仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ムラサメ×ダイナスト 機械仕掛けの不夜星   作:正気山脈

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GEAR.08[星砕勝利]

 思わぬ助力が入り、紫乃と千種が不夜星に向かった後。

 残った仮面ライダーたちは、変わらずギガヘクスの分身たちの相手をしていた。

 

「灰矢、危ない!」

「チィッ……!」

 

 ユーダリル ワイルドバルバトスカラーの背後へと迫るギガヘクスのビームブレード、しかしそこへ一本の槍が割って入る。

 それは、ゲイボルグのAウェポンだ。ユーダリルへの攻撃を穂先で打ち払い、そのまま胸を深く貫いて破壊した。

 ゲイボルグはユーダリルと背中合わせとなり、ロッソの変身したユーダリル・マーブルと共に敵を退ける。

 

「アダン!」

「……無事か」

「お陰さんでな」

 

 首だけ僅かに振り向いてフッと笑うユーダリル、マーブルの方も嬉しそうに頷き、三人は目の前のギガヘクスたちを押し返した。

 

「みんな、もう一頑張りだ! 紫乃はきっとやってくれる!」

「チグサは勝つ、必ずな……!」

 

 アマツムラサメとモナークもそう言って、分身たちを破壊し、隣にいる仲間たちを援護する。

 それでもなお敵は空から際限なく降り続け、レギウス・オルタナティブが舌打ちした。

 

「こいつら邪魔ったらありゃしない!」

「本当にキリがない……でも、僕らなら!」

 

 氷の刃と鋼の刃が混ざり合い、二人のレギウスがギガヘクスを次々に挟み潰す。

 

「ロゼさん、援護しますよ!」

「ありがとうミナさん! クリス、あなたも一緒に!」

「おうよ!」

 

 ブリューナクが飛行して地上のギガヘクスへ宝石弾をバラ撒き、怯んだところへラレーヌとクラレントが素早く薙ぎ倒していく。

 

「ウチがまだまだやれるってところ、見せてやんよー!」

「頼もしいですね」

「我々も全力でここを死守しなければ……!」

 

 晴明やサンジェルマンが結界術によって味方の守りを固め、ザギークがその二人を護衛する。これにより、強固な布陣が維持されていた。

 

「……まったく、騒がしい人間たちだ」

 

 マグナスは再生し続けるテュポーンを斬り刻みながらひとつ息をつき、デミトリと共に地上を死守する。

 立ち場や所属する組織はおろか、住む惑星すら違えど、彼らの思いはひとつ。

 ムラサメとダイナストを信じ、侵略者を阻む。それが故郷を守ることに繋がるのだから。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 それぞれのマシンで走ってパスを通り、ダイナストとムラサメはついに目的の星に辿り着く。

 

「ここがギガヘクス本体のいる星……」

「なんつーか、何もねぇな?」

 

 青い光が漏れ出るメカニカルな地の上で周囲を見回し、二人は言った。

 人影どころか草木すら生えておらず、前後左右どこを見渡しても何も無い、当然といえば当然だが殺風景極まる空間だ。

 バイクで走っていれば何か見つかるだろうか。そんな風に思っていると、不意にダイナストが視界の端にあるものを捉える。

 

「見ろ、なんか山があるぜ。案外あそこに籠もってんじゃねーの?」

 

 指を差した方角には、確かに大きく盛り上がった二つに連なる山のようなものが見えた。

 ダイナストは飛びつくようにダイナストームを走らせようとするが、そこでムラサメが静止に入る。

 

「……待て。何か、妙だ」

「妙?」

「あんなに高い山なら、最初来た時にすぐ気付いたはずだろう。それに、今一瞬……()()()ような」

 

 言われてダイナストも目を凝らしてみると、地響きと共に山が()()()と柔らかに揺れ動いていた。

 一体何が起きているのか。それぞれマシンから降りて状況を静観していると、突然に視界の中の巨大双丘が地上から()()()()

 さらに驚きの声を上げる間もなく、その剥がれた山の下から頭・肩・腕・腹という具合に、徐々に人型のシルエットを作っていく。

 そうして現れたのは、テュポーンよりもさらに大きな、銀色の肌の裸身の女体。二人が山だと思っていたものは、この女体の乳房だったのだ。

 

「うおっ!? デッッッッッカ!?」

「なんだと!? ま、まさか!?」

 

 白銀の長髪をかき上げる巨女を見上げ、ダイナストとムラサメはたじろぐ。

 

「ようやく気付いたか。そう、ギガヘクス・マーテルとはこの機械惑星そのもの……私こそが本体だ」

 

 ギガヘクス・マーテルは嘲笑と共に右掌に青い光の玉を形成し、それを空に打ち上げる。

 直後に無数の青いエネルギー弾が雨霰と降り注ぎ、二人の仮面ライダーへと襲いかかった。

 だが、ムラサメは念動力の壁で攻撃を弾き、ダイナストはキングヘラクレシューターで無理矢理振り払って光の弾を凌いだ。

 

「驚いたぜ……まさか、星そのものが相手とはな」

「だがそれでも、オレは諦めん!!」

「ああ、俺もだ紫乃!! 相手してやるよ、大魔王のとっておきでな!!」

 

 そう言いながら、二人はそれぞれ行動に移る。

 ムラサメはレリックライザーに換装し、ソニックペガサスエクシードのモンストリキッドを取り出し。

 ダイナストの方は、ヘラクレスビートルギミックアンバーのキーをひねり、その後ホーングリップを倒した。

 

「絆の力、見せてやる」

《時を超え空を駆ける絆の翼!! 天元突破!! ソニックペガサスエクシード!!》

超越解放(ハイパー・ブラスト)!!」

《ヘラクレスビートル!! HYPER BLAST(ハイパー・ブラスト)!!》

 

 これによってムラサメは白銀の翼を背負う赤紫色の装甲の剣士、仮面ライダームラサメ エクシードへと変化。

 ダイナストは黄金の装甲が漆黒に染まり、胸部や両肩、両腕に両脚などアーマー各部が展開され、燃え立つ青い炎を背中から放ち虫の翅のように拡げて雄々しく叫ぶ。

 仮面ライダーオーバー・ザ・ダイナスト ハイパーブラストモード。

 人類の敵を討つべく、二人の戦士は共に空へ舞い上がった。

 

「行くぞォォォラァァァッ!!」

 

 まず仕掛けに行ったのはダイナスト。

 キングヘラクレシューターを手に真っ直ぐに飛翔し、その直後に蚊を潰すように両掌を合わせる形でパンッと叩かれた。

 

「フン、所詮は人間……?」

 

 潰した際の感触に違和感を覚えたのか、ギガヘクスは手を開いて中を確認する。

 そこにダイナストの姿はなく、代わりに自分の掌に風穴が空いていた。

 

「なっ!?」

「ラァッ!!」

「ぐっはぁ!?」

 

 どこへ行ったのか周囲の状況を探る前に、ダイナストの蹴りが首裏に叩き込まれる。

 再生した手で今度は掴もうとしても、あまりの速さ故に全く捕まらない。

 逆に頭や胸を銃弾で撃ち抜かれ、傷を負ってしまっていた。

 

「どうしたどうした!! 全然追いつけてねェなァ!!」

「こ、こいつ……!」

 

 ならばもう一度エネルギー弾で攻撃してやる。

 そう思って掌に光球を集めた瞬間、ダイナストの陽動に紛れて息を潜めていたムラサメが、サイキックで腕を無理矢理ギガヘクスの腹に捩じ込んだ。

 

「フン」

「ぬおぉ!?」

 

 激しい爆発が起こり、巨大なギガヘクスの腹部が負傷して黒煙を上げる。

 怒りムラサメを見下ろすも、再びダイナストによって背後から襲撃を仕掛け、邪魔立てされてしまう。

 このままでは戦いにならない。そう思ったギガヘクスは、身体の形状を変化させて全身から無数の蛇頭や獣頭を伸ばし、四方八方に無差別攻撃を仕掛けた。

 

「調子に乗るなよ人間!! お前たちは必死だがまだ私は戦える、私は全く消耗していないのだ!! 時間をかければいずれ体力が尽きるのはお前たちの方だ!!」

 

 すると、ダイナストとムラサメは攻撃をかわしたり防いだりしつつ、顔を見合わせる。

 

「確かにこんだけやって全然倒れねぇのはおかしな話だ」

「そうだな。ということは、この巨人の姿も()()()()()()()()()()()

「プレラーティの時みてーに、どっかにコアがあるってトコか?」

 

 言いながら、ムラサメは右手に握った小さな黒い箱を見せつけた。

 

「ならば話は速い、この()()()()()()()()()()()()()で……」

「うおおおおおあああああッ!!」

 

 浅黄の名を聞いた途端、ギガヘクス・マーテルの全ての獣頭・蛇頭が飛び出し、ムラサメに向かっていく。

 そして、その手の中にあった箱を驚くほど容易く奪い取ってしまった。

 

「は、はーははははは! やったぞ、奪ってやった! これで――」

「ああ」

 

 瞬間、蛇頭の口の中で小箱が()()()()

 それだけでなく、その黒い残骸が大きく広い網となって、他の異形の首を巻き込み絡め取った。

 ムラサメは浅黄から何も預かってなどいない。ただ、ギガヘクスの彼女に対する殺意を利用し、オリハルコンの網という罠にかけただけなのだ。

 

「がぁっ……!?」

「こんな単純な手に引っかかるとはな、お前の負けだ」

「こ、このふざけた人間どもがァァァッ!!」

 

 網を引き裂こうとするが、オリハルコン製のものである故に全く千切れる様子がない。

 ならば一度地に潜み、別の地点から奇襲を仕掛けよう。

 ギガヘクスがそう判断した頃には、既にムラサメとダイナストは動き出していた。

 ムラサメがドライバーを操作してトリガーを引き、ダイナストは巻き鍵を三度ひねった後にホーングリップを三度倒す。双方、必殺の構えだ。

 

Reloading Color(リローディング・カラー)!! Last Calling(ラスト・コーリング)!!》

「貴様がどこにコアを隠していようと、関係ない!!」

「これで……一気にブッ壊す!!」

BREAK OUT(ブレイクアウト)!!》

 

 二人は同時に行動に移り、ムラサメは地上から、ダイナストは青炎の翅を噴き空へ舞う。

 

《エクシード・クロマティックオネスティストライク!!》

 

 先に一撃を叩き込んだのは、ムラサメだ。

 地面に溶け一体化しようとしている獣頭たちに、念動力を集約させたキックを命中させ、ギガヘクスの肉体を打ち砕きながらコアの位置を探っていく。

 

「そこだ!」

「おう!」

 

 特定を終えると、サイキックを再度全開にし、コアと思われるそれを全力で巨人の体外へと引っ張り上げた。

 青く淡い光を放つ機械の球体が、無防備な状態でダイナストの方へと飛ばされる。

 

「ま、待て! 待ってくれ! 待つんだ! ギガヘクスとの統合は、全宇宙が望んでいることのはず! 落ち着け、止めろ! 私はここで死ぬワケには――」

「ゴチャゴチャうるせぇよ」

《ヘラクレスビートル・ダイナスティリジェネレーション!!》

 

 ダイナストが両足を突き出すと同時に、背後で青炎が巨大なヘラクレスオオカブトの姿を取り、共に突撃。

 キックと双角が同時に球体を抉り、そこを中心に炎が円状に何度も惑星に広がっていく。

 訪れた静けさの中でダイナストが地上に降りると、ギガヘクス・マーテルの本体は、震えながら絶叫し始めた。

 

「理解不能、理解不能!! ギガヘクスの敗北、全てが統合した世界の否定、何もかもが理解不能ォォォ……ッ!?」

 

 やがて本体に亀裂が走り、青い火の粉が噴き出していく。

 それを浴びた機械の地面は創造と破壊の力によって作り変えられ、草が生い茂り美しい花が咲いた。

 先程ダイナストが放った青い炎によって、惑星全体にその植物の繁茂が拡大していき、ギガヘクスを構成する全てが失われる。

 そんな中で、ダイナストは一輪の小さな白い花を摘み取り、それを彼女に投げた。

 

「こいつはアンタへの手向けだ」

PERFECT GROOVY(パーフェクト・グルーヴィ)!!》

 

 夢破れた者に花一輪。

 星械母神ギガヘクス・マーテルの残骸はその花と共に、植物の塊と化した不夜星ごと宇宙の塵と化して消えてゆく。

 ダイナストとムラサメもまた、マシンを回収して恋人のカードを掲げ、転送される形でその場を去った。

 

 

 

 そして、紫乃と千種の帰還の後。

 ブラムストーク王国にて、ギガヘクスの分身全てが機能を停止し、灰矢とソニアの身体にも火花が散り始める。

 別れの時が来てしまったのだ。

 紫乃は徐々にエネルギーを失っていく灰矢を見つめ、目尻に涙が溜まっていく。

 他の者たちも、同じように。

 

「灰矢……」

「紫乃、ロゼ、みんな。短い時間だったがよ、また一緒に戦えて良かったぜ」

 

 だが灰矢はそう言って安心させるように微笑んで、自分の妹にそうするように紫乃の頭を柔らかく撫でた。

 一方のアダンは、消え行く灰矢の思念に対し、逡巡しながらも言葉をかける。

 

「灰矢、お前は俺の生涯の友だ。決して忘れない……お前が繋いでくれたこの命、それに恥じない生き方をしてみせる」

「お前はとっくにそれができてるよ。きっと、これからもな」

 

 それを聞いてアダンも涙ぐみ、グレイやクリスがその背にそっと手を添えた。

 

「これでお別れか。でも悔いはない、こうしてまた会えたんだからよ」

 

 千種たちの方では、ソニアもまた意識が失われようとしている。

 それぞれが別れを惜しむ中、彼女はふと思いついたようにメタリフェルギミックアンバーをソーマに託す。

 

「やるよ。まだマキナイトとの戦いは終わってないんだろ? だったらきっと、必要になる」

「姉さん……ありがとう。僕は、必ず勝って……この国を、そして太陽を取り戻してみせるよ」

「楽しみにしてる」

 

 姉弟は笑い合って、互いを抱擁する。

 やがて、灰矢とソニアの身体は完全に動かなくなり――。

 一同は、灰矢の方は磐戸に、ソニアはサンジェルマン領にて遺体を埋葬する運びとなった。

 三大公から回収した遺物の複製品は北欧の神界であるヴァルハラに輸送し、悪用されないように徹底管理する方針である。

 

「さて。例の星と霧がなくなった以上、オレたちもこれで別々の道を往くことになるな」

 

 蒸気のパスが二つ、磐戸市と空久里アクアシティに繋がり、その出立の直前。

 名残惜しそうに、ロゼとグレイが千種たちに提案する。

 

「ブラムストーク王国の戦い……良ければ、私たちも協力しましょうか?」

「戦力は多い方が良いだろう、こっちからしてもマキナイトの侵略は他人事じゃないしね」

 

 それを聞いた一行は表情を明るくするものの、すぐに頭を振った。

 

「ここから先は俺たちの問題だ。俺たちだけの力で片付けねェと、ヴラディスだって納得しないだろ」

「その通り。気持ちは嬉しいですが、どうか信じてください。私たちは……人間はもう、絶対に負けません」

 

 いつの間にか挨拶もなく空の定位置に昇っているデミトリを見上げながら、千種とミナは言う。

 ソーマとシモン、そしてサンジェルマンも頷き、改めて各々の行先へと足を運んでいく。

 

「負けるなよ、千種」

「当たり前だろ。紫乃こそ、俺がいない間は地球を頼んだぜ」

 

 蒸気の中を潜る直前に、二人は互いに向けて呼びかける。

 それぞれの場所へと向かう紫乃と千種、しかしそれは決して今生の別れではない。

 たとえ宇宙を隔て、違う目的で動き、別々の星にいたとしても。

 生きている限り、いつか必ず会えると信じて。

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