それではごゆっくりお読みください
私は、何をやっているのか。
「……で、……を攻撃!」
私のモンスターは、圧倒的な力量差があるにも関わらず、その手に持っている剣を構えて立ち向かっているのに、私は何故地面に両手両足をついているのか。
……い!おい!主人よ!
モンスターが頭に直接語りかけてくる。しかし私はそれに対して何も答えることが出来ない。
もう、これに対して取れる手段は残されていない。
この攻撃を止めたとしても、この状況を何とかする手段はない。
可能性はある!諦めてはいけない!
私を鼓舞するために全力で声をかけ続けていたモンスターが攻撃を受けて弾ける。私のエースがやられてしまった。こうなったのは、私の責任だ。私が「彼」を使うことはまだ早かったのだ。私には過ぎた力だったのだ。
そのまま攻撃が迫ってきて……
薄暗いテントの中で目が覚めた。嫌な夢を見せられたものだ。
変に汗をかいていて、そのせいで服が纏わりついてちょっと気持ち悪い。
しかし、ずいぶんと思い出したくないことを思い出させられてしまった。
横を見ると、赤い帽子を被ったまま、大変気持ちよさそうな寝息を立てて男が寝ている。
……よく考えたらこの狭い中で二人きりだったのか。なんだか顔が熱くなった気がしたのでちょっと外に出て、風にでも当たることにした。
ちょうど近くに湖があり、軽く水浴びをしてから岸に座る。まだ服も体も湿っているため、下着のみだが、誰もいないのであまり気にしないことにする。太陽がわずかに出てきて、湖面が光を跳ね返して輝いている。
ふと思い出して懐に入っているとあるカードを取り出して眺める。
貴方にちょうどいいとこのカードをくださったのは幽々子様だが、こればかりは私には不相応だと思う。私には扱い切れていない。それなのに、デッキから抜くことが出来ないあたり、私も甘いのかもしれない。
いつかは、このカードに見合う者になれればいいな。
そしてそろそろ戻ろうと立ち上がったら草むらから音がして
「……あ」
あの目立つ赤帽子がいた。
「えーっと……お取込み中すいませんでした」
赤帽子は振り返って何事もなかったかのように去ろうとする。
私は視線を下げて自分を見る。私の目には常人より白い肌と下着が映る。
「う、うわああああああああ!!!」
「すいませんでしたごめんなさい偶然ですだから剣を振り回さないで!」
羞恥心が限界を突破して、あまり何をしたか覚えていないが、気が付いたら赤帽子がボコボコになっていた。
そして何より、私は服を着るのも忘れて剣を振り回していたことに気が付いたのだった。
~~
「……」
「いやホントすまなかったって……」
ずっと妖夢は黙って俯いている。けれどついてきてくれているからまあ、いいんだろうか。
しかし……比較的白い肌の妖夢の顔が真っ赤に染まる様は凄かったなぁ……。
それとまさかあんな下着だったとは……。
とかぼんやり思っていたら脇腹に鈍痛が。
「うごっ……!」
「……口から出てますよ」
横の妖夢が柄で殴りつけたようだ。物凄く痛い。
「すいませんでした……」
「思い返すだけで恥ずかしいので口に出さないでください……」
口に出さなければいいのか。
しかしこのままというのも間が悪いので話を変える。
「で、あとどのくらいでアリスとやらの元に着くんだ?」
「もうすぐのはずなんですが……さっきから何やら変な感じがするんですよね」
妖夢が納得いかなさそうな顔をする。そういえばさっきから全然進んでないような気もする。
「……」
俺はデッキから《A・ジェネクス・バードマン》を取り出す。そしてそれを鋭く自分の後ろに投げる。
「ひゃっ!何するんですか!?」
知らない声が聞こえた。振り返るとそこに赤いワンピースを来た猫耳の少女がいた。
「貴方は八雲藍さんの……」
声に反応して振り返った妖夢が鍔に親指をかけながら言葉をかける。
「くぅ……ばれちゃいましたか……というか妖夢さんに気づかれるならまだしもなんで貴方に……しかもカードを手裏剣みたいに投げた上に刺さるってなんですか!」
俺の投げたカードは、近くの木に突き刺さっていた。
「制限改訂で余ったんだ。疾風の投ゲイルでも良かったんだが」
「使ったカードの話はしてませんよ!?それにゲイルは前からですよね?」
「まあ妙な仕掛けをされてるとしたら後ろにやってる奴がいるかなと思って投げてみたら当たっただけだ」
「やたら慣れすぎじゃないですか……?というか貴方本当に武道とかやってないんですか?」
妖夢がまた呆れ果てている。まあデュエリストとしてはカードで鎖を斬るくらいは当然のたしなみだがな。
「で、お前の名前は何なんだ?」
「私の名前は橙です!八雲紫様の式神である八雲藍様の式神です!」
何だかやけにややこしいな。八雲家にも色々あるんだろう。何も言わないことにしよう。
「よろしくな、そして本題だが何故かさっきから進んでないのはお前の仕業か?」
尋ねると胸を張って猫娘が答える。
「まあ一応これでも式神ですからね!ですがやったことと言ってもちょっとだけ左側に曲がってしまうようにしただけですけどね」
なるほど、つまりは同じ場所をぐるぐる回っていたのか。
「それで……そんなことをして私たちを妨害した理由はなんですか?」
妖夢が尋ねる。そこまでは良いが左手を刀に若干かけるのはやめろ。怖いから。
「私が妨害したのは、藍さまに言われたからですね。それ以下もそれ以上もありませんよ」
猫娘はさも当然のように答える。式神だから理由を説明されずとも命令通りに動くのは当然ということだろう。と、言うことはその理由に関しては何も聞かされていないと思われる。
「それで?どうしたら通してくれるんだ?」
「それはもちろん……」
猫娘は左手のデュエルディスクを構える。デュエルディスクは派手な駆動音とともに変形し、展開する。
「じゃあ俺でいいか?」
隣の妖夢に尋ねる。
「構いませんよ」
彼女は邪魔にならないように横に退く。
「それじゃ……」
俺はデュエルディスクを展開しながらバッグの中からデッキを取り出して設置する。設置されたカードは小気味よい音とともにシャッフルされる。
「「デュエル!」」
遊太 LP4000 VS LP4000
「先行は俺だ、ドロー!」
ふむ、一昔前なら間違いなく《レスキューキャット》を使っていたに違いない。猫的な意味で。そして物凄く強かった可能性すらある。
……今でよかった。
「俺は手札から、荒魂を召喚!そして効果発動!デッキから阿修羅を手札に加えるぜ。そしてエレメントの泉を発動。そしてターンエンド。その時に荒魂は手札に戻る。そしてエレメントの泉の効果でライフを500回復だ」
遊太 LP4000→4500
遊太 LP4500 手札6 魔法罠 エレメントの泉
「なるほど、あまり放っておくとライフをどんどん回復されてしまうわけですね。それにスピリットにはフィールド一掃なんかもありますし、時間をかけると負けてしまうでしょうね」
小さい子供のようだからそこまで難しく考えなくてもいいかなと思ったが随分利口そうで、割と手間がかかりそうだ。
「とにかくドローです。それじゃ、私は手札から、ミスティック・バイパーを召喚します!そしてミスティック・バイパーをリリースして、カードをドローします!引いたカードがレベル1なら相手に見せて、もう1枚ドローします!私が引いたカードはビッグ・ワン・ウォリアーです!なのでもう一枚ドローです!そしてターンエンド。手札が多いので黄泉ガエルを捨てます」
うげ、レベル1デッキなのは間違いないし黄泉ガエルが墓地に落ちたのは痛い。
橙 LP4000 手札6
「俺のターン、ドロー。うーむ、とりあえず荒魂召喚だ。効果で羅刹を手札に加える。そしてバトルフェイズ!荒魂でダイレクトアタック!」
燃え上がっているような魂のモンスターが、なんだか良く分からない波動的なものを放つ。
「くっ……けれどまだまだです!」
橙 LP4000→3200
「それでカードを2枚セットしてターンエンドかな。でさっきと同じ処理」
遊太 LP4500→5000
遊太 LP5000 手札6 魔法罠2 エレメントの泉
うむ、お互いにモンスターのいない変わった対決になったな。
「よしっ、ドローします!まずは黄泉ガエルを蘇生します。そして手札から、音響戦士ベーシスを捨てて、ビッグ・ワン・ウォリアーを特殊召喚します!」
「音響戦士ベーシスですか……ですが墓地に送らなくても良かったのでは?って遊太さん、なんでそんなに頭を抱えているんですか!」
妖夢はよく分からない顔をしている。きっと妖夢は第2の効果でも使うのかと思っていることだろうが、そうじゃない。
「……いいかい妖夢」
「何ですかその子供を諭すような口ぶりは」
「相手は猫娘だね。そしてミスティック・バイパーがいるということはレベル1に偏っているんだろうね……」
「は?どういう……」
「まあ見てなさい。あーどうぞ続けて」
妖夢はさっぱりらしい。
「あ、はい。では私は金華猫を召喚!金華猫は墓地からレベル1のモンスターを蘇生出来ます!音響戦士ベーシスを蘇生です!そしてベーシスの効果で自身のレベルを4上げます!そしてレベル1の黄泉ガエル、レベル1のビッグ・ワン・ウォリアーに、レベル5となった音響戦士ベーシスをチューニング!ガラクタ山の強靭な悪魔よ、その腕で敵を薙ぎ払え!シンクロ召喚!スクラップ・デスデーモン!」
ガラクタを組み合わせて出来た悪魔がフィールドに立つ。
「そしてバトルフェイズ!デスデーモンと金華猫でダイレクトアタック!」
太い腕が振りぬかれる。そして猫が飛びかかってくる。
「ぐぅっ……!」
遊太 LP5000→1900
「これでエンドフェイズへ移行します」
「……そんなに頭を抱えることですか?確かに展開はされましたが」
妖夢が首をひねっている。
「あの金華猫は俺の使ってるカードと同じく、スピリットだ。そしてあれが手札、ベーシス、黄泉ガエルが墓地にいるだけで様々なレベルのシンクロが出来て、ミスティック・バイパーがいればカードカー・Dみたいなことまで出来る。つまりほぼパーツが揃った状況ってことだ」
「なるほど……何度も同じことをされるということですか」
「それで私はターン終了です!金華猫が手札に戻ってきます」
「あ、回復な」
遊太 LP1900→2400
「ちぇっ、忘れてくれればよかったのに……」
「おいこら。なんてこと言ってるんだ」
橙 LP3200 手札5 モンスター スクラップ・デスデーモン(A2700)
「俺のターン!さてどうするか」
「……まさか勝てないとか言わないですよね?」
「いやぁまさか。まずは羅刹を召喚。効果で手札の荒魂を見せてスクラップ・デスデーモンをバウンスだ。そしてエレメントの泉で回復」
遊太 LP2400→2900
「そしてダイレクトアタック!」
鬼神がその手に持つ剣を猫の娘に振り下ろす。
「あいたた……」
橙 LP3200→1700
「ですがただでは転びません!ダメージを受けた時、手札から冥府の使者ゴーズを特殊召喚です!そして同じ攻撃力のトークンを特殊召喚します!」
「うげげ、引いてたのか。そんじゃカードをセットして、ターンエンドかな。そして戻ってきて回復っと」
遊太 LP2900→3400
遊太 LP3400 手札6 魔法罠3 エレメントの泉
「じゃあ私のターンです、ドロー。まずは黄泉ガエルが特殊召喚ですよ。そして金華猫を召喚!そしてベーシスを特殊召喚!レベルを上げる効果を発動して、レベル5になります。そしてレベル1の黄泉ガエルにレベル5のベーシスをチューニング!お願い!天狼王 ブルー・セイリオス!そしてバトルフェイズ!まずは金華猫でダイレクトアタック!」
「っと、これを全部通すわけにもいかないな。手札のバトルフェーダーの効果だ!攻撃を止めてバトルフェイズを終了だ」
飛び出した悪魔の体に付いている鐘が鳴ると、敵の動きが止まる。
「むむむ……ではカイエントークンを守備にして、エンドフェイズ。金華猫が戻ってきて、エンドです」
「んじゃ回復回復っと」
遊太 LP3400→3900
橙 LP1700 手札5 モンスター 冥府の使者ゴーズ(A2700) 天狼王 ブルー・セイリオス(A2400) 冥府の使者カイエントークン(D1500) 魔法罠0
~~
さて、藍様から直々に命じられて来ましたけど、非常にやりづらいですね。命じられたことは、この外来人を止めて時間稼ぎをしろとのことなので負けても別に構わないんですけど、やっぱり勝ちたいですね。
相手のデッキは【スピリット】で、おそらく時間を稼いでおいて上級を召喚して決めるタイプじゃないでしょうか。
この状況から返されるとすればおそらくフィールドのモンスターを全て破壊する砂塵の悪霊でしょう。ですが私の手札にはエフェクト・ヴェーラーがあります。なのでその方法でやられることは無いですが……。
気になるのは彼のあの余裕の表情。もうすでに勝ちを確信したようです。
一体どんなことをしてくるんでしょうか……。
「よーし、おれのターンだ。ドロー。まずは和魂を召喚」
あの和魂の追加召喚の効果は、エフェクトヴェーラーで止まらない効果ですからここは止められませんね。
「そしてバトルフェーダーをリリースして、砂塵の悪霊を召喚!そして砂塵の悪霊の効果!」
ここは使わざるを得ませんね。
「ではエフェクト・ヴェーラーを手札から捨てて効果発動!砂塵の悪霊の効果を無効にします!」
これでとりあえずは止まりますね。エフェクト・ヴェーラーを受けたスピリットモンスターがエンドフェイズにそのまま移行した場合、ターンプレイヤーがまず効果を適用するか選び、適用したら手札に戻らず、適用しなかった場合逆のプレイヤーがヴェーラーの効果終了かどうかを選び、適用すれば手札に戻り、しなければターンプレイヤーから適用したこととなり、手札に戻らなくなります。再び金華猫を使えば処理できるので、おそらくなんとかなるでしょう。
「……」
相手は下を向いたままですね。これは何も……。
「くくく……あっはっは!」
突然笑い出しました。
「これであなたは召喚は出来ません。これ以上何も出来ないでしょう?」
男は人差し指を出して、ちっちっちと揺らす。
「そりゃまあ通常召喚は出来ないな。……それだけならな」
へ……?
私はフィールドを見直す。相手フィールドには魔法罠がある。
魔法罠?
そこで私は思い出す。一斉を風靡したあの罠のことを。
「罠カード発動!血の代償!そのままライフを払って羅刹を召喚!効果で荒魂を見せてセイリオスをバウンス!さらにライフを払い、阿修羅を召喚!さらに払って荒魂を召喚!効果で不死之炎鳥をサーチ!そしてライフ払って召喚!」
「あわわ……」
物凄い展開力である。流石血の代償ですね。ですがそれは身を切るようなものですから本人へのダメージは大きいでしょう。
遊太 LP3900→3400→2900→2400→1900
「ぐ……これでバトルフェイズ!カイエントークンを阿修羅で攻撃!そしてゴーズを砂塵の悪霊で攻撃!そして荒魂と不死之炎鳥でダイレクトアタックで止めだ!」
迫りくるモンスターたち。私には残念ながら対策はありません。
「く……きゃああ!」
橙 LP1700→1600→800→0
~~
ふぅ、なんとか勝つことが出来た。
「妖夢、終わった……っと」
最後にライフを削ったからか、足元が崩れる。
「ちょっと、大丈夫ですか?無茶しないでくださいよ」
妖夢が手を出してくれて、倒れそうな俺を支えてくれる。
「すまん、なんか気持ち悪くなってきた。ライフを自分で削っていくとああなるなんて知らなかった」
何というかDホイールで左右に揺らし続けたみたいな気分だ。
「……吐かないでくださいね?」
心配してくれたのは一瞬か……。妖夢の視線が痛い。
「さて、それじゃ邪魔するのはやめてもらおうか」
俺は橙の方を向いて落ち着いて立ち直る。
「負けたからには仕方ありませんね。それでは、良いデュエルでした」
橙はぺこりとお辞儀をして、立ち去ろうとする。
「や、ちょっと待った。何で俺達の妨害をしたんだ?」
そういえば謎のままだ。
橙は振り返って笑いながら一言残す。
「それは私には知らされてません。なんせ式神ですからね」
……やっぱ複雑な家庭なんですかね。
「……さて、妨害も無くなったのでそろそろ行きましょう。もうすぐ到着しますし、アリスさんの家で休めますよ」
「そうだな……でもあんまり動くと……」
俺の顔が青くなると同時に妖夢の顔も青くなっていく。
「ぎゃーっ!やめてください吐かないでくださいーっ!」
森の中に、いたいけな少女の悲鳴が響き渡った。
読んでいただきありがとうございました。
今回は橙ですね。改めて調べてみましたが、「八雲橙」とするのは間違いらしいですね。紫の式神である藍の式神だからとかまだ未熟だからとか色んな説があるらしいです。まあ遊太的に式神の云々は分からないから「家庭の事情」として見てますが。
今回のデッキですが、お互いにスピリットという変わった感じになっております。
作ってる途中で強化されまくって作り直しましたのでかなり大変でした。
個人的には【猫シンクロ】はお気に入りデッキの1つです。あ、カンパサモプリサモプリキャットベルンベルンDDBDDBオラァではないですよ。猫は猫でも金華猫です。カードカーDみたいなことや様々なレベルのシンクロが出来てなかなかですのでちょっとTF6やADS、最近出たデュエルカーニバルなんかで作ってみるのをおすすめします。
TF6で作った頃からエクシーズやゴーストリックなんかも出てきていて強化されていますし。
対して遊太のデッキは【上級スピリット】ですかね。
和魂の登場で、黄泉ガエル無しでも召喚しやすくなり、魔法罠を置けるようになったという物凄い強化をされています。スピリット強化される間違いないと言っていた全私が歓喜しました。
単純に下級なら羅刹や月読、上級なら砂塵の悪霊や鳳凰の召喚時の効果も強力なので、案外優秀です。
さて、次回、二次創作界隈においてもっともはっちゃけててキャラを掴むのが大変難しい方がいらっしゃいます。「こんなん違う!」と思われないよう頑張りたいです。
今年中の更新は無いと思われますので、よいお年をお過ごしください(投稿してすぐ読んでない方は気にせずスルーで)
では次回もよろしくお願いします。