『氷室直哉は歩くボディ整形マシーン?』
――Side 氷室直哉
「平和だねぇ」
いつもの食堂にて。
のほほんさんがへにゃ〜となりながら朝食後のポテチ(オレが取り寄せたのをいつの間にか強奪している模様)をつまみそう零す。
ちなみにテーブルにはオレ、一夏、のほほんさん、簪ちゃん、鈴の5人という組み合わせだ。
「学園で政治に関わってないなら、と但し書きがつく人限定だけどね。実際にご主人様の胃がボロボロになってるし、学園の外は混迷期に突入してる気がするし……」
のほほんさんの言葉に半分同意しつつ指摘をいれる。
「にしても……正妻の貫禄と言うか……風格がでてるわね、一夏……千冬さんとはベクトル少し違うけど」
「そう?」
鈴の言葉に順当にオレの横を陣取る一夏が自覚無いのか首傾げ。
「その胸もぎ取ってやりたいくらいには。スイカかメロンでも詰まってんのかしら???少し寄越しなさいよ。というか性別不安定の時よりデカくなってない?」
「直哉以外に今のところ揉ませるつもりないし揉まれて少しデカくなった……いや、ちょっと違うかな?」
一夏の言葉に鈴が……キレた!
「少しくらい分けてくれてもバチ当たらないわよ……!」
「……ご主事様は別に胸とか気にしてないよ。それにご主人様がその気になれば貴女くらいからそこの正妻サマくらいまでなら大きさ変えることできるし」
しれっと暴露する簪ちゃん。
「「「「!?」」」」
他のテーブルの女性も反応したんじゃが……?
「は? それ本当?」
ぎゅるんという音がしそうな勢いでこちらを見る鈴。
「……めんどくさいけど、ぶっちゃけこの場でもできるっちゃできる。……ただ下着とか服のサイズ大丈夫なのか?サイズしだいだけどバトル漫画かラ◯ュタの親方ことダッフィーみたいに服とか下着弾け飛ぶから」
「本当かしら〜?ならあたしの胸を一夏並みにしてみなさいよ」
「……オッケ、ならやろうか」
オレは座席をたち、近くの通路に目隠しして正対する。
「なんで目隠し?」
「責任云々がめんどくさいから」
「なんで正対?」
「相手に合わせる必要あるから。一夏、合図よろ」
すると一夏が呼吸のタイミングを指定し始める。
「はい吸ってー、吐いてー、吸って……吐いて……」
呼吸と共に相手の身体を把握していく。
「――そろそろいいか?」
「かか、かかってきなさい!」
「――生命帰還――」
オレの身体を細胞レベルで操作する技能が、呼吸の同調と鈴の身体把握により影響範囲に認識されるようになっている(新手のバクかもしれない)ので、ここで脂肪を胸に集めるようにして、ついでに補強とかもしていく。
「!? 本当にデカく……重っ!?」
「もうちょっとで一夏と同サイズだけどどうする?」
「……悔しいけど、ちょっと現実的サイズに調節できる?……ちょっと舐めてたわ……制服のホック上半分壊れたし、ブラに至ってはスポブラが破け飛んだし……」
「ん、わかった」
オレは本人の要望を聞きつつ、サイズ調整し
「……ここっ! たぶん私の体格的にこれがベストだと思う」
やっと鈴のベストが決まったようだ。簪ちゃんと同じくらいである。
元がつるぺた「なんか変なこと考えてない?」おっと、察しがいいな、ニュータイプかな?
「私とどっこいどっこいだと思うけど……」
「流石にあの重さは肩凝るし、かと言って体格無理に弄ってもらうと生活に支障きたしそうだからコレで良いのよ」
うんうん頷いてるのは良いが、たぶんブラと制服の上が破壊されてるから、はよ着替えにいってもろて……。(切実)
迂闊にアイマスク外すとToLOVEるる案件になりそうだし。(経験則)
「ちなみにご主事様ならお腹周りや太もも内側、二の腕の下などのぜい肉や脂肪なども自由自在だったりする」
「は? もはや歩くボディ整形マシーンじゃない。」
簪の言葉に鈴がそう告げる。
その言葉に反応してこちらに目線を向ける生徒たち。見なくても分かる。いずれも目がガンギマリしてて怖いのである(小並)。
それと噂が直ぐに広がりそう(小並)
「……ん?電話?……クラリッサ……から?」
『少女板ばさみ』
――Side ラウラ・ボーデヴィッヒ
「――今、なんと?」
通信機から流れた言葉が理解できず、思わず聞き返す。
『二度も言わせるな、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐。氷室直哉を誘惑し、わが国へ取り込め』
「ソレは……天上院ではダメなのですか?」
『理由は3つ。1つ目はアレはどうも背後関係がきな臭いから。2つ目は純粋な男操縦者としての遺伝子データは既に入手され、分析されているから。正直優先度はかなり低い。3つ目。それに引き換え氷室氏がわが国に来れば、かの弟……いや、今は妹か……妹思いな【教官】殿やヤツに執心な天災殿をこちらに引き込む事が現実味を帯びてくるからだ。教官に思うところのある少佐にとっても悪い話ではあるまい?』
筋は通っている。
だが、クラリッサは?
私より適任ではないのか。
「――閣下!失礼ながらあの男は私では欲情しないかと! 代わりにクラリッサにこの任を任せていただけないでしょうか! あの者は氷室が名を偽りドイツに滞在中から交友関係があり、本人も――」
『少佐』
底冷えする声だった。
『――その程度の事、我が軍は把握している。だが残念なことにハルフォーフ大尉……否、元大尉は横領の罪で先日除隊されている』
――除隊? どういうことだ?
黒ウサギ隊は特殊な施術故に軍属に縛られるはずでは……?
黒ウサギ隊共通の眼帯に触れ、それを通じて眼帯の下にある『目』を意識する。
『――故に今の彼女は使えない。残念なことにね。だからIS学園にねじ込めた少佐に頑張ってもらうしかないのだよ。まあ、元大尉殿は軍属という軛が無くなったのだから、彼のところに走ってもおかしくはないがね』
クラリッサは軍属とヤツを天秤にかけて揺れていた。
軍属でなければ閣下のおっしゃる通りになるだろう。
……まさか、閣下は……いや、ドイツ軍上層部は……。
『ああ、もし元大尉が彼と結ばれたとしても、君が成果を出せなければ……元大尉の愛国心と忠誠心、罪悪感に訴えかけ、彼を手土産に軍へ帰還してもらわねばならないかもしれない。その後は彼次第だがね。元大尉を連れ去るなら拉致問題として大ごとにするしかあるまい。』
「……万一クラリッサを捨てた場合は」
『我が国との柵から捨てたと判断し、偽名時代の我が国での活動記録を証拠データとして不倫問題として裁判を行い、出席するよう要請するだけさ。出てこないなら欠席裁判として国家予算数倍の賠償か我が国の国籍取得と元大尉、少佐との婚姻を請求確定して各国にその旨を通達する。出て来たのなら国内に閉じ込め、マスゴミを差し向け、向こうが折れるまで何年でも裁判を遅延させるつもりだ』
――やはり……我々さえ駒としか見ていないのだな……。
私は心を殺す。
「――最善を尽くします。吉報をお待ち下さい」
『……最低限他国に出し抜かれなければいい。来月には良い方向に転がってることを期待している』
……私があの男を嵌めて祖国の人間にしクラリッサに恨まれるか、自由になれたクラリッサが幸せの絶頂にいる瞬間に籠の中に戻され苦しむのを傍観するか選べと突き付けられた。
どちらかを選ぶしかないとしたら私は――
ドイツが狡猾な罠を張り巡らせつつある中、
直哉は突如欧州訪問を決断する。
同行者に一夏、セシリア、シャルロット、ラウラを指名し、弾丸を敢行する直哉だったが――?
次回 インフィニット・ストラトス+3-1
第十七話『罠は食い千切るもの』
※予告内容は変更される場合もあります。
次回もお楽しみに!