フヘンの愛   作:イベリ

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渡我ひミこ


力の限界③

現実を、自分は知っていると。そう思い込んでいた。

 

辛い事が多かった。力も無く、夢も潰えかけたその時に、湧いて出た眩い光に自分はきっと勘違いしてしまっていた。

 

「───────そん、な……!?」

 

コンクリートに顔面を押し潰され、血を流し意識も朦朧とした相澤を、隠れながら見ていた緑谷と麗日はいつかの詠斗の言葉を思い出した。

 

『ヴィランというものを自分たちの物差しで測ってはいけない。残忍で冷酷で、何よりイかれてる。』

 

その言葉を嫌でも思い出した。

 

「イレイザー…流石だよ、あの数のチンピラ達を倒しながら、俺まで拘束したんだ…誇れ─────でも、甘い…!」

 

ゴリ、ガリ、ゴキュ、と押し付けられた相澤の頭から、湿気った音が響き、同時に相澤が細く呻いた。

 

「切り札は用意してるさ、オールマイトを殺しに来たんだぜ?イレイザー、君の個性は凄く厄介だ……ここで、消しておこうか…!」

 

相澤の捕縛布による拘束から抜け出した死柄木は、ゆっくりとその右手を相澤の頭に翳す。

 

緑谷の脳裏を過ぎったのは、崩壊していく、詠斗の右腕。

 

瞬間、無意識の内に飛び出した緑谷は制御のことすら忘れて、許容量を無視した全力の一撃を、死柄木に放った。

 

「スマァァァァッシュッッッ!!!!」

 

激しい突風と衝撃が荒ぶ。オールマイトから譲渡された力の100%は、USJ全体に波及する程だった。

 

そして、すぐに緑谷はやってしまったと、血の気が引いた。

 

(100%を放ってしまった…!アレだけの破壊力だ、腕が───────)

 

そこまで考えたところで、緑谷は自身の腕が破壊されていない事に気がつく。今まで100%の力を引き出せば壊れてしまうという先例があったため、出力方法、出力そのものを抑えていたが、この土壇場で成功した事に、場違いにも喜びが先に出てしまった。

 

「な、なんで……でも、で、出来た…!い、いや!それより先生!」

 

気づけばその場からいなくなっている相澤に、緑谷は吹き飛ばしてしまったと大いに焦ったが、しかし後方に居た麗日に確保されていた。

 

「デク君!なんとかキャッチできた!!」

 

「な、ナイスだよ麗日さん!あ、危なかった…!飛ばしちゃってたのか!!?」

 

急ぎ駆け寄って相澤の様子を見れば、左腕がへし折られ、頭蓋からは血が滴っていた。

 

「相澤先生っ!意識はありますか!?」

 

「……み、どり、や……おま…ら…」

 

そんなうわ言を最後に、意識を失った相澤。二人は既にその時点で内心ではパニック状態だった。

 

「ああああ!こんな時に逢魔くんがおればぁ!?」

 

「すぐに手当しないとまずいっ……あ、そうだ!!」

 

ゴソゴソと懐をまさぐった緑谷は、1つのガラス玉を取り出す。

 

「そ、それなに?」

 

「逢魔君に貰ったお手軽回復アイテム……らしい!確か、割ればいいんだったはず!」

 

ええいままよ!とガラス玉を地面に叩きつければ、淡い光が複雑な幾何学模様を描き、相澤に沈んでいく。すると、見るうちに出血が止まり、相澤の頭部の負傷が癒えていく。

 

しかし、そこまでの重症を治す想定をしていなかったのか、最も重症だった頭部のみの治癒で止まり、なんとか危機を脱した程度に留まる。しかし、それでも破格の効果に、緑谷の悪癖が顔を出した。

 

「す、凄っ……知ってたけど遠隔でしかもこれだけ手軽に傷を癒せる手段があるなんて…これだけでも逢魔君の能力は引く手数多…!!」

 

「今分析しとる場合ちゃうでしょ!?はよこの場を、離れんかい!!」

 

「ごごご、ごめんなさい!?」

 

麗日の麗らかでない剣幕に諭され、すぐさまその場を離れようと身体を動かすも、そこで立ち止まる。

 

(……今ので、本当に終わりか?あの逢魔君が、警戒していたのに?)

 

ありえない。彼が警戒を持ったということは、何かしら敵に異常を感じたということ。ならば、アレだけで終わりだろうか?

 

手札の少ない自分が、果たしてアレだけで倒せたと、そう考えるべきか?

 

ならば、自分がすべきは───────

 

「……麗日さん、相澤先生を連れて、先に行ってて。」

 

「えっ……む、無理やって!相澤先生がこんなにされたんよ!?デク君もただじゃすまないかも…!」

 

「でも、このまま誰かが止めないでみんなの所に行っても、みんなを危険に晒すだけ…それなら、ここで戦闘に入るべきだ…!」

 

確かに、その言葉には一理ある。プロヒーロー、しかも個性を抹消できる相澤をこれ程ボロボロに出来る時点で、敵は先程のチンピラだとは思えない。

 

「こっちは任せて、麗日さんは───────ッ!!?」

 

緑谷の言葉は、そこで途切れた。

 

「…………でく、君………?」

 

その場から突如消えたようにすら見えた麗日は、一瞬の困惑の後に後方から響いた衝突音の正体に気が付き、顔を青ざめさせた。

 

「───────はっ、はっ…ぎぃっ……!?」

 

吹き飛ばされていた。とてつもない衝撃と、遅れて熱と痛みが襲ってくる。

 

(…ぼ、く、なんで…生き、て……?)

 

迫る拳に、強化された腕を差し込めたのは、ほぼ本能に近い行動だった。詠斗との訓練で投げ続けられ、サンドバッグにされ続け、急造で鍛え上げられた本能的な危機感知(・・・・)能力が彼を救った。

 

「最近の子供はすごいな…スマッシュか、オールマイトのフォロワーかな?少しでも気づくのが遅れて、攻撃を逸らせてなかったら、腕が吹き飛んでた…」

 

見ろよ、震えてる。と小刻みに震え、力が入らなくなった腕をブラブラと垂らして、ニタリと笑った死柄木は、隣に侍る巨漢の背中をバシバシと叩きながら、余裕の笑みを浮かべた。

 

戦わなければ、あの攻撃。麗日や瀕死の相澤が喰らえば自分よりも酷いことになる。

 

しかし、既にもう彼は戦えない。折れてこそいない物の、強化してもなお貫通した衝撃は、彼が思うよりもダメージを与えていた。体にも、精神にも。

 

(うで、もう上が、らない……足も、力が……)

 

一撃でこのザマだ。詠斗なら被身子なら───────オールマイトなら、この盤面を覆せるのに。

 

悔しい、悔しい。力のない自分が。

 

「ちく……しょう……!!」

 

ギリッと奥歯を噛み締め、無力を噛み締めた。

 

「あんなに、逢魔君っ、に…良く、してもらったのに…!あれだけ、渡我さんにっ……鍛えて、もらったのに……!僕は、なん、で…っ弱い…っ!!」

 

どうしようもない無力感、いっそ涙でぼやける緑谷の視界に、影が覆う。

 

 

大きく、力強く、なによりも頼もしい

 

 

 

 

「───────もう、大丈夫。」

 

 

 

ネクタイを引きちぎり、常の笑顔を怒りに染めていた。

 

 

「私がッ!!来たッ!!!」

 

 

その姿を見留た死柄木は、ニンマリと口端を上げた。

 

「あぁ……ひひっ…!真打、登場か…!」

 

オールマイト、平和の象徴の登場は、折れかけていた緑谷に希望、そして焦燥をもたらした。

 

「おーる……マイト…っ!」

 

「よく頑張った、緑谷少年……君の悔しさ、私が預かろう!」

 

その言葉の後、すぐに緑谷を抱えて麗日の元まで行ったオールマイトは、そのまま緑谷を預ける。

 

「お、オールマイト先生!で、デク君も!相澤先生も、あの黒いヴィランに…!」

 

「もう大丈夫!麗日少女、すまないが、緑谷少年と相澤君を頼む!大体は逢魔少年に聞いてる!後は、私に任せて欲しい!」

 

「…っはい!」

 

即座に緑谷にも無重力を付与した麗日は、すぐさまみんなのところに向けて走り出す。

 

ただ1人、オールマイトの時間制限をわかっていた緑谷は、力無く手を伸ばした。緑谷の意図を悟ったオールマイトは、笑顔とともにサムズアップを見せた。

 

「…さて、随分と好き勝手してくれたね、既に君たちのことは連絡済み、雄英のヒーロー達が向かっている。」

 

「……はぁ……そうかよ……おい、黒霧。」

 

そう死柄木が呟くと、傍らの空間がぐにゃりと歪み、黒い靄と共に、異形が現れる。

 

「連絡いってるらしいぞ。逃がしたのか?」

 

「まさか…いいえ、確実に全員を散り散りに飛ばしました…ふむ、となると妨害係がやられ、電気系統が復活したか……」

 

「もしくは、別の連絡手段をとったか……はぁ、やっぱり雄英、生徒も1年とは言え優秀か。」

 

「…………」

 

相手の考察にも反応すること無く、オールマイトは詠斗を思い浮かべた。下手に敵の興味を煽るような事をして、興味が生徒に向くことがあっては事だ。

 

(ワープゲート、想像よりも正確に転移できるじゃないか…!!条件は分からないが、強力…!それに、逢魔少年が言っていたのはアレか…!!)

 

オールマイトが目を向けるのは、黒い肌をした巨漢。アレが、個性が複数あるという敵。

 

相澤があの怪我だったのだから、個性を消してなお強敵だったという事。

 

「オールマイト、お前にぶつける為に調整された改造人間『脳無』!さぁ、遊んでくれよ、オールマイト…!!」

 

「個性の複数所持の方法、吐いてもらうぞっ!そして、生徒たちを危険に晒した事…しっかりと、償わせてやるッ!!」

 

グッと構えたオールマイトの気迫は、死柄木達の足を竦ませるには十分な物だった。しかし、それは虚仮威しに等しい。

 

(Shit!!逢魔少年と渡我少女との試験が思った以上に尾を引いてる…!)

 

脇腹を抑えながら、半年前に行った2人の為の試験を思い返す。激しい戦闘だった、それこそ衰えたとは言え、オールマイトが途中で加減が出来なくなり、広大な施設の八割を瓦礫の山にする事を余儀なくされた。

 

あの勝負自体、お互いに全力ではあったが、本気ではなかった。

 

とは言え、途中で加減できなくなった自分の最高速度は、随分と衰えてしまった今ですら音速一歩手前。

 

それに、空中戦という制限付きだが、詠斗は平気で追いつき、被身子も追いつけないながらも、目で追って攻撃を当てに来ていた。

 

あの二人は別格だ、もはやその表現ですら温いだろう。あの時、勝ちはした物の、途中から突然力を抜いた詠斗に勝ちを譲って貰った形だった。

 

『あぁ、全盛の貴方と戦ってみたかった。』

 

そう、最後にこぼした詠斗に、オールマイトも被身子すら「マジかこいつ」という引きつった笑みを浮かべることしか出来なかった。

 

閑話休題

 

と、想定以上にダメージを受けてしまったオールマイトととしては残り時間も、内に灯る火も日に日に弱っている。

 

この力を、より効率的に使う必要がある。消え行く力を、利用するのだ。

 

思えば、己の個性を利用するなどという考えは思いつきもしなかった。それは、やはり彼の影響なのだろう。

 

『逢魔君が言ってたんです。"所詮肉体も個性も、己の道具でしかない。小難しいことを考える前に、利用する方法を考えろ"って。』

 

そう頭の中に響いた言葉を反芻し、考えを改める。

 

 

「『骨を満たし、筋を強靭に、肉で包む』…逢魔少年…君はあの子に最も効率のいい強化方法を教えたんだろう?ならば、それは私にも適応できるはずだ…!」

 

いままで、ほぼ無意識の中で使ってきた個性の制御に意識を向けて、意識的に行うことで。

 

全身に力を巡らしながら、両腕の強化をより精密に行う。

 

「骨格強化100%、筋強化100%、肉体強化100%……!!」

 

ビリビリと電気のような刺激が腕を駆け抜け、漏れ出したエネルギーにより両腕の袖が弾け飛んだ。しかし、オールマイトはみなぎる力に確信する。

 

(なるほど…!バランス難しいな!だが、掴んだ!!これはとてつもなく効率がいい!!)

 

今まで続け慣れた『纏う』より精密な使い方を持ち前のセンスと感覚をもって、土壇場で制御してみせる。

 

『オールマイトはセンスはピカイチだよ。僕なんて足元にも及ばない、あの人は戦うために生まれてきた、そういう星の元に……え、教師としては……あはは、うん。』

 

クラスメイトにオールマイトについてどう思うか、という話題の中で詠斗が語っていた素直な感想に、扉の外で涙を流したこともあった。

 

(悔しいが彼の言う通り!私はやはり、戦うために生まれてきた!)

 

まさか、使い続けてきた個性の、恐らく最も正しい運用方法を、譲渡され数十年後に知るなど思いもしなかった。

 

だが今は自分の未熟さを恥じるときではない。

 

握りしめた拳は衰えを感じさせず、貼り付けた笑顔すら、死柄木に恐怖を植え付けた。

 

「ッ…!!やれ!脳無ッ!!」

 

「さぁ、やろうかヴィラン共!!」

 

弾けるように飛び出した脳無と呼ばれるヴィランは、大振りの一撃を真正面から迎え撃つ。

 

瞬間、暴風が吹き荒れ、周囲のチンピラを含め建造物すら吹き飛んでいく。

 

「おいおい……!衰えたんじゃなかったのか…!?」

 

死柄木は、聞いていた話と大きく異なった現状に、静かに怒りを溜め込んだように漏らした。

 

「ぬぅんッッ───────!!!!」

 

激突した拳に伝わる感触から、オールマイトは死柄木の言葉の意味を悟り、続く拳を躱し、脳無の胴に叩き込んだオールマイトは確信した。

 

明らかに手応えがない。いや、衝撃が吸収されている。

 

「なるほど私対策!だがこの感触は衝撃無効ではなく、吸収だな!?一撃を与える度に!より深く拳が突き刺さっていくぞ!!」

 

三撃目、脳無の体がほんの少し浮いた。

 

「ば、バカか!?ショック吸収って自分で言ってんのに、殴りあってやがる!?」

 

「ショック吸収なら、限界があるんだろう!?」

 

四撃目、脳無の上体が完全に仰け反った。

 

「どう、なってる……!!なんで…脳無がっ…!!」

 

「ヴィランよ!ヒーローとは、常にお前達の先を行き!壁をブチ破る者の事だ!!想定がッ、甘かったなぁ!!」

 

グッと腰を落とし、溜めを作ったオールマイトの拳は虹の輝きを見せた。

 

「ヴィラン共よッ!こんな言葉を知ってるかッ!!さらに、向こうへッ!!

 

 

 

Plus Ultra!!!!

 

 

五撃目、胴体に叩き込んだ拳が、天高く脳無を吹き飛ばし、USJの天井すら突き抜けて吹き飛んでいく。

 

トンッ、と肩を拳で叩いたオールマイトは、ニッ!と笑って見せた。

 

「私も衰えた!全盛期なら、息を切らすこともなかったろうに!」

 

フゥーッ、と長く吐き出したオールマイトは、当然のように無傷。

 

オールマイトは、消えかけの灯火を抱えながら、全盛の力を取り戻す。だが、時間制限が戻った訳ではなかった。

 

(…しかし、もう私の時間はそうない…!どうする…!?)

 

内心焦るオールマイトだったが、貼り付けた笑顔で誤魔化した。吹き飛び消えた脳無がぶち破った天井を眺め、死柄木はガリガリと首を掻き毟る。

 

「オイオイオイオイオイ……ッ!!話が違うぞ…衰えてるんじゃ無かったのか…!?アイツ、俺に嘘を教えやがった…!!」

 

「死柄木…すぐに撤退を…!」

 

(撤退…!そのまま、行ってくれ…!!)

 

そう進言する黒霧の言葉に、オールマイトは若干安堵してしまう。

 

ここで捕えられないリスクもあるが、今自分が衰えている所を露見させるリスクの方が不味い。

 

「さぁ!どうした!来ないのか!?」

 

「ぅっ…!?ちくしょう、クソッ、なんでだクソッ…!!」

 

「死柄木……っ!!」

 

オールマイトの煽りに怯んだ様子を見せる死柄木が、突如ピタリと動きを止めた。

 

静寂がオールマイトの鼓膜すら突き刺した頃、掻き毟っていた手をそのまま、ダラりと垂らした。

 

「………黒霧。アレ出せ。」

 

「死柄木…!!アレは……!!」

 

(アレだと…?まだ何かあるのか!?)

 

従者として対応をしていた黒霧が初めて見せた抵抗も無視して、頭が完全にプッツンイッてしまっていた。

 

「命令するなっ…!出せよ、アイツもピンチの時は出していいって言ってたろ?」

 

「…えぇ、そうですね。仕方がありません。」

 

「させるかッ…!」

 

やらせん、と飛び出したオールマイト。しかし1歩遅く、放とうとしたオールマイトの拳が、がっしりと2つの腕に止められる。

 

「っ!!?」

 

オールマイトの100%、それを2本とはいえピクリとも動かない程の力で固定されてしまった。

 

初めはバスケットボール位の大きさで広がっていたモヤが、徐々に大きく広がり、そこからヌルッと湿った悪意が漏れだした。

 

バチッ!と片腕で払い、その場を離脱したオールマイトは、現れた2体の敵を視界に収めた。

 

「クッ……まだ、いるのか…!?」

 

驚愕と同時に、その姿を視認したオールマイトは総毛立つ。数十年という長い月日を戦いに捧げていたオールマイトの、勘のようなものが、目の前に現れた2体の脳無に対して、感じたことの無いほどの警鐘を鳴らす。

 

その姿はまさに悪魔と呼ぶにふさわしいものだった。

 

下半分しか頭部がない女型と、もう片方は両目の部分がえぐり取られたように、穴がポッカリと開いている男型の異形。ガリガリの四肢、黒い肌、ボロボロの不格好な黒い片翼は共通している。

 

先程の言葉を真に受けるなら、この2体は同じ人物によって作られた同型の兵器ということだ。

 

(私の攻撃を止めた、先程の脳無と呼ばれた奴のような明らかなパワータイプという訳ではないな…!それにあの胸部…コアや動力源、なのか?)

 

最も、オールマイトの関心が惹かれたのは、2体の胸部に露出した、拍動を続けるコアの様な機関。

 

あれが動力源と考えれば、この2体を倒すには、あの部分の破壊が有効だろうかと当たりをつける。

 

「……アダム、イヴ。あれを殺せ。」

 

首肯も反応もなく、ただ2体は手を目の前に翳した。

 

「ッ!!?」

 

瞬間、オールマイトの顔をめがけ閃光が走った。

何とか躱したオールマイトは、叩きつけられた爆風と熱風を背で受け、目を見開く。

 

「馬鹿な……焼け落ちて…っ!!?」

 

「ヒヒッ…あぁ!最初からコイツらを出しておけばよかった!さっきの脳無とは完成度も違うぞ…!」

 

高速の熱線が着弾した地点は、コンクリートが熱により溶け落ちて流動性を取り戻し、ドロドロに溶け落ちていた。

 

(不味い!この威力は、私以外がもらえば一溜りもない!)

 

オールマイト自身の時間制限はもう既に5分もない。明らかに先程の脳無とは完成度から違う。死柄木が邪悪な笑みを浮かべることも理解ができた。

 

「殺れ!アダム!イヴ!!」

 

覚悟を決めるべきか、そう拳を握ったオールマイトは、目の前の脳無達が停止したまま、自分を見ていないことに気がつく。丁度、オールマイトの真上。それは、死柄木も同様。

 

「おい……!何をしてる、早く次の攻撃を………お前ら、何を見て───────」

 

2体の脳無が、オールマイトに攻撃すること無く、全く別の空間を眺めていることに気がついた死柄木は、そのまま2体が眺めている場所を見上げた。

 

油断すること無く敵だけを見ていたオールマイトの手に、金炎の羽毛がヒラヒラと舞い落ちる。漸く頭上を見上げたオールマイトは、自身の頭上にいる者に気がつく。

 

「逢魔少年…!?」

 

天を衝く焔の毛髪を揺らし、金炎の翼を広げながら、ヴィランを冷たく見下ろす詠斗が、空中に佇んでいた。




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