フヘンの愛   作:イベリ

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とがひみこ


出来損ないと蛙①

それぞれが配置につき、ビルの構造や作戦を練る。

 

麗日は先程の2人の戦いを振り返りながら、いやぁ〜!と頭を搔きながら、たははと笑う。

 

「あの二人凄かったね!ウチらも頑張らんと!って気合いが入ったよ!どう?デク君は───────ガチガチに緊張しとる!!」

 

ガタガタと、若干キャラデザまで四角くなっている緑谷。ここぞと言う時にガチガチに緊張してしまうのは、彼の性分と今までを考えれば、当然とも言えるだろう。

 

「ご、ごめん麗日さん……あ、相手が相手だから緊張しちゃって…」

 

「あぁ、そっか。爆豪くんと仲悪いんやったね…」

 

「……うん、嫌な奴なんだけど、それ以上に凄い奴なんだ…!」

 

「うーん…男の因縁!ってやつかな!」

 

「あっ!ご、ごめん!麗日さんをこんなことに巻き込むつもりはなくって…!?」

 

「ううん!もっと頑張ろうって思ったよ!絶対勝とうね!」

 

(う、麗日だぁ〜…っ!!)

 

女子と喋った事など、最近では欠片もなかった緑谷は、順調にナードへと育っていた。

 

とそうして感動している暇はそれほどなかった。なにせ、相手はあの爆豪勝己。

 

幼少の頃からその才能を間近で見てきた。凄いところも、より鮮烈に映った。

 

「……後ろからただ見ているだけの僕は、今日で終わり……行こう、麗日さん……!」

 

「うんっ!」

 

そうして緑谷が覚悟を決め、拳を握りしめた。それと同時刻。

 

「なるほど、これが核か……ハリボテだな。」

 

敵チームとしてコンビを組ませられた爆豪・飯田は核のハリボテを前に各々が好きに動いていた。

 

「おい。デクは個性があんのか。」

 

そんな時、無言を貫いていた爆豪が飯田に声をかける。

 

「見ていなかったのか?あの超パワーを。試験の時は体を壊してしまっていたが、どうやらそれも克服していたらしい。君は──────」

 

そこからの飯田の言葉は、既に爆豪に届かなかった。

 

今の爆豪は、過去に類を見ない程苛立っていた。

 

(なんなんだ…ッ……なんなんだよ……ッ!!)

 

昨日から怒涛の情報量に理解が追いついていなかった。

 

ないと思っていた奴に個性が発現。しかも憧れに似たその力が余計に爆豪を苛立たせた。

 

いきなり出てきた遙か格上の存在。憧れすら、もう二度と戦いたくないと言うほどの力。

 

(あのデモンストレーションは手ぇ抜いてた…!それでも、勝てねぇって…っこの俺が…っ!!)

 

なんでも出来た、なんだって乗り越えてきた。それでも、その今までの経験が霞んで消し飛ぶ程の、遥か高みにある頂点。

 

自分は今、麓にすら到達していないことを理解させられた。

 

何よりも苛立ちを加速させたのが、緑谷出久の目だった。

 

「クソナードが…っ…トップは…俺だ…っ!」

 

ギリギリッと、爪が食い込むほどに拳を握りこんだ爆豪。その時と、オールマイトが開始の合図を出した。

 

『さぁ!時間だ!Aチーム対Bチーム!対戦開始ィィ!』

 

ついに始まった戦闘訓練。クラスメイトは次は自分の番かもしれないと、胸を高鳴らせながら、その様子を見守る。

 

モニタールームで皆が見守る中、早速動き出した爆豪に、詠斗は感心していた。

 

「……なんというか、良くも悪くも期待を裏切らないね、勝己は。1階からしらみ潰しに探すつもりかな。もう周りが見えてないね。」

 

「テンヤ君との作戦会議をしている様子も一切なし。典型的な悪例。」

 

「僕たちのデモンストレーションを欠片も参考にしないという姿勢を貫くのは評価すべきかな。」

 

「見てください、部屋を片付けるテンヤ君の小さな背中を!可哀想です!」

 

若干の呆れを零すA組トップ2。

 

実際、爆豪の行動は私怨丸出しの単独行動。ヒーローとしてはもちろん、敵としても落第物。

 

まるで癇癪を起こす子供の様な、そんな印象を受けた。

 

「麗日さん、準備はいい?」

 

「うん!」

 

対する緑谷・麗日ペアは、事前の打ち合わせ通り、ビルの影に集まりそこで麗日が緑谷の背中に捕まって個性を発動する。

 

麗日の個性は【ゼログラビティ】触れた物の重力を取り払う能力。それを利用し、上層階から攻略するのが2人の方針だった。

 

「ワン・フォー・オール【ペネトレイト】…10%…っ!捕まって!」

 

「はいっ!」

 

足にエネルギーを溜めて強化し、深く屈む。

 

以前試験で見せた跳躍よりも劣るが、それでもビル1つをゆうに飛び越えるソレに、麗日は内心恐怖しながら、勇気を振り絞る

 

「───────ッ解除!」

 

お互いの息を合わせ、麗日の個性を解除。自重を取り戻した緑谷は、7階層分のビルの屋上に到達。

 

「やったね!麗日さん!流石だよ!」

 

「いやいや!デク君が居なきゃ屋上上がれんかったよ!私まだ自分を浮かせるの負担が大きくてさ…」

 

「い、いやいや!?僕なんてまだこの力も完全に扱えてないし調整も漸くできるようになっただけだからそんな…」

 

「それダメだよ!んー…まぁ、二人で頑張ったという事で!」

 

グー!と突き出された拳に、緑谷はワタワタアセアセしながら、恐る恐る拳を合わせた。

 

にひっ!と麗らかに笑った彼女に、緑谷はギュンっとした。

 

「出久君は根っこから陰の者だね。」

 

「影に潜む……イイ…」

 

何を言っているのだろうかと詠斗と常闇を見ていたクラスメイト達は、詠斗のキャラがわからなくなっていた。

 

2人は隠密行動を中心に、お互いの個性を使い接敵を避けながら核を確保する事を目標としていた。

 

緑谷・麗日ペアは、詠斗達の演習を参考にしつつ、核の場所の候補を見取り図に書き込んでいく。

 

「見取り図を見た限り、階層ごとに構造が違うタイプじゃなかった。となると核を置けそうな場所はだいたい決まっている。」

 

「うん!明らかな広間がある中央ブロックか西ブロック!」

 

「そう!それで、飛び上がる時に一瞬見た限り、西ブロック側にはそれらしきものはなかった。状況設定的に中層階であるほど確保が難しい。中心に探すのは───────」

 

「5階〜3階の中央ブロック!やね!」

 

「うん!さすが麗日さん…行こう!」

 

そうして、順調に階層を下げながら5階中央ブロックに差し掛かった時。

 

「───────あった…核だ…!」

 

「うん!でも、飯田くんしかおらへんね…爆豪くんは…」

 

綺麗な部屋の中に佇む騎士の様な甲冑を身に纏う飯田と、ハリボテの核。姿の見えない爆豪に、何となくその理由が見えた。

 

「多分、僕を探すために先行してる……下層から行ってたら鉢合わせしていたかも…でも、そんなに時間が無い。すぐに確保しよう!」

 

「うん…!」

 

2人としてはこの状況は幸運だった。

 

一気に飛び出した二人、速攻を仕掛ける。

 

「連絡をされる前に、速攻で!麗日さんは核に走って!」

 

「お任せあれ〜!!」

 

「何ぃっ!?」

 

すぐさま連絡を繋ごうとした飯田に急接近。コンパクトに構えた緑谷は、踏み切った左足と右腕にのみエネルギーを集中。そうすることで一気に肉薄。連絡をしようとする飯田に拳を突き出す。

 

何とか避けた飯田は、緑谷の思惑を察した。

 

「くっ!僕に連絡をさせない気か…!!」

 

(かっちゃんには連絡させない!単独先行している今が絶好の機会!)

 

連絡する暇を与えない。攻撃をしながら徐々に左腕に移動させ、両腕に10%の力を集中させる。

 

この個性の発動箇所の移動は授業中も行っている、個性の制御方法。

 

ファミレスからの帰り道、詠斗と被身子と考え、ごはんの時も風呂の時も寝る前も練習し、徐々に体に感覚を叩きこんできた。

 

(まだ同じ場所を強化させ続けるのは長持ちしない!狙うは短期決戦!!思い出せ!構えはコンパクト!直線的な動きで踏み出せ!最小限の動きで、最高の結果を!!)

 

「その動きは…っ!」

 

飯田が目を見開いたのと同様に、モニタールームでも一瞬歓声が沸く。

 

「うおぉっ!?あの動き、逢魔の!?」

 

「すっげぇ緑谷!逢魔!アレってお前の動きだよな!?」

 

「うん……すごいね。1度見せただけだから、見よう見まねだけど……付け焼き刃以上の効果があるだろう。」

 

初めて見た詠斗の戦いは、緑谷にとって鮮烈だった。オールマイトのような派手さは全くなかったが、実直で実践的、それでいて無駄を全て削ぎ落とした動きは、自分に必要な技術だと感じた緑谷は、その動きを頭の中で何度も反復。

 

そうして出来上がった戦闘スタイルは、ある意味で彼の完成系の最初の1歩となっていた。

 

オールマイトは、思わずマイクを握りしめてしまった。

 

(緑谷少年……凄いぞ!試験の時とは別人じゃないか…!!カッコいいじゃないか…ッ!!それもこれも、君のおかげなんだろう!)

 

詠斗の影響を直に受けていた緑谷の成長に、オールマイトは嬉しいやら悲しいやら、しかし着実に成長している弟子の様子は、オールマイトの日々の楽しみでもあったのだ。

 

「見て!飯田がなにかするみたい!」

 

映像越しに、飯田の行動を予期した芦戸の声に、全員がモニターに視線を戻した。

 

(ピンチ!圧倒的に!爆豪君もいない!俺だけで…僕だけでどうにかしなければ……っ!)

 

飯田は迫られた選択に、詠斗の言葉を思い出す。

 

「───────不利になったら!仕切り直すっ!!」

 

喝ッ!と吼えた飯田は、緑谷の拳に力が乗り切る前にダメージ覚悟で頭突き。攻撃を逸らし、緑谷を怯ませる。

 

「くっ!?ダメージ覚悟で攻撃を逸らした…っ!?」

 

「そしてぇっ……麗日君を、止める!!」

 

「うそぉ速ないっ!?」

 

怯んだ緑谷の隙をつき、脹脛のトルクを急速に回転させ、爆発的な速度で核を移動させる。

 

個性『エンジン』

 

脹脛にあるエンジン機構を爆発させ、その加速を利用し急加速を生み出す。急加速をさせてしまったことで、約1分はエンジンによる加速はできない。しかし、守り通した。

 

爆速で核を持ち去った飯田は、何とか核を守り通し、爆豪に無線を繋げる。

 

「爆豪くん!接敵している!ヒーローたちは既に、核の場所だ!!」

 

「っ!!」

 

「あーっ!もう!せっかくのチャンスやったのに!」

 

「───────麗日さん!!」

 

麗日が悔しがった瞬間。麗日の背後が爆発。できる限り最速でエネルギーを脚に移し、麗日を抱えながら回避に成功する。

 

「……出来れば、戦わずに終わらせたかった。」

 

麗日を下ろしながら、爆煙に向かって気丈に笑った

 

「避けてんじゃねぇよデクゥ…ッ!!」

 

釣り挙がった眦が、彼の怒り度合いを如実に示している。

 

(イラついてる…冷静じゃない…!なら、十分に勝機はある!!)

 

今まで嫌というほど、彼の事を間近で見てきた緑谷だからこそ、その状況に笑っちまったのだ。

 

個性『爆発』

汗腺からニトログリセリンに似た物質を生成し、それを触媒として爆発を起こす。

 

爆破よるターボをかけた爆豪が単身緑谷に突撃。

 

「中断されない程度にぶっ殺してやらぁッ!!」

 

しかし、緑谷はそれを見ぬき、小さく構えたまま、考え続けた。

 

(挟撃されてる現状、こっちが不利!それなら仕切りなおす!逢魔君が教えてくれた基本!)

 

分析による次の行動の択の豊富さ。緑谷の現状使える武器の一つが花開く。

 

緑谷は立ち向かうでも、防御するでもなく、拳を地面に叩きつけた。

 

「なッ!!?」

 

「麗日さん!」

 

「はい!」

 

「仕切り直しだ、二人とも!!」

 

SMASH!と拳をコンクリの床に叩きつけ、自分たちの足場を破壊。挟撃されている状況から仕切り直すために、二人で階下へと逃れる。

 

(忘れるな、かっちゃんを僕に釘付けにしろ!!)

 

落下の最中、真上を見上げ緑谷は笑って叫ぶ、憧れのように。

 

「来いよかっちゃん…!!勝負だッ!!」

 

「─────調子乗ってんじゃねぇぞクソナードォッ!!!」

 

「っ…!そうか……待つんだ!!爆豪君!挑発に乗っては、彼らの─────」

 

寸前で二人の思惑に気が付いた飯田が爆豪を制止するが、それでも止まらず緑谷を追って階下へと飛び込んでい行ってしまった。

 

着地した瞬間、2人は散開。緑谷はさらに階下へと穴を開け爆豪を誘導し下へ。麗日は4階で姿を隠し、再び隠密行動へと移る。

 

一瞬の出来事に動くに動けなかった飯田はそして、二人の策にやられたと、拳を握った。

 

「飯田、なんで二人を追わないの?」

 

「…いいや、恐らくその場を離れることができない、が正しいだろう。」

 

モニタールームで見ていた芦戸の疑問に答えたのは障子の複製腕だった。未だに理解ができない芦戸は、どういう事?と首を傾げた。

 

「現状、さっきの状況は緑谷たちが不利だった。だが、今は一気に振出しに……いや、若干緑谷たちが有利になったか?」

 

「へぇ……目蔵、なんでそう思った?」

 

「方針として、二人は恐らく核の確保を目的として動いていた。飯田たちは先の挟撃で仕留められず、一方は緑谷を追い、一方を見失った。仮に飯田が緑谷を追った場合、核がフリーになり麗日が核を確保できる。緑谷が爆豪を戦闘不能にすれば…」

 

「そっか!!麗日を補足できない以上、飯田はその場に釘付けにされる!爆豪を倒せば、必然的に二対一の状況を作れるんだ!」

 

「正解、いい観察眼だ目蔵。オールマイト君、座布団一枚。」

 

「お任せありぃ!!」

 

「初めから見抜いていたお前に言われるとはな。あと、オールマイト先生はどこから座布団を取り出した?」

 

モニタールームで二人の作戦が開示され、一同が関心したように頷く中、半身を氷で包んだ轟が冷徹に状況を見ていた。

 

「理解はできるが……勝つことが前提の策だ。厳しい捉え方もできる。」

 

轟の言葉に、確かにという空気に包まれるも、オールマイトが、ナンセンス!と轟を指さす。

 

「いいかい、轟少年!ヒーローはいつだって命がけ!そんな時に、負けるつもりで戦うなんてのは、一番やっちゃいけないのさ!」

 

「…リスク管理はするべきでしょう。」

 

「そうだね!その通り!だが、それでもやらねばならない時が必ず来る。実力で勝っていても、心が負けていては救えない物もある!覚えておくんだ、轟少年、みんな!そんな時こそ、そんな逆境にこそ!笑っちまって乗り越える!私は、みんなにそんなヒーローになってほしいんだ!あれさ、こんな時こそ──────」

 

 

 

Plus Ultra(プルス・ウルトラ)!!』

 

 

 

「………」

 

みんながあれか!とオールマイトと両腕を突き上げ、一緒に校訓を叫ぶ。

 

そんな中でも、轟はオールマイトの言葉に何か思うところがあるかのように黙り込んだまま、自身の左手を見つめて、モニターの中の緑谷を見つめた。

 

緑谷と麗日の作戦目標は、核の確保を第一に動いていた。なぜなら、爆豪・飯田と同時に戦うことは不利であることはわかりきっているからだ。

 

だからこその分断作戦。

 

二階層分をぶち抜いて着地した緑谷は、すぐさま自分が貫いた穴から離れ、拳を構える。

 

(まだ同時に強化できるのは、二か所まで…なんだ、何もないよりずっといい!これで、かっちゃんを超える!)

 

3階中央ブロックの広間。そこで幼馴染は再び対面した。

 

ごくりと唾を飲んだ緑谷に、爆豪はキレながら、掌を発破する。

 

「……俺を誘き出して分断……丸顔は隠れてメガネを釘付け。必然的にタイマンの状況に持ち込みやがったか…!!」

 

(気づかれてた…!)

 

「あぁ?なぁおい、クソデク。随分派手な個性だなぁ!?今まで俺を騙してて楽しかったかよ、アァッ!!?」

 

バチバチと爆ぜる掌が、爆豪をさらにヒートアップさせる。

 

「使って来いよ……!!個性…!!んでもって俺が、全力のテメェをねじ伏せる!!」

 

凶悪なまでに笑った爆豪に、緑谷は構えたまま、深く息を吸って、再び笑った。

 

「使ってやるさ!!今日ここで、君を超える!!」

 

緑谷の叫びに、爆豪はより眦を吊り上げた。

 

「やってみろや、クソナードォッ!!」

 

掌を後ろに向け、爆発の勢いを使ってターボ。緑谷に向かって突貫した爆豪は、右の腕を振りかぶった。

 

(来たっ!かっちゃん、僕がどれだけ君を見てきたと思ってる!どれだけ君の凄さを鮮烈に感じてきたと思ってる!君の初撃は決まって──────!!!)

 

緑谷は、エネルギーを右足に集中させ、地面を思い切り蹴り飛ばし、今度こそ前進する。

 

爆豪の右の大振りを予測し、一瞬で懐に飛び込んだ緑谷は、拳を握った。

 

「君は大抵、初撃を右の大振りにする!!」

 

「なっ…!?」

 

(右腕で攻撃をっ!左手、間に合わねぇっ…!!?)

 

予想外の前進に、爆豪は身を固めてしまった。その一瞬が、致命的な隙となる。

 

拳を構え、引き絞り、真っ直ぐに突き出す。実直に、堅実に、確実に。

 

憧れと決意を拳に乗せて。

 

 

 

 

「デトロイト・スマァァァッシュ─────!!!」

 

 

 

弾けるような拳打音を鳴らし、爆豪の顔面に突き刺さった拳を、力の限り振りぬく。

 

「ぎぃっ…!?ガァァァッ!!?」

 

爆豪のターボの速度が、緑谷のに拳の威力を底上げし、吹き飛ばす。壁に叩きつけられた爆豪は、朦朧とした意識の中、持ち前のタフネスで何とか意識を保っていた。

 

(なん、だ……っ、この、威力……!!?)

 

認められない、認めたくない。

 

今まで路傍の石ころだった、ずっと後ろをついて回るだけの出来損ないが、自分に踏み込んできたことが信じられなかった。

 

同時に、最悪の感情(羨ましい)が、消しても消しても、心の中に残り続けた。

 

個性把握テストで見せたあのパワー。そして、今自分を踏み越えたその勇気が、どうしても憧れ(オールマイト)と重なった。

 

それが余計に爆豪を奮い立たせ、苛立ちを爆発させる。

 

「ムカ…っつくんだよ…その目ぇやめろや…ッ!!」

 

よろよろと立ち上がった爆豪が、掌でバチバチと炸裂する音を鳴らしながら再び構えたのを見て、緑谷は叫んだ。

 

「すごいと思ったヒーローの分析は、ノートに書き溜めてきた……!!君が無意味だって爆発させたノートが、君を追い詰めるんだ……!」

 

「っ!!」

 

いつまでも隠れ、委縮していた自分とは、今日で別れを告げろ。

 

戦わずに終われれば、なんて。真っ赤な嘘だ。

 

(君を超えたくて、戦いたくて、仕方なかったんだ!!)

 

心に喝を入れた緑谷は、拳を固く握り叫ぶ。

 

「いつまでも"雑魚で出来損ないのデク"じゃないぞ……かっちゃん、僕は『頑張れ』って感じのデクだっ!!」

 

─────頑張れっ!て感じで、なんか好きだ私!

 

(ありがとう、麗日さん…!!)

 

ずっと嫌いだったこの名前が、つい昨日知り合ったばかりの人が、あっさりと好きにさせてくれた。

 

きっと、何でもない言葉だったのだろう。救おうだとか、そういうことはきっと一切なく、ただ彼女の心のままに行ってくれた言葉だったのだろう。

 

だからこそ、あの時、緑谷は確かに彼女に救われた。

 

「デク君……!」

 

その叫びは、四階で息をひそめる麗日にも届いていた。

 

残り約8分

 

出来損ないが、憧れに猛った。




かっちゃんむずくない?こんな直接的に馬鹿とか、死ねとか、クソとか、言うキャラ考えたことないんだけど…小学生だ…小学生を思い出せ…!

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