仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ムラサメ×ダイナスト 機械仕掛けの不夜星 作:正気山脈
再び王都に戻ったX-ROSSとLOTの連合軍は、ギガヘクス・マーテルの生み出した巨大な機械の花、侵略兵器・トーチワームを目指し突き進んでいた。
そこに立ちはだかるのは、三大公と複製された二人の仮面ライダー。
ソニアと灰矢の姿を見ると、先頭を往く千種はギッと歯を軋ませつつ、振り返って仲間たちに呼びかける。
「来んぞ! みんなで浅黄さんを守れ!」
「意地でも彼女と晴明たちを押し通すぞ!」
紫乃も同じく叫び、向かって来るルスヴンたちに向け発砲。
そしてレギウスラッシャーを持つソーマとレリックライザーを構えるロッソが先に飛び出し、それぞれソニアと灰矢の道を阻んだ。
これは事前の打ち合わせ通り。彼らが無事に勝つことを祈って、残りの面々は引き続きトーチワームへ向かっていく。
「性懲りもなく我らの邪魔しに現れるとはな、人間ども!」
「ここで皆殺しにしてあげるわ」
ルスヴンとブルンヒルダが告げ、ここでも話していた通りに動こうとするが、寸前でロゼがハッと目を見開いた。
アダンやミナもそれに気付くものの、一手遅れた。
頭上には、既にクドラクの姿となり飛行する『船』の形を取ったフナムシに乗るイヴァンがいたのだ。
「みょるにる~! ドーン!」
「うわっ!?」
大槌から放たれた雷撃が地上の連合軍に向かって落ちていき、その直前にシモンが動く。
ボウガンモードのモナークスティンガーから咄嗟に矢弾を発射し、それによって稲妻の起動を逸らした。
とりあえず急場は凌いだ。アダンとグレイとシモンは各自ベルトを装着し、イヴァンを睨む。
「お~? あそぶ?」
「遊びのつもりはない、速攻で片を付ける」
「わはははっ! おれも、おかたづけ得意だぞ!」
アダンの返答を聞いて無邪気に笑い、イヴァン・ワシリー、轟海船蛮クドラク・ヴァイキングは無数のフナムシの集合体を操り『巨人』の形に変貌する。
次に一行の進路を妨げたのは、変異を遂げたブルンヒルダだった。
右腕の大きなハサミと左手に持ったレーヴァテインを振り回し、ミナやロゼに向かって攻撃を仕掛ける。
「ミナさん、危ない!」
「アタシに任せろ!」
そこへ割り込んだのは、Aウェポンを構えたクリスだ。
大剣を横薙ぎに叩き込み、ハサミを打ってブルンヒルダを無理矢理押しのける。
「チッ。人間風情が」
「ブルンヒルダ……!!」
「まぁいいわ。さ、構えなさい。残酷に散らしてあげるから」
斬虐卑烈クドラク・スローター。破壊の魔剣を携えた異形の蝶が、ロゼたちに飛びかかっていく。
一方、大公の最後の一人であるルスヴンは、紫乃と千種によって足止めされていた。
「おーっと……二人とも残るのかい? これはちょっと、予想外だね」
神王の槍グングニールを肩で担ぎながら、ルスヴンは唇の両端を吊り上げる。
対する千種は、タイタンオオウスバカミキリとモンハナシャコの合わさったようなその怪人に、少しも怯むことなく拳を突きつけた。
「今更話すことなんざねェ。そのスカしたツラ、今すぐブッ潰してやるぜ」
「地球を狙ったことを後悔させてやる、ルスヴン」
紫乃の方もまた、カレイドライバーを装備しつつレリックライザーの照準をルスヴンに定めている。
すると、ルスヴンの変異した極彩兇鬼クドラク・マッドネスは槍の穂先を二人の方に向け、くつくつと笑い出す。
「では君たちの最期を、僕が華々しく飾ってやろうか!」
その狂喜の叫びを合図に、仮面ライダーとクドラクたちは激突する。
浅黄とサンジェルマン、晴明はその隙に、機械花に向かって走り抜けていく。
「よし! もう少しで――」
「通さぬよ」
だが、その時だった。
頭上から聞こえた声と共に四方八方から蜘蛛の糸が張り巡らされ、トーチワームの隣でそびえ立つ塔のようになり、進路も退路も塞がれてしまう。
見れば、蜘蛛の巣塔の頂点にはスパイダー・ギガマキナイトの姿があった。
「レンフィールド! まだこいつがいたか!」
「もう目の前だというのに!」
既に周囲にはスパイダーが用意した武器も仕込まれており、浅黄たちを始末する準備が整っているようだ。
それでも浅黄は焦ることなく、自らの腰にタブレットドライバーを装着する。
ただし、本来左手側にあるべき性能調整用のアプリチューナーはセットされていない。
「ウチに任せて。ここぞという時のために、ずっと前からマキナイトと戦う準備はしてあったから」
言いながら彼女が取り出したのは、アプリチューナーではなく中央に琥珀のようなものが埋め込まれた黄色い小型機械。
サンジェルマンがよく目を凝らすと、その琥珀の部分にはハチのシルエットが見えている。
「それは……機甲虫?」
「ノンノン。これはギミックアンバーを参考にしてウチが作った特別なアイテム、言うなれば
《スーパーコンチューナー!》
ドライバーにセットすると、スーパーコンチューナーなるその機械の琥珀部が上下に開いて、内部の液晶画面と黄色いハチの姿があらわになった。
「で、これ! 新しいマテリアプレート!」
《フォレスト・ウィズダム!》
続いて浅黄は新たに手にした黄色いマテリアプレートを起動、それをタブレットドライバーに装填する。
《ハック・アンド・クラッシュ! ハック・アンド・クラッシュ!》
「変身!」
《
指紋認証を行うと共にそんな音声が流れ、全身がピクセル調の黄色い繭に覆われていく。
《ウィズダム・アプリ! 深き森に秘されし叡智の殿堂! 至高の大賢者、スーパーアクセス!》
内側から伸び出たスタイランサーが繭を突き破り、一人の小柄な戦士が姿を現す。
黄色いアンダースーツの上に薄い黒の装甲が合着しており、魔法使いのローブを彷彿とさせる黒い稲妻の模様が特徴的な黄色いロングコートを羽織っている他、頭にはフードを被っている。
彼女はそのまま槍の穂先を突きつけ、元気よく名乗りを上げた。
「仮面ライダーザギークウィザード! 参ッ上!」
レンフィールドは面食らったもののすぐに我に返り、自身も剣を取って蜘蛛の巣の塔を操り始める。
「それがどうした、どんな力があろうとこの包囲網で役に立つものか!」
続いてザギークの周囲全方角から飛び来る、無数の刃。
ザクッ、という刺突音がその場に響き、スパイダー・ギガマキナイトは鼻で笑う。
「フン、やはり人間如きの力で……うっ!?」
その直後。
塔の頂点から地上の方を見下ろして、スパイダーはハッと目を剥いた。
ザギークを貫くはずだった刃が、
しかもその土は彼女の周り、360度全方位に敷き詰められており、刃が刺さっているにも関わらず全く崩れる様子がない。
「バカな、無傷だと!?」
「今度はこっちの番だよ!」
まるで魔法の杖のようにスタイランサーを振るうと、ザギークの周囲の地面の一部が四角く切り抜かれて幾つも浮かび上がり、インクでコーティングされて硬質化した上でスパイダー・ギガマキナイトに殺到する。
咄嗟に蜘蛛糸を射出しつつ副腕で掴み、巻き取って逃れようとするものの、その退路にも硬い土を敷き詰められ衝突。
怯んだところで結局追いついた土に全身を殴打され、墜落した地点に張り巡らされた硬質化インク製のトゲによって身体を貫かれる。
「ぐがぁぁぁっ!? 一体なんなんだこれは!!」
「ふふーん♪ これぞサンドボックスゲームアプリ、フォレスト・ウィズダムの力! 物体をキューブ状に切り抜いて操ったり組み合わせたり、色んなことができちゃうんだよね~!」
こんな風に、と言いながらザギークはもう一度槍を振って実演してみせる。
すると先程の土が再び動き出してスパイダーの周りを取り囲み、煙突状になって固まった。
「くっ! 調子に乗るなよ小娘!」
上に逃げ場はあるが、これは明らかに誘導されている。蜘蛛騎士は自らの剣で硬質化した土を砕き、正面から突き破ろうと試みる。
だが。
進路を開いた瞬間、眼前の穴と頭上から、洪水のような勢いでインクが溢れ出て来た。
「んゴボァ!?」
「ざんね~ん、まだまだ調子に乗らせて貰うよ~ん」
言いながらザギークがインクを使って土壁にダイナマイトの絵を描くと、隣接した土が全てそれに変質し爆発。
爆風で吹き飛び投げ出されたスパイダーは、副腕と武器を全て失い完全に弱り切っていた。
「あ、あり得ない……この私が……」
「じゃあそろそろ終わりにしてあげよっか」
《ハッキングパニッシュメントコード!》
スーパーコンチューナーを再度手で押し込み、そして離す。
「タァァァァァーッ!!」
《
両足に黄色の四角い光の粒子が集まり、蓄積が終わると同時に疾走。そのまま跳躍し、スパイダーに向かって両足を突き出した。
渾身のドロップキックを受けたレンフィールドは蜘蛛の巣を突き破って飛んで行き、それでも満身創痍ながら立ち上がろうとしたところで、全身にピシッと切れ目が走る。
脳裏に浮かぶのは、先程キューブ状に切り抜かれた土塊だ。
「ヒッ……ギ、ギガヘクス様……助け……!?」
最悪の想像は現実のものとなり、レンフィールドの肉体は賽の目状になって散り、爆散。
蜘蛛の巣の塔も崩れ、彼女らを阻むものは消え失せる。
「よし! 先を急ごう!」
その言葉に晴明とサンジェルマンは頷き、三人は今度こそトーチワーム内に侵入するのであった。
浅黄たちが変身しレンフィールドを討った頃。
アダンたちも変身を果たし、クドラク・ヴァイキングとの戦いを繰り広げていた。
「どーん! どどどーん! どどどどどーん!」
ヴァイキングは無数の鋼鉄フナムシで構成された腕でミョルニルを振り上げ、雷を何度も落としてモナークやゲイボルグを攻撃している。
実際には数が多いだけで全く狙いが定まっていないため、一撃たりとも命中していないのだが、その威力は仮面ライダーたちを足止めさせるには十分であった。
特に他の二人よりスピードに優れるアマツムラサメは、度々進路を妨げる雷に頭を悩ませている。
「くっ! こいつ無茶苦茶だ!」
雷神の扱う雷撃など、本来ならば気安く連発していいものではない。地面に落ちれば爆発の度に地形が歪み、星そのものに悪影響を及ぼしかねないからだ。
とはいえ神血を宿しているだけでトール本人ではないためか、一発一発の威力自体は本物の神の雷に比べれば――危険であることに変わりはないが――地形が変動するほどではない。
この雷を掻い潜り、急いで海賊帽を被るクドラク・ヴァイキングの本体を倒さなくては。ゲイボルグはそう思い、素速くAウェポンJモードを投擲した。
「おぉー! 危ないぞー!」
瞬間、ヴァイキングの下半身を構成していたフナムシが一斉に散らばり、頭部の位置が大きく下がる。
「なに!?」
これによって投槍は標的である本体から外れてしまい、その上フナムシたちは散開すると同時にモナークたちに体当たりを食らわせた。
「ぐ!」
「厄介な……!」
子供のような言動に全員が油断してしまっていた。一同はイヴァンが大公であるという事実を改めて認識し、再び身構える。
「しかしこの雷撃、どうしたものか」
「わはははー! もっと厄介にしてやるぞー!」
言いながらヴァイキングが何やら念じると、ミョルニルがみるみると大きくなっていく。
およそ全長10mは達したのではないかという状態になった直後、クドラク・ヴァイキングは真上に振り被ってからそれを投げつけた。
「くうっ!?」
雷を避けつつ散開し、直撃を回避。しかし着弾地点にいたフナムシたちが大鎚を跳ね返し、さらにそのバウンドした先まで跳んでいたフナムシの集合体がミョルニルを弾き飛ばす。
「なんだと!?」
勢い良く弾き出された先には、雷を回避している最中のモナークがいる。
このままでは確実に直撃してしまう。そこへ、アマツムラサメが救助に動いた。
《サンライズナインテイル!!
「行け、キュウビ!」
よりスピードに優れる九尾の狐が召喚され、モナークを背に乗せ走り出す。
これによってミョルニルは地面にめり込むが、ヴァイキングは然程気にした様子も見せず、もう一度フナムシたちを動かし追撃に向かわせる。
そこで、モナークがフッと笑った。
「かかったな」
「お~?」
見れば、モナークと九尾の方に猛スピードで走ったはずの鋼鉄フナムシたちの動きが止まっている。
先程ミョルニルを跳ね返す際、モナークがフナムシたちの移動地点を予測して、地面に蜘蛛糸を散布していたのだ。
それが脚に絡みついたせいでフナムシたちは動けなくなったのである。しかしそれでも、ヴァイキングは全く慌てない。
「バカだな~こんなの雷で焼けばいいだけなんだぞ~! どどどどどどどどど、どーんっ!」
十本もの光の柱がひとつに束ねられ、ミョルニルに向かって一直線に落ちていく。
だが。
「封!」
「えっ?」
神の鎚の傍まで接近していたアマツムラサメの一声により、一瞬の内に雷は萎んで消失した。
予想しなかった事態に呆然としている間に、続いてゲイボルグが動き出す。
《クラーケン!
「むううう……うおおおおおっ……!!」
攻防の最中に拾い上げた槍を使い、クラーケンの触手を生成して、巨大化したミョルニルを持ち上げているのだ。
まさかアレを利用して攻撃するつもりか。思い至ったヴァイキングは、即座に奪還に向け自身と合体しているフナムシを飛ばそうとする。
「お、おいそれ俺のだぞ!」
「解!」
「ぎぃっ!?」
だがその瞬間、今度はアマツが動いた。
先頃封じ込めた雷撃を解き放ち、ヴァイキングの背後からぶつけたのだ。
十発分のトールの雷を直接受けたダイコクコガネの怪物は、堪らず悲鳴を上げ痺れからその場で動きを止めてしまう。
「ぜぇぇぇい!!」
続く形で、クラーケンの触手を利用してミョルニルを投げつけるゲイボルグ。
咄嗟にフナムシを舟の形に変化させるが、雷撃の影響で僅かに逃走が遅れ、鎚の一撃が鉄虫たちを微塵に砕く。
千載一遇のチャンスだ。三人の仮面ライダーは、その一瞬を絶対に見逃さない。
《
「ハァッ!」
《
「終わりだ!」
《
「これで決める!」
ヴァイキングを囲んだ三人が一斉に飛び蹴りを放ち、邪魔が入ることもなく見事に命中。
《
「がっ……!?」
抵抗する術を失ったダイコクコガネの海賊は、力を失い徐々に肉体を消失させていく。
「うそ、おれ……死んだ……?」
散らばっていたフナムシたちも滅び始め、そして完全に痕跡が消え去る。
残されたのは、仮面ライダーたちとギガヘクスによって複製されたミョルニルのみであった。
「な、なんとか倒せた……」
「他の連中も無事だと良いが」
そう言って顔を見合わせ頷いた後、ゲイボルグたちは機械花の方に向かって歩き出す。
ヴァイキングが敗れるよりも前、ブリューナクとクラレントとラレーヌは、クドラク・スローターと戦いを始めていた。
戦いが始まると、スローターは真っ先にその美しい翅を羽ばたかせ、鱗粉を舞わせる。
宙に散布された鱗粉は徐々に怪人のシルエットを成した後、クドラク・スローターの姿そのものを投影した。
「分身!?」
「どれが本体だ!?」
「ラレーヌ、クラレント、落ち着いて! 本物はレーヴァテインを使ってくるはずよ!」
敵の挙動に気を配っていれば、決して見破れない能力ではない。
そんなブリューナクの考えを嘲笑うように一体のスローターが飛び出し、左手に持った燃え上がる剣を彼女へと突き出す。
当然本物か偽物かに限らず槍で応戦するが、衝撃を受けた直後に向かって来た偽スローターの身体が爆散する。
「熱ッ!?」
「これはただの鱗粉ではないわ、火薬のように爆発する性質があるのよ」
残る分身たちも突撃し、さらに本体のスローターはレーヴァテインを振り炎を巻き上げ、着火。
一気にその場を爆炎で包み込み、ブリューナクたちを負傷させる。
「フッフッフッ……欺瞞の神ロキの力、なかなかに面白いわね」
どうやら爆薬鱗粉をスローター自身の姿に見せているのは、ロキの血に由来する幻惑能力によるものらしい。
それを理解して、クラレントはブリューナクと顔を見合わせる。
「確かに、なかなか強敵じゃねーか」
「でも……少しだけ活路は見えたかもね」
三人は一度集まり、一言二言程度の作戦会議を実行。その際、クラレントがブリューナクへ二本のリキッドを手渡す。
そして作戦が決まるや否やすぐに散開し、まずはラレーヌがドローンビートルを利用して飛行、銃口を地上のスローターたちに向ける。
「二人とも行きますよ!」
続いて何度も発砲音が響いて、弾丸はクドラク・スローターに命中――するものの、爆発せずに分身が消失した。
「すり抜けた……!?」
「バカねぇ人間のお嬢さん、幻惑の能力は鱗粉にしか使えないワケじゃないのよ! 爆破の連鎖で幻影を消そうとしたのだろうけどアテが外れたわね!」
そう言ってスローターは空に鱗粉を飛ばし、右腕のハサミを火打ち石のように擦り合わせて火花を出して着火、ドローンビートルを爆破する。
さらにその落下地点目掛け、再び爆撃鱗粉を撒き散らす。
「くっ!?」
「これでまず一人目ェ!」
勝利を確信して、ゴクラクトリバネアゲハとシオマネキの融合怪人はレーヴァテインを振り上げる。
だがその瞬間、ブリリアントヴィーヴルのブリューナクが飛来し、ラレーヌを横抱きにして爆破の前に救出した。
「今度はこっちの
そう言ってブリューナクは無数のブリリアントジェムを鱗粉に向かって発射し、着火。
爆発に紛れて三人の仮面ライダーは身を潜め、火花と共に立ち上る砂煙が彼女らをスローターの視界から守る。
不意打ち狙いに違いないと考え、シオマネキの騎士は油断なくハサミを構えて待つ。
直後、案の定というべきか何発もの宝石の弾丸が前方から飛来した。
「甘いのよ!」
スローターは大ハサミでそれらを全て弾き落とし、砂煙の方に向かって疾走。
すると、10体の赤薔薇の戦乙女がそこから姿を現した。
「エレガントミラージュ、だったかしら。そんなものが通用するとでも?」
ギガヘクス・マーテルが地球から収集したデータによれば、これらは全てブリューナクのエレガントヴァルキリーカラーが生み出す分身体に過ぎない。
そして、これらの中に本物のブリューナクはいないはず。無闇に突撃して本体がレーヴァテインに焼かれることは避けるはずだ、とスローターは考えた。
スローターは周囲に鱗粉を放散し、燃える剣を地面に突き立てる。
炎の刃が地面を伝って四方に拡がり、鱗粉が周囲一帯を爆炎で吹き飛ばす。
これによりエレガントミラージュは全て消失、砂煙の中で逃げようとしているブリューナクやクラレント、ラレーヌの姿を捉えることができた。
「アハハハッ、私以上にレーヴァテインを使いこなせる者は存在しないわ! これで終わりよ!」
スローターは羽ばたき、再び鱗粉を発する。今度はレーヴァテイン自体をコーティングするように。
剣から滾る炎を鱗粉が激化させ、刀身を巨大化させていく。
形成された長大なるレーヴァテインはそのまま地上の三人に向かって振り下ろされ、一気に地上を焼き払う。
――勝った。
スローターがそれを言葉にしようとした瞬間、その横腹に
《
「えっ?」
「かかったな」
《ブリッツゲイル・クロマティックエクスキューション!》
迅雷風烈。
炎の巨剣に焼かれて死んだはずのクラレントが、いつの間にか懐まで忍び寄り、自身の必殺剣を発動しようとしている。
先程の高揚感と打って変わって、スローターは悪寒に襲われるが、もはや避けることは叶わない。
「ガハッ!?」
雷撃と疾風の刃が至近距離から同時に襲いかかり、左脇腹や左胸がレーヴァテインを持つ左腕ごと半ばまで斬られて抉れた。
想定外の一撃に、想像以上の重傷。だがよろめいて倒れる暇もなく、続いて無傷のブリューナクとラレーヌが飛び出して来る。
《
「一気に決めましょう!」
《
「ええ!」
煌めく宝石の銃弾が右腕のハサミを砕き、ロイヤルブルーのスーツにショッキングピンクの装甲を纏う猫の戦士の姿になったブリューナクのキックが胴を直撃。
それが完全な致命傷となり、地に倒れたスローターは消滅していく。
彼女は自分の身体が徐々に塵と化していく中で、どうしても頭から消えない疑問を口に出した。
「な、なぜ……ブリューナクがイリュージョンケットシーに……!?」
クラレントが自分のすぐ傍まで接近できたことから、イリュージョンケットシーの幻惑能力が決め手になったのは間違いない。
では、それをいつどうやって実行したのか?
その謎は、他ならぬブリューナクとクラレントの口から語られた。
「さっきの作戦会議の時、彼女から受け取ったのよ。最初の宝石弾はラレーヌのジュエルビートルギミックアンバーで出したもので、あなたが見たエレガントミラージュは幻覚。全て、イリュージョンケットシーの存在を悟らせないための罠よ」
「本物のロキだったら見破ってたかもな。
複製品のレーヴァテインを拾い上げる彼女らを見て、ブルンヒルダは心底悔しそうに天を仰いだ。
「……人間如きに騙されるなんて……!!」
涙が零れ落ちるのと同時に、ブルンヒルダは完全消滅。
ブリューナクたちは安堵の息をつくと共に、すぐに機械花の方に向かっていく。
「他のみんなの援護に向かいましょう、きっと助力を必要としているはずよ!」
だが、青い光の粒子と共にその行く手を阻む者たちが現れた。
アングルワーム、ダマスター、ユーメタのギガマキナイトたちだ。それに加えて、デッドアントも呼び出されている。
さらに目を凝らせば、既に勝利したであろうアダンらも同じく敵に囲まれているのが分かった。
「クソが! またこいつらかよ!」
「紫乃くん、みんな……どうか無事でいて!」
紫乃たちとの合流を果たし、この星と地球を救うために。
ブリューナクたちは、再び武器を取る。