仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ムラサメ×ダイナスト 機械仕掛けの不夜星 作:正気山脈
地球の遠く遠く彼方にある、地球によく似たとある惑星。その中の広大な土地を持つ王国、ブラムストーク。
この星に長らく住み着いているサンジェルマンは、自分の領地の屋敷で、ミナとシモンのために紅茶を淹れていた。
「あと約一ヶ月で約束の刻が来る。だが、ヤツらは素直に人間に手を出さず待っているだろうか?」
「心配するのは分かります、しかし恐らく大丈夫でしょう。一度交わした取り決めを反故にするというのは、国の長として最も恥ずべき愚行。ヴラディス自身は元より、配下にもそんなことはさせないでしょう」
ミナはそう言って、対面に座るシモンへ穏やかに笑み見せる。
そして紅茶を三つのティーカップに終えたサンジェルマンは、トレーにそれらを乗せてテーブルまで運び、席についてふと窓の外へ目をやる。
すると、彼の両目はギョッと大きく見開かれた。
「なっ、なんだアレは!?」
その声を聞き、シモンとミナも窓の方を振り返り、彼同様に目を見張る。
以前ブラムストーク王国上空に浮かんでいた
「
夜霧に包まれた国の中で、淡く輝きながらもはっきりそうと分かる青色の満月。
「一体何が起きようとしている……!?」
新たな災いの訪れの予感に、サンジェルマンもシモンも息を呑んでいた。
同じ頃。
王都上空にあるデミトリ内で、公爵ら三人もこの異常事態を察知して王の間に向かっていた。
「あの月は一体なんだ!? また人間どもの仕業か!?」
「分からないけど、それは考えにくいでしょう。そうだとしても、いつどうやってあんなものを空に飛ばしたというの?」
「何にせよ急がねば。早急にヴラディス王へお知らせすべきだ」
道中でそのように会話を交わしつつ、オルロックとカーミラとドクロは王の間の扉の前まで辿り着く。
「ヴラディス様、お耳に入れたいことが――」
扉を開き、中に入った瞬間。
オルロックたちの視界に飛び込んで来たのは、玉座の前で立ち尽くすヴラディスの姿と、別の三人の男女の姿だった。
一人は玉座で足を組んで座っている、白い肌に白い長髪の男。目鼻立ちの整った顔はやや女性的に見え、シミひとつない純白の礼服とマントを纏っている。
もう一人は白い男の右隣に立つ、フリルの付いた紫色のゴシックドレスを着た、同じ色のカチューシャを着けている金髪の痩せ型の女。表情は微動だにせず、人形のように精巧な顔立ちだ。
最後の一人は男なのか女なのかも分からない、ブカブカの赤い海賊帽やコートを羽織った子供だった。隙間から覗く髪は緑色で、白い男の左隣に立ち、丸い目で虚空を眺め尖った歯を見せケタケタ笑っている。
「き、貴様は……貴様らは!?」
「バカな、どうして生きているの!?」
彼ら三人の姿を見ると、オルロックとカーミラは狼狽しながらそう叫び、ドクロも刀を手に警戒心をあらわにしていた。
しかし純白の男たちは慌てることなく、ヴラディスの方を向くと、丁寧にお辞儀をした。
「改めましてヴラディス様。儚朧卿ルスヴン・グレナヴォン」
「妖華卿ブルンヒルダ・ティーク」
「覇海卿!! イヴァン・ワシリー!!」
「大公三名、ただ今地獄から蘇りました……これで七大真祖が勢揃いですね、ウフフッ」
にこやかに挨拶をして、ルスヴンは再びヴラディスを見下ろす。
すると、現国王たるヴラディスは王錫を掲げ、それを夜煌剣ナイトメアローズへと変化させた。
「なぜ生きているのか、というのは今は置いておこう。それよりもこれはどうしたことだ」
「何がです?」
「それは相応しき王のための玉座だと言っている。ルスヴン、貴様にその資格があるとでも?」
切っ先を突きつけ、目を細めて問いかけるヴラディス。
するとルスヴンは全く動揺する素振りも見せずに、再びくすくすと笑った。
「いやぁ失敬。ですがもう王位簒奪だとか王権争いだとか、そんなことを考える必要はないのですよ」
「なに?」
「もうじき遍く宇宙の脆弱な生命は『個』という殻を脱却し、ひとつの『全』に統合されるのです。我々の崇める、唯一の完全なる女神様の力によって」
言いながら白い大公は立ち上がり、王の方に歩み寄っていく。
そして静かに、しかし素早く自らの右手を差し伸べた。
「あなたもどうです、ヴラディス様? 我らが
背後でオルロックとカーミラとドクロが見守る中、ヴラディスが出した答えは――。
※ ※ ※ ※ ※
その翌日、13時。
磐戸市近郊にある高速道路、そのサービスエリアにて。
LOT磐戸支部所属の封魔司書の二人、紫乃とロゼは、フードコートで昼食を摂っていた。
「思ったより時間がかかってしまったな」
「まさか、遺物輸送の帰り道でターボババア・ギガに遭遇するなんて……しかもタイヤ狙われちゃったし」
「幸い積荷自体は無事だったが、トラックの故障はな。とはいえ到着までもう少しだ、焦らず帰ろう」
紫乃が恋人である彼女にそう告げた、その直後だった。
にわかに周囲がざわめきなり始め、窓や出入り口の前に人が集まり始めていた。
不思議に思って二人とも顔を見合わせ席を立ち、外の方を眺めてみると、そこには異様な光景が広がっていた。
空に浮かぶ青い満月。そして、視界を妨げる濃密な霧。磐戸を中心に広がっているようだ。
「なんだ、あの青い月は……いや、なぜ昼間に月が出ている!?」
「それにこの霧……一体何が!?」
何か胸騒ぎがする。
紫乃とロゼは急いで出発の準備を終え、図書館地下にある磐戸支部を目指し進み出した。