仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ムラサメ×ダイナスト 機械仕掛けの不夜星 作:正気山脈
「おい……一体どういうことだ、これは」
ギリッ、と拳を握り込み、千種が呟く。
紫乃たち磐戸の仮面ライダーたちと合流を果たした後、ブラムストーク王国にパスを繋いだ彼らの前に現れたのは、復活した三人の大公だった。
その大公たちが連れて来たのは、二人の人物。LOTの封魔司書である弓立 灰矢と、レジスタンス組織X-ROSSのメンバーの一人であったソニア・フェニックス。どちらも、既に死んだはずの人間だ。
ルスヴンは狼狽える一同を目にして唇を歪めると、不気味なほど静かなソニアの腰を撫で、髪の匂いを堪能し始めた。
瞬間、千種は火が点いたように叫び散らす。
「テメェ!! 今すぐその手をどけろ!! クソ野郎が!!」
「チグサ、落ち着け! それから……アダンさんも!」
千種を羽交い締めにしながら、背後にいるアダンにも向けてソーマが言う。
アダンも千種と同様、鬼の形相とたとえることさえ生温いほどの怒気を全身から放ち、ルスヴンたちを睨んでいる。
当のルスヴンは全く余裕を崩さず、同僚であるブルンヒルダやイヴァンと共に笑い合っていた。
「ウフフッ! 早速効いているようだねぇ! まぁ、動揺するのは無理もない。親しい者がいきなり蘇っているのだから」
その発言の直後。
花の形をした機械の構造物の中から、人影らしきものがもうひとつ、ゆっくりと進み出る。
「より正確には。ここにいる者たちは蘇ったのではありません。二つの惑星の記録を元に、この私の力により生み出された複製です」
現れたのは、全身が銀色のメタリックな装甲に包まれている人型ロボットだ。頭部からは青く透明なチューブが髪のように伸び、女性的な膨らみのある胸の中心には青いジェネレーターらしきパーツが覗く。
両肩の長いマントを風になびかせ、ヒールをカツカツと鳴らして階段を降りながら、その機人は無機質な瞳で千種たちを見下ろす。
彼女の姿を目にした千種は、腹の底から溢れる熱を視線に込めて睨む。
「テメェか、テメェが……!!」
「ええ。私がギガヘクス・マーテル、地球とこの星の母となる者です」
あっさりと肯定したギガヘクスに対し、ルスヴンはソニアから離れつつ小さく首を傾げる。
「よろしかったのですか、彼らに教えても?」
「もうじき作戦は完了します。そうなれば彼らも我が子同然ですし、このくらいのことは教えても大した問題になりません」
母。我が子。
先程からギガヘクスの発言に奇妙なものを感じていた紫乃は、千種を抑えつつ眉を寄せ訝しむ。
すると、その疑問を察知したように母を名乗る不審なメカは頷いた。
「私があなたがたの母となって、不完全な『個』をより完全な『全』に統合する。ただそれだけのことですよ」
ギガヘクスはそう言って、灰矢の肩に手を乗せる。
「感情という不安定で不確定で不完全な要素に縛られるあなたがたに、彼を殺せますか? 彼女と戦えますか?」
「くっ!?」
「できないのでしょう、それが完璧でないということです。そして、私は
事実、これまでにギガヘクスが復活させた者たちに比べると、灰矢とソニアの瞳は虚ろで言葉も全く発さない。今の二人は、敵側の命令に従順なマシーンでしかないのだ。
加えてギガヘクスは、千種たちはそれが理解できてなお、彼らを傷つけることができないという確信を持っている。
それ故に、彼女はひとつ提案を投げかけた。
「我々の家族になりなさい、そうすれば傷つけ合う必要はなくなる。朽ちない肉体と共に永遠の平和を生きることができるのですよ」
「なに……?」
「クドラクやマキナイトは人間と同じく不完全な存在です。共食いし、争い、権力を高めなければ命を長らえることができない。しかし、
両腕を拡げながら、淡々と、しかし相手の感情を揺さぶるようにギガヘクスは説く。
「完全な『全』にして『個』である以上、対立など起こり得ません。さらに食事も睡眠も必要なくなり、機械の肉体と星の記録を読み取った複製データの存在によって、死という概念さえも超越する。まさに理想の世界が完成するのですよ」
「理想の……世界……」
「さぁ、母とひとつになりましょう」
ニヤつくルスヴンたちが見守る中、彼女は右手を差し伸べる。
――その瞬間。
「くだらん」
発砲音が響いた後、そんな声が聞こえた。
ギガヘクスの指は弾丸を受けて折れ曲がり、内部の骨格や部品が露出している。
銃弾の放たれた方にはレリックライザーを構える紫乃が立っており、ルスヴンやブルンヒルダは彼を睨みつけるが、当のギガヘクス本人はただ不思議そうに見下ろしていた。
「くらだない……?」
「分からないようなら教えてやる。貴様の言う理想の世界など、オレから言わせればただのまやかしだ」
「理解不能。私の構築した理論は完璧ですが」
「何が理想だ。どこが完璧だ。機械化させられて感情や意思を全て奪われて、それで命と呼べるものか。お前の思い描く理想郷には『人』も『生』もどこにもない、それでは滅んでいるのと同じだ」
「見解の相違ですね。人間や平和や自由の定義は、全てが終わった後に私が決めれば済む話です」
「お前にとって完璧なだけだろう、ただの独り善がりに過ぎん。お前は勝手に母を名乗っているだけの、ただのイカレた……侵略者だ」
「完全に交渉決裂ですね。では、死んで貰ってから家族になりましょう」
指が完全に修復されると、ギガヘクスは平坦な口調でそのように告げ、右腕を挙げる。
直後、立ち尽くす灰矢とソニアの手元に、青い光の粒子と共に
それを目にして、ロッソとソーマは瞠目した。
「レリックドライバー……!?」
「バカな、姉さんがレギウスドライバーを!?」
自分たちも使う変身のためのベルトと装備。しかも、灰矢の持つリキッドとユニット、ソニアの持つギミックアンバーは誰も見たことのないものだった。
ギガヘクスは星の記録を読み取り、最適な形を計算して複製・具現化する。それはモンストリキッドなどでも可能なのだ。
《シンクロナイズウィング!!》
《
二人は同時に、それぞれの持つユニットを、ギミックアンバーを起動。
《
灰矢は静かに自身の手にある白い悪魔の両翼のような形状のユニット、シンクロニックウィングをレリックドライバーに装着し、さらに赤と緑が螺旋を描くように配色されたベリアルモンストリキッドをセットする。
《
続いてソニアも、メタリフェルホソアカクワガタの機甲虫が内蔵されたメタリフェルギミックアンバーを装填。そのままマンディブルハンガーに手をかけた。
『変身』
《
《
そして、再び同時にドライバーを操作。
《裁け!! 地獄より現れたる邪悪の王!! シンクロニックベリアル!》
灰矢は白いアンダースーツと共にコウモリめいた皮膜の付いた翼を背負い、赤と緑の混在した装甲を纏うオッドアイの狩人の悪魔、仮面ライダーユーダリル・マーブルとなってAウェポンA/Bを双斧形態で構える。
《
ソニアの方は頭部から異様に長いクワガタのアゴを伸ばす、金属的な光沢を放つコバルトグリーンの装甲の戦士、仮面ライダーレギウス・オルタナティブに変身完了し、レギウスラッシャー
《
オルタナティブの真っ赤な瞳が、ユーダリルの赤と緑の眼光が、階下の紫乃たちを捉える。
あまりの出来事に、一同はただただ狼狽するばかりであった。
「まさか変身までできるなんて……!」
「驚くのはまだ早いよ。だって、まだ我々がいるんだからねぇ」
そう言ったのは、オルタナティブの前に出たルスヴン。
残る二人の大公も、ギガヘクスに支配されたライダーたちの横を通り過ぎて、地上に降りていく。
「おぉ~! やるのか、ルスヴン!」
「いい加減待ちくたびれていたところよ。さぁ、始めましょう」
ルスヴンとブルンヒルダ、そしてイヴァンはそれぞれ自らの顔の前に右掌をかざし、同時に叫んだ。
「
「
「
瞬間、三人の大公の姿が漆黒のスパークと深紅の蒸気の繭に包まれ、それが消えると共に異形化した姿を晒す。
イヴァンは頭だけ、というよりも身の丈ほどもある青い海賊帽を被った、巨大なダイコクコガネそのもの。それに加え、周囲には大小様々なサイズのフナムシが無数に湧いて出ている。
ブルンヒルダは白い体色に異様に大きなハサミのついた右腕が目立つ、黒くXの字を描く大翅を背に生やしたシオマネキとゴクラクトリバネアゲハの合わさった怪人に。
ルスヴンは頭部から二本の長い触覚を生やし、鋭利な刃のようなアゴを光らせる虫騎士。青や赤や緑といった色が全身に配されている他、硬く強靭な腕と拳を持っている、モンハナシャコとタイタンオオウスバカミキリの融合体だ。
クドラクたちが戦闘形態に入ってしまった。だがそれだけでなく、三体それぞれの目の前に先程と同じ青い光の粒子が集まっていく。
「まさか、そんな……バカな!?」
そうして形成されたのは、彼らが使うための武装。
大鎚に炎の魔剣、黄金の槍。
中でもルスヴンが手にした槍を見て、紫乃たちは目を見開いていた。
「
ミョルニル、レーヴァテイン、グングニール。
これらは現在、北欧神話の神々が集うヴァルハラにて管理されているはずの、神のための遺物である。
しかしルスヴンはそのグングニールを容易く振り回し、一同に襲いかかろうとしていた。
「神器だけじゃない……オーディンにロキにトール、北欧の三大神の
「クソが! やりたい放題過ぎんだろ!」
死者を蘇らされた上に傀儡のように操られ、その上強大な武器まで持ち出され、精神的にも不利になってしまったLOTとX-ROSSの連合軍。
変身したところで、このままでは勝てるワケがない。グレイはそう感じて、レリックライザーにサンライズナインテイル・シェイカーをセットし、行動に出た。
「解!」
トリガーを引いた瞬間、銃口から紫色の毒ガスが溢れて視界を覆う。
先程の戦いでスティンクバグが生み出し、アマツムラサメが封じ込めたガスを、煙幕代わりに解き放ったのだ。
あっという間に紫乃たちは姿を消してしまい、残ったのはギガヘクス側の勢力のみとなった。
「逃げられたぞぉ~!?」
「チッ」
「ギガヘクス様、如何なさいますか?」
クドラクへの変異を解除したルスヴンに問われると、全く慌てる様子なくギガヘクス・マーテルは階段を登っていく。
「彼らの状況は何も変わっていません。いずれにせよこの宇宙に逃げ場などないのですから。結局最後には自ら現れることになるので全員待機、見つけ次第即処刑するように」
『御意!』
イヴァンとブルンヒルダもその返事と共に変異を解き、灰矢たちは黙ってドライバーの機能を停止させ、階段を降りてそれぞれ見張りに移るのであった。
※ ※ ※ ※ ※
「助かったぞグレイ、いいタイミングだった」
「事前に敵の毒ガスを吸収していたのが良かった、命拾いしたよ」
グレイの機転により危機を脱した後。
一行は、シルキィと晴明の手引によってサンジェルマンの領土にパスを繋ぎ、転移していた。
屋敷からはすぐにサンジェルマンが駆けつけ、負傷した面々を治療しつつ、会議室に集まり一時的に休息を取っている。
「クソッタレが!! あいつら、ふざけやがって!!」
「そう焦るな、千種。苛立ったところで状況は変わらん」
「紫乃!! お前は悔しくねェのかよ!? 嫌な気持ちにならねェのかよ!? あの人、仲間なんだろ!?」
「悔しくないと思うか? 言うまでもなくヤツらは全員倒す、それは当たり前だ。だが冷静さを失えばオレたちの方がやられるだけだ、だから落ち着けと言っている」
千種はクッと歯を食いしばって黙り込み、俯いた。
続いて紫乃は、アダンの方に目をやる。
先程見せた怒気は既に落ち着き、今は千種と同じく項垂れていた。
「アダン、お前もだ。気持ちは分かるがらしくないぞ」
「……すまん。だがどうしても、あの顔を見ると……冷静ではいられなくなってしまった」
拳を握り締め、アダンは頭を振る。
その一方。
「まさかこんなところで封魔司書に出会うとはね」
「ご協力頂き本当に感謝致します、ヘルメス様」
「ここではサンジェルマンと呼んでくれ」
晴明はサンジェルマンとの邂逅を経て、改めて協力関係を締結。事態を収束させるため作戦を立てることとなった。
「それでさぁ、あの
「ドスケベメスマシーンて」
「さっきの煙幕に紛れてフォトビートルをこっそり放っておいたんだけど、あの機械の花の周りのデータを調べたらヤバいことが分かったんだよね」
タブレットをタッチし、浅黄は画面を見せる。
そこには、機械花が埋め込まれた周囲が徐々に金属質の物体に変質していく様子が映っていた。
「アレ、本当に花みたいに地面に根っこみたいなのを張ってるらしくて……その根に侵食された王都の周辺が機械に変化してるんだよ」
「なんだって!?」
「放置してたらどんどん機械化が進んじゃう。速くどうにかしないと」
むむむ、と唸りながら浅黄は腕を組む。
話を聞いていたシモンは、アダンの隣で深く頷いた。
「ならば簡単だ。ギガヘクスを討ち、あの機械花を破壊する」
「実行は簡単には行かないよ。敵は無数のマキナイトを生み出せるしね」
グレイはそう返し、続いてアダンも言葉を紡ぐ。
「それに、恐らくヤツはヴァンダル・リーグから『
「マグ……何?」
「語源はギリシア神話の地母神キュベレーの古代ローマにおけるの名前だが、今は多くの女神にこの呼び方が浸透している。数多の神と怪物を生み出した
そうなれば、きっともう誰にもギガヘクスを止められなくなる。
千種は息を呑み、事態の深刻さを改めて痛感した。
「何より……ギガヘクスの配下には、三人の大公に加えて仮面ライダーが二人いる。誰かが、彼らの相手をするしかない」
訪れる沈黙。本当にこんな怪物に勝てるのかという問題以前に、顔を見知った友人を倒せるのかという疑問が湧いて出る。
だが数刻の後、ソーマが椅子から立ち上がったことで静寂は破られた。
「僕がやるよ」
「待て、本気か!?」
ソニアはソーマの実の姉。
今現れているのがその複製であるとはいえ、姉弟同士の戦いとなり、ソーマは姉殺しをしなければならなくなる。
そんなことはさせたくない。千種はそう思い制止しようとするものの、他ならぬ彼自身がそれを拒んだ。
「何度も負担を強いるワケにはいかないからね。もう君を苦しませたくない。これは僕の、僕らフェニックス一族の問題だ」
頑として、ソーマは言い放つ。
それほどの覚悟があるのならば、これ以上は野暮というもの。悩みながらも千種は口を閉ざし、代わりにソーマの肩を叩き檄を飛ばす。
続いて、挙手と共に発言したのはロッソだ。
「では、ユーダリルの方はこちらが倒しましょう」
「ロッソ!! 何を言っている!?」
「申し訳ありませんが、ここは絶対に誰にも譲りませんよアダン教官。彼の後任として、始末をつけるのは当たり前でしょう。それに、そんな精神状態のあなたには任せられない」
「……お前ならばやれると、言うのか?」
「僕がやらなければならないことです」
こちらも同じく、意思を曲げずに真っ向からアダンを見つめる。
やがてアダンは深く溜め息をつき、一度頷いた。
「分かった、お前の力を信じる。頼んだぞ……」
そして我が子を送り出すようにそう言って、アダンは静かに席を立つ。
これで二人の敵ライダーを止める役は決まった。続いて考えるべきなのは、神器を持つ大公たちと花の対処法だ。
「メカ花の方はウチがなんとかしてみるよ。ハッキングが通じるかも」
「私と晴明くんも手伝おう」
「大公たちも流石に黙って通したりはしないでしょうが、そこは紫乃くんたちにお任せしましょうか」
方針は概ね定まり、晴明とサンジェルマンが内容を総括する。
浅黄・晴明・サンジェルマンは機械花の対処に動き、その妨害に現れるであろう大公の内イヴァンはアダンとグレイとシモンが処理。ブルンヒルダはロゼとクリスとミナ、ルスヴンには紫乃と千種が対抗。
灰矢とソニアに関してはロッソとソーマの二人が食い止め、とにかく作戦遂行まで全員で時間を稼ぎ続ける。
万が一ギガヘクス・マーテルが直接現れた場合は、総力を結集して確実に倒す。
こうして作戦会議は終わり、ようやく完全に落ち着いた千種は大きく伸びをして、一同に微笑みかけた。
「行く前に、ちょっと腹ごしらえしておこうぜ。簡単なモンなら作れるからよ、中華料理限定で」
それを聞くと、紫乃はピクッと顔を僅かに上げ、コッソリと耳打ちする。
「……餡饅か杏仁豆腐はできるか?」
「お? なんだ紫乃、お前案外甘いモン好きなんだな」
「できるのか?」
「いいぜ、作ってやるからちょいと待ってな」
表情はあまり変わっていないが、席についた紫乃は明らかに目を輝かせ、上機嫌で千種を見つめていた。
ところ変わって、別の席ではロゼとシルキィと瑠璃羽が女子同士でトークを交わしている。
「ところでさっきからずっと気になってたんだけど、ロゼくんはシノくんとどういう関係なんだい?」
「あ、それ私も知りたいです」
その質問を聞くなり、ロゼは待ってましたと言わんばかりに満面の笑みで胸を張った。
「私は紫乃くんの婚約者! です!」
『婚約……!?』
「ちなみにお二人の方は?」
尋ねられると、シルキィと瑠璃羽は見つめ合い、互いに照れ笑いしながら答えを告げる。
「チグサとルリハの恋人だよ」
「え、えへへ……私も先輩とシルキィさんを愛してます」
「えーっ! 三人でそういう感じなんだ、すごいですね……!」
きゃいきゃいと騒ぐ女子三人、その様子を遠巻きに見守るのはクリスとグレイだ。
「お気楽なモンだな、これが本当に今から世界を救う英雄の集まりなのかねぇ」
「でも今はこれがボクらだよ。君もロッソも、しばらくは肩の力を抜こう」
「だな」
クリスたちは紫乃の方に駆け寄り、ロゼたちも混じえて全員で料理を待つことにした。
「あの……」
「ん?」
一方、会議室からバルコニーに出たロッソは、神妙な面持ちで同じく休息しているソーマに話しかける。
「敵はあなたのお姉さん、なんですよね。今になって聞くのも変ですが、怖くないんですか? 自分の家族を倒してしまうかも知れないなんて」
「怖いよ。でも、他の誰かに委ねて心を傷つけさせてしまうのは、その方が死んでも嫌だ」
ソーマの意思は固く、必ずやり遂げてみせるという決心に満ちている。
続いて彼の方も、ロッソに問いかけた。
「ロッソ君の方は? 怖くないのかい?」
「……僕の戦う相手は、このレリックライザーの元の持ち主なんです」
一呼吸置いた後に、ロッソは続ける。
「別にあの人は戦いの師匠ってワケじゃない。まともに接した時間もそれほど長くはありません。でも彼の生き様は、あの人がかけてくれた言葉は、僕の一生の宝物です。それを……あんな機械のバケモノに穢されたくない」
怖いとか、そんな話以前の問題だ。
お互いに馬鹿げた質問だったな、と二人してフッと笑いつつ、ソーマは少年の肩に手を置く。
「君に兄弟姉妹はいるかい?」
「えっ? 双子の妹がいますけど……」
「そっか。だったら、絶対に生きて帰ろうね」
今生きている者の幸せを守るために。
ソーマとロッソは強く握手を交わした後、料理を作っている千種たちの元に戻っていくのであった。
そして、約一時間後。
「ルスヴン卿、お時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「やぁレンフィールド。どうしたんだい?」
機械花の前に戻ったレンフィールドは、同じく帰還したルスヴンに頭を垂れる。
「大したことではないかも知れないのですが、地球を侵蝕している霧の範囲をもう少し拡げては如何でしょうか? この星の侵略が間もなく成就する以上、帝久乃市以外の範囲でなら問題はないかと思うのですが」
「アズールも星を飛び越えては来れないだろうしねぇ。分かった、母の作業が一段落したら掛け合ってみよう」
「ありがとうございます」
仮面ライダーたちは未だに姿を現さない。
このまま勝利しては肩透かしも良いところだ、とルスヴンが考えていると、その脳内に直接ギガヘクスの音声が届く。
『ルスヴン』
「ちょうどいい、ギガヘクス様。お耳に入れたいことが――」
『思考を共有したので分かっています、霧の件は承認しこちらで進めておきましょう。
ピクッと眦を釣り上げ、ルスヴンが視線を上げる。
霧の向こうから聞こえてる、徐々に近付いて来るエンジン音。目を凝らせば、そこにはバイクに跨がり突撃して来る仮面ライダーたちの姿があった。
「来たか人間」
ペロリ、と自らの形の良い唇を舌で舐め、ルスヴンは機械花のハッチを閉じる。
続いてブルンヒルダとイヴァンが駆けつけ、灰矢とソニアも到着した。
「さぁ! 勝利を献上して貰おうか!」
ルスヴンの歓喜の叫び。
それが開戦の合図となって、LOTとX-ROSSの革命連合軍と、ギガヘクス・マーテル軍が再び激突する。