とある転生者さん、ヒーローを影から助けるモブAを目指してただけなのに黒幕だと勘違いされる   作:TSしか書かないマン

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第1話

 さて、俺は異世界に転生した。

 

 とは言ってもよくあるヨーロッパ風味の異世界って訳じゃない。

 ネオン輝くサイバーな異世界だ。

 

 というか、正確に言い表すならばヨーロッパ風の異世界の1000年後みたいな感じ。

 

 魔法と剣だけでなく、科学まで進んだ世界。

 周りを見渡すと空までそびえたつビル群と、空飛ぶ車たち。

 あー、うん、俺が生きてきた時代より滅茶苦茶技術が進んでいますね、これ。

 

 ……あー、異世界転生したってのに知識チート無理なんだが。

 おいおい流石に生まれてくる時代ミスったか?

 うん、これは完全に生まれてくる時代ミスったな。

 やっちまったぜ、へへ。

 

 つっても、今更文句言っていてもどうしようもないんだがな。

 こういうのはさくっと受け入れることにしよう。

 

 

▽▲▽▲

 

 まぁそういう訳で異世界に転生したのだが、生まれと言うのもまあそこまでいい物でもなかった。というのも、孤児院で育ったのだ。

 

 なんでも人に聞くところによると俺は道端に捨てられていたらしい。まぁ、あれだろうな。赤子を育てるには経済的に厳しくて捨てました、的な。

 

 そうして道端に捨てられていた俺は孤児院に拾われ、すくすくと育つことになった。

 

 まぁ、勿論人生二週目なだけあって勉強だとかなんだとかはヌルゲーだった。1歳にして言葉は喋れたし、3歳にして大人向けの本を読んでいたりした。

 

 いかにこの技術的に進んだこの世界であろうと、赤子に期待することなどたかが知れている。大人っぽい口調で喋るだけで「この子天才だわ!」だとかなんだとかもてはやされるし、それはそれはもうチョロい。

 

 そんな感じで周りの人間にちやほやされながらすくすくと育った俺は気づけば15歳の少年になっていた。

 

 そして、15歳になったある日、いつもの様にイキって難しそうな本を読んでいたら孤児院の先生に声をかけられた。

 

「フッツ君、ちょっといい?」

「はい、なんですか先生」

「えっとね、もうすぐ”鑑定の儀”がある事は知っている?」

「鑑定の儀ですか?スキルについて調べる儀式ですよね」

「ええ、そうなの。御崎君は……あの、才能が有りそうじゃない?それに15歳になったばかりだし、早速鑑定の儀を受けてもいいと思うの」

「……まぁ、受けるに越したことはないんで、受けようと思います」

 

 うーむ、鑑定の儀か。

 

 鑑定の儀を通して俺に何のスキルがあるのか調べることが出来るのだろうが……まぁ、ぶっちゃけこれと言ったスキルもないだろうな。

 

 スキルと言うのは特殊だ。魔法みたいな万人が扱うことが出来る技術と異なりスキルと言うのは個人の才能である。そもそも、スキル自体持っていないという人も大多数だ。

 

 だから俺にもそれがあるかと言われれば……まぁ、ないだろうな。

 

 今のところ周りから天才だとかなんだとかもてはやされているが、それだって前世の記憶あってこそだ。ぶっちゃけ言うと俺は周りが思っているほど天才ではない。

 

 だからこそ俺は自分にスキルがあるのかどうかについて懐疑的なのだ。

 

 というか本音を言うと、期待しすぎるともしもスキルがない事が分かった時に悲しくなるからってのがあるからなんだがな。こういうのは期待しすぎない方がいい。

 

 

▽▲▽▲

 

 えっと、結論から言おう。

 ちゃんと俺にもスキルがありました。

 

「フッツ・ウスギール。スキル:触手!」

 

 そんな鑑定の儀を執り行う司祭さんの言葉。そして、俺にはスキルがあることが判明した。

 

 ……ていうかおい、スキル《触手》ってなんやねん。

 なんだそのちょっとエ〇ゲに出てきそうなスキルは。

 

 もっとさ、こう……《虚構》だとか《魔弾》とかみたいなよく分からんカッコいいスキル名のヤツが欲しかったんだが。

 

 だというのに俺が所有スキルはエ〇ゲに出てきそうな《触手》だ。流石にちょっぴりがっかりしてしまったではないか。

 

 ま、まぁ?

 ちゃんとスキルがあったことは喜ぶべきだ。

 だが、こんなスキルがあるというのは聞いていない。

 

 だってさ、ほら、スキル発動したらうなじ、手首、肘から触手がうねうね出てくるんだ。タコの触手みたいになんかテカってるし、変な汁みたいなのだって垂れている。はっきりってかなりグロい。

 

 ていうか滅茶苦茶悪役みたいなスキルだな。

 ほら、主人公と敵対するヴィランが使ってそうなスキルみたいな?

 

 

▽▲▽▲

 

 ネオン輝く煌びやかなビル群の間。

 薄暗く、ごみが散乱する路地裏にて。

 

 俺はフードを被り準備運動をしていた。

 

 なんでこんな事をしているのかって?

 そりゃ、あれさ。人助けさ。

 

 ふふふ、というのもな、この世界にはヒーロー的なあれがいるんじゃ。

 

 こんな魔法とスキルみたいなあたおか技術があるこの世界は、めっぽう治安が悪い。だからヴィランの様な物が湧く。

 

 そして、ヴィランが湧けばヒーローも湧くというのが真理。

 彼らは困っている人々を助け、人々の模範となる存在。

 

 いや、まぁ、そんなものになるつもりはこれっぽっちもないぞ?

 

 だがなぁ、あれをやりたいのだ。

 戦うヒーローを隣から支えるモブA的なヤツ。

 モブなのにやたらと強くてヒーローが何回も助けられる。

 そうして戦いが終わった後はさっそうと姿をくらます。

 

 後々新聞だとかなんだとかで「このモブAは何者だ!?」って感じで報道され、その陰で「実は俺なんだよなぁ」ってのをやりたい。

 

 うーん、なんだこの最高すぎるシチュは。

 人助けできる上に、もてはやされる。

 ああ、なんと素晴らしいいんだろうか。

 こういうのずっとやりたいと思ってたんだよなー。

 

 しかしなんと、今の俺にはスキルがあるではないか。《触手》だなんていうエ〇ゲの悪役が使ってそうなスキルではあるが、単純に手数が多くなるため人命救助においてはうってつけの能力だ。

 

 と言う訳で今は何か事件が起きないか全裸待機している所だ。

 あー、どっかでなんかヴィランが暴れまわってくれていないかなー。

 

 と、そんな感じで待機していると腕に巻き付けている小型テレビからいい情報が流れてきた。

 

「東イースト地区のビルが、今にも倒壊してしまいそうです!中に数百人もの人々がまだ残っています!絶体絶命の彼らに救いの手はあるのでしょうか!いや、あってください──おっと、ここでヒーローが到着した!あれは、ヒーロー”スペアース”でしょうか!?ですが、流石に一人でこの人数を救えるのでしょうか!!?」

 

 早口で興奮気味に叫ぶリポーター。

 うむ、ヴィランと戦うヒーローと言うシチュではなさそうだが……問題ないな。

 

 ふふふ、今宵、ついに俺の出番がきてしまったようだ。

 

 

▽▲▽▲

 

 スペアースは内心大汗をかいていた。

 

 なぜならばもう既にビルが倒壊を始めてしまったというのに、まだ中には人が数十人も残されている。 

 

(私の能力は”電光石火”なんだけど……これは絶対に間に合わない!)

 

 いかに彼女の稲妻のような速さをもってして、壁を走り次々に人を中から救い出そうとも、いかんせん数が多すぎる。かれこれ5分も救助を続けているがまだまだ残されている。

 

「助けてー!」

「キャー、死にたくないー!!!」

「こんなところで終わりたくない!」

 

 救助者たちの悲鳴。

 

 先ほどまでぎりぎりの均衡で倒壊しなかったビルが、倒壊を初め中に残された人々たちは空中に放り投げだされてしまう。

 

 こうなってしまうと、走る足場がなくなってしまいスペアースの”電光石火”は役に立たなくなってしまう。

 

(終わった……)

 

 絶望。

 

 まさしくその言葉がふさわしかった。

 

 だが、その時なにかの影が隣のビルから降ってきた。

 

「はっはっは!マジでヒーローがいるぜ!!!」

 

 それは、触手を体中から生やし、フードでその顔を隠したヴィランのような人間だった。

 

 彼女は、その邪悪な様相からその人間をヴィランだと考えた。

 

(クソッ、こんな時にヴィランだと!?)

「ふはは、ヒーローってやつは守るものが多くて大変そうだな!」

 

 そしてその人間は「だから、手を貸してやるよ!」と言葉を続けたが、突然強い風が吹いてしまったことによりスペアースはその言葉を聞き逃してしまう。

 

「クソッ、馬鹿にするな!!!」

「いや、事実だろう?応援しているぞ!」

 

 その人間はそう言うと、けたけたと嗤いながら空中に放り出された女性をその触手で掴み、スペアースの方へ投げた。

 

「ほら、避けるとその人間は死んでしまうぞ?」

「キャアアア!!!」

 

 凄まじい勢いで迫ってくる人間。

 

(クッ、この外道が!!!人間を私の方に投げて攻撃しようだなんて酷い事を!!!)

 

 避けたらその人間は地面にたたきつけられ死んでしまう。

 だから、避けられない──ので、キャッチ。

 

「クッソ、酷い事を!」

「確かに少々酷いやり方だが、まだまだ人は残っている。ぜったいに辞めないぞ?(ニチャア)」

「この外道があああああ!!!」

 

 そうしてそのヴィランは何が面白いのかニタニタと嗤いながら次々に空中に放り出された人間をスペアースの方へ投げていく。そして、その人間を巧みにキャッチしていく。

 

 そんなヴィランとヒーローのやり取りが何回も続き、すっかり放り出された人間がすべてスペアースの手により救助されたころ、彼女はすっかり疲れ切ってしまい方で息をしていた。

 

 そんな彼女の前で、ヴィランは満足げに嗤っている。

 

「ハァッ、ハァッ、どうして、どうしてそんな酷いことをして嗤っていられる!」

「ふふふ、ははは、それはとある計画が完遂されたからさ」

「計画!?なんだそれはッ!?」

「はっはっは、それは誰にも知られてはならない。知られてしまったら、それはもう形を成さなくなってしまうから……」

 

 そしてそのヴィランはそんな意味深な言葉を残し、踵を返した。

 

「さて、そろそろ俺は失敬させてもらおう」

「ま……まてッ!私は、お前を……絶対に野放しに……」

「さようなら、ヒーロー。今日は楽しかったよ」

 

 ヴィランは、姿をくらました。

 

 

▽▲▽▲

 

 えっと、これはどういう事だ?

 

 ちゃんと”ヒーローを隣から支えるモブA”を遂行したと思っていたんだが……なんだこのニュースは?

 

 『邪悪な触手を操るヴィラン』という見出し。続いて『ヒーローの活躍により奇跡的に犠牲者ゼロ』という言葉が。

 

 一面に俺が人間を投げている写真が掲載されているではないか。

 

 え、マジでどうしてこうなった?

 ただモブAとしてヒーローを手助けしていただけなのに。

 

 うーん、なんでだ?

 いや、マジで。

 

「どうしてこんな事になってるんだ?」

 

 そして、俺は新聞を見ながら首をかしげるのであった。




完全にネタ系です。
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