――Side 更識簪
私は激怒した。
午前中1年1組で私を首輪付きにした男こと氷室直哉が爆心地の修羅場が起きたのに、関係者である私が蚊帳の外だったのかと。
あののらりくらりな癖に、お姉ちゃんから夜な夜な抜け出しておそらく篠ノ之博士と人には言えないようなエ駄死なことしてるらしい私の首輪のリードを握る男に一言言わねばならぬ。
私はお姉ちゃんから色々なものから遠ざけられ、おかげで政治や人間関係の爆弾処理云々は良くわからない。
でも私の扱いが雑になリ始めたことについては、人一倍敏感だった。
「『ご主人様』、私の専用機の武装やフレームについて決まったから目を通してほしい」
昼前最後の休み時間に、私は彼の元に訪れ、たたき台にしたアセンブリのデータを差し出しながらそう告げた。
「ヤバいよかんちゃんがなおなおの胃を破壊しにしてる」
私の従者の割に彼に餌付けされて尻尾振ってる、実質私のライバルである本音が何か言っているが知ったことではない。
「……あのカタログたちに隠してた暗号読み解いて、オレが製造したパーツ群からいくつかピックアップするとは……驚いたな」
良い意味で予想を上回る事が出来たらしい。
偶然見つけた違和感から暗号みたいなのを見つけて読み解いたらあったいくつかのパーツ。
ソレらのうち、私が良いと思ったものを組み込み、専用機の要望として提出した。
フレーム
月輪(背部ユニットはIフィールド生成装置兼ビット・ミラーデバイス格納装置)
特殊加工
サイコフレーム加工+ナノスキン
非固定ユニット
自律式ソードビット×8「古月」
自律式ビームビット×8「新月」
自律式ミラーデバイス×8
タワーシールド×4
武装
肩装備
レーザー「十六夜」×2
腕武器
腕装着型高出力レーザーソード『Moonlight』×2(片方予備にするかも?)
ビームライフル「アルテミス」
アンチマテリアルライフル「オリオン」
サブマシンガン×2(片方右手デフォルト武器、片方予備)
高連射パルスガン(左手デフォルト武器)
有澤重工のグレネード砲
「ビット兵器による追い込みをしつつ実弾、エネルギー弾切り替えて攻撃する多彩な動きができるいい装備だな。咄嗟の接近戦ではMoonlightでの迎撃も可能。対実弾に弱い相手用に『オリオン』やサブマシンガン、グレネード砲、ソードビットで対処すると。実にオールラウンダーと言えるだろうな」
褒めてもらえた……!
「ただ――自律式装備含めたシステムの構築、習熟に関しては茨の道すっ飛んで地獄になるが理解してるよな? ――安心しな、簪ちゃんが死ぬ気で頑張るなら、オレも手伝うからさ。対価?弾薬費?そんなもん気にしなくていいからな」
茨の道?
地獄?
笑止千万。
専用機が後回しになると通知されたあの時や、1人でムキになってシステムを組んでいた時、教室で遠巻きに笑い者にされた時――あの惨めな時に比べたらとても恵まれている。
私を認めて応援してくれる人がいる。
私の背中を押してくれる人がいる。
私が道を間違えたら手を引いて戻してくれる人がいる。
隣に――私より優れて、色々できる彼がいてくれる。
だから――なんとでもなるはず――。
難しいから――それは諦める理由にはならない。
「――もちろん。直哉――貴方がいてくれるなら、何処までもやってみせるから」
私を見ていてね? と告げる。
その瞬間威圧感を感じた。
「――」
その主は、1人目の男性IS操縦者として有名になり、私の専用機の案件にも関わる人で、ご主人様を通じた友人でもある――ご主人様の前ではほぼ女の姿でいると噂になっている人、織斑一夏だった。
……ああ、なるほど。
「――私、ご主人様の一番じゃなくても良いし、都合のいい女でも構わないとは思ってる。でもね――出会ってから短いと思われようと、私を救ってくれたことへの感謝、そこから芽吹いた私の想いは――誰にも負けるつもりもないから」
「……そんなに想ってくれて嬉しいのは事実だ。ただな、その宣戦布告で火薬庫がもれなく爆発したっぽいから、オレどっかで一度倒れるかも知れん。そこんとこよろしく」
白目剥きながらそう告げるご主人様。
……どうやらやらかしてしまったらしい。
でも……反省してるけど、後悔はしてない。
今伝えておかないと、きっと――。
――Side 氷室直哉
「どうも~整備科2年、新聞部所属の
「クラス代表に選ばれました織斑一夏です。私も直哉の人間関係火薬庫がどうなってるか気になるから――私のほう簡潔に済ませて、彼の方、念入りにお願いしますね」
吊るし上げが確定しており行きた心地がしませんね(白目)
「生徒会長の更識楯無よ。生徒会としても、IS学園の今ホットな話題にしてゴタゴタの渦中にある彼の色々、聞いておきたいかな〜と」
「本音が書記として使い物にならないと思うので、書記代行として同席させてもらいます、布仏虚です、よろしくお願いします」
「更識簪。私の専用機のコアはご主人様が用意してくれたし、専用機のフレームから装備一式を購入してくれるから、無関係じゃない。寧ろ一番の関係者まである」
楯無さんと虚さん、簪ちゃんが穏やかじゃないオーラだしてるせいで食堂の片隅でやってるはずなの中央でやってる祝賀会にまで不穏な空気が感染してる……。
「一応立会人の織斑千冬だ。祝賀会も無礼講のようだが器物破損や無いとは思うが飲酒の類があれば相応の仕置きがあるから気をつけるように」
「山田真耶です。色々胃痛してそうなのに何もしてあげられてない無力な副担任でごめんね……!」
どっしり構えた千冬先生と、罪悪感で祝賀ムードどころかお通夜状態の山田先生まで同席してる始末である。
ちなみに天上院は体調不良を理由に不参加、路藤原は先ほどまで参加してたが、少し席を外すとかで何処かに行っているようだ。
ボイスレコーダーをテーブルにおいてスイッチを入れる黛さん。
「ではではササッと織斑一夏さんに質問を。代表決める試合について、始めるまで、終わったあとの感想、そして意気込みなどをざっくりとお願いします!」
「始めるまでは、自分と相手の差が分からなくて暗中模索して、不安しか無かったですね。セシリアとの試合で――ISを身にまとい、世界が広がった気がしました。試合ではあと一歩及ばなかったけど……セシリアから認められて、代表を譲ってもらいました」
「なるほど……あとで別途確認しなきゃかな。現在の心境や意気込みなどは?」
「クラス代表となったからには、みんなの期待に応えられるよう、全力をつくします。それから――学園最強や初代ブリュンヒルデである姉、そして打鉄装備の本気の姉を生身で撃破した直哉の背中は遠いけど、何時か追いつきたいと思っています。」
「――なるほど、ありがとうございます」
そういえば千冬先生撃破は表沙汰になってなかったな。
コレ表沙汰になって大丈夫なのだろうかとちらっと千冬先生をちらりと見る。
無言で頷くのでたぶん大丈夫だろう。
ヨシ!(現場猫)
「――では、今日のメインイベント、氷室直哉君に色々聞かせてもらいましょう」
「お手やわらかに」
「強靭な心身をお持ちの方に手心加えられるほど私強くありませんので――」
オレのまごうことなき本心だが、からからと笑い飛ばされてしまった……(´・ω・`)
「――では、いきなり踏み込みましょう。貴方の女性関係――ぶっちゃけかの有名な篠ノ之博士とその……肉体関係あるという話は」
なんか過半数が前のめりになったな(現実逃避)
「事実だ。流石にその時の年齢云々やそうなった経緯は黙秘させてもらうが。……そのことから実際アレが正妻ヅラしてるし、たぶんネットでオレの始めて云々でデマを掲示板とかで流せば速攻で食い付いてくるのが予想できるくらいに自慢げだし……。あっちがハマってるだけだったりするが……」
「ちなみに今も関係は」
「……それ言わなきゃダメ?」
思わず敬語外れたんやが?(責任転嫁)
「今の回答で大丈夫です。夜な夜な学園から抜け出してるのは向こうにいかないと向こうがやってきて関係各所の責任者の胃がマッハになるからと顔に書いてありますし」
ギリィと歯ぎしりが聞こえた気がするが、スルーである。
「ちなみに他に肉体関係あるのは……」
「今のところ駄兎……篠ノ之博士だけですね」
「ISの生みの親を駄兎とは、先日の被験者云々と共に上下関係垣間見えますねぇ。……ちなみに肉体関係のある人を今後増やす予定や婚姻関係考えてる人とか居たりとかは」
「どう答えても炎上不可避なんですけどその質問。……肉体関係云々はノーコメント。後者は重婚可とかなら正妻面院含め手綱を握れる人を1人目に迎えたいとは思ってますね。それ以降はお互いと迎えた人たちの折り合いを加味して……でしょうかね。……まあ重婚可能な国など限られてますし、条件がとても厳しいし、そもそもハーレム許容をできる度量ある人などほぼ居ないでしょう? それらを考慮すると、どちらも『たらればの話をしても不毛』となるかと」
よし、コレで問題ないだろう。
この戦い、我々の勝利だ!
「――ほう?なら私があのアホへの意趣返しも兼ねて名乗りを上げればチャンスがあるということだな?私ならアイツの上を取れるしな」
千冬先生がニヤッとした顔でそう告げた。
どうして?(電話猫感)
「なっ!? いくら千冬姉でも言って良いことと悪い事あるでしょ!」
立ち上がり激昂する一夏。
「なら私もその候補に」
「お姉ちゃん???」
「簪ちゃんが先に好きになったんだから一番は譲るわよでも花くらいもたせてくれても『だめです』(´・ω・`)ソンナー」
更識姉妹は通常運転だな、ヨシ!(ガバガバチェック)
「かんちゃんがお世話になるなら、私も従者としてコンゴトモヨロシクになるから~お買い得?」
「……愚妹と暴走お嬢様と覚悟ガンギマリ妹様で申し訳ありませんが、家の血筋絶えるのは困るのでその……私もお付けしますのし内縁の方向で構いませんので前向きに検討お願いします」
のほほんさんはブレないし、虚さんが名門の従者の家系として胃痛に苦しみながら提案してくるし、ここは新手の地獄かもしれない。
「実に混沌としてますねぇ。……ちなみに2組の転入生が朝修羅場の折逃げ出したとありますが――」
「それはほぼ私の責任の範囲なんで、今の死に体の直哉に聞かないで下さい。」
「アッハイ」
黛さんの質問に姉妹口論しながら介入する一夏。
その言葉の圧にジャーナリストの卵はあっさり屈していた()
「……他にも色々聞きたいですが、3人目のスタンスや重婚に関してのスタンスとかの情報得られたのでよしとします。ちなみにコレを各国政府関係者に売りつけてウハウハしても?」
「寧ろ各国政府がどう動くかの試金石にしたいから流してほしいまである。……もし音声データ同封するなら、いまのくだりだけカットしたデータだと助かるラスカル」
「私も、同感なのであとで編集しておきますね。さて、思ったたより深掘りはできませんでしたが、この辺でインタビューは終わらせていただきますね。受けてくださり、ありがとうございました!」
「……あれ?私がいた意味って……?」
山田先生……(扱い雑気味で)色々すまない。
翌朝、ニュースにオレの国籍移動についての話題が上がったり、各国が重婚問題について政治家が法律に制定しようとし、女性利権団体が反発して争い始めたりしていた。
まあ治外法権なIS学園には今のところ関係者無いし、オレにちょっかいかけると束が報復する宣言してるのと遺伝子データを各国に(数億円と引き換えに)提供してるので、IS学園は平和そのものである。
なので海の向こうの話だな〜と対岸の火事のような他人事気分で見ていたが、オレは悪くないはずだ。
――Side ???
電話が鳴る。
「もしもし?」
『――』
「……は? 何急に。 クラス対抗戦がいつ何処でやるか予定戸座標がほしい? なんでそんな事を?」
『――』
「いやそれくらいできるけどさ。 当然じゃん。僕を誰だと思ってるの?」
『――。――、――』
「えぇ……それもやるの?めんどくさいなぁ」
『――』
「……ふうん? ならいいよ。 最低限データ取れたなら、あとはスクラップの方が、そっちも都合が良いでしょ?」
『――』
「ハイハイ、わかってるし、この通信も完璧に暗号化してるから問題ないから。それじゃあね」
「……ようやくツキが回ってきたなぁ。順風満帆な僕に逆風が吹いたなら、そのあとには百倍くらいの追い風が吹かなきゃ割に合わないよね。僕は神様に転生させられた、選ばれた存在なんだし」
直哉の抱える爆弾
・遺伝子的に人間から逸脱してるから子供できないよな?という確認→束が体外受精成功させている模様。
・スピリタス飲まされ酩酊状態で束正妻扱いする旨の誓約書にサイン書かされている(条件達成で無効化、無効化の条件を覚えてない)のでその内容を調べてる。→既に達成してるが内容を知らないので未解決と思ってる。
・酩酊状態で束におぎゃばぶしてる映像を見せられたことがあり、ソレを消すために束のところに足を運んでいる。(対束案件で最重要優先事項)
・あと肉体関係はないが、未遂や各地潜伏時代での交際相手が何人かおり、その時期にしれっと違法行為(銃刀法違反、不法入出国、テロリスト撃退のためとは言え建造物爆破など)してるので、露見防ぐために口止めの交渉とかしてる。(実は束以外に肉体以外のなんらかの交際関係あるが聞かれてたらごまかし→数名気がつくという地獄の蓋が開いた模様)
以下次回予告
予告通り地獄のような作業を敢行することとなった簪ちゃんとソレを手伝う楯無と布仏姉妹。
爆弾処理と簪の手伝いと一夏の鍛錬相手、生徒会雑務のヘルプに駄兎調教と多忙極まってる直哉。
直哉の管理不足が祟り、制御系全般が間に合わず、おまけに対抗戦当日簪ちゃんが体調も崩して1年4組大混乱。
そんな中、鈴は路藤原による人生相談を回顧した後、一夏と正対する。
ソレを以て一つの区切りとするために。
何人もの想いや祈りが交錯する中、クラス代表対抗戦が幕を開ける――。
次回 インフィニット・ストラトス+3-1
第十一話『クラス代表対抗戦(前編)』
※内容は変更される場合もあります。
次回もお楽しみに!