フヘンの愛   作:イベリ

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とがちゃん


格の違い

すっかり桜舞う季節になり、新しい生活にみんなが足を踏み入れる。

 

雄英高校に通うこととなっている被身子と詠斗は送られた制服を着て登校する。久々に袖を通した制服に、被身子は今日が待ち遠しくてたまらなかったのだ。

 

「エイト君!エイト君!やっと今日が来ました!新しいお友達!エイト君と一緒のクラス!ずっとなりたかったクラスメイト!」

 

「落ち着いてね…まぁ、いいか。」

 

大興奮の被身子を諌めるも、まぁ同じクラスで入れることは詠斗としても嬉しいことだ。

 

しかし、そんな被身子にも不満はある。

 

予め相澤にクラス表を貰っていたのだが、女子がやはり少ないし、少し女子とは離れている。加えて詠斗との席も遠くなってしまった。

 

被身子としては、これではクラスメイトになった詠斗との距離が空いてしまうことに不満タラタラだったのだ。

 

「でも詠斗くんとは席が離れてます!女子も1人しか周りにいません!不満です!嫌ですっ!」

 

「こらこら、そう文句言わないの。「と」と「お」なんだから離れるのはわかってたことでしょう。」

 

「むぅ〜!」

 

膨れる被身子に、いつもというか寝ても醒めても隣にいるんだから、たまには自分以外の人間との関係を築いて欲しい詠斗は、心配もしていた。

 

それもそのはず、被身子は今日に至るまで他の人間との関係はほぼないも同然だった。友達は作らずほとんどの時間を詠斗と過ごしてきた。

 

いや、2年…現3年の先輩に1人甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた……焼いてくれた?人はいる。それ以外では連絡をとっている人間を知らない。

 

加えて、去年の生徒たちの除籍理由を聞けば余計に心配になる。

 

被身子がそれはまぁ、笑顔が素敵で可愛(かあい)くて、強いと言えど、足を引っ張るような真似をしたことが原因なのだ。

 

被身子は気づかなかったし、その妨害すらものともせずにクラス最強に輝いていたが、相澤がそれを危惧し首謀者、そして見て見ぬふりをした全員を除籍としたらしい。

 

(被身子がニブくて良かった……)

 

気づいていたら少しショックを受けていたろうから、本当に彼女がそういうことに鈍くてよかったと思った詠斗は、何かあったら自分が守ろうと、彼女の知らぬうちに決意を固める。

 

「どうせ私も逢魔になります!今日中に相澤せんせーに直談判します!」

 

「ははは、やめようね。」

 

そんな会話をしていると、漸くクラスに辿り着く。今日から始まる新生活に被身子はワクワクしていた。

 

漸くちゃんとお友達を作れるかもしれない。あの頃は過去の行いが噂となって広がっていてダメだったが、ココにはそんな噂は流れていない。自分も、詠斗も漸く対等な存在が出来るかもしれない。

 

「お、出久君。君もA組かな。」

 

「逢魔君に渡我さん!2人も同じクラスなんだね、良かったぁ……あれ、渡我さん?」

 

「楽しみすぎて他の事が耳に入ってないだけだから、気にしなくていいよ。」

 

そんな希望を抱いて開けた扉の先に広がっていたのは─────

 

「聡明〜!?クソエリートじゃねぇか、ぶっ殺し甲斐が─────」

 

ピシャッ

 

反射的に扉を閉めた被身子は、もう涙が出てきた。なんで初日の朝から端の方で喧嘩が発生しているのだろうか。

 

「え、なに。」「渡我さん?」といつの間にか一緒にいた緑谷と中の様子を覗いた

 

「おいこらクソナード!!何のこのこ俺の前に───────」

 

ピシャッ、と再び扉が閉められ、2人は漸く理解した。

 

「あれ、ヘドロの人じゃん。捕まったから暴れてたんじゃなくて元々やべぇ奴なんだ。」

 

「かっちゃん……ごめん、幼馴染が…」

 

その言葉に、被身子がぐりんっ、と緑谷に振り向き、信じられないものを見るように、目を見開いた。

 

「おさ、なな、じみ………オサナナジミ?」

 

被身子の幼馴染という概念が崩れ去っていく。まさか、そんな。自分の知ってる幼馴染は詠斗で、そんなまさかと否定した。否定したかった。

 

「も、もしかして…オサナナジミって、幼馴染…?

お、幼馴染って、優しくて…手を差し伸べてくれて…寂しい時はずっと一緒に居てくれる、エイト君みたいな人の事を言うんだよ……?あんな、あんなのを「誰があんなのだ団子頭!!」こんなのを幼馴染だなんて、言わないんだよ……!?」

 

「あはは……世の中には、その、そういう関係もあって…」

 

謎の関係に、被身子は宇宙を背負った。

 

「あれ?そのモサモサ頭!」

 

「へっ?」

 

「やっぱり!受かってたんやね!良かった!あっ、私麗日お茶子!よろしくね!そっちのお二人さんも!はじめまして!」

 

丸顔の少女が、後ろから声をかけてきた。

どうやら緑谷と試験会場が同じだった人物も、同じクラスのようだ。

 

「あぁ、よろしく。逢魔詠斗。こっちの放心してるのは渡我被身子。」

 

「はひっ、よろよっ、よろしくお願いしますッ!?」

 

「よろしくね!逢魔君と渡我さんも!」

 

「ほら〜、被身子〜、そろそろ戻ってきてね。念願のお友達候補だぞ〜」

 

ガラリと扉を開けて、被身子を押しながら入っていくと、聞きなれた声が後ろからかかる。

 

「お友達ごっこがしたいなら他所でやれ。ここはヒーロー科だぞ。」

 

その聞き慣れた声に、被身子は漸く気を取り戻した。

 

「はっ!?この可愛く(かあいく)ない声は…!!」

 

もう既に諦めムードだった被身子は、相澤の声にグルルルっ!と喉を鳴らす。

そんな被身子を気にする素振りも見せず、相澤は教壇までツカツカと進む。

 

「……はい、君たちが静かになるまでに8秒かかりました。合理性に欠けるね。」

 

教室の全員が呆然とする中、相澤は変わった様子もなく続ける。

 

「担任の相澤です。早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ。」

 

「あぁ…始まったのです……」

 

前の流れだコレ、と涙を流しながら項垂れる被身子。

 

各々が混乱しながらも、各自グラウンドに集合し、相澤の言葉を待った。

 

「今から君達には、個性把握テストをしてもらう。」

 

『個性把握テスト?』

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるなら、そんな悠長な事言ってられん。」

 

雄英は自由な校風が売り文句。それは、生徒だけでなく教師にも当てはまる。

 

「中学の頃やっただろう?個性禁止の体力テスト。」

 

その言葉で、みんながあぁ、あれか。となっている中、緑谷だけは浮かない顔をしていた。

 

それもそのはず、緑谷は未だに個性を上手く扱えない。いつか詠斗が言っていた、1発限りの木偶の坊に成り下がってしまう。

 

そんな焦りの中、相澤が詠斗と渡我をちょいちょいと、呼び出す。

 

「まず自分の最大限……そして、格上の存在を知ってもらう。自己紹介。」

 

「えぇ……と、渡我は渡我です!渡我被身子!みんなとはお友達になります!なってみせます!」

 

「逢魔詠斗、よろしくね。」

 

突然の自己紹介に疎らに起きる拍手。少し先行きが悪い気がしてきた被身子は、うぅ〜!と詠斗の腕を掴んでガクガクと揺らす。

 

「はっきり言っておく。君たちのクラスメイトであるこの2人、渡我と逢魔は格が違う。君たちの1歩も2歩も……いや、10歩も20歩も先を行っている。逢魔はこいつの為だけに、雄英に専用の推薦制度を作らせ、渡我は入試実技試験の歴代2位だ。」

 

1位はオールマイトね、と付け加えた後、クラスメイトたちが爆発。

 

『歴代トップ2に、推薦制度を作らせた男!?』

 

「いやぁ、お恥ずかしいね。仮病でサボってたら出席日数推薦に足りなかったんだよね。」

 

「あれ、そんなに高かったんですね。」

 

「爆豪。今年の入試トップはお前だったな。点数はいくつだったか覚えてるか。」

 

「あぁ…?77だろ。」

 

「去年時点の渡我は約その2倍、168だ。内訳は敵ポイント148、救助ポイント20。救助ポイントの低さは、救助する前にコイツが全部片付けたから。」

 

「ひゃっ……!?」

 

『うっそでしょ!?あれ、去年?』

 

「ひぃっ!?エイト君!なんか、あの人物凄い睨んできました!怖い!かあいく無いです!」

 

「あぁ!?誰が可愛くねぇだ!!そもそも野郎に可愛さ求めてんじゃねぇ!!」

 

「ははは、顔ヤバ。」

 

詠斗の背中に隠れながら肩を揺らす被身子をそのままに、相澤は軽く内情に触れる。

 

「お察しの通り、渡我は年齢で言えば君らの先輩だ。しかし、完全なる雄英の都合で留年してもらった。」

 

「えっ、じゃあじゃあ!2年生って?」

 

「年次で言えばこいつ以外居ない。」

 

「嘘ぉ!?」

 

「内情を言うのはあまり良くないが、去年は、こいつが、入試で、大暴れしたせいでまともに人員が集められなかった。同じ試験会場の約200人の心を実力でへし折った女だ。面構えが違うね。」

 

「そ、そんな、私のせいみたいに……いけしゃあしゃあと!」

 

(ほんとなんだよなぁ)

 

ガチである。被身子の代は試験会場は2つに分けられて行われたのだが、被身子はあろうことか約9割のロボを一人で殲滅し、1つの会場からまさかの合格者は被身子のみという大暴れっぷりだったのだ。

 

普通に実力差に心が折れて227人が呆然と立ち尽くしていた、らしい。

 

そんな事を口にした相澤に対して、被身子は思わず

 

「みんな、気をつけるのです…!このかあいくないおっさんは、去年私以外の生徒を除籍して、私の留年の原因を作った張本人です!」

 

とか言ってしまいそうになったが、すんでのところで詠斗に口を閉じられる。

 

一昨日、除籍処分の経緯は口外しないように、と口酸っぱく告げられていたのだ。

 

なんでも

 

「見極めだ。本当に除籍処分にするかは置いておくとして、除籍勧告はする。そうする事で最大限を引き出す。見込みがあれば合理的虚偽とでも言えばいいから、便利でいいね。」

 

と、知らない方が都合がいいとのこと。まぁ、確かに死刑宣告をされるかもしれないとなれば、人間いくらか必死にはなるだろう。じゃあもっと言葉選べやという感じである。

しかし、高校1年生1日目にやる事かこれ?という疑問は受け付けられなかった。

 

しかし、それすらも試練として使うのが相澤の方針らしい。

 

「さて、無駄話はここまでにしよう……渡我、逢魔…デモンストレーション、ボール投げろ。」

 

渋々と言った様子で前に出る、位置につこうとした2人に、相澤は短く告げた。

 

「格の違いを見せろ。これが、お前達に渡す課題だ。」

 

「えぇ…そんな曖昧な……」

 

「ハードル上げますね。まぁ、わかりました。」

 

どうするかなぁ、と少し悩んだ詠斗は、チラリと緑谷を見る。少しの逡巡、後に方針を決める。

 

少しくらい、贔屓するのは許してくれるだろう。

 

そうして考えているうちに、被身子は既に円の中に立っていた。

 

チロリと唇を舐めて準備を完了した被身子は、既に円の中に立って、相澤の課題に頭を悩ませていた。

 

「格の違いとか言ってたから、見える方がいい…よね?」

 

被身子の右手薬指に嵌められた指輪が淡く光ったと同時、薄く発光する筒状の物体が現れる。

 

幻想的にも見えるソレに、生徒たちは興味津々。ピンク色の肌を持つ少女が、はいはーい!と元気に手を挙げた。

 

「質問!その〜、トガ先輩の個性ってなんですか?魔法!?」

 

きた!と言わんばかりの速度で振り向いた被身子は、待ってましたとばかりに声を張った。

 

「先輩はつけなくていいのです!私は、みんなとお友達になりたいので!ヒミコちゃんって呼んで!」

 

「OK!ヒミコちゃん!私は芦戸三奈!それでそれで、個性って何?」

 

この子とは仲良くなれそうだとウキウキしながら、彼女の質問に答える。

 

「ふふん!ミナちゃん、聞いて驚くのです!私の個性は『変身』!血を飲んだその人の体の隅々まで再現して変身することができます!」

 

へぇ〜!とクラスメイトが感心する中、何人かは今の現象に首を傾げていた。

 

「ですが、ヒミコさんは変身していませんわよね?その能力は変身とは全く関係がないように見えますが……あっ、私は八百万百と申します。」

 

「ふふん!モモちゃん!それは、2年くらい前から、体の一部だけを変身することができるようになってます!なので、私は体内の一部だけを変身させて、エイト君の個性を使っています!」

 

「えっ、変身した人の個性まで使えるの!?」

 

「今のところ何故かエイト君しかこういう発動系使えませんけどね。」

 

理由は不明だが、何故か使える詠斗の個性を、1部ではあるが本人よりも上手く扱える程に鍛えてきた。

 

「エイト君の個性はエネルギーの操作や特性の付与。この筒はそれの応用です。いろんな形、自由な強度にして結界のように扱えます。」

 

いそいそとその筒にボールを詰めていく。少し透けているその筒は、中に入るボールが見えるようになっていた。

 

「こうして、この部分で一旦止めて……次は…うーん、出力最大なら割と威力出ますかね…?」

 

筒の形を変えながら、こうですかね?と模索しながら、納得の行く形まで変形させる。

 

「大砲みたいにしましょう!ぶっぱなしておけば相当な威力になるはずです!」

 

次に再び虚空に手をかざす。すると、その場に幾何学模様の陣が展開される。

 

「魔法陣!?」

 

「魔法、魔法だあれ!」

 

「禁忌の智慧…!!」

 

「エネルギーの操作や特性の付与だけじゃありません!現象を起こしたい時は、こうして命令を書き込んだ魔法陣を使います!私はイメージしやすくて、命令が刻み易いので使ってます。私のアイデアですがエイト君も使ってますよ!本来必要ないのですが、あった方がカッコイイから使ってるって言ってました!」

 

「逢魔……お前とは気が合いそうだ。俺は常闇…常闇踏陰。お前の深淵……俺もいずれ……」

 

「へぇ……奇遇だね。詠斗でいい。さて、君に僕の深淵が理解できるかな。」

 

「ふっ……待っていろ詠斗、すぐにその場にたどり着いてみせる。」

 

謎の友情を誕生させた2人をよそに、アニメ見てて思いつきました!と元気に笑う被身子。わかりやすい超常にクラスメイトは大興奮。今までこうしてワイワイ騒ぐような事がなかった被身子は、少しテンションが上がっていた。

 

「では、行きます!先生!」

 

「はい、早くしてね。」

 

相澤の言葉に、足を開き構えた被身子は、元気いっぱいにシャウト。

 

「全力全開、層化命令もオマケしちゃいます!

アド(神秘)ララグ(極光)アイオアイ(奔流)』!!」

 

「詠唱だと!?」

 

「声にエネル……魔力を乗せて詠唱する事で、刻まれた命令に強制力を付与して、効果を増幅させることもできる。これを、層化命令と呼んでいる。」

 

「……なんという…なんという…!!」

 

瞬間、稲妻でも降り注いだのかという眩い光が、迸り次の瞬間には、とてつもない突風と共に筒からボールが弾き出される。

 

射出されるところも見えなかったクラスメイトはポカンとしたまま。ふふん!と胸を張る渡我は、相澤を見た。

 

「─────去年より伸びたな、1400m。」

 

「やたっ!200m近く伸びました!」

 

『すっ、すごぉ……』

 

計器が弾き出した数値に、A組は息を飲んだ。ブイブイ!とピースサインを向ける被身子は、興奮したままクラスメイト達に群がられている。珍しい経験に狼狽えていた被身子を眺めて、相澤は詠斗に目を移す。

 

「逢魔、超えろ。」

 

「わかりました。」

 

とてつもないハードルの命令を下したかと思えば、その言葉にノータイムで了承した詠斗の揺るがぬ自信に、クラス一同が息をのむ。

 

「先生。ここの外周は。」

 

「約6km。余裕はあるだろう。」

 

「流石に僕もこれだけでそこまでは飛ばせません。」

 

「手を抜くと?これは除籍処分も検討せにゃならんかもな。」

 

「勘弁してください。被身子が発動系で印象に残るので、僕はパワー系で行こうかなと。やっぱりそっちはどうしても限界があるので。」

 

そうして位置についた詠斗は、ボールを弄びながら緑谷を見つめる。

 

「逢魔君……?」

 

眼が合うと、詠斗がよく見ているように、とジェスチャーをした。

 

彼の行為を不思議に思っていると、一部始終を見ていたクラスメイトが緑谷に声をかけた。

 

「緑谷君…彼は何を…?あ、俺は私立聡明中学校から来た、飯田天哉だ!」

 

「あ、ぼ、僕は緑谷出久…ううん、わからない。でも、たぶん見ていろってことだと思う…」

 

考えが纏まる前に詠斗の無機質な「行きまーす」という声に、慌ててそちらに目を向けた。

 

深く息を吐いた詠斗は、わざと通常の5分の1程度の速度で体の中の力を巡らせる。

 

袖をまくっていた詠斗の全身が淡く発光する。骨格が発光しているのか、彼の皮膚を通り抜けて骨の形が明確に目視できる。

 

「被身子はよく聞いて、君はこの辺がお粗末だ。基礎から行こう。初めに骨格、ここが弱いとすぐに暴発する。次に筋繊維、慣れないうちは全体を覆ってから浸透させるように…そして最後に体の外側を包む。骨を満たし、筋を強靭に、それを包む事で耐えうる体を完成させる。」

 

「光ってる…全身が淡く…内側から……」

 

「うーん、やっぱりエイト君のやり方難しすぎる…」

 

「内側から外に、今使えるエネルギー量を見極める。バランスが大事ね。骨も、筋肉も、そしてその外側も。バランスが良くないと……ボンッだからね。」

 

その言葉に、緑谷は試験時の自分を思い出した。

 

あの時、自分は力をどう使っていた?彼のお陰でオンとオフの切り替えはスムーズ。あとはどのように調節するかが課題だった。

 

しかし、その思考自体が間違っている?そうだ、彼は言っていた。ワン・フォー・オールはエネルギーの操作が本質だと。

 

ならば彼が示していることは自分にも───────

 

そうして思考の海に沈んだ(完全詠唱ブツブツ)緑谷を見て、ヒントくらいは示せたかなと、自分の役目を果たす。

 

ボールを真上に上げ、それに合わせるように飛び上がり体全身の捻りを加えながら、高高度から真正面に蹴り抜く。

 

「角度、風向き、ヨシ。君ならこういうかな……SMASHって感じかな。」

 

パァンッ!!と破裂音が響き渡り、ボールが被身子と遜色のない速度で飛んでいく。

 

ピピッと、景気が出した結果を見て、ニヤリと笑った相澤は、その結果を差し出した。

 

「────2000メートル、合格だ。」

 

『うっ、うおぉぉぉぉ!超えたぁぁあッ!!』

 

被身子の記録を600メートル近く凌駕する記録に、クラスが沸いた。格の違いを見せろ、という相澤の注文は十分に成し遂げただろう。

 

当然と言うような、王者の風格のまま被身子の隣に戻った詠斗に、被身子はぽそりと呟く。

 

「……やっぱり、勝てないなぁ……」

 

「そりゃ、君とは年季が違う。逆に、僕に着いてこれる君が稀有だからね。その辺ちゃんと自覚した方がいいよ。」

 

「そうなのかなぁ…」

 

余りに長い間を詠斗と過ごした弊害とも言えようか。戦闘力の基準が詠斗になっているため、彼女の自己肯定感が全く育っていない。もう少しやりようがあるのだろうが、この手の分野を苦手とする詠斗は、事実を告げることしか出来ない。

 

そう話していると、クラスメイトが先の興奮が冷めやらないのか、テンションが上がっている。

 

そして、試練の時が訪れる。

 

「やっべぇよ、ヒミコちゃんも逢魔もヤバい実力者じゃん!?」

 

「でもさでもさ!すっごい楽しそうじゃない!?個性思いっきり使っていいんでしょ!?」

 

「だな!さすがヒーロー科!」

 

「───────ほう?」

 

そうして、楽しそうという浮ついた言葉を聞いた時、これは良いという顔をした相澤を見て、被身子は心の底から願った。

 

(去年の子達より仲良くなれそうなので絶対に除籍とかならないで!これ一生のお願いでいいから!)

 

(うわ、ヒーローがしちゃダメな顔だあれ。)

 

「そうか……君達はこれから3年間。そんな腹積もりでいるつもりか?だったら甘い……よし、8種目成績最下位の者は除籍処分としよう。」

 

『ハァッ!?』

 

当然、そんなことを言えばクラスメイトの反応はこうなる事は予想できる。

 

心底楽しそうというか、邪悪な笑みを浮かべながら、彼らに発破をかける。

 

「これから3年間。俺たち教員は君達に試練を与え続ける─────Plus Ultraの精神で、壁を乗越えて見せろ…!」

 

ゴクリと息をのんだ生徒達は、各々の目に炎を宿した。

 

ただ1人、緑谷出久を除いて。

 

(さて……早速の試練だけど、出久君……君は、どう乗り越えるかな。)

 

彼にとっての、第1の試練が今始まる。




ヒロアカってたまに作画頑張りすぎて行き過ぎちゃう時あるよね。
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