仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ムラサメ×ダイナスト 機械仕掛けの不夜星   作:正気山脈

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 ブラムストーク王国の王都。そこにそびえる機械の花のような物体、トーチワームの前にて。
 オーバー・ザ・ダイナストとムラサメ千紫万紅は、複製されし神槍グングニルを振るう極彩兇鬼クドラク・マッドネスと対峙していた。

「ラァッ!!」
「シッ!!」

 素速く踏み込んで拳を突き出すダイナスト、その反対側から横薙ぎに斬撃を繰り出すムラサメ。

「ウフフ……これがダイナストとムラサメの力。なるほど、素晴らしい一撃だ」

 彼ら二人の渾身の一撃を、マッドネスは余裕綽々といった様子で対応する。
 ダイナストの拳は身をかわして逃れ、背後から来るムラサメのAウェポンの攻撃は槍の穂先で打ち払う。

「僕がこの無敵の力を賜っていなければ、今の一撃で死んでいたかも知れないねぇ?」
「クソッタレが! 一体何の能力だよ!」

 さらに、まるで次の行動が()()()()()()かのように、続く二人の銃撃も避け続ける。
 続いてグングニルを天に掲げると、地上だと言うのに二人の周囲に暗雲が立ち込め、局所的な大雨や雷が襲いかかった。

「くぅっ!?」
「まさかオーディンの未来視が使えるのか……!?」

 正解だ、とでも答えるようにクドラクは笑う。
 未来視は、その名の通り先んじて未来の出来事を観測する能力。かつてロゴス・シーカーとの決戦の折、戦女神モリガンが使ったものと同質のものだ。
 オーディンは壮絶な修行の末により強力な未来予知能力を手に入れたが、クドラク・マッドネスはその一端を何の苦労もなく得ている。

「君たちではどう足掻いても僕を倒すことなどできない。諦めたまえよ、さぁ!」

 よろめくダイナストたち目掛け、槍を振り被るマッドネス。
 これまでにない強敵を前に、しかし二人は諦めずに立ち向かう。


GEAR.06[最終手段]

「やっと着いた!」

「この場所を破壊すればきっと……」

 

 トーチワーム内部に侵入した、浅黄の変身するザギークウィザードと晴明・サンジェルマンの三人。

 周囲から伸び出てくる触手のようなケーブルを破壊し続けて、たった今その最奥まで辿り着いたのだ。

 あとはこの場所にある巨大端末をハッキングし、この機械花を破壊するのみ。

 

「そうはさせませんよ」

 

 直後に頭上から聞こえた声に、三人はハッと顔を上げた。

 そこにいたのは、両腕をブレードに変えたギガヘクス・マーテル。素速く飛び降りた彼女は、刃をザギークに向かって振り下ろす。

 対するザギークはスタイランサーでその一撃を受け止めつつ、前蹴りとブロック化させて切り抜いた床の一部を飛ばして牽制。ギガヘクスはすぐに飛び退いて距離を取った。

 

「妨害するってことは、ウチらの読みは正しいってワケだねぇ~。いいね、だったら全力で突破しちゃうよん!」

「無理ですね。あなたがたの戦闘能力では守りを固める程度が関の山、この私に勝つことまでは……?」

 

 瞬間、ザギークを観察していた彼女の目は、コートの下から無数に伸びるホログラム状のケーブルのようなものを捉える。

 それを目で辿っていくと、ギガヘクスの背後にある巨大コンピュータへと繋がっていた。

 

「まさか……マズい!」

「もう気付かれちゃったか」

 

 慌てるギガヘクスを見やり、くつくつと笑うザギーク。

 目論見を阻止しなければとギガヘクスは右腕の刃を銃の形に変え、光弾を数発放つが、その攻撃は晴明とサンジェルマンの生み出したバリアによって防がれる。

 

「くっ!」

 

 この二人の全力の守りは、独力では突破できない。ギガヘクスはそう考え、即座に打開すべく行動に移る。

 目が青く光ると同時に首の後ろのハッチが開き、そこからコードが伸びて端末へと接続。

 するとすぐに彼女の意識がコンピュータ内の電脳空間に繋がり、そこに端末内のデータをキューブ状に変えて強奪・破壊しようとしているザギークの姿を見つけた。

 

「来たね。そう、ここからはハッキングとブロッキングの勝負! ウチの土俵だよ!」

「……随分と侮られたものですね。ここは私が管理しているデータベース、電脳世界はむしろ私の独壇場です」

「なら試してみるぅ?」

 

 挑発的な、挑戦的なザギークの一言。

 そして、現実世界で起こっているものとはまた形を異にする戦いが、この電脳空間にて始まった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 一方トーチワームの外では、ロッソの変身するユーダリル ワイルドバルバトスカラーが、灰矢のユーダリル・マーブルとの戦いを繰り広げていた。

 

「ハァッ!!」

「……」

 

 肘鉄で胴を突きて押し出した後、素速く回し蹴りを食らわせ、マーブルが態勢を崩したところで双銃による連続射撃。

 地面に膝をついた隙に、続けてトルピードリキッドをAウェポンW-Wに装填し、トリガーを引く。

 

《トルピード! Enhancing(エンハンシング)!》

 

 計六発の魚雷が発射され、全てが直撃。

 だが爆発で巻き上がった砂煙が晴れると、そこには何事もなかったかのように立ち上がるユーダリル・マーブルの姿がある。

 そして反撃とばかりに弓を構えて狙いを定め、ユーダリルに光の矢を放つ。

 腕を交差させて外套を翻し、その一矢をすぐに防御。だが完全には防ぎ切れず、装甲に僅かな傷がつく。

 

「攻撃が全然効いていない……!」

『当然です。そのリキッドは最上位の悪魔、ベリアルの力を使っているのですから』

「ギガヘクスの声!? どこから!?」

 

 周囲に目をやると、マーブルの背後から突如として漆黒の四輪バイクが現れ、青い光と共に増設されたガトリング砲でユーダリルを攻撃し始めた。

 

「くっ、それは……!?」

『私の生み出したシンクロナイズベリアル専用のサポートマシン、名をベリアルクアドリガ。遊びは終わりです。もうあなたに勝ち目はありません』

 

 ギガヘクスの操るベリアルクアドリガにマーブルが騎乗し、直後に周囲に円形の強力なバリアフィールドが展開される。

 これにより銃弾も魚雷も全て阻まれてしまい、ユーダリルの攻撃手段の一切が通じなくなった。

 さらにガトリング砲がロケットランチャーに変換され、八発の弾が一斉発射、爆発して双銃の戦士を吹き飛ばす。

 

「うわあああーっ!?」

『シンクロナイズベリアルの能力により、ユーダリル・マーブルは自らの武装や機械などと意識を繋いで自在に強化・操作することができます。そして今、彼はベリアルクアドリガを通して私自身と繋がっている』

 

 ロッソにとってそれは即ち、実質的には灰矢ではなくギガヘクスとの戦いであることを意味する。

 ならば尚更負けるワケにはいかないと奮起するも、マーブルの駆るクアドリガの力は強大で、立ち上がったユーダリルに対し再びガトリングで集中砲火を行う。

 防御の暇は与えられず、轟音を立てるクアドリガを前に、ユーダリルは一度大きく距離を取るしかなくなった。

 

「このままじゃ……やられる……!!」

 

 絶対に負けるワケにはいかない。しかし、攻略法が分からない。

 仮面の奥でグッと歯噛みしつつも、打開の手段を探ってユーダリルは走り続ける。

 

 

 

 同じ頃、ソーマの変身するレギウス マンディブラリスアーマメントもまた、ソニアのレギウス・オルタナティブを相手に苦戦を強いられていた。

 両者はレギウスラッシャーとオルタスラッシャーを使って打ち合い、時にフェイントをかけて蹴りを織り交ぜるが、全くの互角で攻め切ることができない。

 それどころか、オルタナティブは剣同士のぶつけ合いでレギウスを押し返しており、優位ですらあった。

 

「く、これでどうだ!」

 

 言いながら飛び下がったレギウスは眼の前に氷の壁を形成し、さらに無数の氷の礫を飛ばす。

 氷には凍結粒子が含まれており、破壊すればたちまち凍りついて身動きできなくなる。

 

「……」

 

 だがオルタナティブはその場に留まって鋼の装甲で全ての氷礫を受け止め、さらに氷壁も容易く蹴り砕いた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「くっ!?」

 

 これがレギウス・オルタナティブの特性、炎も氷も斬撃も打撃も、あらゆる攻撃を寄せ付けない金城鉄壁の守り。

 全身に及ぶ特殊金属『メタリフェルメタル』により、レギウスが生み出す氷の壁や尖った氷柱に加えて、粒子でさえ彼女には一切通用しない。

 この力がある限り、レギウスは今までのように自らの能力で攻撃にも防御にも氷を使えず、しかもオルタナティブを凍らせて封じ込めることもできないのだ。

 

「……」

 

 オルタナティブは黙したまま前進し、再び双剣を振り被る。

 対するレギウスは武器に凍結粒子を付与し氷を纏わせ守りを固めるが、その氷も簡単に破壊され攻撃を押し返されてしまった。

 彼女の扱う双剣のオルタスラッシャーにまで、メタリフェルメタルが使われているのだ。

 

「ダメだ、攻め切れないし防ぎ切れない……!?」

 

 攻防一体という点では、彼女の戦い方はレギウスと同一ではある。

 だが、ギガヘクスの介入によるものか、その全てでオルタナティブはレギウスの上を行く。

 先程自分がやったように蹴りを浴びせられ、さらに斬撃を受け、よろめいて膝をついてしまった。

 

「勝てない、のか……!?」

 

 自分の勝つイメージが、その瞬間が、全く頭に浮かばない。実現できる気がしない。

 それでもレギウスは、ソーマは足に力を込め立ち上がる。

 たとえそれがギガヘクスによって生み出された複製であったとしても、眼の前にいる自分の姉を止めるために。

 

 

 

 マッドネスの手で投擲された神槍グングニルは、狙いを違うことなくダイナストとムラサメを追尾し、火花を散らして胸や肩の装甲に多大なダメージを与える。

 

「ぐあっ!?」

「くぅ……!!」

 

 どうにか重傷は防いだものの、必中の投槍には二人共手を焼いていた。

 守るも避けるも困難。しかも一度手を離れたとしても、すぐに使用者であるクドラク・マッドネスの手元に戻っていく。

 中距離ではオーディンの神血に由来する天候操作による雷雨や台風、遠距離ではグングニルを用いた投槍。これらの攻撃により、ムラサメもダイナストも全く近づくことができずにいる。

 

「こんなものかな? 仮面ライダーとやらはの実力は」

「ナメんじゃねェぞクソ野郎が!」

 

 キングヘラクレシューターの銃口を向けるダイナスト。

 だがそこで、未来を観測していたマッドネスは先に自身の周囲に細かな氷の粒と共に濃霧を発生させ、狙いを定められないように撹乱する。

 それでもダイナストはトリガーを引いて光の弾を放つが、大きく外れて一発も命中しなかった。

 

「残念だったねぇ?」

「いや、これで良いのさ」

 

 ダイナストが笑い、濃霧と砂煙が晴れると同時に、着弾地点から無数の鎖が伸び出てマッドネスを拘束する。

 何事かと思ってグングニルから手を離し、モンハナシャコとタイタンオオウスバカミキリの怪人は周囲に目を配った。

 

「これは!?」

「地面の岩や土をブッ壊して作り直したのさ、ここまでは見えてなかったみてーだな! 今だ、やっちまえ――」

「かかったな往生際の悪い仮面ライダーどもめ!」

 

 マッドネスは嘲笑うようにそう告げて、倒れかかっている神槍を()()()()()()()()()()

 すると、グングニルはムラサメたちの頭上で一度静止した後、一気に地上へ落下して降り注ぐ雷と共に二人に襲いかかった。

 

『がっ!?』

「ハハハッ! ここまでは最初から見えていたんだよ! 終わりだな、すぐにトドメの一撃をくれてや……る……ぅ?」

 

 鎖を剛力で粉砕し、グングニルを掴むべく手を伸ばそうとしていたマッドネス。

 その瞬間。全身がピタリと硬直した上に、地面に突き刺さったままの神槍を()()()()()()()()()()()()

 

「な、に……ぃ!?」

「思った通りだ、この力は未来を見ても防げないようだな。捕まえたぞ」

 

 そう言いながら、ムラサメはオリハルコンの箱をその場に形成する。

 念動力だ。マッドネスが視た未来でも、形がなく目に見えないこの攻撃だけは防げなかったのだ。

 ムラサメは彼を押さえ込み、そのままコントロール権を完全掌握した槍を隙間一つなく密閉、封印を完了する。

 本来であればオーディン以外に扱えないためそもそも奪取は不可能だが、今回はグングニル自体が複製品で使用者が神血を宿しているだけの偽物であることが幸いし、封じ込めることに成功した。

 

「これでもう、貴様は無防備だ」

「一気に終わらせてやるぜ!」

 

 二人はマッドネスに向かって真っ直ぐに疾走し、激しく掌打や蹴りを繰り出す。

 だが槍を失ってなお、合成昆虫の騎士はその攻撃に両の腕で対応する。

 

「あまり調子に乗るなよ小僧ども! グングニルなどなくとも、最初から徒手空拳とオーディンの力だけで君たちを倒せる!」

 

 キックを手刀で打ち払い、掌底を裏拳で横薙ぎに逸らし、雹と霰を伴う竜巻を生み出して無理矢理押し出し。

 未来視も駆使してあの手この手でライダーたちを追い詰め、二人が姿勢を崩したと見るや拳を握り込んで接近戦を挑む。

 クドラク・マッドネスの繰り出す拳撃は、まさに光の如き速さだ。

 だがそこでムラサメは自身とダイナストの周囲全方位に念動力の壁を展開し、拳を押し返す。

 そして動きを一瞬止めた隙を見て、二人は武器を操作して必殺の銃撃を放った。

 

Sparkling Color(スパークリング・カラー)! Last Calling(ラスト・コーリング)! セブンスターズ・クロマティックメテオスウォーム!》

BREAK OUT(ブレイクアウト)!! ヘラクレスビートル・ダイナスティタイフーン!!》

『行けぇぇぇ!』

 

 二つの光の奔流が混ざり合い、一つの激しき光の渦となってマッドネスを飲み込む。

 これによってクドラク・マッドネスの五体は渦の中で粉々に砕け散り、光線が消え行くと共に()()()()()()()()()

 

「なんだと!?」

「治りやがった!?」

 

 思わず仮面の中で目を見張るムラサメとダイナストを前に、マッドネスは口元を押さえて大笑いする。

 

「油断したねぇぇぇ!! 普通なら今ので倒せただろうが、僕はギガヘクス・マーテル様と特別に深くリンクしている!! どんな傷を受けても一瞬で身体が復元するのさァ!!」

「クソッ、そんなのアリかよ!?」

「ウフフフハハハハハーッ!! 僕に挑んだことを後悔させてやるよ!!」

 

 未来視を使える上に天候操作と自己再生能力を持つ不死身の怪人。

 突破口の見えない強敵に、二人はグッと歯噛みした。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 ムラサメとダイナストやユーダリル、レギウスが各自強敵と戦っている間。

 トーチワーム・コンピュータ内の電脳空間では、ザギークもまたギガヘクス・マーテルとの対決に苦戦していた。

 ザギークウィザードの周囲にはピクセル調の大型のハチ、ビーボットがおり、尾先の針から光線を発射して彼女を援護している。

 だがギガヘクスはザギークのあらゆる攻撃を防ぎ、逆に光弾やブレードによる斬撃で追い詰めていた。

 

「やるね……流石にラスボスなだけあるよ、ホント」

「単にあなたが戦力として心許ないだけでは? 今までの仮面ライダーたちの中でも、ザギークは特に貧弱というのは観測済みですので」

「ハッキリ言ってくれるなぁ」

 

 スタイランサーを魔法使いの杖のように構えて後退りしつつ、ザギークは短く息を吐く。

 そして、意を決した様子でキッとギガヘクスを睨んだ。

 

「しょうがない。できればやりたくなかったけど、()()()を使わせて貰おうかな」

 

 ギガヘクス・マーテルはその発言を聞いても、少しも動揺しなかった。

 機械であるが故当然の反応ではあるが、そもそもどんな手を隠していようとも対処できるという自負が彼女にはある。

 

「強がらなくて良いですよ。あらゆる分析結果があなたの敗北を示している、自分でも分かっているでしょう?」

「いーや、実はウチにはこの状況を逆転できるかも知れない唯一の手が残ってるんだよね~。あんまりにも危険だからやってないだけでさ」

「なら使ってみれば良いでしょう。結論は同じですよ」

 

 光の弾を雨霰と放ちながら、余裕綽々とギガヘクスは言う。

 ザギークは電脳空間でブロックを生み出して身を守る壁にしつつ、ビーボットを散開させ話を続けた。

 

「この子たちはウチの武器のひとつ、ビーボット。サイバーラインみたいな電脳空間でしか使えないけど、その代わりこの子たちは……ものすごく強力な『毒』を隠し持ってる。その名も、アサギ砲」

「それで?」

「一応忠告しておいてあげるね。避けた方が良いよ」

 

 その言葉と同時に、ギガヘクスを取り囲んだビーボットたちが一斉に尾針から毒々しい紫色の光線を発する。

 機械の母神はどうでも良さそうに自身の周囲を青い光の障壁で覆い、容易く攻撃を防ぐ。

 しかし、その判断が間違いであった。既にひっそりと彼女の至近距離まで接近していたビーボッツが、後頭部を狙ってレーザーを放ったのだ。

 直前で気付いたギガヘクスは咄嗟に身をかわすものの、毒の光条は顔の左側を掠めてしまう。

 ――瞬間。彼女の目が、思考が、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『ダメだ、千種……もうこんなこと……お前にも、恋人がいるじゃないか』

『ヘッ、下の口はこんなになってるクセによく言うぜ。本当はそっちも期待してたんじゃねェのか? ロゼがいるのによ』

『そんなことは、あぁっ♡』

『今夜もたっぷり楽しませてやるからな。ほら、もっと俺が欲しいんだろ……?』

 

 淫靡な空気に包まれたピンク色の空間で、そんな会話を交わしながら互いを抱き締め、肌と汗をぶつけ合って濃密に絡む紫乃と千種の姿。

 それ以外にも、別人の組み合わせで異なるシチュエーションのあられもないシーンが次々と生成されていく。

 眼の中に直接拡がる決してあり得ない異常な光景、それを目撃したギガヘクス・マーテルはただ目を見開いて完全に動きを止め。

 

「ぎ゛ぃ゛や゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ッ゛!?!?!?!?!?」

 

 そして、狂ったように絶叫し始めた。

 腕のブレードでもがくように生成映像を振り払い、ギガヘクスは初めて感情を昂らせる。

 

「制御不能の感情ノイズが迸る……これは『怒り』だァッ!! ふざけるなよ貴様ァ!! こんな非生産的な……この、俗物がァァァッ!!」

「ん、もしかして受け攻め逆の方が良かった? それともGLの方が好み? 逆ハーレムなんかもできるけど」

「そんなことは言っていない!! 今すぐこの映像を止めろォォォ!!」

 

 映像を攻撃すれば眼の前から消えるが、しかし再び別のビジョンも終わりなく浮かび上がって視界を埋め尽くしてしまう。

 苛立ちを募らせたギガヘクスは周囲のデータを破壊しながらザギークの姿を探して暴れまわり、またもやビーボットの接近に気付かず毒光線を背に受けた。

 

「ギッ!?」

「これが必殺アサギ砲。(ウィルス)って言ったっしょ? 一度受け止めた以上、もうハッピーな妄想は止められないし止まらないんだよね」

 

 先程よりもさらに多くの映像と画像が、視界を、頭の中を埋める。

 機械女神は頭を掻きむしりながら怒り狂い、あらゆる方角を無茶苦茶に攻撃しながらザギークを倒すべく探し続ける。

 そんな彼女の今の姿を嘲笑うように、ビーボットが何発もレーザーを浴びせて逃げた。

 

「追加オーダー入りま~す♪」

「ぐあああああ……情報処理能力が、衰えていく……!! このギガヘクスの崇高な頭脳に!! これ以上こんな下劣極まるイメージを押し付けるのはやめろォォォッ!!」

「おーおー暴れてくれるねぇ。ところで、この『感情制御システム』とか『反逆防止システム』とかって壊して良かったの~?」

 

 ピタリ、とギガヘクスの動きが止まる。

 ここはトーチワームのコンピュータの中であり、ギガヘクス自身と繋がったコントロールルームでもあるのだ。

 そんな場所で何も考えずに暴れ散らかし、データを破壊し続ければ、どうなるか。

 

「あ……あぁぁぁっ!?」

「おーっと、今頃気付いてももう遅いよん」

 

 気付けば体の動きは鈍くなって移動処理が追いつかなくなり、無防備な姿をザギークの前に晒してしまっていた。

 さらに彼女もまた、ドライバーを操作して必殺技を発動している。

 

《ハッキングパニッシュメントコード!》

「ウチの土俵で勝とうなんて1000年速いんだよね!」

YEEEEEAH(イエェェェェーイ)! スーパーウィズダム・マテリアルエクサイズ!》

 

 スタイランサーとビーボットから一斉に紫色の光線が照射され、それを受けたギガヘクス・マーテルは腐り落ちたように真っ黒になって消滅。

 ザギークが現実世界に戻れば、実物のギガヘクスもまた完全に機能を停止し、頭や体の各部から黒煙を噴いて倒れていた。

 事態を傍で見て慄く、というよりもドン引きしている晴明とサンジェルマンを振り返って、ザギークウィザードは言う。

 

「よし! 二人共、今の内に脱出するよ!」

『あ、ああ……』

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 ザギークがギガヘクスにウィルスを打ち込んだのと、時を同じくして。

 ユーダリル・マーブルの乗るベリアルクアドリガの方も、完全に沈黙していた。

 

「止まっ、た?」

 

 自分のマシンが動かなくなっても、マーブルは全く慌てていない。ただ静かにその場で留まっている。

 何が原因でこんなことになったのかはユーダリルにも分かっていないが、この状況が絶好のチャンスであることは理解できていた。

 

Reloading Color(リローディング・カラー)! Last Calling(ラスト・コーリング)!》

「なんだか分からないけど、これで終わりだ!」

《ワイルドバルバトス・クロマティックバスター!》

 

 すぐさまレリックドライバーを操作し、跳躍して足を突き出す。

 輝きと共に勢い良く放たれた渾身のキックは、一撃でクアドリガを破壊し爆散せしめる。

 その爆発でロッソの変身は解けマーブルも吹き飛び、しかし大した傷もなくゆっくりと立ち上がると、()()()()()()()()()()()()

 

「あー、なんだこりゃ? なんでこんなことになってんだ?」

 

 周囲を見回し、レリックライザーを手に()はそう呟く。

 顔に付いていたマスクは、バキッと音を立てて外れ地面に落ちていた。

 

「え?」

「まぁ良いか。とりあえず今は、ギガヘクスとかいうヤツをどうにかしなきゃだからな」

 

 間の抜けた声を上げたロッソの方に近づき、彼は、弓立 灰矢は微笑む。

 

「ロッソ、お前がユーダリルを継承してくれてたんだな。すげぇじゃねぇか」

「……~~っ!!」

「本当に大したヤツだよ。ありがとな」

 

 灰矢は涙ぐむロッソの頭の後ろをそっと撫で、ロッソの方はただただ声にならない声を上げて泣き、灰矢の胸に抱きつくのであった。

 

 

 

 同じ頃。

 レギウスに決定打を与えるべく迫っていたオルタナティブは、剣を振り上げたまま突然にその歩みを止める。

 

「え……?」

 

 レギウスはキョトンと目を剥くその前で、レギウス・オルタナティブはゆっくりと腕を下ろして剣を捨て、変身を解いた。

 

「アタシとしたことが、まーた良いように利用されちまってたのか」

 

 口に着けられたマスクも無理矢理引き千切り、ソニア・フェニックスは溜め息を吐く。

 

「危ないとこだったなソーマ、怪我ないか?」

「姉さん!? 本当に!? 意識がある……のか!?」

 

 半信半疑ながらも自身も変身を解いてゆっくりと近づき、そのソーマの両手をソニアはしっかりと握り締める。

 

「こんな弱い姉ちゃんでごめんな」

「姉さんは強いよ。僕はずっと昔から知ってる」

 

 涙を堪えつつもソーマは断言し、ソニアは小さく「ありがとな」と返す。

 そして二人はまだ戦っているダイナストたちをサポートするため、手を取り合って走り出した。

 

 

 

「どういうことだ……!?」

 

 ザギークの暗躍により、戦場で起きている異常事態。

 その中で最も被害を受けているのは、クドラク・マッドネスであった。

 

「何が起きている!? なんだこのビジョンは!? い、一体僕は何をされたァァァッ!?」

 

 彼の眼の前に、というよりも眼球の内側で広がっているのは、男同士で抱き合う姿や女同士で絡む姿。

 不運にもギガヘクス・マーテルと深くリンクしていたばかりに、彼もウィルスに感染して思わぬ被害が起きていたのだ。

 

「オラァッ!!」

「ぐはっ!?」

 

 まず、奇怪な映像と画像が表示され続けるせいで未来視が使えない。

 さらに、ギガヘクス自身が機能不全に陥っているために再生能力も発動しない。たった今ダイナストの飛び膝蹴りで付いた頭部への損傷も、全く直る様子がなかった。

 

「バ、バカな……バカなぁぁぁ!?」

「どうやら最後の最後で運に見放されたようだな」

CHECK(チェック)!!》

 

 言いながら、ムラサメがカレイドライバーを操作し、右足に極彩の煌きを集める。

 ダイナストもまた、キーをひねってグリップを三度倒し、必殺の態勢に移っていた。

 

Fullgathering Color(フルギャザリング・カラー)!! Last Calling(ラスト・コーリング)!!》

「やるぞ、千種」

BREAK OUT(ブレイクアウト)!!》

「任せなァ!」

 

 その返事を合図に、二人は同時に跳ぶ。

 続いて共に右足を突き出し、光と共にマッドネス目掛けて突き進んでいく。

 

《カレイドプリズム・クロマティックエクスプロージョン!!》

《ヘラクレスビートル・ダイナスティビッグバン!!》

『消えてなくなれェェェッ!!』

 

 二人のライダーキックは嵐を生み出し抵抗しようとしたクドラク・マッドネスの胸に直撃、そのまま大きく後ろへ吹き飛ばし、大爆発を引き起こした。

 

PERFECT GROOVY(パーフェクト・グルーヴィ)!!》

「い、嫌だ、嫌だぁぁぁ! 消えたくない、もう消えたくない、死ぬの嫌だよぉぉぉ……!」

 

 爆炎に包みこまれながら、喉を突き破る勢いでルスヴンは叫ぶ。

 だがダイナストもムラサメも、そんな彼に少しも同情していない。

 

「ここはテメェのいて良い時代じゃねぇ。大人しくくたばってろ」

「二度と蘇って来るな」

 

 消え行く炎と共に塵に還るルスヴンへとそんな言葉を送り、二人は変身を解いて、拳を重ね合うのであった。




『まだだ……まだ、終わらぬぞ!!』

 ブラムストーク王国のはるか空高く、宇宙空間に浮かぶ青い光を放つ機械の星から、そんな声が響く。
 戦いはまだ、終わっていない――。
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