フヘンの愛   作:イベリ

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渡 我 被 身 子


特訓×特訓

1戦目の講評が終わり、オールマイトがどんどん行こうか!と気合を入れて「はい次ぃ!」と、授業はどんどん進んでいく。

 

「百は流石だね。核の部屋を要塞化したのはいい判断だった。出来れば、誘導するように実の罠を張れる指示を出せば、もっと余裕を持って勝てた。あとは単純な戦闘力かな。ここはこれから被身子に教えてもらおう。実は百のケツ見すぎ。煩悩を抑える訓練から始めるかい。個性鬼強いんだから自覚してね。」

 

「精進致しますわ…逢魔さんに被身子さん、その、放課後はよろしくお願いしますわ!」

 

「任せて!頑張ろうね!」

 

「ばっ!おま!じゃあお前は渡我があの服を着てたら見ねぇのかよ!?」

 

「君みたいにチラチラ視姦して満足してるレベルの低い人間と同じにして欲しくないね。舐めまわすように見るし揉みしだくに決まってるだろ。」

 

『もっと酷いわッ!?』

 

「ヒミコちゃん、彼氏がアレでいいの?」

 

「エイトくん……♡」

 

「ダメだこのカップル!強すぎる!」

 

「逢魔君キャラブレブレだよね!」

 

 

「はい!ミナちゃん!思いつきだったと思いますけど、あのコンクリを酸で溶かして床ごと核を確保するの!すごく良かったです!でも酸の範囲をもう少し考えましょう!危うくハリボテが溶けるところでした!青山くん!もう少し敵を引きつけるような行動をすると良かったです!マントが溶けてからテンション下がりすぎです!リキドー君!考え無しに突っ込みすぎです!せっかく個性強いんですから、もっと考えましょう!コージ君!しゃべってください!」

 

「でしょでしょ!緑谷の戦い見てて、あれなら私でもできそうでさ!やっぱそこ言われちゃうよなぁー!はんせー!」

 

「……うぃ……☆」

 

「んまぁ、俺も初めとはいえ突っ込みすぎたよな…反省だ。」

 

「が、がん、頑張る……!」

 

 

「じゃあ今の講評。まずはヒーロー側、焦凍。いい個性だね。基礎もできているようだから、放課後特訓は最初はあんまり意味ないかな。でもちょっと雑。凍結にムラがあるし、ちょっと上限超えそうだったでしょ。最大出力をより精密に操作すればムラもなくなる。細かい制御を練習するとより強力に使えると思うよ。ヴィラン側は透、とても良かったよ。敵は中にいる、という固定観念を破壊し、初めから外に待機して目蔵の探知前に確保した。君にしかできない戦術だった。第2のMVPを決めるなら君だ。言うなら、欲張りすぎないこと。そのせいで焦凍に捕まったからね。もう少し猿夫と連携が取れたらよかったね。」

 

「うお〜!やったぁ!」

 

「いい個性…か……逢魔、お前ならどう制御訓練する。」

 

「僕なら氷の形を自在に変えてみたり、凍らせる場所を指定する練習をするかな。形を自在に変えられれば、被災現場でも使える。あと、細かい凍結を使えれば、傷だけを凍らせて止血、簡易的な麻酔代わりとして、人命救助にも使える。ヒーローは敵を倒すだけじゃないからね。」

 

「形を…細かい制御も、か……考えた事もなかった……それなら、この力だけで……」

 

2人は交互に講評を行っていくと、いつの間にか全員分の講評を終わらせて、授業も終わりの時間に入っていた。

 

オールマイトはおつかれ!とサムズアップしながら、今回の講評を行う。

 

「さあ!これでみんなの演習が時間通り終わったわけだけども、みんな凄かったぜ!大きなけが人もナシ!初回としては及第点以上さ!今回出た反省点は良く活かし、放課後の特訓に役立ててくれ!では、みんな!教室にィッお戻りィィィィィッ!!」

 

ダッシュで去っていたオールマイトを見送りながら各々が思ったことを口にする。

 

「すっごーい…はやぁ…」

 

「なんか、逢魔達の評価点が講評へのコメントだったから、オールマイトが教師って感じしなかったな。」

 

「んー、まぁ仕方ないんじゃないかな?オールマイトは自主性を持たせたりしたいのかも…?」

 

ダッシュで去ったオールマイトを見て、しかし二人だけが違和感を覚える。

 

「……なんか、前見た時より遅い気がします。」

 

「全力じゃないだけ……と、言うには遅い気もする。」

 

「そっ、そうかな!?」

 

「わっ、なんですかイズク君。急に大声出して?」

 

「………んー…」

 

初日のヒーロー基礎学が終わりを迎え、迎えた放課後。

 

A組の17人の生徒が、体育館γに集合。詠斗と被身子による放課後特訓が開始される。

 

「特訓です!!!」

 

「ヒミコちゃん、テンションフルMAXだわ。ケロケロ。」

 

「今日は女子を私が!男子はエイトくんが見ます!日替わりで交代するので、明日はエイト君が女子、私が男子を見ます!調子を見つつ、適性を見つつ振り分けていきます!」

 

男子と女子に別れた後、2人に向けてみんなが手を上げる。

 

「これから何するんですか、逢魔せんせー!」

 

「はい、これから始めるのは対人組手です。」

 

「今日のヒ基礎でみんなが相当優秀なことがわかりました!なので、本来個性禁止にしようとしてましたが、個性を使ってもらうこともあります!私とエイト君は個性使いませんが。」

 

「個性を絡めた格闘経験を最短で積んでもらう。」

 

「初めは私とエイトくんの見取り稽古から始めようかと思いましたが、みんなが想定よりずっと優秀だったので、いきなり実践でいい気がしてます!」

 

「初めの二週間は僕と被身子を主に訓練の相手としてもらうけど、適性での振り分けができたらそれぞれの適正に応じてランダムペアで訓練してもらうから。」

 

「じゃ、男子はこっちね」と詠斗の言葉で男女で別れると、詠斗がさっそく始めようかと、緑谷を指名しようとして、思い出す。

 

「出久君……あぁそうか。なんか勝己を追っていって後で合流とか言ってたね。」

 

「戻ってこねぇな、緑谷」

 

「んー、純粋な増強型じゃないけど……天哉。個性ありで一旦戦おうか。さっきみたいなデモンストレーション。本気で掛かってきなよ。」

 

「些か気が引けるが……うむ、君の実力は先程見ているしな!胸を借りるとしよう!」

 

詠斗が指導を本格的に始めた時と同時に、被身子は女子勢の指導を始めていた。

 

「はい!ではまぁ何を始めるかって言うともちろん対人組手なんですけど、女子はちょこちょこ武器術についてもやっていきます。」

 

「えー、なんで?素手の方が利点がある〜って逢魔も言ってたじゃん?」

 

「純粋に性差です。やっぱり筋力は比べるべくもなく、男子の方が高いです。身体強化を純粋にできるとかでなければ、女子は武器を持った方がいいです。異形型のヴィランにも有効なので!」

 

「じゃあさ、最初から武器術をやればいいんじゃないの?」

 

「武器をいつでも持っている、という理想的な状況を常に作れるわけじゃありませんから。でもモモちゃんはちょっと別ですね、初めから武器術やりましょうか。でも武器ならエイト君の方がいいかもです。まぁでも、今日はみんなと徒手格闘やりましょう!」

 

と、被身子の言葉におー!と手を挙げた女子陣。対する男子陣は、飯田をぶん投げる詠斗に男子が群がっていた。

 

「 うわぁッ!?ど、どうなっているんだ!気がついたら倒れている!」

 

「まじぃ…?今の個性全く使ってねぇの?」

 

「うおぉぉぉ!何が起こったのか分かんなかったけど、漢だぜ!逢魔!!」

 

「ま、まだやってる!?って、なんで飯田くん地面に倒れてるの!?」

 

「緑谷君!逢魔君に転がし回されていたところだ!」

 

そうして三者三葉の反応を見せる中、ただ一人尾白だけが見せられた光景に戦慄していた。

 

「凄い……というか、どうなってるんだ…!?」

 

「どーした尾白?なんか興奮気味じゃん?」

 

「わからないのか上鳴!この凄さが!!」

 

「お、おぉ…悪ぃわかんねぇ…確かに凄かったけどよ…」

 

詠斗の異常性に気がついた尾白は、戦慄すると共に、詠斗が師となることに至上の喜びを感じていた。

 

「普通、どんな達人でも力で技を成立させるんだ。比率でいえばだいたい7:3くらい、なのに今の……明らかに比率が逆転していた…!凄いことだよ、本当に見た事がない!」

 

尾白の解説にピンと来ていない一同だったが、障子がなるほどと付け加える。

 

「……逢魔はほぼ技術で成立させているということか。つまりは、達人なんて呼ばれる人間よりも、余程技量が上ということになるな。」

 

その観察眼に、詠斗がほんの少し目を見開いて驚く。

 

「見抜かれるとはね…ふむ、今日は目立たなかったけど、個性あり、近接戦オンリーの戦闘をしたら猿夫の一強かもね。」

 

「そ、それは言い過ぎじゃないかな!?別に超パワーとかないし…」

 

「謙遜しなくていい。体の仕上がり具合も、年齢を考えれば充分以上に完成されている。立ち姿でわかる、戦闘方法も完成しているし、わざわざ僕を真似る必要は無いよ。伸ばす方がいい。」

 

「逢魔…うん、ここで学ばせてもらうよ…!」

 

気合を入れなおした尾白は入念な柔軟に入り、この放課後訓練により力を入れようと内心で意気込んだ尾白の尻尾ははちきれんばかりに揺れていた。

 

「よし、来たね出久君……終わったのかい。」

 

「うん……こっからだって…そう宣言された。あとは僕なりに向き合う…僕自身も、この力にも。」

 

ある程度の事情を知っている詠斗は、爆豪と緑谷の関係に対する因縁については、こういう形もあるのかと言う感覚でしか無かった。

 

彼も彼で立ち直ったようだし、へし折っていなくてよかったと、すこし安堵したのは事実だ。

 

拳をグッと握った緑谷を見て、詠斗は表情を変えぬままに茶化す。

 

「そうだね。ま、これからは出久君のかけらも足りてない実力をこの特訓で伸ばしていこう。」

 

「やっぱり馬鹿にしてるよね!?ちょっと気にしてるんだけど!!……うん、よろしく!逢魔君!」

 

「さて、始めよう。時間は有限。合理的に行こう。まず、出久君。」

 

「ぼ、僕か…!うん、よろしくお願いします!」

 

パンパン!っと手を叩いた詠斗は、まず手始めに緑谷を指名。

 

「君の場合、個性の制御は待ち時間とか、ほかの時間で制御方法を覚えて、僕とやる時は個性禁止、技を中心に叩き込む。」

 

緑谷と向き合う詠斗は、先程のデモンストレーションの時と同様の構えを取る。

 

その構えを真似ていた緑谷は、改めてそのひとつの動作だけでも凄さを理解する。

 

(やっぱり一切隙がない…!戦いに慣れていないから、隙を見抜くなんて真似できないけど、それでも攻撃ができないと本能が訴えてくる…!)

 

その構えを見て、緑谷は自分がしていた物は付け焼刃にもならない猿真似だったことを思い知る。

 

しかし、だからこそここでこの技術を盗む。

 

決意を固めた緑谷の目を見て、少しだけ詠斗が笑ったように見えた。

 

「どこからでも、どうぞ。」

 

「うん、いくよ!」

 

駆け出した緑谷は詠斗と同じ構えをとりながら、詠斗の懐に入り込む。

 

そのまま真下から拳を振り上げるも、空を切り、首を傾けただけで、避けられる。

 

「うん、距離を詰める判断は正しい。被身子の動きを真似たのかな。分析力とそれを実行する力は賞賛に値する。」

 

「軽々避けるなぁ…っ!」

 

再び緑谷が攻撃を繰り出そうと腕を引いた瞬間。胸と腹に衝撃が走る。

 

「うがっ…!?」

 

「けど、腕を引きすぎ、胸が開いてる。そして、この程度の痛みは慣れるんだ。」

 

(胸と、お腹に攻撃された……!?全く見えなかった…!!)

 

「構えを解かない。」

 

その言葉にハッとした緑谷は、次にくる衝撃に何とか防御を差し込んだが、殺しきれずに吹き飛ばされる。

ゴロゴロと地面を転がったあと、本能が警鐘を鳴らし、咄嗟にその場から飛び退く。

 

瞬間、その場に着地した詠斗が、うんうんと頷く。

 

「よく避けたね。さぁ、立て。」

 

「っ!うおぉぉぉぉっ!!」

 

「ヤケクソは厳禁。ちょっと痛い目を見て体で覚えようか。」

 

痛みを紛らわせる為に叫びながら突貫。疲労と痛みで判断力を欠かし、大振りの攻撃を繰り出した。緑谷がしまったと思った瞬間には、彼の体は浮遊感を感じていた。

 

(はっ…なに……なげ、られた…?)

 

そう認識した瞬間、反転した視界を認識し、落下の感覚を感じたと同時に、とてつもない衝撃が全身に叩きつけられ、再び吹っ飛んだ。

 

「ガハァッ!?」

 

衝撃にうずくまった緑谷を、詠斗は見下ろす。

 

「立て、出久君。君はこれから、ヒーローになったらこんな痛みとは比にならない痛みに襲われることもあるんだよ。」

 

蹲る緑谷にそう告げた詠斗を見て、男子陣はこの特訓がどれほど過酷になるかを想像し、顔色を青くした。

 

「うぉぉ……逢魔、スパルタ…つぅか…どうやって投げたんだよ…飯田見えたか?」

 

「懐に入って、力の流れを真下に向けて足を引っかけ、投げる。その後に背面での体当たり……俺からはその様に見えた。しかし、あれ程の技量を持ちながら、本領は体術でないというのが恐ろしいな…」

 

「そう言えばそうじゃん…」

 

詠斗の本領は中遠距離からのバリエーション豊富な飽和攻撃。勿論体術も頭一つ以上抜けているが、得意分野ともなれば既にプロすら一方的に倒せる実力がある。

 

寧ろ、詠斗は近接戦がほかのことと比べると割と苦手だ。

 

「諦めるのか出久君。僕の期待を、あの人の期待を裏切るのかい。」

 

「っ!!こん、じょおおぉぉぉっ!!」

 

「それでいい。みんなもそうだけど、覚えるべきは防御だよ。攻撃なんて当たれば君の場合将来的には掠っただけでも瀕死にできるだろうから。どんどん攻撃していくから、防ぎ方を覚えるんだ。」

 

「お、押忍っ!」

 

「おぉ!緑谷立った!行け!緑谷!お前は漢だ!!」

 

「漢判定ガバガバじゃねぇか?」

 

瀬呂と切島が野次を飛ばす一方、詠斗との過酷な訓練を遠目で見ていた女子陣は、少しばかり気が重かった。

 

「明日、ウチらアレされんのかな……」

 

「すこし、気が重い…!」

 

「逢魔ちゃんは女子だからと手を抜くタイプでも無さそうだし……過酷になりそうね。」

 

被身子の指導とは対象的な詠斗のスパルタな様子に、耳郎、芦戸、蛙吹は明日の過酷さを覚悟した。

 

「そうです!お茶子ちゃんは腕を鞭みたいにしならせて相手に叩きつけてください!触れたら個性発動もして、めっちゃ痛い!一石二鳥!絡め取れば関節技(サブミッション)にも持ち込めます!もう1本!」

 

「押ォォォ忍っ!!チェリやぁぁあ!!」

 

「麗日どうした?」

 

「目覚めたのね、お茶子ちゃん。」

 

「しかしとてつもなく有意義な時間ですわ。指導も的確、個々にあった戦い方を示してくれますし……逢魔さんの方も、指導は厳しいようですが、各々の限界より少し上の力で対処しているように見えます。」

 

「うお、ヤオモモ…さっきあそこで蹲ってたと思ったのに…」

 

「ええ…今もメッチャクチャに痛いですわ…」

 

途中から見ていた八百万は冷静に詠斗の指導を分析してその有用性をちゃんと理解していた。そんな4人の元にニュっと現れた被身子が、懐かしぃ〜と口を開く。

 

「あれ、私もやりました!初日でボコボコにされて泣きながらお風呂に入ったの!あれのお陰で回避、防御は飛躍的に上手くなったよ!私は攻撃に躊躇を無くして欲しくないので、いっぱい攻撃させる方針です!」

 

「なるほど、お2人で指導方針に違いがあるのですわね。」

 

詠斗は体で覚え、次に理論を叩き込むタイプ。防御を重視し、生存を強くさせる事が方針。

 

詠斗とは対照的に、被身子は自分から積極的な攻撃はせず、沢山攻撃に躊躇しない事を学ばせる方針らしい。

 

「彼女にもあれなら私たちに希望は無いわけだね!終わった!」

 

「はい!トオルちゃん!私には一応物凄く渋った結果あれだったので、みんなにはなんの躊躇もないと思うのでもっと酷いかもしれません!」

 

「終わった!!」

 

「あれ、麗日は?」

 

「あそこで伸びてます!やっぱり痛みになれるっていうのも大事なので!同じくらいの力で同じ攻撃方法を叩き込みました!」

 

キラキラとした笑顔でピクピクと痙攣する麗日を指さした被身子に、しっかりと詠斗の指導方法が受け継がれている事に、女子は笑顔のまま絶望した。

 

「次はキョーカちゃんです!」

 

「あっ、まって、まだ覚悟が……」

 

「ヴィランは待ってくれません!覚悟なんてその場で決めましょう!貴重な索敵役も戦えなかったら自分の身も守れません!」

 

「あぁもうわかったよ!?やればいいんでしょやれば!?」

 

次にああなるのは自分なのかと諦めた耳郎は、ヤケクソで被身子に突撃していく。

 

数時間後、17人はボロボロ、対する2人は無傷、なんなら土埃すらついていない状態だった。

 

「みんな!よく頑張りました!今日はこれでおしまいです!」

 

『あい……』

 

「明日も頑張っていきましょう!」

 

「大きな傷はないから、自分で処置をするように。今週と来週はこんな感じでみんなには痛みに慣れてもらう。」

 

では解散、という言葉によろよろと幽鬼のように歩いていく。

 

その様子を改めて懐かしいなぁと、笑った被身子に、詠斗は若干顔を歪めて、嫌な記憶だと吐き捨てる。

 

「本来君にはヒーローなんてやって欲しくなかったんだけどね。」

 

「ずぅ〜っと渋ってたもんねぇ、エイト君。でも、それでもやってくれたよ。」

 

「それが、君の願いだった。そして、僕にはそれを叶える力も……義務もあった。」

 

「んーん、あれはエイト君が悪いとか、そういうのは無いんだよ。私と、パパとママ…3人でちゃんと話して……私は一人ぽっちになった。それはエイト君も同じでしょ?」

 

「全然違う……いや、不毛だね。やめよう。」

 

被身子もガムシャラだった。両親と袂を分かち、詠斗に自分の全てを受け入れられた。

 

彼の為になにかしなければ、彼のなにかにならなければ。

 

そう焦燥に駆られ、口から出た言葉が「私のような個性で苦しむ人たちを助けられるヒーローになりたい」という、半ば衝動的な言葉だった。

 

鍛えて欲しいと言う被身子に、初めは反対していた詠斗も、被身子の熱意に折れ、甘い指導はしないと宣言。まさか本当に鬼の様な訓練を積まされる事に後悔しなかった日々はなかった。

 

それでも、辛くて泣いている被身子に「辞めてしまおう」という言葉を投げかけなかったのは、きっと詠斗なりの覚悟と優しさだったのだろう。

 

「んふふ、でも毎日一緒に添い寝してくれるし、髪の毛も優しく洗ってくれるから、全部が全部辛かった訳じゃないんだよ。」

 

「それも含めて、君の努力の結果だよ。」

 

しっかりとそう言った詠斗の目を見て、にへへっと笑った被身子は、詠斗の手を元気よく取った。

 

「帰ろっ、エイト君!」




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