職員室の扉をノックすると、真嶋智也が扉を開けた。
「何だ?質問でもあったか?」
そう聞いてくるので、答える。
「質問というより答え合わせだよ」
「答え合わせ?何のだ?」
「ここで話して良いのか?」
今は生徒はいないが、生徒が絶対に来ない保証は無いと思うのだが?
嫌な予感がしたのか、真嶋智也は、冷や汗を流しながら、
「入れ」
俺に職員室の中に促した。
「それで、何の答え合わせだ?」
「この学校のシステムについてだ。真嶋智也」
「とりあえず、まずは敬語を使わないか?三上」
「お断りだ」
「そうか……」
「本題に入る。まず、この学校は、生徒を実力で測る。真嶋智也、お前はそう言っていた。とすれば、その評価を可視化したものが配布ポイントだろう。ならば、来月受け取れるポイントは増減……減少するんだろ?増加は、来月以降だろうな。そして、おそらくそれはクラス単位で評価される」
真嶋智也の額に大量の汗が流れ始める。
「そして、その評価は、おそらく授業態度や生活態度などによって変化する。そして、更に、上からAクラス、Bクラス、Cクラス、Dクラスの順で上であればあるほど優秀。ここに来る前に各クラスも見てきた。そのクラスに配属されている奴らも見てきたが、これは確実だろ?そして、貰えるポイントが多ければ多いほど上のクラスになる。まあ、流石に入学時は貰えるポイントに違いはないだろうが、これから違いが出てくるだろうさ。そして、クラス替えは無いと言っていたが、それはメンバーだけ。実際はクラス自体は変化することがあるんだろ?」
「……………」
沈黙は肯定だろうに……。
「そして、おそらく卒業後の進路が約束されるのも上位クラスだけ……いや、Aクラスだけか」
上位クラスと言うと、一瞬真嶋智也の表情が緩んだ。
だから言い直すと、再び大粒の汗をかき始める。
「ポイントの増加については……授業態度や生活態度……では無いな。そのための試験でも……あるようだな」
顔に出過ぎだろ。
「さて、これを踏まえた上で」
「何だ?」
「いくらだ?」
「何の話だ?」
「分かっているはずだ真嶋智也。口止め料はいくらだと聞いている」
「お前の考察が間違っている可能性もあるぞ?」
「それは無い。この場にいる職員全員の反応で丸わかりだ」
真嶋智也だけでなく、この場にいる教職員全員が冷や汗をかいており、俺の予想が正しいと丸分かりだった。
「そうか……」
「で、いくらだ?」
「……ひゃk」
「余り舐めた金額を提示するなよ?」
「……500……いや、そうだな……800万だ。それ以上は無理だ」
「少ない……が、まあ、良いか。ポイントはそれで良いから、追加で質問がある」
ポイントが振り込まれたことを確認し、追加で質問する。
「何だ?」
「この学校で賭けをしている場所を教えろ」
「賭けだと?」
「ポイントの使い方は自由だと言っていただろう?ならば、ポイントの譲渡も可能だ。そして、その仕組みを利用した賭けは当然あるだろ」
「……部活動だ。大体の部活動で賭けが行われている」
「そうか、分かった。質問は以上だ」
そう言い、俺は職員室を出ようとすると
「待て、お前は、この情報の口止め料払わせたと言うことは、クラスメイトにも言っていないんだろう?何故だ?」
「興味がないからだ」
「興味?」
「ああ、俺は、仲間以外の人間は心底どうでも良い」
「仲間……ああ、お前と同じ中学からお前の他に3人来ていたな。彼女たちか?」
「ああ、そうだ」
「なら、彼女たちに話そうとは考えなかったのか?」
「あいつらは自分で気付いたさ」
「!?なら何故、この場にいない?」
「交渉は1人で十分だろう?」
「あの3人は……今どこに?」
「分かるだろ?調べれば」
俺は、そう言って、今度こそ職員室を出た。
〈三人称視点〉
「とんでもない子だったね」
1年Bクラスの担任、『星乃宮知恵』が真嶋に話しかけた。
「ああ……本当にな」
疲れた声で、真嶋は小さく呟いた。
「唯一、欠点があるとすればそれは協調性の無さですね」
1年Cクラスの担任『坂上和馬』がそう呟くと、
「しかし、それ以外が優秀すぎて、協調性の無さにつけ入ることは出来そうにないぞ?」
1年Dクラス担任『茶柱佐枝』がイラついた様子でそう口にした。
「あー、随分お怒り?」
星乃宮が茶柱の側により、問いかけると、茶柱は当然だとばかりに言う
「教師への態度も気に食わん……が、それ以上に、あいつはDクラスに来るべきだった」
「あの態度なら確かにDクラスでもおかしくはないけど……それ以外が優秀すぎるからね?それに、佐枝ちゃんのその言い分は、性格に難があっても優秀な生徒が欲しいからでしょう?」
「……………」
「ああ、あいつはAクラス配属で何の判断ミスもないだろう」
「そういえば、他の3人が何をしているのか、調べれば分かるって言ってたね。なんだろ?」
「可能性があるとすれば……監視カメラか!?」
急いで真嶋は、監視カメラの映像を確認した。
そして……
「いくらなんでも……入学式前は早すぎるだろう」
真嶋は、小さく呟いた。
〈三上悟side〉
しばらく廊下を歩いていると、シエル、ウルティマ、有栖の3人が集まってきた。
「調べ終わった?」
そう聞くと、
「うん、全員調べ終わったよ。とりあえず送るね」
ウルティマがそう言うと、3人から俺の端末に画像ファイルが送られてきた。
そこには、この学校の監視カメラの位置が全て書かれていた。
そう、この3人にはこの学校の監視カメラの位置を調べてもらっていたのだ。
「ありがとう」
「悟様に頼まれたんだから、当然完璧やってみせるよ」
ウルティマは、そう言って元気に笑い、
「悟様のためですから。当然ですね」
シエルは、そう言って微笑み、
「元々、これは必要なことですしね」
有栖は、不敵に笑った。
「さて、とりあえず、こっちは800万手に入れたから、3人に200万ずつ送る」
「いや、悟様からポイントを頂くわけにはいかないよ?」
「同じくです」
「私も別に良いですよ?」
「いや、そうはいかない。全員気付いていたからな」
「うーん。じゃあ、50万だけ貰おうかな?それだけあれば、いくらでも増やせるし」
「ですね。交渉したのは悟様です。悟様の取り分を多くすべきです」
「確かに、貰うならそれぐらいが妥当でしょう」
「……はぁ、分かった。本当なら200万受け取って欲しいんだが……まぁ良いだろ。50万送る」
端末を操作し、3人に50万ずつ送った。
「後、ポイントの増やし方だけど、部活動では大体賭けが行われているらしいから。それでいくらでも増やせる筈だ」
「分かりました。では、先輩方からむしり取るとしましょう」
「有栖、また悪い笑み溢れてるぞ?」
「ふふっ、悟君の前だから気が緩んでしまうんですよ」
「ふーん……あ、シエルとウルティマは、他人がいるとこでは様付け禁止な」
「何故ですか?私が悟様を呼び捨てに出来るはずがないでしょう?」
「そーだそーだー!ボクの矜持がそれはダメって言ってる!」
「スゥー、分かった……もう、好きにしてくれ」
学校で様付けはなんか慣れないのだが……まあ、良いか。
〈データベース〉
氏名・三上シエル
所属・1年Aクラス
◯評価
学力・A +
知性・A +
判断力・A +
身体能力・B
協調性・B -
〈面接官からのコメント〉
面接での受け答えは、完璧であり、欠点などどこにも見当たらない。中学までの情報から、協調性はあるものの、何事においても三上悟を優先する傾向にあることが確認出来た。他者と関わりはするものの、それは一線を引いた対応であり、一定以上仲を深めようとすることは確認出来なかった。それでも、協調性自体は確認出来、学力、知性、判断力もA +評価と高く、Aクラスに相応しい人材であるため、Aクラス配属とする。
シエルの身体能力がB評価なのは、単純に手を抜いているからです。小学校だと、身体能力が高いとヒーロー扱いされてしまい、囲まれ、リムルと過ごす時間が減ってしまうという考えのもと、手を抜き始め、今でも体育では本気を出すことはありません。まあ、B評価は高い部類ではありますが……。
ちなみにリムルは全然手を抜いていませんが、態度が冷たいので近寄って来る人はいませんでした。