仮面ライダーガヴ Decoration G3 作:ただの人間
「ぜあぁっ!」
「のわっ!?くっ、この!」
裂帛の気合と共に、強化された腕力を存分に活かしてガードアクセラーを振るう味川。いや、G3-P。
突然の攻勢に面食らった怪物は強力な電磁警棒の一撃を受けたじろぐも、直ぐ様害をなせる存在であると理解して拳を突き出す。
「甘い!」
が、G3-Pの装着者は任期が短くとも、元警官。最初から戦闘を覚悟していたつもりの味川と、不意の遭遇で咄嗟に拳を振るうのでは、動きに差が出るのは当然のことであった。
拳を左手で防ぎ、逆にそのまま組み付くと、怪物の体をぐっと引っ張って前のめりに倒すとすかさず無防備な腹へと膝蹴りを仕掛ける。
「ぐっ!ぐぁっ!うぎゃっ!?」
3度、繰り返し蹴られた怪物は4度目の追撃を何とか受け止め、逆に全身を振り回すようにして引き離す。
「こ、この野郎…!」
今度は怪物の出番だ。大きく飛んでG3Pに飛びかかると、防ごうとした両腕を掴んで、そのまま超人的な力で押し込んでいく。
「ぐうぅぅっっ……!!った!はあっ!」
「おっと!」
数メートルほど押し込まれるも何とか踏ん張り、払い除けた勢いそのままに回し蹴りをするがそれを予見していたかのように躱される。
「おおッ!」
「ちっ」
再び空いた距離を詰めるべくG3-Pが走り寄ると、迎え撃つ様に怪物は拳を前に突き出した。
両者、顔面に直撃。互いの直撃箇所からは、鋭い攻撃の証か、火花が散る。
しかし、硬直が先に解けたのはG3-Pの方だった。
G3-Pにも衝撃はあったが、忘れてはいけないのが装着型の外骨格であるということ。例え同等の攻撃が入ったとしても、生身の肉体に直撃するのと、鎧を挟むのでは大きな差が生まれるだろう。
その僅かな隙にG3-Pは更に一歩踏み込んだ。
味川の体重は80kg。G3-Pの重量も合わせれば130kg。実に50kgもの全身鎧を身に包んでいるが、パワーアシストによって動きが衰えるということはない。
「ぜっ!!」
「ギャゥアッ!?」
そのまま、渾身の力を込めた殴打。一撃、二撃と加えれば、たちまち怪物は地面に転がり回る。
「があっ…!」
次いで、一息つかせる間もなく地面に投げ出された身体に追い打ちをかける。
しかし怪物も必死で、近寄ってきたその腹に蹴りを加えると、たたらを踏んだG3-Pを更に蹴り飛ばす。
「ぐっ!?」
人間の域を超えた怪物の脚力は、重いG3-Pごと蹴り飛ばし、浮いた体が5m程背後へ飛ばされる。コンクリートの柱に激しく体をぶつけ、体が崩れ落ちる。
『バッテリーユニットに強度の衝撃、出力80%にダウン!』
立ち上がろうと体を起こすと、視界には怪物の足の裏。踏みつけを両腕で何とか防ぐも、座った姿勢で防御態勢を取ってしまったが故に、追撃を許してしまう。
「ハハッ、オラオラァ!」
「ぐっ、この!」
何度も踏みつけを食らい、火花を上げる左腕を見た辛川は、一か八か、その全身で怪物の両足にしがみつき、体ごと回転させることで怪物ごと地面に引き倒す。
それを嫌った怪物が起き上がれば、既にG3-Pも体勢を立て直していた。
「この野郎…!」
怒った怪物が反撃に出る。その驚異的な身体能力そのままにタックル。これを防ぐG3-Pだったが、続く殴打が胸部に直撃し火花を散らせる。
怪物の手応えとしてはクリーンヒットだ。
しかし、G3-Pは動じず次の行動に移っていた。
それを可能にした秘密はG3-Pの胸部にあった。名をバリアントプロテクターと言い、特殊ジュラルミン合金を何層にも重ね合わせた超合金製のアーマーであり、最も防御力の高い部位なのだ。
「な、何っ!?」
攻撃を受け止められ、動揺する怪物に対し、肘打ちで胸を突き、次いで反撃と振り下ろされた腕を掴んで綺麗な一本背負い投げ。
初めての人間の業に、受け身をとることもなく地面に叩きつけられる怪物。呻く怪物へ油断せずにガードアクセラーを構える。
その動作に恐れをなしたのか、はたまた躍起にでもなったか、しゃがんだまま組み敷こうと飛びかかってきたが、それも強化されたG3-Pの跳躍によりひらりと躱され、逆に晒した隙に最大電力にしたガードアクセラーでもって制圧する。
ただでさえ強力な腕力から放たれる攻撃に加えて、生物にとって有効な、特に海洋生物の特徴を持つこの怪物にとっては特効武器になる。
「だっ!でぇい!」
上段からの叩きつけ。腕を組んで防がれる。が、直ぐ様返す刀で逆袈裟に薙ぎ払えば、激しい苦悶の声をあげながら怪物の身体は吹き飛ぶ。
これはまずいと思ったのか、次いで振るわれるガードアクセラーを、腕にしがみつくことで何とか食い止める。
G3-Pが何とか振り払ったものの、衝撃でガードアクセラーを取り落としてしまう。
それと同時に、転がっていく怪物も懐から何かを落とした。
「これは…?」
距離をとって傍観していた氷室が、すかさず手に取る。
それは、まるで人の映ったアクリルスタンドのようで、赤い帯のようなものが巻かれている。
しかし、アクリルスタンドという割には著名な人物やアイドルという訳でもなく、そして怪物が持っていたことに強い違和感を感じる。
「あっ!俺のヒトプレス!返せ!」
それを見た怪物は、焦ったように手を伸ばした氷室を追いかけるが、その肩をG3-Pが掴んで食い止める。
「ぐっ、このっ!そこの人間、止まれ!」
G3-Pに抑えられた状態ながら、口から謎の液体を吹き出して氷室の歩みを止めようとする。
「うわぁっ!?」
何とか射出直前に顔面を殴ったおかげで少し進路がずれ、コンクリートをも割る一撃は当たらない。が、残った粘液に足を取られて全身がネトネトの粘液に塗れてしまう。
「うえぇぇ…。気持ち悪ぅ…」
どうやら粘液そのものには人間を即座にどうかするほどの効果はないらしく、その感触に不快感を覚えるだけにとどまったらしい。
「あっ、くそっ!せっかくいい幸せ具合のをなんだぞ!?絶対斬るんじゃグワッ!?」
「お前の相手はこっちだ!」
そのまま走り去っていく氷室を見送らせ、G3-Pが再び戦闘の主導権を握り始めた。
『氷室くん、それは?』
「わかりません。怪物が落としましたが、あの様子から見て、何か重要なものなのでしょうか?」
『ヒトプレス、と言っていたわね。言葉通りに受け取るなら、人をプレス…圧縮したもの…?そんなことが、ありえるの?』
「でも、辛川さんが戦っている怪物だっているんです。何が起きたって不思議じゃないですよ。それに、怪物が人を消すっていうのの真相は多分これですよ。何とか出来ないでしょうか…?」
氷室は司令室として使っているトラックを目指しながら、カメラでヒトプレスと呼ばれたそれを撮りながら走る。
「斬るんじゃないってことは、斬ったら中身が解放される…?」
怪物から逃げながらも、とりあえず纏わりついている赤い帯のようなものを剥がそうと力を込める。が、それはかなりの硬さで縛られており、無理に破こうとしようものなら、ヒトプレスのほうが先に割れてしまうだろう。
そう考えていると、氷室の目の前から待機していたトラックが迫るのが見える。どうやら氷室の撤退に合わせて迎えに来たらしい。
直ぐ様背後の扉を開けて乗り込むと、手に持っていたヒトプレスを見せる。
「これ、巻いてる奴を斬るものなんかありません!?」
「斬るもの…。カッターナイフじゃ駄目?」
差し出されたそれをひったくるようにして受け取り、傷つけないように短く刃を出したそれで赤い帯部分をなぞるが、やはりこちらも硬く、かといって乱暴にしようものなら割れかねない。
「もっと斬れ味いいやつは無いんですか!?」
「もっとって言われたって…。あっ!」
あくまで移動支部としての面が強い貨物トラックでは、大した刃物などない。
しかし、今気づいたかのように、奥を見れば、機器に繋がれた刀剣型の武装が鎮座している。
GS-03〈デストロイヤー〉。エレクトロエンジンが電気を振動波に変換し、超振動コイルを通じて伝導することで、ジュラニウム合金・グレード10製の刀身が1分間に200万回振動し、超高周波を発生させ鉄骨も一撃で両断する。
いわば、超振動により切れ味を極端に上げたチェーンソーの様なものだ。
しかし、これはまだ開発途中であり、具体的に言えばバッテリー面での電力ロスが大きく、本来30分は稼働できる予定が、その6分の1、5分程度とかなり無駄にしてしまっており、更にジョイント部のホールドロック機構やジョイント部が未完成なため武器としては持ち込んでいない。
それでも車内に残しているのは、万が一を考えてか。
しかし、刃自体の機構は完成しているようで、そのまま固定した状態で電力を流す。細かく振動を始めたデストロイヤーへ、そっと赤い帯のみを掠らせる。
「そーっとそーっと…と」
超振動により強化された切れ味は、先ほどまで手こずっていた赤い帯を、いとも容易く引き裂いた。
次の瞬間、手に持っていたヒトプレスが消失し、代わりに車内に女性が一人突然現れる。
「おわっ!」
「ふ〜ん…。えっ!何ここどこ!?だ、誰!?拉致!?何、何なの!?」
「ほんとに、人に戻った…」
自分で斬っておきながら、腰を抜かして驚く氷室。しかして女性は自身に起こったことについて記憶していないらしく、まるで突然ここに現れたかのような反応だ。
女性への対応は同じく女性のオペレーターに任せ、氷室は繋いでいた機器を引き抜いて、デストロイヤーを担いで現場へと走った。
「はぁ?何?怪物に攫われた…?何のコト…?」
「成程、自覚はなく、突然ここに現れたと認識していると。……あっ、氷室くん、それはまだ実用段階では…!」
静止する声が聞こえるが、氷室は止まらない。
何せ、ここらで起こっている失踪事件は1件や2件ではない。もしも、仮にそれだけの数の人間があのような姿で捕まっていると思えば、解放する手段も必要だと考えての事であった。
「はっ、はっ、持ちにくいし、重い…!」
それも当然。元よりデストロイヤーはG3ユニットに装着することが前提の装備。重量はもとより、その携行性も単体では持ち運びがしづらいものだ。
そう時間を置くことなく、交戦現場へは戻ることが出来た。
既に、その時には決着がつき始めていた。
怪物は地面に引き倒され、その体を抑えつけられたまま、ガードアクセラーを突きつけていた。
「はっ、はっ…!お前は、お前たちは何なんだ!?何故人を襲う!?」
「ぐっ、畜生っ!?人間は俺達よりも弱い楽な仕事ってのは嘘だったのかよ!?」
「仕事、だと…?お前たちが人間を襲うのは、何か指示を受けてのことなのか!!」
「うぐっ…!?そ、そうだ!俺達はただの雇われなんだ!バイトなんだよ!」
「バイト…?バイト感覚で、人々の命を弄んでいるのか!!」
「ヒッ、お、俺達は、もう戻れねえんだよ!こっちの世界に来たからには、自由に戻れねえし、人を攫ってスパイスを確保しなきゃストマック社から狙われる!な、なあ、頼むよ!反省するからさ、み、見逃してくれよ!?」
その命乞いに、少しの間動きを止めたG3-Pを見て、怪物はこれだ!と言葉を話し始めた。
「お、俺達の種族はグラニュート!こっちの世界には、ストマック社からの仕事で、闇菓子の材料になる人間を攫うために雇われて、こことは違う世界からやって来た!ど、どうだ?聞いたところ、情報が欲しいんだろ?な?情報提供料として、命は見逃してくれよ…?な?」
「………闇菓子とは、ストマック社とは何だ?」
「や、闇菓子はストマック社が作る菓子だ!そりゃとんでもない美味さで、やみつきになったグラニュートは山ほどいる!その材料として、人間を攫うようにストマック社が闇菓子を餌にバイトを雇ってる!お、俺もその大多数の中の一人、所詮替えの利く手駒に過ぎないんだよ!な?見逃してくれれば、もっと詳しく話してやるからさ、やめろって、な?」
あくまでヘルメットであるG3-Pの頭部は、表情の変化を確認することは出来ない。無機質なまま、重い口調で問いかけるそれに対して、
「……お前は、その闇菓子とやらを得るために、失われると分かっていて尚何人の命を奪ってきた!?」
「は?……い、いや、知らねえよそんなの!?とにかく、話してやるから俺を見逃してくれよ!」
問い詰められて尚、本気で何を言っているのか分からないとでも言うかのように弁明するグラニュートへと怒気を見せた。
「本気で、言っているのか…!」
「う、ち、畜生!そのくらいいいじゃねえか!」
肩を掴んで凄むG3-Pの気迫に怖気づいたグラニュートは、言い訳をしながらG3-Pを思い切り突き飛ばし、がむしゃらに逃げ始めた。
「ぐっ、しまった!氷室さん!」
「と、止まれ!」
その先、氷室がいる方向へと駆け出したグラニュートは、その静止の言葉も振り切り腹の口から舌を曝け出した。
「煩せぇ!邪魔だ!」
高速で迫る舌は、構える氷室の周囲を取り囲み、瞬く間に収束してその体を完全に包みこんでしまう。
「――氷室さんっ!」
「うわっ!?」
その瞬間。氷室の身体は辛川によって突き飛ばされ、ゴロリとアスファルトの上を転がった。
「み、味川さん!?」
突き飛ばされた衝撃のまま、氷室の目に映ったのは、異形の舌に纏わりつかれ、小さな形状に圧縮されるG3-Pの姿だった。
はい。文字通り
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