フヘンの愛   作:イベリ

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【教えて!逢魔先生・渡我先生!!】

実は、詠斗と被身子の魔法陣は、同じものであっても陣のデザインが違います。

Q.詠斗と被身子の魔法の違いって何?

「一言で言ってしまえばどう発動させるか、の違いかな。よく僕らが使う『極光(ララグ)』は、本当は射出までに20以上のプロセスを辿る必要があるんだ、で、この中の命令を、僕の陣は同時並列処理をしてる。」

「反対に、私は命令を順番に起動させて、『極光』を撃ち出してるの!エイトくんは同時実行を前提に陣を組んでるけど、私は不要な部分を省略して、順次実行を前提に組んでるから、陣の形が変わるってわけ!」

「はい、今、それ以外違いはないの?って思ったでしょ。」

「両者には明確にメリット・デメリットが存在します!」

「エイトくんの陣の組み方は、とにかく複雑!でも理論さえ組み立てられれば凡ゆる現象を引き起こせるの!でも、魔力を流し込む際にちょっとでもミスったり、ひとつでも命令の起動が遅延すると発動しない、もしくは暴発しちゃう!」

「被身子の陣は構造もわかりやすく、構築がしやすい。順次実行にすれば、暴発や不発の心配は全くない。デメリットとしては、命令を省略している、という特性上陣に複雑さ持たせられないから特定の現象を再現できないこと、順次実行となれば、発動までの遅延を無くす必要があるから、出力や魔力を流す速度の調整が必要であること。」

「ま、こんな感じで、僕と被身子の陣の違いは結構ある。だから、僕が考えた陣を被身子がそのまま使用できるか、はまた別になる。」

「私だけが使えるものもあるし、エイトくんしか使えないものもあるよ!」

「授業はここまで、体育祭予選最終話。相澤先生との賭けに勝ったら、好き勝手させてもらう約束だし、そろそろ動こうか。」

「うんっ!じゃ〜あ〜……さらに!!」

「向こうへ」

『プルス・ウルトラ!』


体育祭予選②

巨大スクリーンの見やすい位置に陣取りながら、未だに両手にたこ焼きを、チョコバナナを持つふたりは呑気に観戦。

 

「わっ、ショートくんが凍らせた巨大ロボが倒れてテツテツくんとエージローくんが潰されちゃった。」

 

「まぁ、あの二人なら平気でしょ。あ、ほら突き破ってきた。」

 

体育祭予選も始まったばかりで、大盛り上がり。観客はヒーロー科の実力に驚きながら、観戦していたヒーローたちは、体育祭後のイベントについて話している所が聞こえた。

 

「今1位の子、凄い個性の出力だな。純粋パワー型か?欲しいな、普通に。」

 

「派手さは無いけど体の使い方が上手い!都市部での活動を覚えたら化けるぞ。」

 

「2位の子はエンデヴァーさんの息子だろ?流石だな、開幕の個性もとてつもない制御だし…3位の子は派手だな、ただちょっと周りのこと考えられ無さそうなのがなぁ…」

 

「しかし、宣誓の2人はあそこまで余裕ぶっこいてて平気なのか?まだたこ焼きとチョコバナナ食いながら観戦してるぞ?」

 

「たしかに……これで負けたらちょっとなぁ…?」

 

実力を知らぬ観客から見ればそれはそうなのだろう。詠斗と被身子は現状余裕ぶっこいている生意気なやつら、という印象しかないのだ。

 

しかし、それを聞いても尚、2人のスタンスは揺るがない。

 

この予選の内容で2人が負ける時は、寝過ごしたときだけだろう。

 

『さぁ!先頭が第2関門に突入したぜ!!第2関門はザ・フォール!緑谷に続けよ!?ヒーロー科ァァ!!』

 

「うわっ!?滝!?と言うか、深ッ!?」

 

「チィッ…めんどくせぇ…!」

 

断崖に張られた綱を渡る関門なのだろうが、緑谷と轟は足踏みをしてしまった。その隙を見逃す程、鉄の男は甘くない。

 

「洒落臭え…ッ!!一気にぶち抜いたるわッ!!」

 

離された爆豪の掌が閃光と共に爆ぜる。その瞬間、足踏み。していた緑谷との距離が無くなる。

 

この1ヶ月、被身子に挑みかかり負け続けた。なんなら、クラスメイトの数名にも敗北を喫していた。

 

既に己が頂点であるという慢心は消した。己は未だ挑戦者であることを自覚した爆豪は、被身子から見ても一皮剥けていた。

 

(んな、ところで……!足踏みしてる暇ねぇんだよッ……!!)

 

爆発で一気に断崖を飛び越えた爆豪が、トップに躍り出る。

 

『A組爆豪!とんでもねぇ爆発で一気にトップに!?つーか、今の見えたか!?』

 

『俺も初動しか見えなかった。溜め……か?器用だな、アイツ。』

 

プロヒーローすらも見えない速度での移動に沸く会場、しかしそれに代償が伴わないはずが無かった。

 

「グゥッ……!?…ハハッ……!」

 

一瞬の最大爆発に、身体機能が未だに追いついていない。こればかりは仕方がない、だが己の新技が通用する事に、口端を吊り上げて笑った。

 

「凄い、全く見えなかった、かっちゃん…!!僕も、覚悟を決める…!」

 

爆豪の姿を見て覚悟を決めた緑谷は、その場から飛び出し、断崖の間に渡された綱に着地。沈む綱の反発を利用して一気に飛び上がる。

 

「………クソッ…俺は……!」

 

そうして2人が崖の向こう側に消えた姿を眺めるしか無かった轟は、自身との差に拳を握った。

 

「おぉ、勝己やるね。あの速度を常に出されたらめんどくさいかも。」

 

「うーん、でも正直初見殺しの要素が強いかなぁって思ってるんだよね。私も初見は避けるしか無かったけど、2回目からカウンターも考慮できたし。」

 

「あー、そうか。直線だけだもんね、そうなると割とやりようがあるね。」

 

「覚醒とかして、細かい制御まで出来るようになればって感じ……多分本人も課題にしてると思うよ。」

 

「いつ起きるか分からない物を期待するのもね……まぁ、今後に期待かな。」

 

最後のたこ焼きを口に放り込んだ詠斗を見て、被身子も急いでチョコバナナの最後を齧る。

 

「さて、僕らもそろそろ行こうか……その前に、焦凍の後片付けをしておこう。」

 

レジャーシートを片付けた詠斗は、未だ足を氷漬けにされたヒーロー科以外の生徒たちに声をかけた。

 

「さて、君達がいくら足掻いても無駄だよ。その氷は、構造から見て鉄以上の硬度を持ってる。素晴らしいね、氷なら必ずある弱点的な角度からの衝撃もカバーされている。」

 

「ッだから、なんだよ!」

 

「このままいくと、腐りはしないだろうけど凍傷は免れない。そこでどうだろう。この氷、僕が破壊してあげよう。」

 

真顔で拘束された全ての生徒に向けた言葉は、まるで悪魔の囁きのように甘く、恐ろしく聞こえた。

 

「あぁ、勿論タダでは無理さ……君達に再度警告だ。棄権した方が身のためだ。このまま、昼のレクリエーションを楽しんだ方がいい思い出になるよ。」

 

「なっ!?」

 

「ふ、ふざけんな!?だいたい!お前にその権利が…!」

 

「ああ、ないとも。ただ、このまま放置されるのも、痛い思いをするだけだし………なにより見ていただろう?君たちと、あそこにいる戦士達との差を。」

 

1部猛る生徒たちだったが、その一言に全員が黙らされた。

 

「言ってしまうが、この氷すら砕けないのなら、次の競技での肉壁にすらならない。」

 

「……ッ!」

 

「君達が怪我して治すリカバリーガールの余計な仕事を増やさないであげて欲しいな。」

 

ま、自由、そこんとこ考えてね。と一言呟いた詠斗は、会場中に張り巡らさていた氷を、1つ踏み抜くだけで砕ききった。

 

おー、硬くなってる。と感心したように呟いた詠斗は、背中に出現した金炎の翼で上空に飛翔した。

 

それに続こうとした被身子は、呆然とする生徒たちに、言いにくそうに口を開いた。

 

「えっ、と……その、棄権を勧めるのは、私も一緒。正直、この後にまともに訓練してないあなた達がついてこれるとは思えないし、痛い思いも、嫌な思いもするだけだと思うの…だから、うん、エイトくんのこと、悪く思わないでね!」

 

それだけ!とフワリと浮かび飛んで行った被身子は、上空の詠斗に向かって、ちょっと〜!と文句を突きつけた。

 

「エイトくん…!きょーみないからってちょっとやりすぎだよ…!」

 

「……あぁ、ごめんよ。らしくなかった。僕も今回を楽しみにしていてね……どうも、気がはやってしまった。」

 

「もうっ、ヒーローは半分くらい人気商売なんだよ?」

 

「どうでも良くない?仕事はするさ、人気かどうかは僕には関係ないかな。花を踏まないように花畑を歩くのは難しいでしょう?」

 

と、この感じは、本当に他人の評価を毛ほども気にしていない時の声音。はぁ、とため息を吐き出した被身子は、詠斗の燃え盛るように輝く翼を撫でた。

 

「あーあ、いいなぁ。私もエイトくんみたいに綺麗な翼が欲しいのです。不思議とフワフワだし、暖かいし……」

 

「いや、僕のは君より原始的な陣を使っているからで、君が君専用の陣で翼を省いたんだろ?」

 

「だって!実際飛ぶのに翼が必要ないんだもん!CCとか、コーイチさんもそうじゃん!」

 

「僕の陣ではこれが最適なんだよ。僕自身にではなく、翼に飛行する能力を付与することで随分と自由になってるからね。無くてもいいけど、あった方が安定性と速度が桁違いだ。」

 

「ち〜が〜う〜!!」

 

「やはり被身子も僕と同じようにロマンを追い求めた方が良かったんじゃないかな。」

 

欲しいなら作ればいいだろ?と言うと、そういうことじゃないと被身子はそっぽを向いた。

 

「ほら!そろそろ行くよ!みんな第3関門まで行っちゃってるし!」

 

「およよ……ココ最近被身子が冷たくて、僕は悲しいよ…」

 

「……えっ、そ、そんなことない、よね……ねぇ…?」

 

「……急にどうしたのさ、大丈夫そんなことないよ。ほら、行こう。一緒にゴールするんでしょ?」

 

「えっ、あっ!うん!」

 

ビュゴゥッと空を切って飛び立った2人の残像が消えた数秒後、既に2人は第1関門を通過。

 

『───────ハッ?』

 

恐らく、プレゼントマイクの疑問の声は、この会場の人間全てが浮かべた疑問符だっただろう。それを代弁した彼は、誰よりも早くその事実に困惑した。

 

『なっ、ななに、何が起きたァァァ!?アイツら、もう第1関門突破してるゥ!!?』

 

実況のマイクを切った相澤がお前な、と呆れながら山田を睨んだ。

 

「……お前、アイツらの入学前の試験動画見てねぇのか?」

 

「入学前?あぁ〜……オールマイトと戦ったってやつだろ?見てねぇ。だってオールマイトの圧勝で終わりだろ。ハンデ有りでもあの人が負けるとこ想像できねぇし。合格条件もオールマイトの一部にテープ巻くとかで、最初試験に受からせる気ねぇのかと思ったもん。」

 

「はぁ……後で見とけ……言っとくが、試験自体には条件達成で受かってるぞ。オールマイトはハンデも制限も無しな。」

 

「……what?」

 

「そら、実況続けろよ、仕事だろ。」

 

まさかと言う反応をしたプレゼントマイクだったが、相澤の横顔にマジを感じるも、慌てて実況に戻った。

 

『せっ、先頭爆豪、緑谷!ちょっと遅れて…あれ!?八百万!?二ーハンのバイク乗ってるぅ!?そして八百万と並走する飯田天哉ァ!その後ろから続々と迫ってきてる中!第3関門に突入!そこは怒りのアフガンゾーン!特大爆風!衝撃!音がスゲェだけのご都合地雷が大量に埋まっ───────おいおい、嘘だろ……!?』

 

思わず、彼のご機嫌な実況が止まる。それほどの衝撃だった。彼らが飛び立ってから、まだ数十秒もたっていない。

 

「おやおや、被身子さん。皆さんが集まってこちらを見上げていますよ。」

 

「ヒトガゴミノヨウダー!!1回言ってみたかったの!!」

 

「3分間待ってあげるかい?」

 

ふよふよと上空に浮かぶ詠斗と被身子を見上げた皆は、絶望よりも先に、闘志が湧き上がる。

 

「……そうさ、当然。君達は僕らの先にいる……!」

 

「だからよォッ……越え甲斐が有るってもんだろォが……!!」

 

「ヒミコさん……逢魔さん……!」

 

「流石だ…2人とも……!!」

 

およそスタート地点から3キロ地点、そこまでを十数秒で飛んで見せた2人。少し考える素振りを見せてから、みんなに手を振った。

 

「誰が僕らの次になると思う?」

 

「うーん、ここからはほぼ直線だし、カツキくんかなぁ。」

 

「なるほどね。じゃあ…僕は、出久……天哉もありだけど…勝った方は昨日買っておいたケーキの優先選択権ね。」

 

「あっ!!ずるい!!昨日一人で食べてたんでしょう!!」

 

「君はみんなと楽しくお泊まり会したんだろう?」

 

「エイトくんも来ればよかったのに!」

 

「無茶振りがすぎる。」

 

再び風を切りながら飛び立った2人にとって、残り1キロなど数秒だ。会場直前になった2人は飛行を解いて手を繋ぎ、ふたりでゴールテープの直前に立つ。

 

「せーっ」

 

「のっ!」

 

と言って、ジャンプで全くの同時にゴールテープを切った2人。

 

シンッと静まり返った会場に、プレゼントマイクの勝鬨が上がる。

 

『───────た、大会史上こんなことがあっただろうか!?ゆっ、雄英体育祭予選!軽食を食べながらギリギリまで観戦!その後競技参加時間約20秒!脅威の記録で1位を制したのは!有言実行!圧倒的な格の違いを見せつけてッ!逢魔・渡我ペアが堂々の1位で!!仲良く!圧倒的!ゴォォォォルッ!!!』

 

キョロキョロと周囲を見渡した2人は、1番近場のカメラに向かって、ブイっ、と勝利をアピールした瞬間、割れんばかりの歓声が会場を包む。

 

「すっ……スゲェ……!!」

 

「あの二人……やべぇよ…俺録画したっけ……」

 

「なんでプロレベルが混ざってんだ……というかプロも無理だろあれは……?」

 

そう、まだ彼らは年次で言えば1年。例年、2年や3年のヒーロー科の体育祭は1年の日にならない。だが、今年の体育祭は違うと、観客の全員が予感させられた。

 

このふたりの存在に、人々は希望を重ねてしまった。

 

「マイク、こっちばかりに注目していていいのかな。そっちは、丁度いいデッドヒート具合だけど?」

 

『あん?おっとぉ!?アフガンゾーンも白熱してんじゃねぇか!』

 

詠斗の指摘に会場の映像に切り替えたそこは、正しくクライマックス。緑谷、爆豪、八百万、飯田が並走し、地雷の爆破を置き去りにしてデッドヒートを繰り広げていた。

 

「くっ……!ハァッ……ハッ…ハァッ、ハッ…!」

 

「凸凹道のせいでスピードが上手く出せませんわ…!」

 

「テメェらにだけはッ…負けらんねぇんだよッ!!」

 

「くっ、走りで一日の長があるはずの俺が…!やはり、今年のヒーロー科はトップレベルか…!!」

 

残り500M会場に通じる通路に入る直前。

 

ここで、3人が一斉に勝負に出る。

 

「ここで決める…!レシプロ・バーストッ!」

 

「プルス・ターボッ!!」

 

「一気に加速ですわ!!」

 

緑谷を置いて、飯田、爆豪、八百万が加速。一気に距離が開く。

 

(まずいッ…僕にはこれ以上加速手段が……!)

 

わずかコンマ数秒であらゆる策を考えたが、却下。追いつけない。歯を食いしばった瞬間、最後に浮かんだ手段は、忌々しいことに幼馴染の苛烈な火花だった。

 

残り100M

 

(越えるんだ!兄さんのようになる為に…!!逢魔君のように当たり前に…!!)

 

1人は、憧れに至るため。

 

(越えろ…ッ!団子頭見てぇに、当たり前に弱い自分を踏み越えろッ!!)

 

1人は、最強に至るため。

 

(越えなくては……!お友達に、置いていかれてしまわないように…!!)

 

1人は、友に置いていかれないために。

 

過去の自分を踏み越え、この中で最も意志が強いものが勝利する───────その寸前、その思考を吹き飛ばす程の爆音が響き、全員がほんの少し気を取られた瞬間。深緑の風が、不細工に通り過ぎた。

 

この場にはまだ、強く誓った者が残っている。

 

 

 

 

 

 

 

「───────君にッ……勝ぁぁぁぁつッッ!!」

 

 

 

 

 

 

1人は、誰よりも強く吼えた。

 

親友の退屈を、殴り飛ばすために。

 

その瞬間を目にしていた詠斗は、やれやれと口角を上げた。

 

『最後の直線を制し!2位に躍り出たのは!緑谷出久!だが、スマートじゃねぇなぁ!?』

 

『ま、機転の良さは褒めるべきか。地雷を拾って蹴り抜いて、その爆風の威力でカッ飛んできたわけだ……成長、してんじゃねぇか。』

 

ゴロゴロと転がりながら、ゴールテープすら切ることもできず、不細工に会場に飛び込んだ緑谷は、息を切らして点を見上げる。

 

そこに、視界の端から顔を出した詠斗は、ニヤリと笑って見せた。

 

「やるじゃないか、出久。見直したよ、あの啖呵も……有言実行とまでは行かないが、及第点はあげていいかな。」

 

「ハァッ、ハァッ…ははっ、そっか…お眼鏡に叶ったようで、何よりだよっ…詠斗君…!」

 

息も絶え絶え、決してこんな必死な姿が、憧れだなどとは言えないが、きっと今はそれでいい。

 

この男が、退屈の対極に連れていってくれることを証明してくれた。

 

手を差し伸べた詠斗の手を取って立ち上がった緑谷に、それぞれ指さす。

 

「カメラはあっち、オールマイトはあそこね。」

 

「あはは……2位だから、あんまりはしゃげないけど……」

 

「僕たちがいるのに、随分ハードルを高くするね。ま、目標が高いことはいい事だ、励めよ。」

 

この後も期待していると背中を叩き、被身子の元を見れば、百と天哉が被身子のそばに居た。

 

「やはり飛べると言うのは羨ましいな…!今の俺では、速度でも追いつく気がしないよ。」

 

「そうですわね……ヒミコさんも逢魔さんも、規格外である事を改めて痛感しましたわ。」

 

「ううん!2人ともちゃーんと成長してるよ!私はその、詠斗君が先生だし!」

 

何よりも納得できる強さの理由に、2人はうーんと腕を組んでいた。

あっちはあっちで放置して大丈夫そうだなと、未だ拳を強く握り、座り込んでいる影の前に立った。

 

影に気が付いた爆豪は、忌々し気に顔を上げる。

 

「……んの用だよ…。」

 

「んー?小さな縄張りで頂点ヅラしていた負け犬の顔でも見てやろうかなって。」

 

「…ケッ、趣味が悪りぃ……てめぇ本当にヒーロー科かよ。」

 

「君に言われたらお終いかな。」

 

軽口を投げつけた2人の空気は、今までとはほんの少し変わっていた。

 

「……3位だ。」

 

「あぁ、ま、僕たちがいるから実質4位だけど。」

 

「黙って聞けやッ!!……放課後…委員長に、ポニテ野郎…それに、デク……加えてテメェに団子頭……それだけじゃねぇ……クソ髪、アホ面……クラスのやつ全員、ほんの一瞬だ……俺よりすげぇと、思っちまう瞬間があった。」

 

「………それで?」

 

「……お前の言った、自分が進む道に必要な強さが……なにか…わからなくなった。」

 

今までになく弱々しく俯いた爆豪の頭を、バシッと叩く。

 

「って…!?んだ、能面野郎!!」

 

「それでいいだろう。」

 

「ああ…?」

 

「必要な力も、進む道も、今すぐに決める必要はない。僕らは、道半ばも半ば。発展途上に過ぎない。焦る気持ちは理解しよう、だがこの1ヶ月でわかったはずだ……いいや、君はわかっていたはずだ。」

 

「…………」

 

「君がどうなるのか、どうなりたいのか……将来の事なんて、どうでもいいじゃないか。」

 

「はぁ…?今までの講釈はなんだったんだよ……」

 

「───────楽しめよ、勝己。自分の道も、力も…まずは、僕らを超えてから考えなよ。丁度いい越え甲斐のある山は、目の前にふたつも聳え立っている。」

 

薄く笑みを浮かべる詠斗の言葉に、目を見開いた爆豪は、ハッ、と吐き捨てた。

 

勢いをつけて立ち上がる爆豪の掌が、パチパチッと爆ぜた。

 

「上等だッ…とっととテメェら()踏み越えてやらぁ…!!」

 

「ハハッ、その意気。」

 

凶暴な笑みに、本当にこいつヒーロー科なのかな、と疑問符を浮かべながらも、期待と共にその場を離れた。

 

そして15分後、1年ヒーロー科の全生徒と、1人の生徒がゴールした時、ミッドナイトがアナウンスを入れる。

 

『現在ゴールした生徒を持って、予選を終了します!』

 

「……俺たち以外は、棄権した…ってことか?」

 

『……今年のレベルの高さも相まって、教師側でストップさせてもらったわ。』

 

その言葉を聞いた詠斗は、パチンッと指を鳴らす。

 

「相澤先生、賭けは僕の勝ち…ってことでいいよね?」

 

『……ま、好きにしろ。どっちにしろ、例年の競技じゃどうやっても出来レースだ。』

 

「はは、いいね。流石自由が校風の雄英。」

 

さっさとしてね、とシッシッと相澤が手を振った時には、既に詠斗は相澤など見ていなかった。

 

「悪いね、ミッドナイト。この体育祭、ジャックさせて貰うよ。」

 

「ふふっ、いいじゃない。好きになさい!大いに派手にやりなさい!ロストボーイ!」

 

ミッドナイトが投げつけたマイクを受け取り、被身子に目をやれば、同時に上空まで飛び上がり、みんなを見下ろすように告げた。

 

『この体育祭は、これから僕と』

 

『私が仕切らせてもらうよ!』

 

『観客の諸君、テレビの前の諸君。今の第1予選は前座、僕たちと力の差を見せつけることが目的だった。』

 

『実は〜、次の競技は騎馬戦で、その次はタイマン勝負だったの!』

 

競技言っちゃうの?という観客の困惑と、それはあまりにも他の生徒が不利では?と言う観客の声がチラホラと聞こえ、詠斗はウンウンと頷く。

 

『ああ、わかる、わかるよ。僕らは強い。そんなの、僕達のどちらかがいるチームが勝って、タイマンも僕と被身子どちらかのワン・ツーフィニッシュ……実につまらない結果だ。』

 

『そこで!!ここにいる41人には、RPGゲームの定番!

 

 

 

 

 

 

 

 

【魔王退治】をやってもらいます!

 

 

 

 

自信満々にふんすっ、と胸を張る被身子の言葉に、全員がポカンとしながら、首をかしげた。




(たまに)問題児2人、ただし最強

感想ってな…長ければ長い程モチベになるんすよ。もちろん短く一言でもとっても嬉しい。モチベーションになってるよ。ありがとうございます。
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