ではどうぞ
――Side 氷室直哉
オレはオルコット邸にてブリーフィングを始める。
「――ミッションを説明する。依頼主はオレ、氷室直哉。目的はイギリス上空特殊停止軌道にいるイギリス軍軍用IS【エクスカリバー】の無力化及び回収だ。と言っても最良のパターンなら、現場仕事はオレがやり、地上で束が支援やエクスカリバーの制御をする。だから、仕事は何もない。日帰り衛星軌道域旅行になる」
オレの言葉に目を丸くする束以外の一同。
「――だが最悪のパターンは連戦や乱戦による生命の危険が発生する。あり得るのはエクスカリバーが束側の充填中止命令及び生命維持以外停止の命令の拒否からの鎮圧戦の追加、エクスカリバー強奪を狙う亡国企業連中と遭遇による戦闘、黒い蠍の乱入の発生だ」
その言葉に息を呑む面々。
対して実戦経験のある黒兎隊は静かに頷く。
「ちなみにエクスカリバー鎮圧にいっちゃんの零落白夜が必須級だからよほど嫌とかじゃないならなおくんについてほしいなぁと」
「――直哉の側で震えてるだけなんて真っ平御免。姉さんほど関羽みたいな理不尽な強さないけど、戦う事はできる」
一夏の言葉に束は頷く
「それなら大丈夫だね。ちなみに今の音声録音してあるからちーちゃんに後で送っておくね」
「そんなことしたら帰国したら頭陥没されられるからやめて!?」
わたわたする一夏とははは~とのらりくらりな束。
「……続けていいか?」
「「あ、どうぞ」」
2人がそう返したので続ける。
「――現状想定される仮想敵のうち、エクスカリバーは一夏とオレが対応することになるだろう。残りの亡国企業、黒い蠍についてたが……現在判明してるデータありはコレになる」
資料を数部渡してそばにいる人たち共同で読ませる。
「まず亡国企業の保有する戦力のうち判明しているのがブルー・ティアーズの姉妹機である『サイレント・ゼフィルス』だ。イギリスが開発したIS第3世代機であり、3号機手間ある『ダイヴ・トゥ・ブルー』と共に『ビット操作』の機体と言われている」
「……私の腕は未熟。もし出てきた場合、チェルシーとツーマンセルでことに当たりたいですわね。……このあとの交渉次第ですけど」
セシリアがそう零す
「他の亡国企業のISについては『背中に8つの独立したPICを展開している装甲脚を備えたIS』と『金色の装甲に尻尾のようなサブアームを付けたIS』という情報のみ確認されている。そこまで増えるとは思いたくないが……何体ISが来てもおかしくない。予備プランはあるが、使わないに越したことはないがな」
「悲観してても仕方ないよ。ほら次行って」
束の言葉にオレは続ける。
「次に黒い蠍だが……ISモドキに大気圏突入の能力が無いことから、この数ヶ月で大気圏突入仕様にしているでもなければ、ロケットなどが必須。故に地上の束が各地の人工衛星等から捕捉可能と見ている。敵がISを持っていた場合は、切り札か……弱すぎて本来なら切りたくない手札かのどちらかになる。後者だろうと油断は禁物だ」
「だから束さん的に最良が本命、対抗で亡国企業と接触、大穴として最悪セットフルコースってところかな」
「だと良いんだがな。――説明は以上だ。参加するかどうかは、各自に任せる。生命に関わる事態に転がりかねない依頼だ、受けるかどうかは……よく考えてくれ。オレはコレから政治家の巣窟でのらりくらりしてくるから、戻ってきた時、参加の意思が有るなら教えて欲しい」
オレはそう締めくくる。
『それで、事実確認とそちらの判断は如何に?』
眼鏡をかけたオレは今回1人で政治家連中と遭遇していた。
ざわめくなか、首相殿に目を向ける。
『――軍部の自浄作用に経年劣化が見られたようだ。これを期に一度刷新することになるでしょう。いやはや、外部から指摘されるまで行動どころか気が付かないのは恥ずかしい限り』
そう言ってから一息ついて
『ISコア6つの譲渡、今回の軍部の失態についての秘匿をお約束できれば、エクスカリバーの封印・廃棄の方法について英国は篠ノ之博士と貴方にお任せ致します』
などとのたまった。
『……最初から最大限の譲歩をしている相手に、しかも立場の弱い側が吹っ掛けるとは中々に剛毅であらせられる。ドイツとフランスはもう少し賢明でしたがね。……二枚舌は自国不利でも無理難題を言わねば気がすまないというフランスとドイツの忠告は本当でしたか……』
オレが挑発すると老議員の何人かが立ち上がろうとして、周りがそれを取り押さえる。
『……セシリア・オルコットのイギリス代表候補生の剥奪やチェルシー・ブランケットの亡国企業との内通、イギリスの開発したブルー・ティアーズの姉妹機の強奪なども天秤に掛けるならば妥当な線ではないですかな?』
首相は細めた目を軽く開き、勝ち誇ったような顔をする。
『――恩を売れば良かったものを』
オレはそう零しながら新規4つにブルー・ティアーズとダイヴ・トゥ・ブルーをアタッシュケースを開けてお見せする。
怪訝な顔をする首相たち。
『エクスカリバーの封印をこちらに委任する。それ以外は不要です。お収めください』
その言葉に自分たちの勝利を確信する老人たち。
同時に――何人かの若い議員やスタッフは、怪訝そうな顔のままだった。
アタッシュケースをスタッフに渡し、各自に確認させる。
『うむ。話が分かる若者で非常に助かった。今後とも篠ノ之束博士と君とは仲良くしたいものだよ』
オレは無言で一礼し、立ち上がる。
そして退出しかけてから振り返る。
『ちなみに今、このやりとりは世界各国で自分視線でライブされています。このあとこちらも別途声明を出させてもらうので悪しからず』
『『『『!?』』』』
騒がしい連中を横目に、オレはライフを終わらせ、その場をあとにした。
――Side セシリア
「家の為に『家族』を捨てられませんでしたわね。……お父様やお母様……ご先祖様がもう一度ショック死などしてなければいいですが」
直哉さんのライブを見てため息をつく。
不動産や芸術的資産は昨日のうちに大半を寄付したり売却済み、手に入れたお金は各国に分散して預けたりしました。
残りも古いツテのハゲタカに情報撹乱も兼ねてオークションさせたので残されている資産は屋敷だけ。
昨日のうちに全員で家探しして家族の思い出の品などを回収してあるのでここに押しかけられても問題ありません。
ふと今の言葉に対する反応が気になったのでちらりと周りを見ると……。
「ボクはノーコメント」
「親なしだしたぶん千冬姉の為にとなったら同じようにしたから左に同じ」
「束さんもノーコメントで!」
「私たちは試験管ベイビーなので親もへったくれもない。しらん!」
……例外しかいませんでしたわね。
「取り敢えず宇宙に行く支度だけしておいて。現地に自力で行くのはなおくんだけだし」
束さんがバッサリと会話を切り捨ててそう通達してきました。
……貴族の名門オルコット家という肩書がないと、こんなに心細く、私は弱い娘だったかとため息がでそうになる。
しかし――私には守らねばならないものがある。
例えば悪魔と罵られようと、進む覚悟ができた。
……お母様がぽっと出でペコペコ頭を下げる父を少し歪みながらも愛してると公私で公言していたのが、今なら少し……わかるかもしれません。
引けば1つ、進めば2つ。
ならば私は――イギリスの貴族であることを捨ててでも、チェルシーを……そして彼女の家族を守ってみせますわ!
……その過程で直哉さんに頼ることは……悪くないですわよね?
色々なものを捨ててでも、『家族』を選んだセシリア。
一方ネットとイギリス議会は阿鼻叫喚。
そんなの他所にエクスカリバー回収作業を進める直哉。
しかしエクスカリバーを回収した帰り道、亡国企業のISや亡国企業産?の無人機集団と鉢合わせてしまい……。
次回 インフィニット・ストラトス+3-1
第二十二話『主人とメイドと約束された勝利の剣(後編)』
※予告内容は変更される場合もあります。
次回もお楽しみに!