貞操逆転世界に転移したら、彼女いない歴=年齢の俺が清楚系美男子としてモテだした   作:荒井竜馬

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第7話 girlsサイド:とある少女の日記

 

9月29日。

何やら病室が騒がしい。

何が起きたのだろうかと思い、そっと病室を覗き込むと、そこには目を覚ました伊勢くんと妹の鈴鹿ちゃんの姿があった。

 私は突然の事態に驚き、そのまま病室の扉を開けてしまおうかと思った。

 しかし、私はぴたっとその手を止める。

 ここで突然私が病室に入っていっても、驚かせちゃうしね。

 私はそう考えて、ぐっと堪えて病室から離れることにした。

 いつもは手に持っている花束から、病室にある花瓶にそっと一輪だけ入れて帰るのだが、そんなことを忘れてしまうくらい私は伊勢くんが目覚めたことが嬉しくなってしまっていた。

 

12月3日。

 今日病室を訪れると、伊勢くんはベッドの上で寝ていた。

 私はここちよく良さげな寝顔を拝んでから、持ってきた花束から一輪だけ引き抜いて花瓶の中に華を紛れ込ませた。

 その際、机の上に高校の願書と問題集などが置かれていた。

 私はそっと机に近づいてメモを取り出してペンを走らせて、伊勢くんが目指している高校名をメモする。

「へぇ、伊勢くんこの高校に行くんだ。結構偏差値高い所だけど、間に合うのかな?」

 私はそんな心配をしつつ、ぱらぱらと解き終えている問題集を確認する。すると、私の心配をよそに問題集の正答率はかなり高かった。

中学に通っていないはずなのに、こんなに問題解けるものなの?

私は伊勢くんのあまりの頭の良さに驚きを隠せずにいた。

「うん。これなら、高校で会えそうだね」

こうして、私が目指す高校は一つに決まったのだった。

 

 3月6日。

 待ちに待った高校入試の結果発表の日。

 私はパパッと自分の番号があるのを見つけてから、すぐに校門の前に移動した。そして、そこで伊勢くんの姿を探した。

 すると、しばらくしてから伊勢くんと鈴鹿ちゃんの姿が見えた。二人が笑っているのを見て、私はようやく喜ぶことができた。

 目立たないように小さくガッツポーズをしてから、私は上機嫌で二人の後を静かに追いかけるのだった。

 これでようやく伊勢くんとまた学校生活を送れる!

 私はこれから始まる高校生活を前に、高鳴る気持ちを抑えられずにいた。

 

 

 

 

 クラス名簿と黒板に書かれた席順を見て、私は運命を感じずにはいられなかった。私は周りにこの気持ちがバレないように、ガッツポーズしそうになる手をぐっと堪えた。

 

 このクラスには男子は一人しかいない。だからこそ、隣の席になった私が露骨に喜びすぎると、他の女子たちの反感を買うことになる。

 

 そうなってしまうと、伊勢くんとの交流を他の女子たちに邪魔される可能性がある。それだけは避けなくては。

 

 だから、私は伊勢くんが隣に座っても冷静を装っていた。

 

「あ、あのっ!」

 

 すると、突然伊勢くんが私に声を掛けてきた。

 

 話しかけられると思っていなかった私は、驚いて目をぱちぱちとさせる。

 

「え? な、なにかな?」

 

「お、俺っ、伊勢伴教っていいます。えっと、よ、よろしく」

 

 すると、伊勢くんは私から目を逸らしてそんな自己紹介を私にしてきた。

 

 初めまして、か。

 

 私は伊勢くんの言葉に思わず笑ってしまった。それから、私は少しだけ緊張気味に口を開く。

 

「う、うん、よろしく! 私、宇都宮綾姫(うつのみやあやめ)」

 

 しかし、私はすぐに伊勢くんの様子がおかしいことに気がついた。

 

 私も久しぶりに伊勢くんと話せることに緊張しているが、それ以上に伊勢くんは緊張してしまっているようだった。

 

 私が知っている男女隔たりなく仲良く話をする姿はなかった。

 

 あれ? 伊勢くん、どうしたんだろ?

 

 私がそう考えていると、伊勢くんは唸るように考えてからようやく口を開けた。

 

「えっと、すーっ……本日はお日柄もよく……よい、ですな」

 

「うん?」

 

 私は伊勢くんの言葉が分からず、首を傾げてしまった。すると、伊勢くんは私からバッと勢いよく顔を逸らしてしまった。

 

 伊勢くん、どうしたのだろう?

 

 数年ぶりに会った伊勢くんは、初心で純情な清楚系男子みたいになっていた。

 

 いや、確かにこれはこれで結構きゅんと来るものがあるけど、以前の伊勢くんを知っている私からしたらそれ以上に違和感のようなものがあった。

 

 

 

「え? 伊勢くん、女の子が苦手なの?」

 

 それから、少しして私は伊勢くんから思いもしなかった言葉を聞いた。

 

 伊勢くんの話を聞く限り、どこかのタイミングで女子が苦手になったらしい。

 

 男女隔たりなく優しくしてくれていた伊勢くんが、女子が苦手になる? それって、それってーー

 

「……苦手になったってこと? 私の知らない女の子が何かしたってこと? あの優しかった伊勢くんに何をしたって言うの?」

 

 私は想像したくないことを考えてしまって、ギリッと歯ぎしりをした。

 

 私の伊勢くんを傷つけるなんて、許せないっ。

 

 私がそんな怒りに駆られていると、伊勢くんが話題を逸らそうと他愛のない話題を振ってきた。

 

伊勢くん、私に気を遣わせないように、辛い過去をサラッと流そうとしているんだ。

 

私はそんな健気な伊勢くんを前に、とあることを心に強く誓い、伊勢くんのことを真剣な表情でじっと見つめる。

 

「私がもうそんな思いさせないように頑張るから。伊勢くん、無理しないでね」

 

 それから、私はクラスメイトの伊勢くんへの反応を見て、より一層伊勢くんを守らなくてはと思うのだった。

 

 

 

 そして、私は今日も伊勢くんの跡をつける。

 

 君のことを知って、君の好みを知って、君の色に染まるために。

 

 

 

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