お祖父様は言っていた   作:水芙蓉

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一言目

 蓮ノ空女学院の女子寮の一室で、銀髪碧眼の少女がベッドの上で眉をナナメ四十五度に傾けて大の字で寝っ転がっていた。

 

「蓮ノ空女学院には『先1Complexは犯罪。最低でも懲役2年、又は1000万以下の罰金』という伝統が代々伝わっていることはご存知でしょうか?」

 

 ベッドの上の少女、池見衣優は自分の部屋ではない藤島慈の部屋で、その日の外出時の出来事を振り返っていた。

 因みに、衣優は全試合3T目アポロを決めているため、人のことは言えない。

 

「知らないよ! というか、私のベッドなんだけど!」

「美少女のベッドの上は良い香りがするので寝やすい。これも蓮ノ空女学院の伝統だったりするんだけど?」

「どうでもいい! スクールアイドルならある程度美少女なんだからアンタも美少女でしょう! 鏡見て来なさいよ!」

 

 そろそろ就寝点呼の時間が差し迫っているなか、衣優の戯言に付き合っている余裕は慈にはない。

 そもそも、朝から門限まで一日外出していた衣優が食事や入浴、課題をこなした後に元気に絡みに来る元気に付き合っていたらいくら体力があっても足りない。

 

「美少女なのは前提だけど、他人のベッドって良い匂いしない?」

「付き合い立ての彼女みたいな事言ってないで、早く帰れ!」

 

 慈に強引に追い出され、仕方なく自室に帰るとどっと疲れが出てきた。なんとか寝間着に着替えて毛布を被ればもう瞼が閉じて、朝まで開くことは無い。

 

 そして、翌日の放課後。

 部室で仮眠用の枕の上に顔を置いた衣優は退屈していた。

 

「ふぁ……眠い」

 

 衣優は自身の先祖が蓮ノ空女学院の創設者だからという理由でこの学院に通っていて、ただそれだけの話。

 だから、やりたいことは全部やる部活。『全部』を立ち上げて唯一の部員として日々を過ごしている。

 

 部室には何らかの結果を残した景品やトロフィーが大量に飾られている。

 衣優がその時興味がある物で勝ち取ってきたモノで、そのおかげで実績だけは積み重なっていて、部の存続が許されていた。

 

「何か面白いことないもんか……」

「衣優ー。昨日、私の部屋に忘れ物していったでしょ」

「ちょうど良いところに来た」

 

 部室の扉をノックしたと同時に入室した慈は衣優の手提げ袋を持っていた。

 

「げっ、また何か変なことしようとしてない?」

 

 衣優が手提げ袋を受け取り、部室の菓子棚からお茶請け菓子に慈の好物の最中を出すと、滅茶苦茶に巻き込まれるという確信がありつつも、彼女は抗えずに椅子に座ってしまう。

 

「変じゃないよ。人に理解されてないだけ」

 

 折角和菓子なのだからと衣優は急須に茶葉と湯を淹れて軽く振って馴染ませながら湯呑みに注ぐのを尻目に、慈は包装紙を外して最中に口をつけた。

 

「それを変なことって言うんだよ」

「でも、食べるんだ。というか、食べたね。食べたよね?」 

 

 慈が最中を食べるのを待ってましたと言わんばかりに湯呑みを置いて距離を詰める。

 衣優が食い気味に詰め寄ってくる時は、おおよそ録なことを言わないのは102期生(同期)の共通認識だった。

 

「聞くだけなら聞くけど」

「慈ミル──」

「ダメだけど? ふー、ふー……」

 

 手をワキワキさせた衣優にドン引きしながら、湯呑みを持って緑茶を息で冷まして口に含む。

 特にそれも意味もなく、淹れたての緑茶は熱く、軽く舌を火傷してしまう。

 

「え、でっかい乳は揉むべきってスクールアイドルが芸楽部だった時代からの言い伝えでは?」

「そんなわけないじゃん。自分のでも揉んでなさいよ」

 

 そんなわけはなかった。

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