「……これが、今回の件の報告書です」
伊地知はそう報告しながら、内心では“あり得ない”という思いを拭いきれずにいた。
それは、報告を受けている夜蛾正道も同じだった。
——現代最強の術師、五条悟が姿を消したのだ。
「呪力の残穢から、帳の中心部に直径1メートルほどの術式が付与された領域が確認されています
窓や一級術師が入った頃と比べて、範囲は著しく縮小しているものと思われます」
「……おそらく、外側の帳はブラフだな 出入りに関する制限がない 中の状況のみを隠す帳」
夜蛾が静かに呟く。
だが、
——それだけで、五条悟が消える理由にはならないのだ。
夜蛾は額に手を当て、頭を抱え込んだ。
想定できるのは、面白半分に領域の必中術式を受け 付与されていた術式が拘束系の術式。
だが、ただの拘束など、五条悟には通用しない。
おそらく、空間転送か、あるいは隔離系の術式が付与された領域——。
「……領域の効果範囲を極端に絞り、そのぶん術式の出力を引き上げたか。
だとすれば、何らかの縛りが設けられているはずだ…」
夜蛾の視線は机の上の報告書に落ちたまま、重く沈んでいた。
「……一体、どこに消えたんだ。悟」
夜蛾は報告書を睨みながら、呟くしかなかった。
少し前に遡る。
帳内に侵入した五条悟は、迷いなく中心部を目指した。
そして、そこに“それ”はあった。小さな結界——いや、領域。
(領域……?)
「付与された術式は……なるほど、そういうことね」
六眼が捉えた情報によると、この極小の領域にはある術式が組み込まれていた。
——日本各地にあらかじめマーキングされた地点へのランダム転送。
複数の縛りを結ぶことで、術式の効果は底上げされている。
「……、呪力が低い人間は決まった場所に送られるよう調節されてる、ってことか。非術師が消えた理由もそれで納得だ。
で、高い呪力を持つ術師は……電波も届かないような場所、例えば……樹海、とか?」
おそらく誰もいない辺境の地に飛ばして そこに放し飼いにしている呪霊にでも殺させるつもりなのだろう
(……フッ)
五条はニヤニヤと笑みを浮かべ、結界を見下ろした。
「触っちゃお」
——軽口。半分は面白半分。
だが、もう半分は確かに術師としての判断だった。
転送された先に残された呪力残穢から、他のマーキング地点を特定し、非術師たちを救出するため。
それは六眼を持つ五条悟ならできたことだった
しかし、五条悟は知らなかった。
この領域に結ばれている「縛り」を
この領域に存在する縛り:
1. 効果範囲を縮小するごとに、転送される空間の範囲が拡大する。
2. 術式を受けた者に、直接的な身体的害を与えない。
3. ただし、特定の条件下においてのみ、別の縛りが発動する。
——その条件とは、
「五条悟が領域に触れた場合、五条悟以外のすべてに術式効果を無効化する」
この瞬間、術式の対象は完全に五条悟一人に絞られ
五条悟が触れた途端転送された非術師は元いた場所に戻され これら一連の出来事の記憶を失う
その結果、領域の効果は極限まで増幅され、ついには——別世界への転送を可能とする
また
——五条悟が転送後、3ヶ月以内に戻ってこなければ
術式に関与した術師および、影響を受けたすべての非術師が死ぬ。
五条悟が領域展開後一週間触れることがなかったら術式の永久剥奪 ま他は死
常識では成立しえないほどの縛り。
だが、それは現代最強の男・五条悟だからこそ、成立した。
全ては、「五条悟を、この日本、いやこの世界から排除する」ため
見慣れない景色の中 さっきとは違う景色を見て五条は口を開く
「もしかして これ まずった?」