仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ムラサメ×ダイナスト 機械仕掛けの不夜星   作:正気山脈

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GEAR.03[英傑共闘]

 磐戸市に立ち込める霧と共に出現した、ギガマキナイトと化した四傑伯。

 その敵と交戦している最中に紫乃は千種と邂逅を果たし、ジル・ド・レスピナスたちを討った。

 倒した彼の口から黒幕の目的など詳細を聞き出そうとしたが、その前に黒幕自身の力によって始末されてしまう。

 そしてジルの口を介し、事件の首謀者は自ら名乗るのであった。

 

「ギガヘクス……マーテル?」

「それに、ヴァンダル・リーグってなんだ?」

 

 シルキィと千種が疑問を口にする中、紫乃たちLOTの面々はぐっと息を呑んだ。

 

「やはりヤツらが関わっていたか」

「何か知ってんのか?」

「ヴァンダル・リーグは……ヤツらは以前から何度もこの宇宙や別の次元の地球と人類を脅かし、仮面ライダーを消し去ろうとしている敵だ」

「別次元って……マ、マジかよ」

 

 唖然とする千種、瑠璃羽とシルキィも信じられないとばかりに目を見張っている。

 その反応に構うことなく、ギガヘクスを名乗る女の声は話を続けた。

 

『地球人類の降伏を勧告します。あなたがたの力ではこのギガヘクスに勝つことはできません』

「断る。仮にオレたちが負けたとしても、翔が……仮面ライダーアズールが動けば貴様は確実に死ぬ。アイツがこの事態に気付かんとは思えんしな」

『否定します、仮面ライダーアズールが私を倒すことは絶対にできません』

「……なんだと?」

『彼が私の存在を探知できない以上、どのように強力であろうと私が倒されることはありません。地球侵略は確実なものとなります』

 

 紫乃はそれを聞き、短く舌打ちする。

 自分の知る中で最も強力な味方であったのだが、その力を借りることができないとなれば、厄介な状況だ。

 だが隣にいる千種はまるで動じることなく、ギガヘクスに対して堂々と宣戦布告を突き返す。

 

「どっちにしても降伏なんざ断るに決まってんだろポンコツが。すぐに黙らせてやるから、黙って待ってろボケ」

『降伏の拒否を確認。では滅びの時まで、さようなら』

 

 女の声が消え、後には勝利した仮面ライダーたちとギガマキナイトたちの残骸だけが残される。

 紫乃は溜め息をつくと、千種たちの方を振り返った。

 

「ダイナスト、と言ったな。お前たちのことを聞かせて欲しいが、この場はまだ安全とは言い切れない。一緒に来てくれ、落ち着ける場所で自己紹介も兼ねて話がしたい」

「案内頼む……あっ、でも大丈夫か? 俺たち本当は別のところに行こうとしてたのに、いつの間にかここに来ちまっててよ。っていうかここどこだ?」

 

 そう言われて封魔司書の一同は目を丸くして、彼らが元いた町の位置を聞いた後、さらにこの場所について歩きながら説明する。

 すると、千種と瑠璃羽は顔を見合わせ「えっ!?」と声を上げた。

 

「磐戸だぁ!? 本土に来ちまったってのか!?」

「か、空久里からどうやって!?」

 

 混乱を極める二人に対して落ち着くように促しつつ、紫乃は目を細め、自分の考えを述べる。

 

「詳しいことはまだ分からん、しかし恐らく原因はこの霧と青い月だ。霧に何らかの仕掛けがされていると考えるのが自然だろう」

「方向感覚が狂わされてるとかそんな話か? でもよ、空久里からここまでは距離が遠いし……何より、海に囲まれてんだぜ?」

「霧で飲み込んだ場所同士を繋げる、という能力の可能性が高いだろうな。空間の隔たりを無視して移動させる力には心当たりもある」

 

 本当にそんなことが可能なのだろうか。

 千種が頭を捻っていると、横からシルキィが真剣な面持ちで声をかけて来た。

 

「彼の言ってること、正しいと思うよ。ワタシたちだって今まで何度も経験したことじゃないか」

「……そうか、ブラムストーク王国の蒸気技術! だとしたら向こうでも同じ霧が出てんじゃねぇか!? そのせいでパスを繋いだのに妨害されてんだ!」

 

 その話に瑠璃羽も納得する一方、聞き馴染みのない国名を聞いたLOTの面々は首を傾げている。

 そこで三人は、簡単に事情を打ち明けた。この地球の遥か遠くに、自分たち人間と同じような生命の住む惑星があると。

 内容を耳にして真っ先に目を輝かせたのは、クリスだ。

 

「宇宙人だ宇宙人! すっげー! 戯我じゃねぇ本物なんだろ、サインくれよ!」

「何を言ってるんですか先輩……でも、流石に僕も驚きましたよ」

 

 こうして話を続けている間に、一行は紫乃の案内で磐戸市の図書館に到着。

 紫乃はさらに地下へ繋がるエレベーターに通し、改めて三人の訪問者に向き直る。

 

「そういえば自己紹介がまだだった。オレは行雲 紫乃、仮面ライダームラサメだ」

「俺は仮面ライダーダイナスト、才賀 千種。よろしくな」

 

 続いてシルキィと瑠璃羽、ロゼにクリスとロッソも名乗り、全員が紫乃と千種が握手を交わしたところで目的の階層に到着。

 広大な研究施設のような場所を見回し、千種は尋ねる。

 

「それで、この地下まで来た理由ってのは何なんだ?」

「先程言った、隔絶された空間に干渉する力……特に結界を張ったり、逆にそれを探り当てて破る力を持っている男が味方にいる。そいつの手を借りるためだ」

 

 言いながら施設内を歩いていると、目の前に件の人物が現れた。

 黒いスーツを纏った、薄く笑みを浮かべる男。千種に対してもにこやかに応対する。

 その両隣には、若葉と駿斗の姿もあった。

 

「やぁ、はじめましてだね。状況は概ね聞いている。私の名は安倍 晴明、LOT日本支部の支部長をやらせて貰っているよ」

「安倍 晴明って……陰陽師の!? え、大昔の人なんじゃ!?」

「ハハハ! 私はこう見えてかなり年を取っているんだ」

 

 瑠璃羽が混乱する中、晴明はポンと手を叩いて「さて」と話を切り替える。

 

「紫乃くんが言った通り、私なら君たちが例の迷いの霧を正しく通れるよう調整できる。それが陰陽術というものだ」

「へぇ……サンジェルマンと似たような感じかぁ?」

 

 その名を出した瞬間。

 紫乃たちは、一斉に千種の方に注目した。まるで、信じられない名前が挙がったとばかりに。

 

「なんて言った、今……サンジェルマン……!?」

「え? な、なんだよ、知り合いか?」

 

 自分の両肩を掴んで興奮した様子で尋ねられて戸惑う千種、すると紫乃が横から晴明を引き剥がし、説明を始める。

 

「サンジェルマンというのは、LOT創設者のヘルメス神、並びにその分霊であるトート神が作り上げた『受肉転生体』の初代ヘルメス・トリスメギストスその人だ」

「つまりこの組織を最初に立ち上げたヤツなのか。すげェんだなアイツ」

「最後に確認されてから100年以上も消息を絶っているという話だが、まさか別の星で生きていたとは……」

 

 ブラムストーク王国で素性を明かしてから今までも千種たちにとって頼りになる味方であったが、LOTにとってもこの状況で必要な存在であるらしい。

 少なくとも晴明はサンジェルマンに直接会いたがっており、千種や紫乃へ同行の許可を頼み込んでいる。

 元より彼の手を借りねばブラムストークへの移動は困難なのだが、万が一を考え、前線に出ないことを条件に二人はこれを承諾。

 さらに千種は、出立の前に空久里のとある場所に赴くことを追加した。

 その場所というのは、ある人物が宿泊しているネットカフェだ。

 シルキィがパスを繋いで晴明が妨害を防ぎ、一行は容易く目的地に到着する。

 そして、薄暗い店内ですぐに件の人物を発見した。

 

「浅黄さん、無事だったか!」

「おっ! 千種く……あれっ!? 紫乃くんたちもいる!?」

 

 合流した相手は、仕事で帝久乃市からここに移っている羽塚野 浅黄だ。

 彼女も仮面ライダーであることは紫乃も知っており、保有する技術も考えると強力な助っ人になることが考えられ、千種の意見に賛成したのである。

 千種たちは簡単に情報共有を済ませ、浅黄は得心した様子で頷く。

 

「なるほど、外はそういうことになってたんだ。空久里や磐戸に出てくるギガマキナイトはSトルーパー部隊とLOTの方に任せれば良いし……よし、ウチもみんなと一緒に行こうかな!」

「サンキュー、助かるよ」

 

 こうして王国へ向かうための準備は整い、店の外に出て再びシルキィがパスを繋ぐ。

 その間、紫乃は晴明と話し始める。

 

「支部長代理もいるからここの守りいいとして、あとはアダンたちの方だな……」

「実は彼らも既に調査に乗り出している。連中に見つかる前に、上手く我々と合流できれば良いんだけどね」

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 千種と紫乃たちが四傑伯との戦いを終えたのとほぼ同じ頃。

 王都に到着したソーマとミナとシモンの三人は、青い月から落ちて来た巨大な機械を見上げていた。

 

「一体何だ、これは」

「大きな花に見えますが……」

「乗り物のようでもあるな」

 

 口々にそのような感想を漏らしつつ、霧で視界が悪いながらも、まずはその花が開いたような形状の金属構造物の周辺の調査から開始する。

 だが、その直前。

 不意に背後からの物音を聞き取ったシモンは、咄嗟にモナークドライバーを装着。

 その動きを見たソーマとミナも、彼に続いてそれぞれのベルトを腰に着け、ギミックアンバーを取り出した。

 

「……来る!」

 

 ソーマのその言葉の後に、複数名の異形と人影が彼らの前に姿を現す。

 そして霧から出てきた者を目にして、一同の目が見開かれた。

 

「見つけたぞ反逆者ども!」

 

 敵の一団の先頭に立つそのリーダー格の男、それとそのすぐ後ろにいる女の顔には見覚えがあるのだ。

 既に死んだはずの黒の貴族、X-ROSSを苦しめた者たち。エミディオ・フォン・クラトカ侯爵とエレオノラ伯爵だった。

 当然、彼らを討った張本人である三人は、この事態に戸惑うばかりだ。

 

「バカな、貴様らは死んだハズ!?」

「蘇ったのだよ! 新たなる我が主、ギガヘクス様のお陰でなぁ!」

「ギガヘクス……?」

 

 聞き慣れない名前に三人は眉を寄せ、しかし疑問の言葉を挟む暇もなく目の前のマキナイトは恍惚とした様子で語り始める。

 

「あの御方は素晴らしい。全ての命が完璧な個であるギガヘクス様に統合されれば、我らマキナイトも血の渇きを癒やすための食事すら必要なくなる! この事実を急いでオルロック様にもお伝えせねばならん! あの御方にも我々と一つになって頂かねば!」

「カーミラ様もきっと理解して下さるわ! あの愛しきギガヘクス様との統合が、如何に素晴らしい行いであるかを!」

 

 天の青い月を仰いでそう語るエミディオとエレオノラを前に、シモンだけでなくソーマも訝しむ。

 かつてのエミディオは主であるオルロックに忠誠を誓い、エレオノラも主たるカーミラこそ全てと考えるような人物だったはず。

 だが今は、明らかにギガヘクスなる何者かの命令に従っており、そればかりかかつての主をもギガヘクスのために捧げようとしているように見えるのだ。

 一体何が起きているというのか。その疑問が氷解する前に、エミディオたちは自身のBOAを起動させ、姿を変容させていく。

 

「だがその前に……どうせ貴様らのことだ、我々を邪魔するつもりだろう。そうはいかんぞ。新たなる理想世界のため、貴様らのような不穏分子は取り除かねばならぬ!」

「くっ!」

「覚悟しろ仮面ライダーども! このスティンクバグ・ギガマキナイト、エミディオ・フォン・クラトカが相手だ!」

 

 サシガメのマキナイトであるスティンクバグ・アサシンをベースに、強靭な両腕やアクセサリーの付いた腰はレトセラス(タガメ)、さらにフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)の長杖を持つ。

 エミディオが使える三種のBOA全てを一つに最適化した姿、それがスティンクバグ・ギガマキナイトだ。

 エレオノラも方も、異様に大きい両脚がさらに大きくなった上、バーニアも増設されたフェモラータ・ギガマキナイトとなっている。

 加えて、彼らの後ろに控えていたミミズやマイマイカブリやミノガのギガマキナイトの集団、さらにデッドアントたちも攻勢に動き出す。

 ソーマたちはすぐさまそれに対応し、各々の持つドライバーへギミックアンバーをセットした。

 

FREEZING ECLOSION(フリージング・エクロージョン)!!》

ECLOSION(エクロージョン)!》

『変身!』

RAISE THE TUSK(レイズ・ザ・タスク)!! マンディブラリスアーマメント!! SO COOL(ソー・クール)!!》

LADIES & GENTLEMEN(レディース・アンド・ジェントルメン)! レディバードアーマメント! EXCELLENT(エクセレント)!》

KNIGHT IN WOLF'SPRIDE(ナイト・イン・ウルフズプライド)! タランチュラアーマメント! THRILLING(スリリング)!》

 

 そして、変身する。 

 幾度もこの国の脅威たるマキナイトを退けて来た仮面ライダー、レギウスとラレーヌ、モナークの三人だ。

 ギガマキナイトたちはその姿を見るなり、敵意を剥き出しにして一斉に襲いかかる。

 

「遅い!」

 

 マンディブラリスアーマメントのレギウスは即座にそのマキナイト集団に対して凍結粒子を散布し、それを浴びたデッドアントたちを凍らせ砕いていく。

 だがそれでも全ての敵が止まるワケではなく、飛んで難を逃れていたフェモラータや迂闊に近付かなかったスティンクバグなどは生存している。

 

「ここは私が!」

 

 そう言ってラレーヌはロッドを銃形態に変形させると、空を飛び回るフェモラータに向け発砲。

 だが飛行能力がより高まっている今のオオモモブトハムシの騎士には、一撃も命中しない。

 今度はこちらから仕掛けてやろう。そう思ったフェモラータが二本のサーベルを構えて突撃しようとした、その瞬間。

 

「うっ!?」

「捕らえたぞ」

 

 全身に白い糸が絡みつき、身動きが取れなくなる。

 見れば、地上にいるモナークが蜘蛛糸を放って彼女を拘束していた。

 ラレーヌは最初からこの糸の罠に誘導するつもりで、銃撃を行っていたのだ。

 モナークはそのままフェモラータを地上へ引きずり下ろし、混乱から立ち直らない内にパイルバンカーを突き立てんとする。

 しかしその寸前、横から立ち塞がったスティンクバグが腕から紫色のガスを放出し、妨害した。

 

「く!? 毒ガスか……!!」

「やはり一筋縄では行かないようだ。だが、こちらも強くなっているのでな」

 

 少し吸い込んでしまったせいで身体が僅かに痺れ、モナークとラレーヌがよろめく。

 さらにフェモラータを縛っていた糸も腐り落ちて崩れ、形勢逆転されてしまった。

 レギウスはアングルワームたちの相手に手間取っており、救出に動ける状況ではない。

 

「では死ね! 仮面ライダー!」

 

 拳を握り締めたスティンクバグが、その剛腕をラレーヌに向かって振り下ろす。

 

「ガハッ!?」

 

 だが、その一撃が彼女を捉えることはなかった。

 突如として顔面に長い棒状の物体が直撃したことによって、行動を遮られてしまったのだ。

 よく見ればそれは刃の大きな投槍で、霧の向こう側に立つ何者かの手元へと戻っていく。

 

「な、何者!?」

 

 新たな敵の存在を認識して、フェモラータが叫ぶ。

 すると、()()()()声が聞こえて来た。

 

「こんにちは。ちょっといいかな」

「うわっ!?」

 

 思わず前に飛び、サーベルを構えて警戒態勢に移るフェモラータ。

 そこに立っていたのは、一本の刀を腰に携える白い狐の似姿の仮面ライダー。

 こいつも敵か。そう思い睨んでいると、狐の戦士は笑いながら両手を挙げてみせた。

 

「おっと、落ち着いてくれよ。ボクはまだ何もしてないだろう?」

「黙れ怪しいヤツめ!! 貴様もギガヘクス様の敵だな!?」

「やれやれ……こいつらから情報を集めるのは期待できそうにないか。あっちは人間っぽいから話が通じそうだ」

 

 白狐は虫の騎士に興味を失くして背を向け、レギウスやラレーヌの方を見る。

 今なら隙だらけだと思ってフェモラータは双剣を振るおうとするが、背中越しでそれより前に狐の戦士が言葉を発した。

 

「一応忠告しておいてやる。ボクに近付くなよ、でないと後悔することになるぞ」

「そんな言葉を吐いて、後悔するのは貴様の方だ! 人間風情が!」

 

 バーニアを吹かし、全速力で突撃するフェモラータ。

 だが狐に斬撃は命中せず、かわされたのか彼の前方まで通り過ぎたように飛び出してしまう。

 

「案外素早い! でも私には――!?」

 

 直後に響く鍔鳴りの音。

 見れば、目の前の白面狐はいつの間にか刀を抜いており、それを納刀すると同時にフェモラータの両手足が微塵の如く斬れて落ちた。

 サーベルも砕け散っており、後に残ったのは地面を転がって芋虫のように這う女騎士のみとなる。

 そんな姿になった彼女を見下ろし、狐の戦士は短く息をついた。

 

「だから言っただろ。後悔するって」

「な、あ……ウ、ウソだ、こんなあっさり……!?」

 

 怯えるフェモラータ。その背後で、二つの足音が響き渡る。

 見れば、そこにはレギウスがドライバーを操作して、ラレーヌが武器を構えて立っていた。

 死が、彼女の背のすぐそこに迫っているのだ。

 

「消えてなくなれ」

「終わりです!」

BREAK OUT(ブレイクアウト)!! マンディブラリス・リベリオンブリザード!!》

BREAK OUT(ブレイクアウト)! ジュエルビートル・シネマティックコンダクト!》

 

 レギウスが右足で地面を踏むと、地面から氷柱を伸ばしてフェモラータの胴を貫く。

 そうして凍りついて氷像となりつつあるところに、ラレーヌが狙撃。後頭部から眉間を綺麗に撃ち抜かれ、悲鳴と共に氷の粒となって散るのであった。

 

SO COOL(ソー・クール)!!》

EXCELLENT(エクセレント)!》

 

 あまりにも呆気ない死。強大な戦力がいきなり失われたことに、エミディオも瞠目してしまう。

 

「な、なんだ……何が起きた!?」

 

 さらに霧の中からは、槍を持つもう一人の戦士が現れている。

 サメのようなキバとクラゲめいた触手を髪のように伸ばす異形の槍使い。

 正体不明のその敵に対し、スティンクバグは静かに配下のギガマキナイトたちをけしかける。

 

「脆い」

 

 だが前に出たマキナイトたちは、槍の刺突や剛腕の一薙ぎで次々に打倒されていく。

 後ろから襲いかかった者はモナークが殴り倒し、背中合わせになった二人の男は、僅かに首で振り向いて頷き合うのみで共闘を成立させた。

 あっという間に配下は全滅、気付けば残っているのはスティンクバグのみ。歯を軋ませ、彼は両腕を拡げ毒ガスの散布範囲と濃度・出力を全開にする。

 

「纏めて消し滅ぼしてやる!!」

 

 そして、放出。

 毒々しいガスが周囲を埋め尽くさんと拡がり、エミディオの勝利の高笑いが王都に響き渡る、はずだった。

 しかし毒の煙は、拡がって仮面ライダーたちが吸い込むより前に、()()()()()()()()()()()()()()

 

「封」

「なぁっ!?」

 

 見れば、フェモラータを瀕死に追い込んだ狐の戦士が、右手を前に掲げて毒ガスをその場から消し去っていた。

 次第にスティンクバグはガスを出し続けることができなくなり、自分をかばうように腕を畳んで後退りする。

 

「貴様らは一体、何者だ!?」

 

 問いかけずにはいられず、叫び散らすカメムシの騎士。

 すると、左右に並ぶ二人はそれぞれ堂々と名乗りを上げる。

 

「仮面ライダーゲイボルグ……アダン」

「仮面ライダーアマツムラサメ、グレイ・ダスト。ボクらの世界で起きている異変を解決するためここに来た」

 

 言いながらアマツは足を広げ腰を落とし、抜刀の構えを取った。

 ゲイボルグの方も、自身のAウェポンの切っ先を向け静かに近付いていく。

 他の三人も、逃げ場を潰すべくスティンクバグを包囲する形で接近している。

 

「ぐくっ! ならばこの力で!」

 

 スティンクバグはそう言って再び両腕を開き、力を込めた。

 瞬間、仮面ライダーたちの周囲に無数のギガマキナイトが出現し、一同に襲いかかって行く。

 

「敵が増えた!?」

「……いや」

 

 ポツリと呟いたゲイボルグがリキッドを手にし、モナークが武装をボウガンモードに変形させる。

 

《クラーケン! Enhancing(エンハンシング)!》

「フッ!」

 

 そして無数の強靭な触手が生えた槍を力強く振るうと、触手に触れた全てのギガマキナイトが煙のように消失してしまう。

 さらによく目を凝らせば、既に背を向け逃げ出そうとしているスティンクバグがハッキリと見える。

 モナークは「見えたぞ」と言った後、モナークスティンガーのトリガーを二度引く。光の矢が飛んで、スティンクバグの両膝の裏を撃ち抜いた。

 

「ごはっ!?」

「ダンタリオンの幻覚能力といったところか、残念だがそんな小手先の技など俺には通用せん」

 

 足が動かなくなっている隙に、ゲイボルグはリキッドを装填した槍を操作。

 

Boosting Color(ブースティング・カラー)! Last Enhancing(ラスト・エンハンシング)!》

「終わりだ」

《クラーケン・クロマティックファランクス!》

 

 続いて思い切りスティンクバグの背中に突き刺し、内側から触手を解き放って、全身を木っ端微塵に破壊した。

 

「またしても仮面ライダーに、お……おのれぇぇぇ……」

 

 そんな断末魔を残し、エミディオは消滅。

 周囲に脅威がいなくなったところで、一同は変身を解除し、グレイが「さて」と切り出した。

 

「君たちは一体何者だい? ここはどこかな?」

「ここはブラムストーク王国、もしそちらが地球から来ているというのなら……ここはそこから遠く離れた別の惑星だ」

「おっといきなり予想外の答えが出たぞ」

 

 アダンが目を丸くし、グレイが苦笑する。

 直後、今度はソーマたちの後ろでパスが繋がり、千種と紫乃たちが到着した。

 

「アダン! それにグレイも! 既に到着していたか!」

「紫乃くん、無事だったか!」

 

 グレイはパァッと明るい表情で彼を出迎え、そのまま自己紹介と情報の共有を始める。

 全ての情報を聞き終えると、グレイは数度頷いた。

 

「なるほど。磐戸だけじゃなく、千種くんたちの住む空久里でも、それからソーマくんたちの国であるこのブラムストークでも青い月と霧が出ていると……」

「あぁ、そうだよ。しかし、こんなに多く仮面ライダーがいるとはね」

 

 ソーマはここに集った面々を見回し、そんな感想を漏らす。

 シルキィと瑠璃羽と晴明以外は仮面ライダー、つまりここには十一人もの戦士が集っていることになる。

 これほどの数がいれば、相手が何者であれ確実に勝利できるのではないか。そんな楽観的な空気が流れ始めた、そんな時。

 

「これで、役者は勢揃いということで良いかな?」

『――!?』

 

 頭上からそんな声が聞こえ、一同はハッと息を呑んで振り返る。

 見れば、花のような機械の構造物の上に、三つの人影が浮かんでいた。

 その内の一人、中央の女性的な顔立ちをしている純白のスーツの男が頭を下げ、ニコリと笑みを見せる。

 

「ようこそ、仮面ライダー諸君。私の名はルスヴン・グレナヴォン、元黒の貴族で大公を務めていた。どうぞよろしく」

「大公ですって……!?」

 

 では、彼らはかつて死んだはずの三人のマキナイトの大公なのではないか。ギガヘクスは、そんなことまでできるのか。

 ミナが瞳を歪めて慄く中、千種はそんなルスヴンたちをフンッと鼻で笑い飛ばす。

 

「要するにテメェら、ギガヘクスとかいうヤツの言いなりで動いてる連中のリーダー格ってとこだな?」

「だとしたら?」

「ブッ潰してやる! 鉄屑(ジャンク)ども!」

 

 拳を握り、堂々と宣告する千種。

 しかしルスヴンたちは少しも怯んだ様子を見せず、むしろ余裕そうにくつくつと笑っている。

 

「残念ながらそれは不可能だよ、なぜなら今から君たちにとって最も絶望的な光景をお見せするからねぇ」

「何をするつもりなのか知らねぇが、そんなに自信があるならやってみろよ」

「ではご要望にお答えして……ここで、()()()()()()()()()()()()

 

 パチンッ、とルスヴンの指を弾く音が鳴り響く。

 すると、機械花のハッチが開いて階段が伸び、青い電光と共に二つの人影が降りて来る。

 

「は……?」

「なんだと……!?」

 

 その姿を見て、全員が目を見張った。

 大きな機械のマスクを着けているという違いはあるが、現れた者たちにそれぞれ見覚えがあるのだ。

 ひとりはオリーブブラウンの髪を肩まで伸ばした、碧色の瞳でタレ気味の目をしている二十代の青年。

 もう片方は、左目に赤い眼帯を着用している、コバルトグリーンの髪が特徴的な長身の女。

 

「さて。彼らを再殺(ころ)せるかなぁ?」

 

 弓立 灰矢とソニア・フェニックス。

 二人の死者が今、敵となって立ちはだかる。

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