幽霊って世知辛い。   作:パスタは旨いぞ

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なぜか筆がのって続いちゃいました。


移動にしたって世知辛い

曇り空の下、墓地を抜け、人気のない山道をふたりで歩く。

 

「まずは後輩君に幽霊の必須技能を教えてあげよう。」

「必須技能…なんですかそれ。」

「まあまあ、いったんお楽しみ、ってことで。」

 

にやにやした顔から、不安が込み上げる。あれは確実に、何かを企んでいる顔だ。

しかし、それで怖気づいてしまうのは負けなような気がする。ここはひとつそのたくらみに乗ってあげることにしよう。

 

「もうすぐでつくよ!ついてきてー!」

 

駆けだした先輩の背中を追って坂を上る。湿った土のにおいがかすかに漂い、木々の隙間からちらちらと光がこぼれている。やがて木の壁を抜けると、ぱっと視界が開けて、街を一望することができる崖へとたどりついた。

 

「うーん、何度見てもいい眺め!」

「確かに、いい景色ですね。」

「でしょー!割とお気に入りなんだよね、ここ。」

 

雲が晴れ、明るくなってきた空も相まって、なかなかいい雰囲気の場所だ。

 

「とりあえず、あそこの商店街が次の目的地かな!」

 

先輩はやや遠くを指さした。

 

「あそこ、って結構遠くないですか?」

 

幽霊だからか歩いても疲れはたまっていないように感じるが、とはいえあの距離を歩くのはいささか憂鬱である。

 

「有名な観光地か何かなんです?」

「ううん、たまたま行ってみたかっただけ! 何もないけど、にぎやかだよ」

「何もないって、えぇ。」

 

何の下調べもない“旅”の出発地点としては、実に気楽なもので、悪くない。

だが、それにしたって方法があったのではないかと…

 

「まあ、それなら一回引き返さないとですね。この山を下るルートわかります?」

 

崖から見えている、ということは、そもそも一度山を下らないといけないということである。まあ、先輩と歩いているだけでも悪いものではないが。

 

「うん。知ってる。いくよー!」

 

先輩はにぱっと笑って僕の手を取って。

崖から飛び降りた。

 

「うわああああ!?」

 

当然、僕は引きずられて落ちる。

出来たことは、ぎゅっと目を閉じて、衝撃に備えることだけだった。

が、いつまでたっても地面にたどり着かない。

むしろ、上に引っ張られているような…

 

恐る恐る目を開くと、僕たちは宙に浮かんでいた。

 

「じゃじゃーん。ということで、幽霊の特権第一弾は空中移動でーす!」

 

先輩がどっきり大成功!と言いたげな顔でニヤニヤこちらを見下げている。

いま僕は先輩の手にぶら下がっているような状態だ。地面は遥か下、揺れる木の先端すら見下ろす高さだ。

 

指も肩も一切痛くない。そんなところで、あらためて幽霊なんだなと実感する。

鮮やかな現実逃避である。絶対驚くべきはそこではない。

 

「後輩君にもこれを習得してもらって、商店街まで飛んで行くよ!なかなか最初は感覚掴むのが難しいと思うけど、私が懇切丁寧に教えてあげよう。感謝しな~?」

 

なるほど、そういう意図だったのか、という納得とともに、ゆっくりと頭が回ってくる。

 

「しかし、落ちると思ってぎゅっと目をつぶっちゃうなんてかわいいとこあるじゃん。怖がってるとなかなか習得できないかもねー。」

「先輩。」

「あれ、どうした後輩君、そんな怖い顔して。」

「はたかせてください。」

 

 

案外簡単に飛べた。怒りは原動力である。

 

 

「うわ、もうだいぶ飛べるようになってる。才能あるんじゃない?」

 

先輩をしばいたあと、しばらく飛び方の練習をした。

手を離してはふらつき、バランスを崩して回転しながら落ちかけ、慌ててまた先輩に掴まる。

まっすぐ進む分には簡単だが、上下しながら飛んだり、曲がったりするのはなかなか難しい。

だが、段々コツをつかんできた。自転車のようなものだ。コツさえつかめばある程度はどうにかなる。スピードもかなりでるので集中力が必要だ、というのも。

 

「幽霊の才能、ていうと、なかなか、皮肉、ですけど、ね。」

 

それはそれとしてとても疲れる。使ったことのない筋肉を鍛えようとしたときのような疲労感だ。

空を飛ぶというのはなかなか体力を使うものらしい。

 

「いやいや、ほんと、凄いと思うよ。そんな早く上達するなんて。今は息切れしてるけどそれも割とすぐに解消されるし。まあ、私の指導が良かったなのもあるけど。」

「冗談きついですよ。先輩、グワーッとかグググーっとか、そんなことしか、言ってなかったじゃないですか。」

「ナンノコトカナー」

 

まあ実際習得してみるとなかなか言語化が難しい感覚ではある。脱力しながら水中で全力疾走する、というのが一番近いのだろうか。脱力しながら全力ってなんだ。

 

「しかし、これは便利ですね。確かに必須技能だ。」

「幽霊は物触れないから、自転車とかには乗れないんだよね。その代わりみたいなもんだよ。」

 

そうか、確かに幽霊にとって移動手段の大部分は死んでいるのかもしれない。

ペダルからすり抜けてしまえば、自転車をこげるはずもない。

 

「バスとか電車とかはどうなんです?乗れるんですか?」

「高速ですり抜けて線路上とかに置いていかれるよ。」

「むなし。」

「実際むなしーよ。」

 

やっぱり世知辛いよ、幽霊。




タグってこれであってるんですかね。

感想とか、評価とか、してくれたりしたら、狂喜乱舞するのでよろしくお願いします。
続くかはわかりません。
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