インフィニット・ストラトス+3-1   作:月神サチ

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お気に入り一時期減って気も滅入ったので初投稿です(強弁)


第二十話 主人とメイドと約束された勝利の剣(前編)

――Side シャルロット

 

「あのですね、やむない事情があったので……4門から受注する!? いや、あのOIGAMI付けるの自分の――」

 

「何話してるのアレ?」

 

ボクが首を傾げてると

 

「昨日有澤重工の最強兵器……OIGAMIってのをロランさん爆心地から弾き飛ばすために投擲兵器にしちゃってオシャカにしちゃった*1から、予備をもう1門って交渉してる所」

 

と本を読みながら一夏が答える。

 

「OIGAMI……わが国の名高き列車砲と同等の威力を再現する代わりに弾薬費と運用コスト、装備枠や量子化枠の圧迫が狂気の領域と呼ばれるあの有澤重工の超大型グレネード砲の?」

 

ラウラが聞き返してきた。

 

「なんか詳しいね???」

 

ボクが不思議になったので問いかけるとラウラは少し自慢げに答える。

 

「有澤重工といえばかつて日本の大和の46センチ砲の製造に携わった技術者と、わが国から亡命した列車砲開発者の血を引いてる者たちの企業だからな。わが国も無縁ではないから黒兎隊の教育過程で教えられていたというだけだ」

 

その言葉に黒兎隊の面々も頷く。

 

「ISのシールドエネルギー全損させてお釣り来そうな兵器がIS装備可能な兵器になって帰ってきてるのか……」

 

「ちなみにIS出現前は大型重機の製造・開発・整備を主軸に活動していて、今でも収益のほとんどがそっちらしい。寧ろIS用武器やパーツはほとんど売れない赤字部門なのに開発を続けているから、他企業から変態やら狂人扱いされてるとか……」

 

「日本人の私より詳しい件について」

 

一夏が困惑するのを他所にラウラが解説する。

 

「OIGAMIもIS規格の数十年前に当時の社長が何を思ったのかえっと……「ガ◯ダムです」そうそう、ガ◯ダムとやらアニメに触発され、その規格に合うものを製造してみせたとか。今でも本社に飾られ、月1で社長や元会長や年齢を理由に身を引いた老人たち、そして一部の職人が手入れしてるのはそれなりに知られてるぞ?」

 

しれっとクラリッサさんが補足してる……。

 

「武器の製造保持関連で良くその会社捕まってないな?」

 

「細々と暴徒鎮圧用催涙弾や犯人逮捕用のネット弾やそれらを発射するバズーカを販売してるからな、その関連で法律関連の書類通ってるんじゃないか?」

 

一夏の言葉に思い出すような素振りで解説するラウラ。

 

うーん、強い(こなみかん)

 

「そろそろ空港に着くから準備してくれ。今日はセシリアの家に泊まるからなー」

 

そんな会話してたら直哉が声かけてきた。

 

なにげに全員プライベートジェットから降りるの初めてだね。

 

……もしこのジェット爆発とかされたら帰国どうするんだろう?

 

 

 

――Side 氷室直哉

 

空港で入国審査を受けて、空港の出入り口に向かうと――

 

『来ました! 世界で3名とされるIS男性操縦者の1人、Mr.氷室にISの生みの親である篠ノ之束博士、ブリュンヒルデの妹にして氷室直哉の第一婦人とされる織斑一夏!そしてわが国の代表候補生セシリア・オルコットです!』

 

記者のフラッシュが炊かれまくるのでオレは反射的に全員にサングラスを付ける(黒兎隊は眼帯の代わりにサングラスを予め渡してある。なんかフランスの束の変装がかっこよかったとのことでグラサンインカムの黒服になっている。ついでに何故かシャルもフランス代表候補生から外れたので黒兎隊と同じ服装で擬態してる)。

 

記者がこちらにマイクを向け、色々な質問を飛ばしているが――

 

『訪問理由? イギリス政府に込み入った話があるからだ。詳細は言えないが、彼らの色よい回答を期待している。こちらも第二世代コアに関して比較的良い返事をできるよう用意してきたからね』

 

とだけ答える。

 

束に質問が向けられるが

 

『彼が答えた以上の事を今話すことはできません。あとは交渉の後、良い返事がもらえたかどうかでしょうか。それ以外は政府の公式発表をお待ち下さい』

 

と精神的余裕がある笑顔で彼女は答えた。

 

記者団が追いかけようとしたが政府が用意したリムジンに乗り込み空港をあとにする。

 

 

 

 

 

 

十数人の政治家たち――上院下院の主だった政党の党首クラスに首相殿――に加えて政府の外交担当や雑用のためのスタッフなどがそろった部屋にオレ、束、セシリアが入り、ソファーに座る。

 

『日本のIS学園からご足労いただきありがとうございます、Mr.氷室。そしてISの第一人者である篠ノ之博士。私としてはドイツ、フランスより先……公式訪問の最初の国の名誉をもらいたかったところですがね』

 

好々爺な顔つきの首相がそう告げる。

 

なお細められた目から強者の眼光が垣間見える。

 

『ドイツでは非公式の交友関係で貸一の支払い代わりにこき使われまして、フランスはあまり時間を使わずに済む案件だったので先んじて終わらせてきたと言うだけです』

 

オレの言葉を聞いた政府の面々はざわつくが、直ぐに収まる。

 

なにしろ、暗に【直ぐに終わらない案件をイギリスでやらねばならない】と告げられたからである。

 

『……して、わが国での案件とは? 腰を据えねばならぬと判断されたご様子ですが。私共がお手伝いできそうなことなどあるのでしょうか?』

 

探りを入れてきたので……ぶっこむことに

 

『――そちらの軍部は把握してるので皆様もご存知かと思いますが――数ヶ月前から貴国が開発された衛星型軍用ISの【エクスカリバー】が貴国の軍部の制御から外れておりまして、ここ1週間、エネルギー充填モードに入っているので、放置は危ないかなと思い、必要ならこちらで対処しようと訪問した次第です』

 

『ちなみにこちらがその前後の通信ログとエクスカリバーのデータです、ご確認ください』

 

と束が紙を数部取り出してテーブルの上をキレイに滑らせる。

 

複数部あるので分けて目を通していく政治家たち。

 

手を進めると共にだんだんと顔色が悪化していき――

 

『!?』『なんだこれは!?話と違うぞ!?』『軍部は正常に制御下にあると報告を受けてる!?もしこちらが本当なら……!』『軍部の人間を呼んでこい!今直ぐにだ!』

 

慌ただしく数名のスタッフが部屋を飛び出す。

 

おそらく半分は部屋の外で通話による確認取るためだろう。

 

『……わが国の事を随分と気にされているご様子だ。しかし情報の精査をさせてもらいたい』

 

『もしエクスカリバーのことが事実で、こちら主導、セシリア同行の元でエクスカリバーの後始末をさせてもらえるなら、ISコア4つほどを補填する用意があるとだけ』

 

オレの言葉にアタッシュケースを取り出した束はそれをテーブルに置いて彼らにみせるように開く。

 

そこにはISコアが4つ置いてあるだろう。

 

『――ひとまずセシリアの屋敷に数日滞在予定なので、こちらの提案に耳を傾けていただけるようでしたらこちらまでご連絡を』     

 

オレはそう告げて同じ名刺を数枚置き、それとともに束はアタッシュケースをしまう。

 

そしてオレは2人を連れてその場をあとにする。

 

途中呼び止められるが、「本日はあいさつと交渉前のほんの世間話をしにきただけ。そちらも情報共有されてないようなので、時間が必要かと」と一蹴し、デュノア社のイギリス支店のスタッフが用意した車に乗って立ち去ることに。

 

 

 

 

 

 

「ここから先が全部わがオルコット家の敷地ですわ」

 

欧州の貴族のイメージに違わぬ風景にはえーとなるオレと一夏。

 

ちなみに束はブレないし、シャルも愛人の娘として片田舎にいた頃似たような景色見てたから見慣れており、黒兎隊はラウラ以外で周辺の狙撃スポットなどを確認しているのでそれどころではない。

 

「お待ちしておりました、お嬢様、皆様」

 

正面入口にて出迎えるのは正統派ロングスカートなメイド服の娘だ。

 

「チェルシー、何か変わったことは?」

 

「特に……強いて言えばオルコットの家名や財産狙いのお見合い話が数件ありました。……確認した限りマトモな相手でも後見人でもございませんでしたので、お嬢様の言いつけどおり、名代としてお断りの連絡を入れておきました」

 

彼女の回答に満足したのか

 

「さすがチェルシーですわ」

 

とセシリアは頷く。

 

……飄々としてるが内心は疑いたくない気持ちと胃痛で死にかけているのは見て見ぬふりをしておこう。

 

「荷物の方、こちらで――」

 

「あ、ボクたちの荷物は大丈夫」「我々は軍人故世話は不要だ」「荷物は量子化してあるから手ぶらだよん」

 

チェルシーの厚意に対して全員が拒否したので行き場をなくした手が一瞬空中を彷徨うが、直ぐに手を戻す。

 

「それよりチェルシー、少し庭で直哉さんと束さんを交えてお茶をしたいの。用意をお願いしてもいいかしら?」

 

「畏まりました、お嬢様」

 

そういうと華麗な所作を見せ手去っていく。

 

「……本当にチェルシーが……?そうは見えませんけど……」

 

「同じ女なら腹芸の1つや2つ顔色替えずにできることくらいわかるでしょうに」

 

セシリアの言葉に束が首を横に振りながらやれやれだぜポーズする。

 

「さて……どうなることやら」

 

 

 

 

 

 

中庭でお茶の時間を楽しみ、チェルシーが給仕をしてくれるおかげで長閑な時間は過ぎていく。

 

「さて、身内しか居ないし、そろそろ明日の話をするとしようか」

 

「制御不能になってるこの国の軍用IS……エクスカリバーの取り扱いだね」

 

その言葉に一瞬チェルシーの手が震え、セシリアはそれを見たが――見て見ぬふりをした。

 

「束さんとしては破壊した方がいいんだけどな――」

 

「――」

 

オレはテーブルと椅子を投げ飛ばしながらセシリアを抱き寄せてバク宙の回避行動をする。

 

束は地面を叩きつけて土煙を起こしながら距離をとる。

 

「……家族を……あの子を殺させはしません!」

 

土煙のなかから、セシリアのISとよく似た機体をまとったチェルシーが姿を現す。

 

「そのために亡国企業企業に魂売って、自分の名義で連中の拠点を借りたりしてるってか?」

 

「!? 何故それを!?」

 

こちらに銃構えるので分身し、セシリアを預けて吶喊する。

 

「――来ないでください!」

 

オレは乱射された弾丸を避けて(分身はまだ立ち直れてないセシリアを背に守っている)懐に飛び込み、顕現させた刀でその銃を細切れにする。

 

そのまま首に刀を添える。

 

セシリアから話を聞いていたのか、動けないようだ。

 

「――っ!」

 

「エクシア・ブランケット……心臓病を患い、エクスカリバーに生体融合することで今も夢に微睡み生きながらえているあんたの妹だろう?」

 

「何故……それを……?」

 

「そりゃもちろん束さんがコアたちからログ拾って――」

 

「そんなのどうでもいい。オレが聞きたいのは妹を助けるためなら家名とイギリス人という立場を捨てることができるかという覚悟があるか否かだ」

 

「……私は……」

 

 

*1
前話参照




ざっくり登場人物解説

首相
イギリスの首相さん。日本人からは狸爺と呼ばれてる好々爺風老獪の怪物。しかし軍事はさっぱりという自覚があるため、軍部にはノータッチであり、今回の事態で初めて好々爺の仮面が亀裂入ることに。

チェルシー・ブランケット
原作だとブルー・ティアーズの姉妹機である3号機を強奪しているすげー人。今作では宇宙へ行く足がかりとして亡国企業の誘いに乗って姉妹機の2号機・3号機強奪事件の実行犯兼手引き者をしている。尚氷室直哉が化け物であると感じ取り、話題に出た時もごまかすつもりだったが、身体が動くレベルで我慢ができなかった模様()。


以下次回予告

チェルシーが覚悟を見せたので、それに応えるべく動き出す直哉。

翌日にイギリスと交渉し、話をまとめると即座に宇宙へ飛び出す。

そこで氷室直哉たちは、数奇な出会いを果たす――。


次回 インフィニット・ストラトス+3-1
第二十一話『主人とメイドと約束された勝利の剣(後編)』
※予告内容は変更される場合もあります。
次回もお楽しみに!
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