色の長い髪の毛に桃色で…ぱっちりとした大きな瞳をしていた、服装は…ここいらの市民ではなさそうな…他の領地や国の者か?
じっと見つめていると見習いは口を開いた、声は震えておりまぁ怯えているのだろうなと言うことが俺にも分かった。
「……どうした?」
「あのっ…名前…名乗ってなかったなって…」
「あぁそうか…お前、名前は?」
「ミル…ミル・ソルティネルカです…」
「ミルか…分かった」
見たところ平民のようだ、名字があるのはたいてい王族や貴族、それ以外の平民やスラムの出身者には無いことが多い(養子になった場合などの例外はあるが)。
そんな俺とミルの様子を見かねたのかリフレイが呆れたような顔をして話し出した、いつもすまないな…俺があまり言葉を発せないことが大体の原因だが。
「君たち会話下手かい…?あとアゼムに関しては発しないが正しいだろう。とりあえずは、君はなんでここに来たんだい?普通魔法使いになりたかったら学園に行くものだけれど…」
「私も…学園に行こうとしたんですけど…あの、万能型魔法使い?じゃなくて…」
「その言い方と言うことは…君は特化型魔法使いか」
「はい、その学園の学園長さんに色々と教えてもらって…お手紙も貰って…ここに行けば教えてくれると…言われました」
「まぁ…それは正解だよ、普通の魔法使い学園は色々な属性の魔法を扱うから…特化型魔法使いにとっては地獄のようなものだよ」
「やっぱり…そうなんですね」
それはリフレイが説明した通りだった、この魔法使いの塔はその特化型魔法使いを集めて訓練を行ったり場合によってはそのまま住み込み都市部へと出向き依頼を受けたりもする。
卒業して他のところへと旅立った奴らもいるから全員が全員ここに住むってことはないが、たまに帰ってきては自宅のように寛ぐ奴もいるし…手紙を寄越してくるやつも今でもいるからな。
「あぁ二重の意味で紹介を忘れていたね、そこのアゼムはこの魔法使いの塔の創設者だよ。つまりこの施設を建てた最初の奴って訳だ、俺はそこに住み込んで依頼をしているリフレイだよ、よろしく」
「よろしくお願いしますっ…」
ミルは改めて深々としたお辞儀をした、まぁ挨拶も済んだことだし…そろそろ作業をしないとなと俺は思うのだが、まぁ弟子も出来たから基礎を教えなければならないのは確かだ。
リフレイへと視線を送ると分かったかのように頷いた、流石は魔法使いとしての同僚だ、理解が早くて俺は大変助かる。
「ともかくだ、早速だけど授業を開始するから…っとこれを」
「……?これは…ローブですか?」
渡されたのは白いローブだった、ちなみに防火性と通気性を兼ね備えているし魔石を嵌め込めば寒いところも平気で歩ける優れものだ、俺が開発した。
飛ぶように売れている高額な装備品でもあるのだ、他にもニーズに答えて様々な色を取り揃えているお陰かよくそれに関してのレビューの手紙も送られてくる。
「アゼムが開発した魔法ローブでね、もしもの時に守ってくれるから魔法使いとして活動する時は羽織っておいてくれ」
「こんなに…お師匠様にリフレイさん、ありがとうございますっ!」
「じゃあ始めていくか…」
こうして俺とリフレイ、そして新たな弟子のミルの魔法使い見習い生活が始まることになる、そういえばこの魔法使いの塔にはまだあと二人の魔法使いがいる。
だから次はその二人をミルに紹介しようと思う、……丁度腹が減ったから朝飯の時でいいか。
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今回の簡易人物紹介(名前/性別/年齢/身長/種族/何者?)
主人公:アゼム・フェレムト/男/258/162/ヒューマン/氷の魔法使い
サバ読んだり口数が少なかったりする魔法使いの塔の創設者、好きなものは果実入りパン。
同僚:リフレイ・シアブルー/男/322/178/ハイエルフ/水の魔法使い
アゼムの世話を何故かよくする同僚の魔法使い、アゼムからはお母さんとかも言われたりすることがある。
見習い:ミル・ソルティネルカ/女/16/155/ヒューマン/?の魔法使い(見習い)
押し掛けてきた見習いの女の子、学園長から丁寧に丁寧に教えられてこの魔法使いの塔へとやってきた。