カスなお姉さんとやさいせいかつ。   作:ひつまぶし太郎

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いつもいつも乞食みたいにクレクレ言うゴミ作者に沢山の感想と評価、ここすきをくださってまことにありがとうございます。
ついに原作主人公の登場です。
劇的なものは何もありません。


④じゃがいもからはじまったっていい

 

「…む、また腕を上げたな、ノア」

「そうですか?」

「ああ、最初の頃も下手ではなかったが…ところどころ焦がしたりしてたしな」

「…ありがとうございます」

 

箒に褒められて安心する少年を見ながら、一夏は今世間を騒がせている話題の人物が目の前にいることへの違和感が未だに拭えずにいた。

 

少年とは初対面ではない。

なので正確に言うのなら、知り合いの少年が突如世界的に有名な人物へ変化したことへの戸惑いが拭えない、が正しいのだろう。

 

あと、いくら千冬姉の弟だからといって女だらけの学園の寮に引っ越させるのはどうなんだよ、という不満もあった。

 

織斑一夏。

特例措置として、まさに今日からIS学園の寮に根城を構えることになった中学3年生。

知り合いの少年と2ヶ月ぶりに再会したら、美少女になっていて困惑中。

 

「うん、うまい」

「一夏さんに教えてもらったからですよ?」

「あ、ああ…」

 

ありがとうございます、と微笑む少年の笑顔はあまりにも無垢で眩しい。

というか、やはり何度目を擦っても女の子にしか見えない。

あれー?初対面の時って普通に男の子だったよな。

まさか男っぽい格好してただけで実は女の子だったとか?

なにそれ漫画かよ、と百面相している一夏を訝しむように、箒が顔を覗き込んでくる。

 

「なんだ一夏、口ごもるなんてらしくない」

「いやぁ、その…なんか」

「?」

「女の子らしくなったなって」

 

一夏にまじまじと見つめられて、少し居心地の悪そうに身を捩る少年は、普通に美少女だった。

髪が伸びただけだというのに、箒と並ぶと姉妹に見えるほど、と言えば伝わるだろうか。

…たぶん、仕草が似ているのだ。

 

でも、なんで箒が並んでるんだろうな。

ここ俺の部屋なんだけど、という一夏の疑問の答えは、売店で買い出しをしている少年に遭遇し行き先を聞いて当たり前のように箒がついてきただけである。

用事など特にない。

恋する乙女にとって、チャンスをみすみす逃がす理由がないだけだ。

 

ちなみに箒が学園にいる理由も一夏と同じである。

両親は南の国で余生を満喫中。

1年後弟か妹が生まれるかもしれない、なんて冗談を兎が口にするくらいには仲良くやっていた。

 

「あ、あんまりまじまじ見ないでください…」

「わ、悪い!」

「一夏、お前…」

「なんだよ、俺も自分でなんで謝ってるんだろうなって思ってるよ!」

「ホモか?ホモなのか?やめとけ一夏!その先は地獄だぞ!一度足を踏み入れたら帰ってこれなくなると聞く!」

「ちげえよそんなんじゃねえよ!」

「?」

「……おい一夏鼻血」

「いや今のはしょうがないって…つーか箒だって人のこと言えないだろ」

 

なんかひどいこと言われてるな、と思ったのか。

ちょっと不安そうに上目遣いでこちらを見つめる少年のチラ見えする鎖骨と血色の良い唇に鼻から熱いものが吹き出してきた一夏を、だれが責められようか。

 

現に隣座る箒だって鼻を押さえて天を仰いでるし。

これは千冬姉が血迷うのも仕方ないかなぁ、なんて感想を受信した少年は微妙な顔になった。

 

一夏とノア。

性格から境遇まで何かと異なる二人の出会いは、スーパーでカレーに使うじゃがいもの種類に悩んでいた少年に一夏が気さくに話しかけてくれたことだ。

それがまさかの千冬の弟だったというのだから、世間は狭い。

 

それ以来何かと気にかけてくれていて、ナイーブだった時に相談に乗ってくれた一人でもある。

感謝はしているが、避難してきた理由を聞いた一夏の反応を見て少年は若干後悔していた。

 

「千冬姉、もしかしたらこのまま嫁にいけないんじゃないかって心配しててさ。最悪俺が添い遂げるしかないかなって思ってたんだけど」

 

なにやだこの人怖い、とドン引く少年にも、お前千冬さんに聞かれたら殺されるぞという箒の呆れ顔にも気付かないシスコン朴念仁は、ハチャメチャな笑顔でハチャメチャなことを言い放った。

 

「束さんとセットってのはまぁ…ちょっと納得いかないけど。…でも千冬姉が幸せならオーケーだ!いい人が見つかってよかった!」

 

獲物として目をつけられただけで、いい人ではありません。

というか僕の心配をしてください。

このままだと僕ステーキにされちゃいます。

 

という、性知識皆無の少年が『食べる』という言葉の意味を取り違えていることを知った一夏と箒は、何をどう伝えていいか迷い、結局曖昧な笑顔で誤魔化すだけにとどまった。

高校生になる手前。

思春期真っ盛りな二人に、親になった大人すら気まずくなる質問は荷が重かったのだ。

 

 

 

 

最初、自分の姉に守られる少年をテレビで見た時嫉妬がなかったかといえば嘘になる。

もちろん、同時に知ることになった過去への同情もあったが、綺麗なものを見せられたせいで、どうしたって自分の心の汚い部分は目についた。

 

ただ、一夏はそこで自己嫌悪に陥るようなタイプでもなかった。

鈍感系主人公の面目躍如と言うか、しばしば他人のために怒ることはあれど、基本的に良い意味で悪感情に鈍感で気持ちのいい性格をしている一夏は、少年に『悪い!ちょっと嫉妬しちまった…でも俺はお前の味方だ!』と真正面から伝えていた。

 

一夏とは真逆で他人の心の機微に敏感な少年からすれば、その関わり方は新鮮であり、同時により深い信頼を向けるだけの価値がある行動だった。

その信頼は彼の姉を巡るトラブルによって、失われつつある、というのはとりあえず置いておこう。

 

もちろん千冬や束に庇護されているだけの子どもなら、憎まれ口くらい叩いただろう。

二人を利用し、守られて当然と思っているようなら殴り飛ばしていた。

でも少年は自分の姉に頼るだけじゃなくて、きちんと頑張っている。

なにより千冬姉が気に入ってるならそれが一番だと一夏は考えていた。

 

でもおそらく姉の初恋であろう相手が一回り年下で、しかもなんか女王様っぽくなるのはまぁ…うん。

どうなんだろうと思わないでもないけど。

恋愛の形は人それぞれだよな!と、姉を全肯定することで少年の首についた噛み跡から目をそらすことした一夏は、許せノア…自己保身はこれで最後じゃなくてたぶんこれからもする、と心の中で頭を下げた。

 

一夏は内心での言い訳タイムを終えると、カレーのおかわりをするべく立ち上がった。

考え事をしながらの食事はスプーンが進む。

次で4杯目だな、なんて呑気に考える一夏の顔の前に竹刀が静かに振り下ろされた。

 

昔の箒だったらたぶん加減せずに振り下ろされていただろうその竹刀を軽く押しのけると、カレーを慌ててかきこんだせいでほっぺに米粒が付いてるし、ほっぺがパンパンになっている箒を睨みつける。

 

「なんだよ箒。行儀悪いぞ?」

「んぐんぐ…んぐ……ふぅ。まさかとは思うが、おかわりする気か?」

「ああ…別にまだ残ってるんだからいいだろ?」

「もうほとんどない。それこそ、あと一人分しかな」

「そっかー。…悪いな、なんか!」

「お前はすでに3杯食べた。悪いと思うなら、これから3杯目を食べる私に譲るべきだとは思わないか?」

「うーんよく考えてみたけどやっぱり思わないぜ!」

「コラ待て一夏!」

 

やっぱり来る部屋間違えたな、と。

流れるようにいちゃつき始めた二人を、少年は砂を噛んだような顔をしながら見つめていた。

 

 

───数日後、千冬ファンに黄色い声援とともに追い回されていた一夏がじゃがいもを落として、それを追いかけているうちにうっかりISを起動したことで世界で二人目の男性操縦者が爆誕したり、起動した拍子に生徒会長を押し倒して胸を揉んだという話にぶち切れた箒に少年は腰を抜かすことになるのだが、妙にボディタッチの多い(初めての場所で緊張していた反動で距離が近いだけ)一夏といっしょにお風呂に入って身の危険を感じたりしていた少年はまだ知らないことだった。

 

 




男の娘で無知シチュで複数人プレイでおねショタとかいう、馬鹿みたいに要素を盛りに盛った少年の初体験がいつになるのかは、神のみぞ知る、ということで。
もしかしたらハーレム主人公一夏くんの一夏さんに男性としての敗北感を感じてなぜだか胸が高鳴るメス落ち一夏専用ご奉仕女装メイドルートとかあるかもしれないですけど、今のところその予定はありません。
いっつも本編に関係ない頭の悪い話ししてんなこの作者。
すみません。

なぜかじゃがいもきっかけで覚醒する原作主人公さんが出てくる今回も感想とここすき頂けると作者のモチベになります。
評価を貰えると小躍りします。
気が向きましたらお慈悲をよろしくお願いします。
なお、じゃがいもも特に意味はありません。
作者が男の娘の手作りカレーが食べたかっただけです。
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