カスなお姉さんとやさいせいかつ。   作:ひつまぶし太郎

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お久しぶりでございます。
今回は普通に直接ではないけどR指定な匂わせ描写が最後に入ります。
自己防衛よろしくお願いします。


⑦ぴかぴかのいちねんせい

 

 

背景、宇宙にいる誰かへ。

ここは地獄です。

 

少年は、そんな言葉を空に投げながらぼんやりと窓を見上げていた。

窓から見える空だけが少年の癒やしだった。

 

見渡す限りの女子、女子、女子、女子。

わざわざ別の教室からも覗きに来ているあたり、少年は自分がパンダにでもなったような気分で最悪だった。

心のチャンネルが無作為に人の心を感じ取って、まるで砂嵐のテレビを大音量で流されているような状況は、普通にきつい。

 

「……………」

 

ため息くらいならついても許されるだろうか。

いや、今の自分の立場でそれはまずいだろうか。

でも…。

そんな約半年ぶりのネガティブモードになりかける少年は、いやいや何も悪いことはしてないんだからと自分に言い聞かせて顔を上げる。

 

そして、すぐに上げたことを後悔した。

 

目、目、目。

おびただしい数の目が、少年を見ていた。

思わずあの青空を思い出して顔を顰めそうになるが、それも気合いで押し留める。

 

───4月。

 

それは、新しい出会いと別れの季節。

それも入学式の日ともなれば、新しい出会いに溢れている。

溢れすぎていると言ってもいい。

今なら在庫処分セールだってできるな、なんて現実逃避をするくらい少年は注目の的だった。

 

あの怒涛の入学試験から約4ヶ月。

その間何もなかったかと言えばそんなことはない。

 

まず初詣。

篠ノ之神社に行けば襲撃に会い、結果としてテロリストたちを蹂躙する世界最強と天災の無法っぷりを目にする羽目になり、バレンタインでは目が覚めたら隣で自分の身体にチョコを塗ってどういうわけかベッドを汚さないように少し浮いている束に度肝を抜かれ、3月には一夏と箒と一緒に行ったショッピングモールがテロリストたちに占拠され、男二人がトイレに行っていた隙に人質にされた箒を一夏が主人公らしく助けるかと思えば箒が木刀一本でテロリストを制圧。

覚悟を決めて飛び出した一夏と少年がなんとも言えない顔で箒にラーメンを奢ることになった。

 

…思い返してみても平穏な1日はなかった。

先程挙げた以外にも合格の決まったセシリアが寮に突撃してきて、一夏と打鉄とラファールによる決闘騒ぎになったこともあった。

理由はどちらが少年と遊びに行くか、というとてもしょうもないもの。

少年としてはまず間違いなく先に約束をしていた一夏と出かけるつもりで、アポ無し突撃のセシリアは一夏がいいと言うなら一緒に、くらいのつもりだったのだが…なぜだろう。

売り言葉に買い言葉。

なんならもうお互いわざと喧嘩しに行ってるよね、みたいな。

お互い一度ぶつかっとかないといけない決まりでもあったのだろうか。

 

『いいですか!?この方は世界初の男性操縦者!つまりその隣にいるのにもそれなりの格が求められるのです!』

『…そういう意味ならいつもだいたい束さんがいるし、千冬姉だってそうだろ?俺達二人ともあの二人に敵うか?無理じゃね?』

『…ノアさんは友人を格なんていう低俗な尺度で見ませんわ!!!』

『…君がいい出したんだけど…』

『刹那で忘れましたわ、そんなこと。わたくし、都合の悪いことは基本思い出せなくってよ。というかぶっちゃけ低俗な言葉を売れば勝手に喧嘩を買い取ってくれると思ってたんですけど、意外と我慢強いんですのね。もしかしてマゾなのかしら…とりあえずノアさんの隣りにいる人間として人格面は合格と見て良さそうですわね…』

『なんだコイツ』

『あとは戦闘力。…ノアさんを守る力があるか、わたくしが見て差し上げますわ!』

『君に言われなくても俺は普通に試験に合格してるっての!』

『試験で測れる技量なんてたかが知れてますでしょうに!試験での結果を賢しらに語るのは愚か者のすることですわ!試験で試験官に勝った、なんて明らかに手加減されて掴んだ結果を自慢気に語るようなバカはわたくしが消し飛ばします!』

『なんでだろうな、あんたに言われたくないだけどなぁ!?』

 

結局量産機であろうと代表候補生であるセシリアの技量に一夏は敵わず、その割にお互いいい試合だった、次はクラス対抗の戦いで、みたいな友情が二人の間に芽生えたのを見る少年は、完全に蚊帳の外だった。

 

あと、試合の後なんだか一夏を見るセシリアの瞳にいつもとは違う色を見た気がしたが少年は無視した。

またか、とか。

やっぱりか、とか。

会長も似たような顔してたしその妹さん相手にもこないだ似たような顔させてましたよね、みたいな感想を口にしないだけの善性が少年にあって良かったな。

 

「…………………ふぅ」

 

さて。

現実逃避はやめて、少年は少しだけ強張る身体をほぐすように息を吐き出した。

 

同時に、周りを取り囲む女子たちの波が2つに割れる。

 

「よっ、ノア。来るの早いな?」

「わたくしたちが遅いんですのよ、一夏さん」

「そうだぞ一夏。お前が来る途中猫を助けようなんて言うからギリギリになってしまったんだ。やはりメスだからか?メスだから助けようとしたのか?」

「そうに違いありませんわ。一夏さんったらもはや種族を超えて女たらしなんですから…」

「だぁー!もう悪かったって!ジュースまで奢らせといてまだ言うか!?」

「…おはようございます」

 

あっという間に騒がしくなった3人に向かって、少年は丁寧に頭を下げる。

 

今日から高校1年生。

少年の本当の意味での学園生活が始まった。

 

 

 

 

さて、なんとかついていけてるな、なんて。

自己紹介中に姉からの指導が入った以外恙無い授業の進行を前に、一夏はそっと胸を撫で下ろしていた。

 

織斑一夏は知っている。

後ろの席の少年が、とてつもなく過酷な環境にこの前までいたことを。

なんなら、いまだに世界革命のきっかけとなった火種として、その命を付け狙う過激派がいることを。

本人はただ夢を追いかけているだけなのに、周りがそれを許してくれないその環境を。

 

織斑一夏は姉や幼馴染から話を聞いて知っている。

そんな環境に弱音一つ口にせずに、少年はただ一生懸命に歩みを進めていることを知っている。

 

ならば、織斑一夏はどうか。

初めから世界最強の姉という後ろ盾があり、男性操縦者であっても一人ではないという環境があり、目の前には強くなるという目標の実現のために必要なものが揃っている。

恵まれている。

人生設計は狂ったかもしれないが、それでも織斑一夏は恵まれた人間だ。

 

そんな恵まれた人間が、それでも環境に文句を言って弱音を吐くというのならそれはもう、男なんて辞めるべきだ。

 

もちろん、いきなり進路が変わったことへの抵抗感も戸惑いもある。

だが、試験の時に少年が伝えてくれた言葉のおかげで一夏のモチベーションはかなり高かった。

 

『───おそろいは、うれしいです』

 

うさ耳を撫でながら少年は言った。

 

『見たくないですか、千冬さんと同じ景色を。…もしかしたら、一夏さんの考えていた未来には遠回りになるかもですけど、それでも』

 

最短の道なんて、少年は知らない。

ただ真っ直ぐと先を見据えながら歩いてきたつもりで、間違えて、躓いて、止まってしまったことだってある。

もうたった一人の世界になど戻れない。

ある意味で、少年は弱くなってしまったのだろう。

 

それでも。

少年はそれを誇らしく思う。

弱くて、不器用で、友達の力を借りてばかりな自分のことが、それでもどうしたって嫌いにはなれなかった。

 

『案外遠回りも、悪くないかもです…よ?』

 

そう語る少年がなんだか羨ましいと、一夏は思った。

 

そして、生憎と試験中なのと一夏の技量的に宇宙までは行けなかったが、少年に連れられて見た雲の上。

少し纏わりつく雲をかき分けて、目の前にいるはずなのに見失いそうな少年の背中を追いかけるようにして飛び出したその世界は、一夏の知る何よりも美しかった。

 

『──────』

 

目を見開いて、息を呑んだ。

深い、深い青。

どこまでも続く白い大地。

時折雲の上に顔を出す見たこともない鳥たち。

 

自分と少年以外誰もいない、その世界は孤独なのに居心地が良かった。

 

悪くないな、と思った。

自分の姉と同じ景色を見たいと、そう思った。

 

…なお、その姉は直前のセシリアの試験でめちゃめちゃちゅーしてた、というのはおいておこう。

 

「わからないところはありますか?」

「すみません、この空中での姿勢制御の部分がちょっと───」

 

織斑一夏。

唐突に自分がIS学園に入学することになったことに戸惑いつつ、現在色々奮闘中。

 

その真剣な横顔が女子の視線をアホほど集めていることに、少年は末恐ろしさを感じていた。

なんでこの人こんなに自分に向けられてる感情に頓着しないでいられるんだ、と。

 

なお、少年は朝制服姿の自分にどえらい興奮して千冬がチラチラ見ていたのも気づいていたし、朝束が制服姿に理性が焼き切れたのも知っていた。

 

…知っていたのに普通に帰宅した少年は、待ち構えていた束に制服が乱れるまで悪戯された上に、途中から千冬も加わり、前後から挟まれて振るわれる暴力的な快楽に溺れる少年はやがて二人との境界線も曖昧になって───

 

 

次の日、少年は服の下につけられた跡を隠すために制服を必要以上にきっちり着込むことになって、それが逆になぜか妙な色気を漂わせることになり、教室の空気をしばらくもじついたものにさせた、なんてのは少年の知ったこっちゃない話だった。

 

 




今回も最後まで呼んでくださってありがとうございます。
ちょっと夏バテでモチベ下がってきたので評価や感想、ここすきいただけると幸いです。
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