貞操逆転世界に転移したら、彼女いない歴=年齢の俺が清楚系美男子としてモテだした   作:荒井竜馬

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第20話 girlsサイド:嘘つきな女の子の新たな癖

 翌日。僕はできる限りの準備を済ませて、伊勢くんと待ち合わせをしたファミレスにやってきた。

 

 おしゃれカフェからファミレスに行き先が変更になったのは、『男同士だし、ファミレスとかでよくない?』という伊勢くんからのメッセージがあったからだった。

 

 僕からしたら伊勢くんと会えるならどっちでもいいし、何も問題はなかった。

 

 一夜漬けでいれた情報だけで男の子をエスコートするのは至難の業だけど、やってみるしかない。

 

 僕はそう考えてぐっと小さくガッツポーズをする。

 

「少しでも僕と話していて楽しいって思われないと」

 

 それから、僕は少しだけ袖まくりをして肌の露出を増やしてみた。

 

 ネットで調べた情報によると、一部の男子は女子の肌が見えてる方が喜ぶらしい。本当かどうかは分からないけど、やれることは色々やってみないと。

 

 まぁ、ジャージ姿で肌の露出がどうこういっても仕方がない気もするけど。

 

 今日の僕の服装は伊勢くんに会った時と同じジャージ姿だった。

 

 昨日、どんな服装をしようかと色々考えたが、学校帰りだから選択肢は制服かジャージに限られる。

 

 自分のことを男だと言ってしまった手前、女子の制服姿で会うことはできない。だから、ジャージ姿一択になってしまったのだった。

 

「女の子らしさを感じてもらいたいけど、感じられたらボクの嘘がバレちゃうし……どうすればいいんだろ」

 

 伊勢くんに意識して欲しいけど、意識させるためには僕が女の子だってことに気づいてもらう必要がある。でも、女の子だって気づかれたら嘘がバレる。

 

「これ、もしかして詰んでるのでは?」

 

 僕がそんなふうに頭を悩ませていると、伊勢くんがファミレスの入り口から入ってきた。

 

 僕は急いで立ち上がって、伊勢くんに手を振る。

 

「伊勢くん、こっちこっち」

 

 伊勢くんは僕に気づくと、軽く手を振り返して僕の座っている席までやってきた。

 

「ごめん、ごめん。結構待たせちゃったかな?」

 

「ううん。僕も今来たところだから」

 

 僕は男の子をエスコートする際の定番フレーズを口にして、口元を緩める。

 

 まさか、僕がこんなセリフを口にする日が来るとは!

 

 僕はそんな感動と少しの恥ずかしさを誤魔化すように、髪を耳にかける。

 

「ごめんね、急に話がしたいだなんて言っちゃって」

 

「いやいや、嬉しいって! 男友達とファミレスなんて凄い久しぶりだし!」

 

 伊勢くんは席に着くと、心の底から嬉しそうに笑った。

 

 穢れがないような伊勢くんの笑みを向けられて、僕は胸をきゅっとさせてしまった。

 

 ……でも、男友達かぁ。

 

 僕は伊勢くんを騙している罪悪感と、女の子として見られていないという事実に少しだけ眉尻を下げてしまう。

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

 それから少し会話をしていると、呼び鈴を鳴らしていないのに店員さんが注文を聞きに来た。

 

 僕らと同い歳くらいの女の子の店員さんは、伊勢くんに可愛らしい笑みを向けていた。

 

 伊勢くんはメニュー表に目を落しながら、頬を掻く。

 

「えっと、まだ決まっていないというかっ、すぅー」

 

 あれ? なんか僕と話しているときと違う? なんか歯切れが悪いような感じがする。

 

 どうしたのだろうかと考えていると、店員さんがポケットから一枚の小さな紙を取り出して机の上に置いた。

 

 そこに書かれていたのは、チャットアプリのIDだった。

 

「そうなんですね! あの、これとかおススメですけど!」

 

 な、ナンパだ! ……いやいや、普通僕が目の前にいる状況でそんなことする⁉

 

 男女でいるときにもナンパをしてくる女の子がいるとは聞いたことがあったけど、ここまで真っ正面からくることなんてあるんだ。

 

 伊勢くんがスタッフから差し出された紙を覗き込もうとしたので、僕は反射的にぱっとその連絡先が書かれた紙の上に手を置いて、連絡先を隠した。

 

 いや、僕にナンパしてきた女の子の連絡先を隠す死角はないんだけどね。

 

 それから、僕は何でもないふうを装って口を開く。

 

「とりあえず、軽い食べ物とドリンクバーでも頼もうか」

 

「お、おう。じゃあ、ドリンクバーとポテトお願いしやっす」

 

「……かしこまりました」

 

 店員さんは一瞬僕をじろっと見てから、ため息を漏らして厨房に戻っていった。

 

 すると、伊勢くんが胸をなでおろして僕を見る。

 

「ありがとうな、高崎。ていうか、さっき店員さんが出した紙何だったんだ?」

 

「連絡先が書かれた紙だよ。ナンパだよ、ナンパ」

 

「な、ナンパ⁉ 俺にか⁉」

 

 伊勢くんは信じられないといった様子で目を見開いた。

 

 僕は伊勢くんの反応に首を傾げる。

 

「そんなに驚くことかな? 伊勢くん、男の子なんだしナンパとか何度もあるんじゃないの?」

 

「いやいや、ないって! いや、ないことはないか……何度かぽいのはあったけど、連絡先を渡される前に鈴鹿が撃退してた気がするな」

 

「あっ、そっか。いつもは妹さんが一緒にいてくれるんだっけ?」

 

 鈴鹿ちゃんというのは伊勢くんの妹さんらしい。

 

 伊勢くんに変な女の子が寄ってこないように、いつも一緒に行動して警戒してくれているとのことだ。

 

どうやら、かなりお兄ちゃん想いの良い妹さんだ。

 

 本当は今日も同伴したいと言ってきたらしいが、なんとか同伴を断ってもらった。僕が『女子がかなり苦手な男子』だからと言うと、色々と察してくれたらしい。

 

 どんどん伊勢くんを騙していってる気がするなぁ。

 

 僕がそう考えていると、伊勢くんは肩を落とす。

 

「申し訳ないと思いながら、かなり妹に頼ってるな。どうしても女子との接し方が分からなくてな」

 

「女子との接し方が分からない?」

 

 僕は伊勢くんの言葉に首を傾げる。

 

 すると、伊勢くんは言いづらそうに口を開く。

 

「別に女子が嫌いとかじゃないんだ。ただ女子慣れしてないからさ、女子相手だとどうやって話せばいいのか分からないんだよ」

 

 伊勢くんはそう言ってから、恥ずかしそうに笑った。

 

 僕はあまりにもピュアすぎる伊勢くんを前に、また胸をきゅうっとさせてしまう。

 

 伊勢くん……純情な清楚系男子なんだ。

 

 あっ、電車の中ででも居づらそうにしていたのはそれが理由なのか。色々と頭の中で繋がっていく気がする。

 

 僕がそう考えていると、伊勢くんがちらっとドリンクバーを取りに行く女の子を目で追っていることに気がついた。

 

 その後はただ席を立っただけの女の子をちらっと見た。

 

 どうしたのだろうと思ったところで、僕はさっきの伊勢くんの言葉を思い出した。

 

「もしかして、さっきから色んな女の子見てるのも女の子を警戒してるってこと?」

 

「いやっ、そういうわけではなくて。それはただ気になって見てしまっただけだ」

 

「気になってる? 何か変なところあるかな?」

 

 僕は伊勢くんが見ていた女の子たちを観察するが、特に気になる点はない。あるとすれば、極端にスカートが短かったり、短いズボンを履いて大胆に生足を出してるくらいのものだ。

 

 僕が伊勢くんに視線を戻すと、伊勢くんは当たり前みたいに口を開く。

 

「いや、普通に短いスカート履いてることかいたら見ちゃったりするだろ?」

 

「……え?」

 

 僕は予想外過ぎる言葉に間の抜けた声を漏らしてしまった。

 

 何かの聞き間違いだろうか?

 

 僕はそう考えて、つばを飲み込んでから伊勢くんの顔を覗き込む。

 

「えっと、い、伊勢くんって、えっちなのが好きだったりするの?」

 

「いや、嫌いな男なんていないだろ」

 

「そ、そうなんだ」

 

 伊勢くんはあまりにも真っ直ぐ過ぎる目でそう言った。

 

 伊勢くん、清楚系男子でありながらえっちなことに興味あるんだ……いやいや、えっち過ぎるでしょ! 何その夢のハイブリッドみたいな属性!!

 

 そ、そういえば、男の子は女の子よりも実はエッチだみたいな話を聞いたことがある。あれって、本当だったの?

 

 ていうか、ただ多く足が出ているだけで、あんなに伊勢くんの視線を集められるんだ。

 

 それなら、もっと多く色んな所を見せたら、伊勢くんはーー僕を女の子として見てくれるだろうか?

 

 そう思ってしまった僕は、何かに突き動かされるように口を開いた。

 

「ねぇ、伊勢くん……伊勢くんはさ、知り合い女の子のえっちな画像とかみると、その女の子のことを意識したりするのかな?」

 

「いや、そんな経験はないぞ」

 

「もちろん、仮の話だよ。もしものお話」

 

 僕はそう言いながら、怪しまれないように微かに口元を緩めていた。

 

 すると、伊勢くんは少し考えてから僕に釣られるように笑う。

 

「仮にか。仮に知人のそんな画像を見たら、意識しないでいるのは無理だろうな。多分、普通に話しててもその画像のことを思い出しちゃうだろうし、意識すると思う」

 

「ふーん。そっか、そうなんだ」

 

「高崎? なんか急に機嫌よくなったような気がするけど、気のせいか?」

 

「ううん。なんでもないよ。なんでもない」

 

 それから、僕は話題を変えて他愛もない会話をして、伊勢くんとのおしゃべりを楽しむのだった。

 

 

 

 僕は伊勢くんと分かれて家に着くなり、制服に着替えてスマホのカメラをセットした。

 

 僕がスカートを下着が見えないギリギリまでたくし上げると、スマホからカシャッというシャッター音が聞こえてきた。

 

 自撮りした写真を確認すると、そこにはスカートたくし上げている僕が映っていた。ただし、映っているのは腰から下なので、写真に写っているのが僕かどうかは分からない状態だった。

 

 うん、今日見た女の子たちよりも脚が出てる。

 

 それから、僕は作ったばかりの捨て垢を使って、撮ったばかりの写真を伊勢くんに送った。

 

「……伊勢くん、興奮してくれるかな」

 

 いつか僕と写真の女の子が同一人物だと分かったとき、僕のことを意識してくれるよね。

 

 そのために送ってるだけで、他意なんて全くない。それなのに、私の胸はどこか興奮を覚えたかのようにドキドキとしてしまっていた。

 

 

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