仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ムラサメ×ダイナスト 機械仕掛けの不夜星 作:正気山脈
ブラムストーク王国上空に青い月が現れた日。
そう言われ差し出された手に対し、ヴラディスは自らの夜煌剣ナイトメアローズでルスヴンの腕を一刀両断した。
「失せよ反逆者共。余は蒸騎王、貴様らに従う道理などない」
「まぁそうなるでしょうね」
すると、大公たちは何事もなかったかのように、いつの間にか窓の方に立っている。
斬られたはずのルスヴンの腕も、すっかり元通りだ。
オルロックらは動揺するが、しかしヴラディスは大して驚く様子もなく、再び彼らに切っ先を向けた。
「帰って貴様らの女神とやらに伝えるが良い。余を従えたくば、貴様自ら出向いて力を示せとな」
「ウフフッ! それでこそヴラディス王。では、話の続きは明日にでも」
そう言い残し、ルスヴンたちは窓から飛び去っていく。
それと同時にヴラディスは命じる。
「警備体制を再度見直して内部に不審物がないか見て回れ、王都周辺の調査もだ。それからアルケーがまだ牢の中にいるか確かめておけ」
『ハッ!』
オルロックたちは散開し、それぞれの担う役割を決めた後に、己の任務を全うすべく走り出す。
外にあったはずの青い月は、いつの間にか消え失せていた。
――きっと嫌でも明日には再び目にするのだろうと、ヴラディスは予測を立てていたが。
そして、現在。
ブラムストーク王国、そのサンジェルマン領では、再び空に出て来た青い月を見て民衆たちの不安が波紋のように拡がっていた。
「またあの月だ……」
「一体何が起きているんだ!?」
「黒の貴族の新しい兵器なのか!?」
屋敷の外がにわかに騒がしくなる中、ソーマとミナ、そしてシモンも窓からその月を仰いでいる。
三人とも、神妙な面持ちで息を呑んでいた。
「どう思いますか、ソーマ」
「昨日ミナたちが見たと言っていたものはアレだね。正直、見当もつかないな」
「ム……待て、月から何か……」
シモンのその言葉を聞いて、指先が示した場所を二人も注目する。
そこには、流れ星めいて青い光の尾を引く巨大な種子のようなものがあり、それが王国の大地を目指しているのが分かった。
続いて、轟音と共に着地。その音に、再び住民たちの動揺が波及する。
「王都の方に落ちたようだ」
「二人ともどうしますか? 私は、調査に向かうべきかと思いますが」
シモンとミナの視線がソーマに注がれ、彼は頷く。
「ああ、行こう。僕もかなり嫌な予感がするんだ」
こうして、サンジェルマンに王都へ向かうと言い残した後、ソーマたちはパスを繋いで探索に乗り出すのであった。
紫乃がLOT磐戸支部に向かったのと同じ頃。
封魔結社LOTのエージェントであるクリスチーナ・バグローヴィとロッソは、静かな街の中を共にパトロールしていた。
二人の表情は険しく、特にクリスは、立ち込めている霧を無駄と分かっても鬱陶しそうに手で振り払っている。
しばらく歩いていると、通信機から若葉の声が聞こえて来た。
『クリスちゃん、ロッソくん! ちゃんと聞こえてる!?』
「おうよ、こちらクリス。一体何がどうなってんだぁこりゃ? すっげぇ霧だ……これのせいでとにかく見通しが悪いったらねぇぜ」
「配置につきました、ロッソです……まだ調査途中ですが今の磐戸は普通じゃない。まるで、
時刻は13時、まだ太陽が昇っているはずの時間帯。
しかし周囲には暗闇が広がり、夜霧が視界を遮っている。おまけに、空には真っ青な月が浮かんでいた。
無論時計の故障ではなく、磐戸に今現在起きている明確な異変である。周辺住民にはメディアを通じてこの霧を異常気象であるとして発表しており、外出を控えるように注意喚起もされている。
「通信ができてるっつーことは神界に来ちまったワケでもなさそうなんだよな」
「でもあんな色の月が人間世界に存在するハズがない。詳しく調べて見ましょう、先輩」
「ああ。これが戯我の仕業なら、人間が襲われるだろうしな」
「まったく、紫乃さんとロゼさんがいない時に限ってこんなことになるとは……」
「オイオイオイ、アタシと一緒じゃ不満かァ? ちょっと聞き捨てならねェなァ後輩ちゃんよォ?」
「別にそんなこと言ってないでしょう」
呆れ顔でそう返し、ロッソはクリスと共に周辺の捜索を続けた。
しばらく歩いていると、二人の目の前に複数の異形の影が立ち塞がる。
ピンク色で無数の細長い糸状の器官を体中に生やした怪人や、頭部から二本の長い触角を伸ばしツヤのない丸みを帯びた黒い甲殻を纏う怪人、そして人間の皮膚を繋ぎ合わせた物体を頭から被ってローブとして身体を覆い隠している怪人だ。
「オイオイなんだこいつらは!? 全員虫みてーだ!!」
「戯我か!? いや、それにしては……とにかくいきますよ、先輩!」
『変身!!』
クリスとロッソはレリックドライバーを装着して二本のモンストリキッドを取り出し、それらを装填。
さらにトリガーを引き、猫の剣士と二挺拳銃を持つ悪魔への変身を完了させた。
《化け乱す幻惑の剣士! イリュージョンケットシー!》
《乱れ撃つ爆炎の銃魔! ニトロアスモデウス!》
「先手必勝ォー!!」
《
真っ先に飛び出したのは、クリスの変身する仮面ライダークラレントだった。大剣を振り上げ、まずはミミズのようなピンクの糸の塊の怪人に斬りかかる。
その一閃は容易く胴を両断し、続く皮膚のローブの虫怪人への刺突も呆気なく通って抹殺した。
《
さらにロッソが変身した仮面ライダーユーダリルの銃撃乱射も、黒い昆虫の身体を貫き破壊してしまう。
これで全滅。ユーダリルが足元に転がる遺体を見下ろすと、怪人たちの傷痕からは機械的な部品やチューブなどが伸びているのが分かった。
「どうやら機械の身体みたいですね、しかしこんなヤツは見たことも……!?」
突如、二人の背後から聞こえて来る足音。
振り返ってみれば、そこにはたった今倒したのと同じ三体の怪人が立っていた。
「また出て来た!?」
「フン、だったら何度も何度もブッた斬るだけだ!」
ジャキッ、と再び武器を構える二人。
すると三体の怪人の両目に青い光が灯り、その口を開く。
『抵抗は止めた方が賢明ですよ、人間』
「喋った!?」
『私はこの怪人、マキナイトたちを端末のひとつとして、彼らの発声器官を利用して話しかけているに過ぎません』
一度攻撃の手を止め、じりじりとマキナイトというらしいその怪人たちとの距離を推し量りつつ、ユーダリルは尋ねる。
「あなたは何者だ? 目的は?」
『これは一度目の警告です。抵抗を止め、私との融合を受け入れなさい。そうすれば不要な苦痛を味わうことはありません』
「敵は何人いる? あなた自身はどこだ?」
返事はない。代わりに、青い目の虫騎士たちが再び迫って来た。
「……答える気は全くないみたいですね」
「まぁ分かってた」
言いながらクラレントは大剣を肩で担いだまま、一気に距離を詰めようと足で踏み出そうとする。
しかしその直前、ピンク髪のマキナイトの両目が妖しい輝きを帯びたのを見て、咄嗟にサイドステップして身をかわす。
すると、ミミズ騎士の目から光線が放たれ、それを浴びた草木はそのまま石化してしまう。
「さっきと動きが違う、石化の邪視か!?」
『私が産み直したこの個体、ミミズの騎士であるアングルワーム・マキナイトには、ゴルゴーン・ギガの力を追加してあります』
「ンだと!?」
『他の二体、マイマイカブリのダマスター・マキナイトとミノガのユーメタ・マキナイトにもそれぞれ異なる戯我の力を付与しました。ギガマキナイトとでも名付けましょうか。では引き続き、あなたがたの本格的に戦闘データを計測させて頂きます』
またも何者かの声が聞こえると、アングルワームの後ろで控えていたギガマキナイトたちも動き出した。
ダマスターは二本の短剣をゆらりと構えて飛び込み、ユーメタはミノムシのように全身に被った皮膚を伸ばし襲いかかって来る。
そして先程同様にクラレントが素早く斬りかかるものの、今度はユーメタが皮膚を鋼鉄化したことによって弾かれ、弾丸も同様に凌がれてしまった。
「くっ、うざってェ!」
「さっきより厄介だ……!」
ならばとばかりにユーダリルはニトロリキッドの能力を起動し、赤いインク弾を発射して攻撃。
しかし今度はアングルワームの邪視によってインク自体を石化させられ、ユーメタの硬化皮膚が石弾を砕き防ぐ。
未だ敵に致命打を与えられていない。その事実に焦れ、クラレントは前に飛び出して行った。
その隙をダマスターが突いて、二本の短剣で首の装甲の隙間を狙い突き立てんとする。
「やっべ……!?」
「先輩!!」
危機を感じて猫剣士が仰け反り、ユーダリルが飛んで救助に向かう。
そして、刃は首の内側へ――。
※ ※ ※ ※ ※
磐戸市で青い満月と霧が出るという異変が起きるのと時を同じくして、空久里アクアシティにて。
ここでも空の上には真っ青な月が浮かび、街全体が濃霧で覆われていた。
「一体どうなってんだ、こりゃ」
この霧のせいで外出制限がかかり店を閉めている赤心軒では、千種が窓の外を眺め、シルキィと瑠璃羽がカウンター席でむくれている。
「まったく、今日はチグサとルリハを連れて出かける予定だったのになぁ。台無しだよ」
「絶対黒の貴族の仕業ですよね……せっかくのデートなのに……」
外では先が見通せない程に白い靄がかかっている。まるで、彼女らの気分をそのまま表したかのように。
そんな二人を励ますように、千種は両手を叩いて小さく笑みを見せる。
「考えててもしょうがねぇ。サンジェルマンのところに行こうぜ、そっちなら何か分かるかも知れねーしよ」
「だね。じゃあ、近くにパスを繋ぐから少し待っててくれ」
待つ間に千種は両親と妹へメッセージアプリで外出を知らせた後、外へ出て家の周囲を見回し、溜め息をこぼす。
「何なんだよこれ、マジで何も見えね……ぇ」
ふと目を凝らすと、千種は道路の先から何者かが近付いて来ることに気付いた。
道路を叩くロングブーツの音。それと同時に奏でられる、数多の金属音。
どこか異様な雰囲気を感じ取り、ダイナスティドライバーを取り出して身構えると、霧の向こうから思わぬ人物が姿を現す。
「レンフィールド!?」
「久しいな、仮面ライダーダイナストよ」
千種が初めてブラムストーク王国を訪れた際に邂逅し、そしてダイナストとして初めて討ち倒した黒の貴族。
ローマン・レンフィールド男爵だ。口部に大きな機械のマスクを付けていることを除き、当時出会った時のままの姿でそこに立っている。
「テメェなんで生きてやがる! 何しに来やがった! ダッセーマスク着けやがって!」
「ククッ! そうとも、私は貴様に殺され……今、我らが女神様の手により地獄の淵から蘇ったのだよ!」
「女神だぁ?」
騒ぎを聞きつけて瑠璃羽とシルキィが窓から顔を見せているのを横目に、少しでも情報を聞き出そうとするものの、レンフィールドはそれ以上余計なことは言わず自らの左腕を頭上に掲げた。
「今、見せてやる! 貴様への復讐のために得た新たなる力を! BOA、アクティベート!」
そう叫ぶと、レンフィールドの姿は六つの腕それぞれに剣を持つ蜘蛛の騎士の姿へと変異する。
すると千種もまた、ギミックアンバーを取り出し、それをドライバーへセットした。
「このスパイダー・ギガマキナイト、ローマン・レンフィールドの新たなる力……思い知れ!」
「うるせェぞこのタコ! 変身!」
《
六方向から迫る斬撃を飛び退いて退避しつつ、続いて飛んで来た前蹴りを掌打で逸らし、横薙ぎに放った手刀でスパイダーの胸を打つ。
しかし直前に背後へ吐き出していた糸を利用して跳躍し、スパイダーはそれによって攻撃の威力を殺した。
倒した頃には見られなかった、洗練された動き。想定以上に手強い敵になることを予感して、ダイナストは再び太極拳の動きで構え直す。
「前より速ェな」
「当然だ、小僧! 私は貴様とムラサメを倒すために女神様より力を与えられた騎士の一人なのだからな! 今、その新たな力を見せてやろう!」
スパイダー・ギガマキナイトはそう告げると、地面に向かって膨大な量の糸を吐き出した。
驚く間もなくその糸は周囲に張り巡らされ、建物に絡まって範囲を広げるばかりか、電柱や建造物同士を繋いで蜘蛛糸のフィールドを作り上げる。
「なんだこりゃ!?」
「これぞサブナック・ギガの力ァ! 糸で作りし不壊の楼閣! さらに!」
文字通りの『巣』であるかのように、縦横無尽に飛び移りながら斬撃を食らわせて来るスパイダー。
加えて無数の刃が周囲の蜘蛛糸に仕込まれており、飛びかかるタイミングに合わせてそれらの刃も同時に動いて襲いかかって来る。
すれ違う度に剣で斬られて、ダイナストの装甲に傷が増えていく。
「終わりだ仮面ライダー! 死ねィ!」
四方八方からフェイントを織り交ぜつつ攻撃を仕掛け、スパイダーは最後に真っ直ぐ心臓を目掛け剣を突き出さんとする。
その瞬間ダイナストは、形意拳の型通りの拳を同じく一直線に放ち、自身に向かって飛んで来た蜘蛛騎士の顔面にカウンターの一撃を叩き込んでいた。
「ハ、がっあ……!?」
「悪ィな。俺もちゃんと強くなってンだ、簡単には負けねェよ」
言いながら魔王は携えた銃へギミックアンバーを装填すると、痛烈な一撃に怯んでいるスパイダーの胸に銃口を突きつける。
《
「消えろ!」
《アトラスビートル・ダイナスティキャノン!》
トリガーが引かれる刹那、我に返った蜘蛛は再び飛び退こうとするが、一瞬遅れてしまった。
爆炎で胴が焼かれて地を転がり、口部から血を噴き出してしまう。
「クッ、ククク……やるではないか、これほど強くなっていようとは。だが、次はこうは行かぬぞ」
変異の解けたレンフィールドはそう言って霧の中に身を隠し、完全にその場から姿を消す。
取り逃がしてしまった。だが、この霧の中を無闇に追うのも危険だろう。
「シルキィ、こりゃ急いだ方が良いかも知れねぇぜ」
「分かってるよ。さぁ、サンジェルマンの元に行こう」
三人は互いに頷き合うと、蒸気の門を潜ってその場を後にする。
※ ※ ※ ※ ※
クラレントの喉が刃に貫かれるかに見えた、次の瞬間。
数度の銃声が響き渡り、接近しすぎてユーメタの皮膚の射程外に出てしまったダマスターへ銃弾が直撃、吹き飛ばされてしまう。
「二人とも大丈夫!?」
「助けに来たぞ」
弾丸の飛んで来た方を見れば、そこにはレリックライザーの照準をギガマキナイトたちに向ける紫乃とロゼの姿があった。
「二人とも気をつけろ! こいつらなかなか強いぜ!」
「そうらしいな、だがオレの敵ではない」
クラレントからの言葉を聞きつつ、紫乃とロゼはレリックドライバーを装着しリキッドを取り出す。
『変身!』
《天を裂く紫電の咆哮! サンダーハウンド!》
《輝け! 華麗なる紫薔薇の竜乙女! ブリリアントヴィーヴル!》
二人がリキッドを同時に装填し、それぞれ仮面ライダームラサメ サンダーハウンドカラーと、仮面ライダーブリューナク ブリリアントヴィーブルカラーの姿へと変わった。
さらに間髪入れずムラサメがAウェポンT/G-SSSの七星紋を全て点灯させ、即座に必殺の一撃を放つ。
《
マキナイトたちは光の斬撃から逃げ出そうとするものの、ブリューナクが放ったブリリアントジェムの乱射で両足を貫かれる。
そうして身動きが取れなくなったところで、極光の刃は三体の騎械を葬り去った。
しかし、アングルワームは首だけ残ってもなお、言葉を発する。
『なるほど、これが仮面ライダームラサメの力……賢者の石とプロメテウスの火の力を使われずに倒されてしまいましたか』
「そんなことまで知っているのか……貴様、何者だ?」
『では彼らならどうです?』
紫乃からの質問に答えることなく、何者かの声を代弁していたマキナイトたちの遺体が爆ぜて消滅。
それと同時に、一同の目の前で四つの青い稲光が迸る。
「なんだ!?」
ムラサメが驚いていると、四本の柱のようになったその中からそれぞれ手足が現れ、人の形を成していく。
見ている内に光が消え、その末に現れたのは四人の男女。
高級な白スーツを着た深い青色の髪の男に、水色の髪の巨体の女、鎖帷子の上にコートを羽織った老人、尖ったヒールブーツを履いた少女。
彼らは共通して、顔の下半分を覆う大きな白い機械のマスクを装着している。
「アッハハハァーッ! 俺チャン復活ゥッ!」
「あぁー……どうせなら機関車も蘇らせて欲しいんだがな……」
「四傑伯がもう一度集うか、面白い」
「ダイナストたちはどこにいるの!? 絶対に殺してやるんだから!!」
唖然としていると、白スーツの男が代表して前に出て、ムラサメに対して人差し指を突きつけた。
「さぁて。お前ら、俺チャンたちの敵ってことで良いんだよな?」
「今更聞くまでもないわよジル、元から人間は私たちの食料でしょうが!」
「まぁそうだね。どうも仮面ライダーみたいだし、遠慮なくやっちゃうかぁ」
『BOA、アクティベート』
直後、四人の姿が青い蒸気に包まれ、人型のシルエットが徐々に変容していく。
そうして現れたのは、蠍・百足・蟷螂・蜂の騎士。即ち、スコーピオン・ギガマキナイトとセンチピード・ギガマキナイト、さらにマンティス・ギガマキナイトとホーネット・ギガマキナイトだ。
新たな敵から感じる圧倒的な強者のオーラに、ムラサメは改めて注意を促す。
「どうやらさっきのザコ連中とは格が違いそうだ、特にあのサソリはかなりの強敵かも知れん。全員気を引き締めてかかれ」
「かも知れない、じゃ足りないねぇ。強いよ~俺チャンはぁ」
スコーピオンはムラサメの方を向いて笑いながら、ゆらりと歩き近付く。
そしてセンチピードはクラレント、マンティスはブリューナクに、ホーネットはユーダリルへ一斉に仕掛ける。
「この一撃で砕け散れ、人間」
全身から酸性の蒸気を放つセンチピードの、長く屈強な足が上がり、そこから大砲めいた勢いの豪快な前蹴りが繰り出される。
クラレントは大剣を盾代わりにしてその一撃を防ぐものの、威力を殺し切れず。
「なんつーパワーだ、腕が痺れちまいそうだぜ」
「痺れる? 強がりを……今すぐ剣ごと圧し折ってやる」
ムカデの女騎士が剛拳を握り込み、さらに強力無比な打撃を継続する。
その傍らで、大鎌を振り回して静かに攻め立てるマンティスは、斬撃の尽くをブリューナクの槍に受け止められていた。
「槍の冴え……中々のものだな。ではこれならどうだ小娘」
そう言った直後にマンティス・ギガマキナイトの口部が開き、そこからごうごうと燃え上がる炎が吐き出される。
寸でのところで飛び退いて回避できたものの、想定外の攻撃にブリューナクは舌を巻いていた。
「カマキリが炎の息吹……!?」
「フン、まだ行くぞ」
牽制の炎と、鋭い切れ味の大鎌に加え、分子振動する両腕の鎌。多彩な武器と激しい攻め手を前に、ブリューナクは圧され気味で怯んでしまう。
その一方、ホーネットはユーダリルの乱れ撃ちを前に苦戦を強いられていた。
レイピアを使って猛スピードで突撃しても、素早く身をかわされた挙げ句、爆撃で背中の翅を焼かれる。そうして飛行手段を失ったところで、すかさず銃弾が身体を射抜く。
「殺すぅっ!! 殺すぅぅぅあああああっ!!」
「こいつ、殺気が丸出し過ぎる。あまりにも隙だらけだ」
ただし再生力は目を瞠るほど速く、翅も貫かれた傷も即座に治り元通りになってしまう。
スタミナに関しても、何度攻撃を繰り返してもスピードが衰えず疲れた様子も見られないため、その点はユーダリルも脅威と感じていた。
「ガッ!?」
「何発喰らえば死ぬのかな」
「人間が……ナメるなぁ!!」
激昂して再び蜂の騎士が飛びかかり、レイピアを突き出す。
他の四傑伯がそれぞれの敵と戦いを繰り広げている中、スコーピオンもまたムラサメとの戦いに興じていた。
銃形態のAウェポンから連射される弾丸、しかしそれら蠍の騎士の身体には命中せず、途中で静止してしまう。
「攻撃が通らん!?」
「アッハハハ! さぁ! どういうことか分かるか、なっと!」
スコーピオンはそう言って強靭なハサミで銃弾全てを打ち返し、ムラサメは紫雷を放ってそれらを焼き切って凌ぐ。
「念動力……あるいは引力操作系か? ならばこっちは――」
対抗策を使うべくムラサメがリキッドのホルダーに手を伸ばそうとした、その時。
突如として、一同の間を縫うようにして赤い影が躍り出る。
『!?』
集った全員が攻撃の手を止め、振り返って背後の状況を確認した。
視線が注がれたその先にいるのは、スチームパンクスタイルの赤いカブトムシの戦士。
魔王を名乗る仮面ライダー、ダイナストだ。
彼は「あぁ?」と小首を傾げて周囲に視線を彷徨わせ、後から来た二人の女子に声を掛ける。
「近くに敵がいるっていうから飛び込んだけどよ、なんか場所間違えちまったんじゃねぇかシルキィ?」
「えっ!? そ、そんなはずはないよ!?」
「というか、向こうの星ではないみたいですね……?」
白衣を羽織る若い女性に、まだ紫乃たちとそう変わらない年齢の少女。シルキィと瑠璃羽だった。
数刻の後、ダイナストの視線はムラサメのそれとぶつかり、二人は同時に声を上げる。
「あんた誰だ?」
「お前、一体何者だ?」
ダイナストとムラサメ、魔王と封魔司書。
ふたりの仮面ライダーが、霧に包まれた戦場にて邂逅を果たした。