仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ムラサメ×ダイナスト 機械仕掛けの不夜星   作:正気山脈

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GEAR.02[運命交叉]

 謎の青い月と濃霧の原因を調べるため、ブラムストーク王国に向かおうとした千種たち。

 しかし一行がパスを繋いで飛び込んだ場所は、全く見知らぬ土地――紫乃たちLOTの封魔司書が守る、磐戸市であった。

 さらに、ダイナストへ変身している千種の前には、死んだはずの四傑伯の姿がある。

 

「四傑伯……お前らも生き返ってんのかよ!」

 

 魔王の姿を見るなり、四人のギガマキナイトはムラサメたちから視線を外し、そちらの一点に殺意を向けた。

 

「出たわねダイナストォッ!! 今度こそ、お前を殺すッ!」

「以前爆殺された恨み、イザベラと共にここで晴らしてやる!」

「貴様らばかり楽しむな……ヤツと戦うのはこれが初めてなんだ、儂に戦わせろ」

「ひっさしぶり~元気してたァ? ずっと俺チャンに会えなくて寂しかったかなァ? ちょっと遊んでくれよ!」

 

 ホーネットとセンチピードが真っ先に飛びかかり、しかしどちらも掌でクルリと受け流されてダイナストの背後で転倒する。

 続くマンティスの大鎌も、向かって来る動きに合わせてカウンターの拳打を叩き込むことで柄を半ばで折り、スコーピオンの雷撃は飛び退いて避けた。

 

「揃いも揃って熱烈歓迎してくれるじゃねェか、一辺死んだ負け犬共のクセによ。いいぜぇ、このまま纏めて相手してやる!」

 

 今度はダイナシューターを抜き、即発砲。

 標的はホーネット・ギガマキナイト、しかし弾丸は容易く斬り払われる。

 

「おっ?」

「前の私と同じだと思わないことね! 新たな力を得た私なら、お前を倒せるわよ!」

 

 飛翔しつつ、ホーネットが単独で突撃。

 その身体の周囲には無数の細かな氷の塊が漂っており、それが銃撃の肩代わりとなったり、ダイナストに向かって飛んで行き攻撃したりしている。

 雹を降らせるフルーレティという悪魔の力だ。傍から見ていたLOTの面々には、それが理解できた。

 

「おい紫乃、どうすんだ!?」

「あの人は強いようですが……一人であの数を相手にするというのは、いくらなんでも厳しいんじゃないでしょうか」

 

 クラレントとユーダリルが言い、ムラサメはすぐに頷く。

 

「考えるまでもない、四人で援護するぞ」

「紫乃くんなら、きっとそう言うと思っていたわ」

 

 ブリューナクが仮面の中で微笑み、四人の封魔司書は改めてダイナストの隣に並び立ち、雨霰と放つ激しい銃撃でホーネット周囲の氷塊を破壊した。

 

「ん? 助けてくれんのか?」

「今は長々と話していられる状況じゃない、手短に話す。オレは仮面ライダームラサメ、ここ磐戸市を守る者の一人だ。そちらに加勢する」

「ありがとよ! 俺は仮面ライダーダイナストだ、よろしくな!」

 

 簡単に挨拶を済ませ、ダイナストはムラサメと軽く拳同士を突き合わせる。

 そして左右に散開すると、ユーダリルとクラレントがホーネット・センチピードに向かい、ブリューナクがマンティスの行く手を阻んだ。

 

「私と戦いなさいよダイナストォッ!!」

「そうだ、戦え!! 恨みを晴らさせろ!!」

 

 蜂の騎士が無数の氷の礫を発し、百足の騎士がダイナスト目掛けて飛び蹴りを繰り出す。

 だが横から介入したユーダリルが全ての氷を撃ち落とし、クラレントの大剣の一振りがキックの威力を削ぎ落とした。

 

「随分彼に怨恨があるようだが、こちらにとってはどうでもいい」

「そういうこった! やっちまおうぜロッソ!」

 

 一方の既に大鎌を破壊されている蟷螂の騎士は、立ちはだかるブリューナクを前に鼻を鳴らす。

 

「小娘が……貴様では儂に勝てんというのが分からんか?」

「やってみなければ分からないでしょう? それともこんな小娘一人に負けるのが怖いかしら?」

 

 挑発を受けてマンティスはピクッと右腕を反応させ、両拳を握り込んで鎌の分子振動を稼働させる。

 直後に互いに飛び出し、マンティスは鎌を突き出して突撃、ブリューナクはブリリアントジェムで迎撃を行う。

 

「やっぱお前は俺チャンと戦う方を選ぶよなぁ? ハッキリ言って、他のヤツじゃ相手にならないしよォ~!」

 

 そして、無事にスコーピオンの前に立ったダイナストとムラサメは、宙を浮かび上がる敵を前に密やかかつ速やかに会話を交わす。

 

「気を付けなムラサメ。アイツは装甲の隙間にある噴射口から血を細かく撒いて、それを媒介に重力操作とか雷攻撃を使ってくる。復活して強くなった今なら、もしかしたら両方同時に使えるかも知れねェ」

「やはり重力系か。その上に戯我の力も得ているとなれば、かなり厄介な戦力だな。どうする」

「アイツの能力は血が流体じゃないと使えない、んで電撃の方は使うと血が焦げて固まる。だからその隙を狙うのが手っ取り早いだろーな」

「それは良い情報だ。よし、行くぞ」

 

 二人のライダーはそれで作戦会議終了とばかりに再び左右に散り、サソリの騎士へと立ち向かっていく。

 

 

 

 ギガマキナイト二体に対し、ユーダリルとクラレントは互角の勝負を繰り広げていた。

 大剣による激しく力強い猛攻と、それを援護する双銃から放たれる弾丸の嵐に、ホーネットもセンチピードもたじろぐばかりだ。

 しかしそんな状況を許し続けるはずもなく、センチピードの方が動く。

 

「調子に乗るなよ人間が……溶けてなくなれ!!」

 

 そう叫んで右腕を頭上にかざすと、上空に湯気を立たせる濃厚な酸液の塊が生み出される。

 続いて腕を振り下ろせば、その液体がクラレントたちの方に降り注いだ。

 ゴエティアの悪魔、その一体であるクロセルの力。水や温泉に関連する能力を持つ悪魔なのだが、センチピードはこれを酸液の生成として利用している。

 二人は素早く回避するものの、立っていた場所は溶けポッカリと穴が空いていた。

 

「この攻撃はヤバいな、早いとこ決着をつけねぇとどんどん街に被害が拡がっちまう」

「やりましょう、先輩」

「おうよ!」

 

 そう言ってクラレントとユーダリルは、それぞれ別のモンストリキッドとレリックライザー拡張用のアイテムを取り出す。

 クラレントはエクスカリバーの鞘の力を宿すペンドラゴンクレストとブリッツゲイルリキッド。ユーダリルの方は、ワイルドイーグルとバルバトスリキッドだ。

 

BRUSH-UP(ブラッシュ・アップ)! (はや)き雷! (はげ)しき風! 一つに繋がりし今、叛逆者は龍王となる! ブリッツゲイルペンドラゴン!》

BRUSH-UP(ブラッシュ・アップ)! 嘶け! 深き森に羽撃く百発百中の悪魔! ワイルドバルバトス!》

 

 各自それらを装着し、起動。そしてフォームチェンジを完了させた。

 風に揺れる赤いマントを羽織り、黄と緑のインナースーツの上に赤い装甲を纏う剣士、クラレント エクセリオン。

 その隣に、鷲の翼を背負った迷彩色の装甲の、悪魔の如き風貌の銃士、ユーダリル ワイルドバルバトスカラー。

 一度ダイナストたちに敗北したているキナイトの二人は、姿が大きく変わることが何を意味するのか既に嫌というほど体験しており、迂闊に攻めに行かない。

 だが、当然相手が待つはずもなく。クラレントが真っ先に飛び出していき、剣を振り被る。

 

「だりゃあッ!!」

「がっ!? お、押し切られ……!?」

 

 センチピードは咄嗟ながらもキックで応戦しようとしたが、大剣は足裏に深く食い込んだ。

 そしてその勢いのまま、クラレントはリキッドをAウェポン2C-EXにセットする。

 

《バインド! Igniting(イグナイティング)!》

「どんどん行くぜェ!」

「ぬうううっ!? こいつ、私よりパワーが……!?」

 

 剣から伸び出る鎖がセンチピードの足や両腕を絡め取って封じ込め、身動きできなくなっているところに、そのままクラレントの剛腕で振り回されて地面に叩きつけられた。

 

「がはっ!?」

「まだまだァッ!」

 

 もう一度、さらにもう一度。

 鎖で団子のように固まった状態のまま、何度も何度も叩きつけられてしまい、センチピードは苦しみの声を上げる。

 その悲鳴を聞いて、ホーネットはすぐに羽ばたいた。

 

「ギースレーリン!!」

「行かせませんよ」

《トルピード! Enhancing(エンハンシング)!》

 

 しかしユーダリルが許可するはずがなく、AウェポンW-Wへと素速くリキッドを装填。

 トリガーを引き、合計六発の魚雷が発射される。

 背後からの攻撃にギョッと目を剥き、無数の氷の礫を壁としてホーネットは身を守ろうとするが、直撃に伴う爆炎は容易く彼女の身体を焼いて吹き飛ばす。

 

「ガハッ!?」

「そんな小さい氷で防げるワケがないでしょう、魚雷なんですから」

 

 さらに吹き飛ばされた方角には振り回されるセンチピードがおり、そのまま二人は激突。

 同時に鎖が千切れてムカデ騎士も地面を転がり、二人のギガマキナイトは立ち上がることさえままならなくなっていた。

 

「よし、終わらせんぞ!」

Highboosting Color(ハイブースティング・カラー)! Last Igniting(ラスト・イグナイティング)!》

「了解です」

Getting Color(ゲッティング・カラー)! Last Enhancing(ラスト・エンハンシング)!》

 

 二人はドライバーからそれぞれブリッツゲイルリキッドとワイルドイーグルを抜き取ると、各々の武器に装填。

 さらにトリガーを引き、全エネルギーを集中させた一撃を解き放つ。

 

《ブリッツゲイル・クロマティックエクスキューション!》

《ワイルドイーグル・クロマティックサジッタディストラクション!》

『消えてなくなれ!!』

 

 クラレントの斬閃が、ユーダリルの光弾が融け合って突き進み、二体のギガマキナイトに命中。

 その一撃は怪人二人の怨嗟の言葉すら掻き消して爆散せしめ、クラレントたちは勝利に笑みを交わす。

 

 

 

 一方マンティスの行動を阻止したブリューナクは、両腕の鎌から逃れるのに精一杯で、防戦一方となっていた。

 ブリリアントジェムで反撃をしようにも、視界内の物体をすり抜ける能力のせいで攻撃が全て通らなくなってしまうのだ。

 今も蟷螂の老騎士は無傷のまま。攻略法を見出さない限り、彼女に勝利はない。

 

「この力……今までは本気じゃなかったのね」

「カカカッ、どうした小娘? 攻撃できておらんようだなぁ?」

「ええ、どうやらあなたの能力の謎を解かない限り私に勝ち目はないようね」

 

 そう言いつつも、既にロゼの頭の中では打開策が構築されつつあった。

 本当にあらゆる攻撃から透過して逃げられるのなら、先程ダイナストに大鎌を破壊されることもなかったはず。

 つまりこの能力は自動で発動するのではなく、飽くまでもマンティス自身の意思で発揮され、同時にある程度制限があるものと彼女には予測できた。

 ではその制限とは、一体何か? どのようなものが考えられるか?

 マンティスはあの時、ダイナストの拳の速度に全く反応できていなかった。目で追うことさえままならなかったのだろう。

 

「あ、そういうことね」

 

 そこに思い至った途端、ブリューナクは納得した様子で頷くと、自身の周囲全方角へとブリリアントジェムを放った。

 しかしそれらは非常に鈍足で空中を漂っており、透過どころかわざわざ大げさに回避や防御に動かずとも、仮に当たったとしても大した影響のない攻撃だ。

 マンティスは苦し紛れかと鼻で笑いつつ、ジェムの横を通ってブリューナクを攻撃しようとする。

 だが、その瞬間。周囲のブリリアントジェムが全て弾け飛び、眩い閃光が迸った。

 

「ぐおっ!?」

 

 光は不死身の騎械の目をも焼き、完全に視界を塞いでしまう。

 マンティス・ギガマキナイトの能力は、自身の目で見えている範囲でしかすり抜けられない。

 つまり、こうして何らかの手段で視界そのものに異常を与えてしまえば、破るのは容易いのだ。

 続いてブリューナクは自身の槍であるAウェポンL/Rを振るって、その切っ先でマンティスの両眼を抉って裂いた。

 

「ぎゃあああっ!? め、目がぁぁぁ!?」

「これでその能力は二度と使えない」

「ぐっ……図に乗るなよ小娘が! 目が見えずとも、儂は貴様を殺せるのだ!」

 

 言いながらマンティスは周囲に炎を吐き、さらに自身の中にある悪魔・プルソンの力を行使する。

 隠されたものの居場所を感知し、その三秒先までの未来の動きを読み取る権能。

 これにより目が見えなくとも、ブリューナクがどの位置にいるのか、三秒後に何をしようとしているのか、識ることができるのだ。

 マンティスは早速それを使って居場所を感知、したものの――。

 

《舞え! 優雅なる赤薔薇の戦乙女! エレガントヴァルキリー!》

「エレガントミラージュ」

「な!?」

 

 見えた未来は、今の彼には防ぎようのないものだった。

 ブリューナクはリキッドを上下反転させて赤い戦乙女の姿となり、八体の分身を生み出してマンティスの周りをぐるぐると取り囲む。

 気配で感じ取れても、分身と本体の見分けがまるでつかない。おまけに、分身は攻撃も繰り出して来る。

 

「バ、バカな!? この儂がこんな小娘如きに!?」

 

 苦し紛れの火炎放射さえ、エレガントヴァルキリーとその幻影の翼が起こす風で掻き消された。

 もはや打つ手なし。ブリューナクもそれを察し、ドライバーを操作して必殺技に移る。

 

Reloading Color(リローディング・カラー)! Last Calling(ラスト・コーリング)!》

「これで終わりよ!」

 

 バサッ、と翼をはためかせ、戦乙女が宙を舞う。

 

《エレガントヴァルキリー・クロマティックシュヴォーシェ!》

「ヤァァァッ!」

 

 そして分身たちと共に槍を構えて地上へ降下・突撃し、マンティス・ギガマキナイトの全身を貫いた。

 

「お、の……れ……」

 

 四肢も頭も槍に刺されて火花を散らし、爆発と共に消滅。

 ブリューナクはその炎の中から純白の羽根を舞い散らせて現れ、堂々と槍を天に掲げて勝利を示すのであった。

 

 

 

 四傑伯の内三人が仮面ライダーと激戦を繰り広げる中、スコーピオン・ギガマキナイトは余裕を崩さずくつくつと笑う。

 対するダイナストとムラサメは、左右から挟撃を仕掛けるべく回り込み、牽制の銃弾を放つ。

 しかしスコーピオンはハサミをカチカチと鳴らして微細な血を周囲に散布すると、斥力を発生させて弾丸を止め、そのまま二人へと雷を発する。

 ダイナストは真横に飛んで回避し、ムラサメは自身も紫電を放出することで雷を相殺。間一髪でその場を凌ぐ。

 

「チッ! やっぱマルチアクティベートなしで使えるようになってやがるな! しかも前より引力も電撃もパワーアップしてやがる!」

 

 以前のジルは、二つの怪人形態を自力で同時発動するマルチアクティベートという技術によって、本来一度に片方しか使えない能力を併用していた。

 ギガマキナイトになったことでそれを使う必要がなくなっており、さらに身体能力(スペック)も大幅に向上しているようで、ただのハサミによる殴打だけでも重傷を負いかねないため接近戦も危険。

 ムラサメは溜め息と共に、カレイドライザーを取り出しレリックライザーと換装、さらにプリズムエリクシルを起動しセットした。

 

《超色彩集!! プリズムエリクシル!!》

「血が固まった隙を狙うつもりだったが、これでは無理だな。オレが引力操作を破って突破口を開こう」

Gathering Color(ギャザリング・カラー)!! MASKALEID GRADATION(マスカレイド・グラデーション)!!》

 

 恐らくアレはとっておきの装備に違いない。

 そう悟ったダイナストは、自身もヘラクレスビートルギミックアンバーを取り出し、巻き鍵に当たるツノをひねってドライバーに装填する。

 

《ヘラクレスビートル!!》

「オッケー。じゃあそれは任せた、俺は電撃の方を防げるようにしとく」

C'MON(カモン)!! キングヘラクレシューター!!》

 

 ダイナストの前に転送される、大きなヘラクレスオオカブト型の金色の銃。

 続いてムラサメが完成したカレイドライバーのトリガーを引くと、彼は無数の輝く五芒星の円陣に囲まれる。

 

QUALIA-UP(クオリア・アップ)!!》

「変身」

《千変万化に瞬く色彩!! 絶望を断つ光芒一閃!! 解き放て!! カレイドプリズム!!》

 

 高速回転して無限の色彩の嵐を浴びながら、ムラサメはホワイトゴールドのアンダースーツを纏う青紫の装甲の戦士、仮面ライダームラサメ 千紫万紅へと変身した。

 さらにダイナストの方も、撃鉄部のレバーを引っ張り銃口を頭上に向け、引き金を弾く。

 

CHARGE UP(チャージ・アップ)!! UNLIMITED-SHOWTIME(アンリミテッド・ショウタイム)!!》

「変身!!」

HYPER ECLOSION(ハイパー・エクロージョン)!! KING OF THE(キング・オブ・ザ・) KING OF THE(キング・オブ・ザ・) GRANDEST KINGS(グランデスト・キングス)!! オーバー・ザ・ダイナスト!!》

「決着つけようぜ、ジル!!」

PERFECT GROOVY(パーフェクト・グルーヴィ)!!》

 

 ファンファーレとジャズの調和した音声が流れると共に、頭上から現れた黄金のヘラクレスオオカブトの装甲と合着し、最強の大魔王たる仮面ライダーオーバー・ザ・ダイナストが完成した。

 二人の最強形態を目にするなり、スコーピオン・ギガマキナイトは楽しげに笑い出す。

 

「アッハハハハハァ! 二人とも中々強そうな姿になったじゃん! 俺チャンと遊ぼうぜぇぇぇ!」

 

 そして全身の小さなノズルから真上に血液を噴射し、それを雷の雨に変えて攻撃を仕掛ける。

 瞬間、ダイナストが地面を殴ると、周囲にいくつもの長い針が形成され、スコーピオンの雷は吸い込まれるようにしてその針の先端にのみ落下した。

 

「あ……?」

「なるほど、避雷針か」

 

 これが、ダイナストの策。破壊と創造の力を持つ今の姿なら、容易く雷を防げるのだ。

 ムラサメはその活躍に応えるように、自身も両腕を前に突き出し、左右に開く。

 するとスコーピオンを守り浮遊させていた斥力が破れ、間髪入れずムラサメの斬撃とダイナストの銃撃が同時に蠍の胸の甲殻を砕いた。

 

「そうか血の方を動かしたのか……君たちマジでやるねぇ~、ワクワクさせてくれるじゃん! じゃあそろそろ出しちゃおうかなぁ本気ィ!」

 

 よろめきながらも大笑して、スコーピオンは胸の傷から大量の血を放出し、それを操って引力と雷の渦を形成する。

 ダイナストはそれを見てハッと目を剥き、咄嗟ながら創造の力で再び地面に避雷針を生み出す。

 

「狂い咲け!! 雷霆血渦(ライトニング・ブラッドホール)・五連打ァ!!」

 

 五つの血の渦が仮面ライダー二人を引き寄せつつ、足が止まっているところに稲妻が襲いかかる。

 今は避雷針が防いでいるが、それも渦の引力で地面から抜けて圧し潰されてしまうため、意味がない。

 それでもムラサメは地面に刀を刺して堪え、ダイナストもキングフロントホーンを地に刺し引力に耐え続ける。

 そうして忍耐強く待ち、血渦が消失した、次の瞬間。

 

「見せてやるぜ、俺の中の戯我の力!」

 

 スコーピオンの胸の傷から出てきた血液が頭部と下半身を覆い尽くし、その体をさらに変質させていく。

 煙突のような炎を噴く双角に、蹄の付いた両脚。まるで、牛のようであった。

 

「炎の魔牛……モラクス、いやモロクか!?」

「ヒャハハハハハァ! なぁ、もっと遊んでくれよォ!」

 

 血を媒介に生み出された黒い灼炎の球が、周囲一帯を焼き払う。

 ムラサメの念動力で辛うじて防ぎ切るものの、仮面の中では二人とも冷や汗が吹き出ていた。

 

「なんっつーパワーだ!?」

「他の敵以上に戯我の力を引き出している……本当に強いな、こいつは」

 

 だが、とムラサメは続けると、サイキック能力で二本のリキッドを手元に呼び寄せプリズムエリクシルに装填する。

 

「弱点は見えた。ダイナスト、必殺技の準備をしておいてくれ」

「分かった」

 

 ダイナストが短く応え、素速くスコーピオンの背後に回り込む形で飛んでいく。

 それを目で追おうとする蠍騎士に対し、そうはさせまいとムラサメも動き出した。

 

Concentrating(コンセントレーティング)!!》

「カラーエクステンド」

《アイスフェニックス!! DESIGNATION(デザイネーション)!!》

 

 セットされたリキッドによってムラサメの背に二つの翼が装備され、同時にスコーピオンは彼を倒すために血をバラ撒く。

 

「雷霆血……」

「そこ!」

 

 だが血の力を発動するよりも前に、放った血はムラサメのアイスリキッドの力で凍りついた。

 

「何ィッ!?」

「血が固まれば能力は発動しない、想定通りだ」

「じゃあこいつはどう防ぐ!!」

 

 次いで放たれる、モロクの邪炎球。

 ムラサメはオリハルコンの翼を盾とし、その攻撃をも念動力の壁と合わせて悠々と堰き止める。

 

「フッ!」

「う、ウソだろ……!?」

 

 渾身の一撃を余裕で防がれ、後退りして狼狽えるスコーピオン・ギガマキナイト。

 

《ライノビートル!!》

《マルスビートル!!》

《アトラスビートル!!》

《ヘラクレスビートル!!》

「ハッ!?」

 

 背後から聞こえた音に振り返れば、そこには必殺の砲撃を放つ準備を終えたダイナストが構えていた。

 

《ビートルラッシュ、セットアップ!!》

「いッけェェェェェー!!」

《スーパーギミックチャージ!! ビートルラッシュ・スティンガー!!》

 

 回避しようと考えた頃にはもう遅く、ムラサメの念動力がスコーピオンの身体をその場に縫い留め、カブトムシの姿を成した巨大なエネルギー弾が一撃でその背を撃ち抜く。

 これで決着。ジルの全身がヒビ割れて変異が解除され、その場にガクリと膝をついた。

 

「クッ、ソ……また、負けかよ……でもまぁ良いや、面白かったしなァ」

 

 機械のマスクが外れて口部が露出したジルは、満足そうに笑い、目を閉ざす。

 だがその直後、変身解除した千種の足が彼の頭を踏みつけた。

 

「おい待てよ、勝手に気持ちよくなってんじゃねェぞ。敵の正体教えろ」

「えぇー、そこは気持ちよく見送る場面じゃないの?」

「うるせェバカ。こっちは情報が少ねぇんだよ、どうせ消えるならちょっとくらい協力しろ」

 

 げしげしとジルの身体を蹴り、千種は言う。

 次第に紫乃やロゼ、クリスとロッソ、さらに瑠璃羽にシルキィも集まり始めて、ジルは観念したように溜め息を吐いた。

 

「勝ったのはそっちだしな……分かった、教えてやるよ。まずアイツの名前は、ギ……」

 

 それ以上は、言葉にできなかった。

 倒れている彼の身体の内側から伸び出たケーブルのようなものが首や手足を締め上げ、メキメキと音を立て自壊させ始めたのだ。

 

「グ、ガッ!?」

『不利益な情報提供は私への反逆行為となります。なぜそんなことができたのかは分かりませんが、今後あなたに再生のチャンスは与えません』

「……く、ハハッ、こんな死に方とはなァ……」

 

 一同が呆然としている間に、声の出せないジルは最期の言葉を遺す。

 頑張れよ、と。

 それと同時に元四傑伯最強の男は機能を停止してしまい、そこには機械の残骸だけが残される。

 強く拳を握り締め、ジルではない何者かの声を発した首に対し、千種は怒りを叫ぶ。

 

「テメェ……どこの誰だ!?」

『この地も既に私の支配下になりつつある、よって計画に支障のない範囲でお答えしましょう』

 

 青い光が明滅すると共に、ジルの中にいるモノが女の音声で返答した。

 

『私はギガヘクス・マーテル。こことは別次元の組織、ヴァンダル・リーグが作り上げた究極の機械生命体です』

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