中国の軽慶市。そこで産まれた「発光する赤児」の報道以来、世界各地で超常現象が報告され、世界総人口の約8割が超常能力“個性”を持つに至った超人社会。
この個性を用い、個性犯罪を取り締まる、ヒーローという職業が生まれ、今や誰もが憧れ、その将来を夢見るようになった。
そうして多様な個性が日常となった今でも、"普通"とは逸脱したもの達の肩身は狭い。
大きくわけて、個性は「発動型」そして「異形型」と分類される。
特に異形型と呼ばれる個性を持つ者達は、都市部であればともかく、田舎や山村地域では未だに差別が根強く残っていた。
そして、差別は異形型だけにとどまらず、個性として強力でないものを「没個性」、そして個性による副作用的な衝動にすらも及んだ。「没個性」はまだしも、「個性による衝動」は"普通"でないことが多い。
もちろん、それを救う為の制度は存在する。個性による衝動に悩む人へのカウンセリングやサポートは割と充実しているし、サポートも手厚い。
しかし、そこから零れてしまえば、ただその衝動に悩み、押し潰され───────そうして、
何とか、押し殺していた衝動。
どうにか、隠していた異常性。
けれど、往々にして本性と言うのはどこかで露呈する。
きっと、僕と彼女も、1歩間違えれば、出会う事が無ければ、手を取り合うことが無ければ、きっとそういうもの達の中に名を連ねていただろう。
──────人間じゃない子を産んじゃった!!
──────そうか、お前は、人ではないのだな。
親に向けられた、嫌悪の視線が忘れられなかった。
言葉が、忘れられなかった。
既に距離を置き、片や既に消えた存在だとしても。幼少期に刻みつけられた傷とも言える記憶は、自覚がなくとも、確かに僕たちを蝕んでいた。
だから、きっと運命だった。奇しくも似た境遇に生まれ、全てを失った2人が、あの日あの場所で出会った事は。神様が居るならきっと、最後のチャンスをくれたのだろう。
僕達は、何とかそのチャンスを手にし、この生きづらい社会を生きている。
僕も、彼女も。"普通"に歩み寄る為に。
「───────と、言う訳でだ、雄英ヒーロー科1年は残念な事に、ほぼ初日にお前以外全員除籍となった。」
「どういうわけです!?」
幼馴染に応援され、情けない事に手伝ってもらい、頑張って入学し、クラスに馴染めるか不安を抱えながら迎えた入学初日。なんだかよくわからんうちに、個性把握テストをして見事一位を取ったはいいものの。翌日登校したら、始業時間まで誰も来ることなく、担任だけが来て今の状況だ。
「い、いやいや!昨日入学式も参加せず!寝袋に入った変な担任に急にテストするとか言われて!なんとか1位とったと思ったら、次の日から同級生居なくなっちゃった!!たっ、確かにちょっと私も、イメージと違うというか、心配になる子達でしたけども!」
「お前の目は正常で安心した。そして、お前の困惑、痛く理解する。その辺は俺も非常に申し訳ないとは思っている。だが、お前のクラスメイトだったヤツらは誰一人として、ヒーローの資質がなかった。お前を除いてな。」
「嬉しくない…!こんなに嬉しくない褒め言葉があるなんて…っ!」
どうしてこうなった!と頭を抱える少女は、目の前の担任に気炎を吐く。
「相澤センセー!これから授業どうするんです!!今年ヒーロー科A組しかいなかったのに!ひとりで授業受けろってこと!?」
「残念だが、これはこちらの落ち度だ。来年度の新入生に合わせてお前の一学年のカリキュラムを開始することになった───────つまり、留年だ。」
「リュウネン…りゅうねん…留年!?」
余りの衝撃に硬直。もう空いた口が塞がらない。
担任教師、相澤の反応を見る限り嘘という線は限りなく、というか絶対無い。
つまり、これは決定事項だった。
雄英高校ヒーロー科1年A組14番、渡我被身子、15歳。
まさかまさかの、高校生活2日目にして、留年が決定した瞬間だった。