フヘンの愛   作:イベリ

29 / 30
と!が?ヒミコ!


欠片の勇者

開始の合図と同時に、ひと蹴りで被身子の頭上まで跳躍した蛙水は、上空で回転しながらの踵落としを放つ。

 

「アハッ!速いねっ、凄いねツユちゃんっ!前よりずっと脚力も、蹴り方も上手くなってる!」

 

しかし、余裕の表情で被身子は頭上に障壁を展開し、難なくそれをはじき返す。

 

「っ!こうして防がれているなら、意味は無いわヒミコちゃんっ!」

 

「そうかもねっ!『極光(ララグ)』!!」

 

突き出した掌から展開していた障壁を突き破り、閃光が蛙水に迫る。

 

「ポニーちゃん!!」

 

「OKッ!!ツユチャーン!」

 

角取から射出された角砲を蛙水が掴み、体を攫って空中を駆ける。

迫る極光を躱しながら、空中を移動する蛙水は冷静に分析する。

 

(流石ね、ポニーちゃんの角が無かったら、私は今のでダウンしていたわ……一撃すら致命傷、そして圧倒的な経験値、戦闘IQの差、本当に理不尽な強さね。今の私たちが出来る事は……切奈ちゃんを信じること。その為にも、攻撃の手は緩めない…!)

 

一瞬の隙を生み出すため、攻撃の手は緩めてはならない。今も遠距離攻撃が可能な角取の個性により、被身子は回避と攻撃を同時にこなしている。その表情は、常に余裕の可愛らしい笑顔を湛えたままだ。

 

そうして上空から見る蛙水の思考を、被身子は的確に見抜いていた。

 

(上空からツユちゃんが俯瞰してる……そうだよね、ツユちゃん。アナタは冷静で、常に最適解を引くことができる。格闘戦でも、咄嗟の判断が抜きん出ていた。だからこそ、アナタの思考は読み易い。)

 

コートを翻し、角を飛び跳ね躱した被身子は、着地の足元に弾性を持たせた障壁を展開、その反発で空を裂く。

 

瞬時に蛙水の目前に迫った被身子は、ニヤリと口角を釣り上げる。

 

「ゲロっ!?」

 

「飛行はできないけど、それと同じような事はそう難しくないんだよ?」

 

被身子と詠斗自身が禁じた『飛行魔法』を使わないという先入観から、被身子が地上に縫い付けられると思い込んでしまったが故の、致命的な隙。

 

掌に集まった光が放たれんとした時、被身子の背後に2つの影が躍り出た。

 

「アタシらをッ!!」

 

「忘れてない!?」

 

いつの間にか背後に迫っていた、角を掴んだ芦戸と取陰が、拳を振り下ろした。

 

「アハッ!忘れてないよ、大丈夫!みんなしっかり遊んであげるから!!」

 

余裕を持って二人の拳を掴み取った被身子は、三奈の拳を掴んだ手にはしる、燃えるような感覚に思わず硬直する。

 

「あっ、酸!」

 

「にっひっひ!アタシに触れると、化学火傷するぜぇ〜!?」

 

「!」

 

その一瞬の隙を、蛙水が埋める。

角を支点に飛び上がり、始まりと同じように被身子に踵を叩きつける。

 

しかし、被身子はただ妖艶に微笑む。

 

「うふふっ、隙の作り方が甘いよ?」

 

「おわっ!?」

 

「くっ……!!」

 

2人の力をそのまま受け流し、蛙水の攻撃を両腕をクロスさせて受け止める。

 

勢いそのまま地面に叩き戻された被身子は、何事も無かったかのようにフワリと着地。堪えた様子を見せずに表情を崩さない。

 

焼け爛れた掌を一瞬で治癒した被身子は、一連の攻防に思わず拍手を送っていた。

 

「でもすごい!今の攻防だけでも、はなまるをあげたいくらい!」

 

被身子の賛辞に、前方に対峙する4人は悔しげに、けれど当然の事を飲み込む。

 

「くぅ〜…!余裕の感じぃ〜!」

 

「やっぱ流石だなぁ、でもそれでこそでしょ!」

 

「えぇ…超え甲斐があるわ。」

 

「ふっふっふっ…アニメでも、壁は高いものデス!!」

 

4人と対峙した被身子は、ギアを1段階上げる事にし、パンッと手を叩く。

 

「避けてね?」

 

『えっ』

 

頭上に無数に展開した魔法陣が閃光を放つ。

 

取陰は瞬時に自身の体を切り離し、飛行状態に移動することで閃光の群れを回避。

 

蛙水、角取は角砲に掴まり空中移動で回避。

 

芦戸は掴んだ角砲に引っ張ってもらいながら、酸性を抑えた粘液を足元に分泌し地面を滑走して回避。

 

4人がそれぞれ回避した姿に、おぉっ!と思わず声が出た被身子は、嬉しい驚きに口角が上がる。正直、今ので1人は取ったと思っていたのだが、まさか全員が回避できるとは思っていなかった。

 

(凄い!セツナちゃんは当然として、元々の機動力がそんなにないミナちゃんも!それもこれも、ポニーちゃん……!)

 

的確なサポートに回っている彼女に目を向ける。

 

角取ポニー、彼女の個性『角砲(ホーン砲)』は、もともと攻撃にも移動にも転用出来る万能個性だった。加えて、小柄ながら海外の血、異形型個性の血が混じっていることもあり、日本人のみんなとは筋肉の付き方が違う。あの小柄からは想像もできないパワーの持ち主だ。

 

彼女の本気のドロップキックは、切島、鉄哲のふたりが声を揃えて、もう喰らいたくねぇ、というくらいの破壊力がある。

 

(近接、遠距離、同時にも出来るオールラウンダー!ポニーちゃんはきっともっと強くなる…!)

 

だからこそ、試練を。彼女達が超えるに足る試練であらねばと、被身子は気合いを入れ直した。

 

『………なんだよ、こらぁ……!?』

 

会場に集った観客は、プロ顔負けの戦闘に言葉を失っていた。その静寂を気にすることなく、実況席に座っていた詠斗は興味深そうに口を開いた。

 

『へぇ、上手くやるね。数分持てばいいと思ったけど……これは、随分と面白くなりそうじゃないか。』

 

『って、逢魔!?いつの間にここに!』

 

『さっきからいたぞ。解説やるってよ。逢魔の時は渡我がやるらしい。』

 

『ホントお前ら自由ね!!いいけど!』

 

恐らく雄英高校で最も自由な詠斗に呆れつつ、嫌いじゃない!と笑ったプレゼントマイクは、詠斗に解説を投げるかぁ、と続ける。

 

『さぁ!始まった第1試合!いきなり超ハイレベルな攻防に、会場も度肝を抜かれ静まり返ってしまったァ!盛り上げてけよ観客ぅ!実況の逢魔選手!この試合どう見る!?』

 

『はい、実況の逢魔です。そうですね、勇者たちにとっては厳しい試練となるでしょう。まず、彼女たちには2つの壁を突破しなければならない。』

 

『……なるほどな、1つ目は接近手段ってところか。現状あのパーティーには遠距離攻撃手段が乏しい。角取の角を頼りにすれば、移動の要を手放すことになり、かと言って現状維持も、持久力無限の渡我には確実に負ける。』

 

それに続くように解説した相澤に、流石と詠斗は拍手を送る。

 

『流石、先生。2つ目は被身子のバリアを突破すること。被身子のバリアははっきり言うが、堅い。追加詠唱なしの『極光』程度の威力では平気で弾き返す。ポニーの角砲の攻撃も同様に弾かれるだろう。』

 

『やっぱお前ら反則だよなぁ、じゃあ今のところ勝ち筋ねぇじゃん?』

 

プレゼントマイクの言葉に、詠斗は否を示す。

 

『いいや、そうでもない。それに、もう切奈はわかってるんじゃないかな?』

 

詠斗の言葉に、必死に回避する取陰は、ハハッと呆れた。

 

「信頼重いっつの!でもさぁ、そりゃ正解だわ!!」

 

空中で更に体を分割。最大70分割までできるようになった彼女は、被身子の攻撃を封じる為に飛び出した。

 

取陰切奈、個性『トカゲの尻尾切り』

 

体をバラバラに分割が可能であり、その付随能力として本体も浮遊が可能。

 

彼女の個性の本領は直接の戦闘よりも、サポートに寄っている。故に、彼女は司令塔としての頭を鍛えた。己の役割を最も知っている彼女は、必死に頭を回す。

 

(逢魔と被身子ちゃんの魔法陣は、命令の起点であり回路そのもの!言い換えれば、あれその物が魔法!それがわかっているなら、命令通りに行かないようにしちゃえばいい!半分賭けだけど、逢魔の発言的にこの賭けは───────)

 

真正面から突撃した取陰に殺到する閃光。それを躱しながら、3人に目を配った。

 

それに答えるように合わせた芦戸、蛙水、角取の3人は試合直前に言い渡された取陰の作戦を思い返す。

 

『皆、私の体の一部を直前に渡すから持っておいて。私が、ヒミコちゃんの遠距離攻撃を必ず潰す。だから───────信じて突っ込んで。』

 

3人は、彼女の揺るぎない覚悟に頷き、ただその時まで耐え忍ぶ。

 

(甘いねヒミコちゃん!!分割した部位は、どこからだって動かせる…!!)

 

「っ!?魔法陣を!」

 

事前に分割した体の一部を他3人の体の影に隠し、被身子の背後から展開された魔法陣にぶつける。すると、ジジッ、と魔法陣がブレてその姿を消した。

 

『トガ魔王の魔法陣が消えた!?何が起きたァ!?』

 

『正解だ、切奈。僕たちの魔法陣は直接の起動回路だ。一瞬でもその回路が阻害されれば、魔法は不発に終わる。自分の個性と相手の個性を分析して、作戦に組み込んだ……いいね、素晴らしい。』

 

明確に見えた勝ち筋に、勇者が猛る。

 

「───────アタシのボロ勝ちだぁッ!!」

 

取陰の雄叫びに、蛙水がタイミングを見切り指示を飛ばした。

 

「今よポニーちゃん!三奈ちゃん!」

 

「ラジャ!粘度MAX!溶解度MAX!!新技お披露目しちゃうよ〜ん!」

 

「オーケー!!ツユチャン!行きマスヨー!!」

 

蛙水が掴んでいた角を手放し、被身子に向かい足技を繰り出す。

 

防いだ衝撃に、ピシッとヒビが走る。

 

「凄い!攻撃を封じながら近接戦に繋げたね!足技も練習が生きてるよツユちゃん!」

 

「えぇっ!お陰様でっ!ミルコの足技をっ、アナタが完璧に教えてくれたからっ!」

 

「うんうん!それで!?次は何かな!!」

 

「あっ、たっ、しっ!!」

 

背後から迫った風きり音を耳にした被身子は咄嗟に回避すると、ビタタッという水音と共に地面のコンクリが溶け落ちる様子を見て、アハハハッ、と笑う。

 

「当たってたら死んじゃうよミナちゃん!」

 

「どうせ、当たらないでしょ!?当たった所ですぐ治す癖に!どうかな!新技『アシッド・ウィップ』は!!ミッナイ先生時込みの鞭の味はさぁ!!」

 

芦戸の手には、粘度を最大まで上げた粘液を束ねた酸の鞭が伸びていた。粘度、溶解度の自由度を上げた彼女の酸は、コンクリを即座に溶かすレベルまで上がっていた。

 

「思ってたよりずっといい!高速の攻撃に加えて、溶解液の散布ができるのは凄く強い!」

 

『私が教えましたっ!ファイトぉ!三奈ぁ!』

 

「あっ!依怙贔屓です!ズルいですミッドナイト先生!私も応援してください!」

 

『あぁ、ごめんごめんっ!勿論ヒミコちゃんも応援してるわ!』

 

中距離の攻撃手段を得た芦戸は、元から持ち合わせていたセンスも合わせ、酸の鞭を自在に操っていた。

 

魔法陣を作れば、取陰に潰され。

 

攻撃に移ろうとすれば、蛙水、芦戸に封じられる。

 

近距離の攻撃を禁じられた状態とはいえ、被身子の手札を封じ、ここまで迫った事は、快挙と言っていい。

 

訓練前の皆からは考えられない発想、機転、戦術眼。取陰を頭脳として、このチームはしっかりと機能している。

 

(嗚呼っ!凄い!乱れない連携も、全員が自分の役割をこなして、みんながみんなを信じて専念している!)

 

被身子は感動に打ち震えていた。自分が教えた戦士が、こうも立派に育っているなんて。昔から、何かを育てるのは好きだった、家の庭の世話を担当しているのは被身子だ、草花の育つ瞬間はやはり言い表せない達成感がある。

 

だからこそだろうか。それ以上を求めてしまうのは。

 

(まだ、まだあるんでしょう?これで終わりなわけが無いもの!)

 

そう確信していた被身子は、蛙水の口から伸びる舌を回避。しかし些か狙いがズレたソレが、被身子の背後に伸びたことに違和感を覚え、ほんの少しだけ意識を向けた。

 

彼女特有のよく伸び、撓り、攻撃にも転用できる彼女武器。

 

それが伸びる先に、被身子の本能が警鐘を鳴らす。

 

クラウチングスタートの体勢から一気に飛び出したポニーが、ドロップキックをぶちかまさんと地面がひび割れる程に飛び上がった。

 

(ポニーちゃんの腰に…!そういう事!)

 

ギュオッと空気が大きく蠢きながら、蛙水が舌を撓らせた。

 

「あ、ヤバいかも。」

 

確信のあった被身子が咄嗟に避けようと足を引けば、ヌルッとした感触とともにバランスが崩れる。

 

(これっ、粘液!)

 

バッと芦戸を見遣ると、ニヒッと笑い、してやったりと舌を出した。

 

「足元注意!『アシッド・スリップ』ってね!」

 

(地面が溶けてない場所がある…!酸と酸性の弱い粘液をランダムで撒き散らして、この攻撃の瞬間の為に場を整えていたんだっ!でも、ミナちゃんがここまで考えつく…かな?馬鹿じゃないけど、ここまで頭が回るだなんて………いや、違う───────)

 

上空に佇む取陰と、目が合った。

 

ギザ歯を覗かせ、勝気に笑った彼女を見て、確信した。

 

「この取陰切奈は、何から何まで計算づくだよッ!ヒミコちゃん!!」

 

「っ!!」

 

「ぶちかませポニーッ!梅雨ちゃん!」

 

彼女達のミサイルは、既に回避を許さない距離に迫っていた。

 

(障壁を…いや、割られる!確実に!)

 

ほぼ反射で障壁を張った被身子は、防御に入ろうとして───────やめた。

 

受け止めるように手を広げた被身子の胴体に吸い込まれるように、蹄が迫った。

 

「…………よく、頑張ったね、みんな。」

 

ドラッグ・フーフ(牽引衝蹄)ッッ!!!』

 

蛙水と角取による、即席の合体技。

 

角取の異形の筋力による加速+蛙水の舌による張力

 

複数の力が加算された一撃は、爆発的な威力を発揮する。

 

ガシャンッ!と被身子の障壁を突き破り、蹄が被身子に直撃する。

 

「ぐっ……ッ!!」

 

吹き飛んだ被身子はそのままゴロゴロっと転がった後、片手で軽々と飛び跳ねて佇まいを直す。

 

『クリーンヒット!!勇者チームに2ポイント加算!』

 

ミッドナイトが鞭を振り下ろし、ポイントの加算を宣告。その声に、圧倒され静まり返っていた観客たちは一斉に湧き上がり、会場が割れんばかりの歓声に包まれた。

 

『クリーンヒットォォッ!!開始から4分25秒!ここで初めてのポイント加算!!観客共!ようやく目ぇ覚めたかぁ!?つーか、なんだよなんだよ!これ第1試合なんだよなぁ!?決勝じゃねぇんだよなぁ!?レベルが高すぎるぜぇお前らァァ!!』

 

『いやほんとに、被身子に一撃を入れたことは誇っていい。本当によく練られ、被身子を倒す為に突き詰めた作戦だ。僕も、うかうかしてらんないね。』

 

会場のボルテージが最高潮に達した頃、立ち竦む被身子の目の前に4人が揃った。

 

「取り敢えず、2ポイント!」

 

「ケロ、ダウンまでは取れなかったけれど、上々よみんな。」

 

「にひひっ、スリップが活きたね!」

 

「このままヒミコちゃんにメニモノイワセタリマァス!」

 

お腹を擦りながらケホッと咳き込み、薄らと笑った被身子は、再び4人に向かって拍手を打ち鳴らす。

 

「本当に、凄かった。私に一撃を入れて、ここまで誰1人欠けることもなく私の目の前に立っているなんて……本当に強くなってくれたんだね。」

 

どこか愉悦に浸るように、優しく、慈しむように笑った。

 

「ありがとうの代わりに、これから全力で貴女達を倒すね。魔王として。」

 

ゾッ、と。4人の背筋が泡立つ。何かを理解したワケじゃない、何かを感じたわけではない。それでも、本能が絶叫をあげた。

 

「みんなッ!構───────」

 

取陰が叫んだ瞬間には、既に彼女以外の3人はその場にいなかった。何かが炸裂するような音と共に、場外に吹き飛ばされた3人は、意識を失っていた。

 

3人の惨状を目にする前に上空に逃げようとした取陰は、その場に固まった。いや、動けなかった。

 

背後にいる、絶対的な強者の気配に、意志と反して体が動きを止める

 

まるで、巨大な蛇に睨まれた蜥蜴のように。ドッ、と湧き出た滝のような汗、激しい動悸に、呼吸が出来ず、歯の根が合わない。今、自分の後ろにいるのが、可愛く、賢く、強く自分たちを導き、ちょっぴり内気な彼女だとは思えなかった。

 

「凄かった、本当に。」

 

そして、彼女の声と、背中に向けられた手のひらの熱を遠くに感じて漸く、背後にいるのが被身子だと認識できた。

 

少しずつ下がる心臓の音色と共に、現実が押し寄せて、今を理解した取陰は、両手を上げた。

 

「───────ふぅー……ほんとにさァ………強すぎだよ、ヒミコちゃん。」

 

「そりゃあ、みんなの先生なわけだし?1ヶ月やちょっとでここまで来たみんなも充分すごいんだよ?」

 

「ははっ、実感湧かないって。2人が強すぎてさぁ〜……」

 

もう、詰みだ。ひっくり返しようがない。

 

「諦めちゃう?」

 

「うん、もう無理かな。アタシじゃああと8点を取る近接能力も、火力もない。何とか飛べたとしても、ヒミコちゃんの攻撃が集中してどの道詰みだ。」

 

「ふふっ、そっか。自分のできること、できないことをしっかり把握出来てるのは、アナタのいい所。状況を読む能力も、展開の作り方、何より有利の押し付け合いのレベルが飛躍的に上がった。誇って欲しいな……私がアナタ達を、強い戦士だって認めた事を。」

 

「………そっかぁ〜……そうするよ。でも、ヒミコちゃんさ……別々の魔法の同時展開しなかったでしょ?」

 

「あっ、バレた?」

 

「バレバレ。くっそー、本当の意味での本気を出させるには、まだまだかぁ〜……」

 

「あはは、うん。だから、強くなってね。進み続けて、私たちを追い越すくらいに。」

 

「うん……なるよ、強くさ。2人の背中を追いかけて。」

 

完全に脱力し、仰向けに寝っ転がった取陰は、ひょこっと現れたいつも通りの被身子を見て、あっ、と声をあげる。

 

「降参する前にさ、聞きたかったんだ〜。」

 

「なぁに?」

 

「…………少しでも、楽しいって思ってくれた?」

 

その言葉に、被身子はキョトンとしたまま目をパチクリとさせて固まってしまった。けれど数秒後に、いひひっといたずらっぽく笑って、大きく首を縦に振った。

 

「───────うんっ!とっっても楽しかった!!」

 

「…ふっ、あはははっ、ならヨシっ…!ミッドナイト先生、降参。私達の負けだ。」

 

いいのね?とじっと見詰め返すミッドナイトに首肯すれば、目を閉じたミッドナイトが、開始の合図と同様に、鞭を振り下ろした。

 

『欠片の勇者チームの降参により、勝者───────魔王、トガヒミコさんっ!!』

 

その宣言に合わせるように、被身子が慌ててカメラを探し、見つけた後に急いでこっちこっちと手を振った。

 

「あ、えーっと…あっ、カメラさんこっち!ん〜〜〜っ、勝利の〜〜っブイ!!」

 

【挿絵表示】

 

 

被身子のカメラ目線のポーズと共に、割れんばかりの歓声が会場を包み、勇者達の健闘を讃え、被身子の勝利を祝福した。

 

『第1試合、勝利を納めたのは、当然と言わんばかりにポーズをとる魔王渡我リスナー!だが、勇者達も健闘した!いきなりハイレベルなバトルを繰り広げてくれた勇者達と魔王にクラップユアハンズ!!さて、解説の逢魔リスナー!感想はどうだァ?』

 

『えぇ、被身子が楽しそうで良かったです。』

 

『そっちじゃねぇよアホ。戦いの感想だわ。』

 

『あぁ、そうですね。プレゼントマイクも言っていましたが、とてもハイレベルな戦いでした。元々の作戦の練度、そしてその作戦に必要な舞台の整え方、全員が同じ方向を向いて突き進めたのも、一重にリーダーである切奈の能力の高さだろう。加えて、皆の忍耐と実行力には脱帽した。でも課題としては、やはり火力不足かな。そこは今後のお楽しみとしよう。』

 

おしまいと締めた詠斗は、どこか浮き足立っていた。

 

何せ次は自分だ。見ているだけで、飛び出したくなってしまう程に、被身子が羨ましかった。

 

早く時間が過ぎて欲しいと願ったのは、この時ほどなかっただろう。

 

そんな詠斗を見かね、プレゼントマイクは、くじ引きの箱を取り出した。

 

『さぁ!お待ちかね!第2試合!Bブロック!魔王、逢魔詠斗が支配する領域にぃ、足を踏み入れるのはァッ……こいつらだァ!!』

 

引かれた札には『柔』の文字。詠斗の対戦相手が決まった。

 

『柔の勇者!骨抜柔造が率いるパーティーが足を踏み入れる!さぁ!酸でボロボロになっちまってるから、セメントスが会場を整備したら試合開始だ!!』

 

「柔造のチームか……ある意味一番予想ができないが……まぁ、楽しもうかな。」

 

選手達が座る席にいる骨抜達と目が合った詠斗は、余裕そうにニヤリと笑って見せた。

 

それに、砂藤、円場、骨抜は苦笑いを返した。

 

「おいおい……あんな楽しみそうに笑っちゃってまぁ…ハードル上げてくれるぜ…」

 

「ま、やってやろうぜ2人とも!」

 

「んじゃま、2人とも。作戦通り……柔軟に行こう。」

 

いつもと変わらぬ柔軟さを見せた骨抜は、柔く、不敵に笑った。




Q.相澤先生との賭けってなんだったん?

A.第1予選でヒーロー科、心操のみが残ったら好きにさせて欲しいという話です。仮に1人でも予選に進みそうなら、詠斗は予選で後続が誰も進めないように妨害する予定でした。人の心とかないんか?

Q.予定とかが原作と変わってるけど、物語も変わるの?

A.勘弁してください。これの後に更にオリ展開は死んでしまいます。時系列を見ると、おおよそズレは1週間くらいなので、終わったら原作に沿わせます。

AIの凄さを理解すると共に、手描きでこれ以上のクオリティを叩き出す絵師さん達は本当になんなの?お世話になっております。


【挿絵表示】


すごいね本当に…いや、マジかって思いましたよ。悪用は現金ですけど、私のやうに絵の才能がない人が、こういうイメージをイラストにできるのは本当にありがたいですね。

感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。
モチベーションに繋がっています。感想返せていない時もありますが、しっかりと見させてもらっています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。