瀟洒な召し使い -NEON GENESIS- 作:グランド・オブ・ミル
久しぶりに咲夜さんの物語を読み返していたら、色々と新しい設定を盛り込みたいなと思い、リメイクしてみました。緩くまったり進めていけたらいいなと思います。
第1話 起動
▽
ツフル人。
惑星プラントという星に住んでいる人間達の名称であり、非常に優れた科学力を有していることで知られている。その築き上げた文明は宇宙最先端であるとの呼び声も高く、頭脳に優れた科学者達がまったく新しい発明品を生み出すために日夜研究に明け暮れている。
そして今日もまた、ツフル人達は新しい歴史を創り出そうとしていた。ツフル王のお膝元である王都の遥か地下に実験施設がある。通称”Z-Lab”と呼ばれる大規模な研究用地下施設だ。ここではツフル王直々の命令と資金援助の下、惑星プラント中から集めた特に優秀な科学者達によってとある一大プロジェクトが進められていた。
_コポ…コポポ…_
「…どうだね、様子は?」
「ハーモニクスは安定、臨界波形も基準値を下回っています」
多くの科学者達が集う実験室、その中央に緑色の液体で満たされたカプセルが置かれている。大きなカプセルだ。人一人くらいなら余裕で納まってしまうほどのサイズがあり、実際に中に誰か入っている。
華奢な身体をした銀髪の少女だ。衣服を何も身に纏っていない生まれたままの姿であるその少女は、まるで死んでいるかのように固く目を閉じてゆらゆらと液体の中を漂っている。その身体には何本もの管やチューブが繋がれ、口元には人工呼吸器のようなマスクも装着されている。
周りの科学者達はカプセルに繋がった機器やコンピュータで何やら様々なデータを確認している。その様子は一見うら若い少女に対して非道な人体実験を行っているかのように見える。
「ISC演算核、展開完了。魂格同期率、94.7%」
「メイン制御システム、精神インスタンスへ接続完了」
「サブシステムも異常なし。いつでも起動フェーズへ移行できます」
しかし違うのだ。この少女はここにいる科学者達が長い年月をかけて造り上げた存在、いわば人造生命体だ。
擬似生命型汎用戦術メイドユニット製造計画、通称”Project-NTG”。そう呼ばれている計画の成果がこの少女なのだ。外見は完璧なヒト型の女性でありながら、内部は特殊なセラミック細胞と量子演算体を複合的に統合した構造になっており、極めて高度な
しかしそこは宇宙一の科学力を誇るツフル人。年単位の時間と莫大な予算を投入して実現まで漕ぎ着けることができた。今日はいよいよ記念すべきこの初号機の起動の日なのだ。
「…ふむ、いよいよじゃな。では起動フェーズへ移行、各自作業を開始せよ」
プロジェクトの主任である白い顎髭を生やした老人科学者が、満足気に自身の髭を撫でながら指示を飛ばした。それを聞いた周りの科学者達は一斉に持ち場につき、カタカタとキーボードを叩き始める。
「セラミック細胞群、構造安定確認。再構成反応、停止状態を維持」
「形状記憶リンク、レベル7まで同期完了」
「バイタル・テンプレート、アップロード完了」
「オルゴノーム振動数、基準値内。魂格導通率、92.4%」
「ISC演算核、起動準備。フェーズA通過」
「精神アンカーコア、位置固定。量子リンク同期率上昇中」
「エーテルバランサー、臨界安定」
室内を淡々とした科学者達の報告の声が飛び交う。静かながらも確かな緊張感に場が包まれる中、着々と少女が目覚める準備が進められていく。
「”
科学者の一人がレバーを引くと、ガコンッ、という音が響き、少女が入ったカプセルの後ろにある大仰な機械が動き出した。カプセルよりも何倍も大きなその機械はやや太めのチューブによってカプセルと接続されていて、そのチューブを通って白色の液体が機械からカプセルへ、ひいてはその中の少女へと注がれていく。白色の液体が背中に繋がったチューブから体内に入った時、固く閉じられた少女の瞼がぴくりと動いた。
「…ここからが重要じゃな」
老人科学者がぼそりと呟く。その声を聞いた若い男の科学者がごくりと唾をのんだ。軽く深呼吸をし、緊張を落ち着かせてから次の段階へ進む。
「…プロトコルD-00起動、ライン接続」
「ISCブート…起動確認」
ポウッ、と少女の胸部に赤い光が灯った。その光と先程少女の身体に注入された
「おおっ、成功したか…」
「魂格パルス、点灯。感応波、レベル3に上昇」
「コア、正常に作動しています」
「パルス信号転送開始……、人格プロトコル受信」
「μ-TSD、起動を確認」
「全システム異常なし。”DB111-T2000RS”、稼働を開始します」
緑色の液体が排出され、カプセル内の水位が下がっていく。すべて抜かれると次にマスクやチューブが取り外されて、最後にカプセルがゆっくりと開いた。戦闘用マシンミュータント、DB111-T2000RSの覚醒だ。少女が目を開き、ゆっくり立ち上がるとその様子を見た室内の科学者達が一斉に歓声をあげた。
「…やれやれ、何とかツフル王に良い報告ができそうじゃな」
安堵した様子でほっと息をつく老人科学者。そんな彼をDB111-T2000RSが蒼い宝石のような瞳でじっと見つめていた。
また作者の気まぐれが始まってしまいましたね…。物好きな方はお付き合いいただけると幸いです。
どの作品も完結まで走り切りたいと思っているんですけどね…。作者の身体は1つしかないからどうしても時間が足らんとです…。