インフィニット・ストラトス+3-1   作:月神サチ

26 / 38
不調気味なので初投稿です(白目)
ではどうぞ。


第二十六話 学年別タッグマッチトーナメント 開始前その3

――Side ヴィルヘルム・オズボーン

 

執務室にて。

 

今日渡された書類に最後の判を押し、秘書に渡してから伸びをする。

 

「ん?……入りたまえ」

 

ノックされたので入室を促す。

 

入ってきたのはヤン元帥だ。

 

「漸く軍部の膿を絞り出せたか」

 

「黒い蠍の推定幹部で我がドイツの首相殿が何か言っておられる……」

 

怪訝そうな顔でそう零すドイツ軍の元帥。

 

「そう思うなら私の後継者足りうる政治家を用意すればいい。テロリストを兼任してる首相など露見してしまえば外聞悪いことこの上なかろう。補足するが私はいつでも身を引けるようにしてあるぞ。――だが最近の世襲のたわけ共に任せていてはどこぞの国のように献金と官僚の奴隷に成り下がり、国が狂うのがオチだがな」

 

「国際犯罪組織の人間が政治家やってるほうがまともなことしてるし黙認のほうが国が上手く回る不具合。世界は理不尽だ」

 

「それについては同意だな」

 

私は頷く。

 

「黒い蠍は宇宙へ全人類を追いやるための基盤を作っている。――故にISという宇宙への翼をいつまでも地球の重力に縛り付けるつもりもない」

 

私の言葉に一瞬目線を動かすと、合点が言ったのか頷く。

 

「……なるほど……随分とリアリストでありながらロマンチストな組織ですね。賛同しませんし晴耕雨読が自分の性に合ってるので国内でまた暴れるなら鎮圧に向かうだけですが」

 

やはり惜しいな。

 

だが……引き込むのは愚策だろうな。

 

「貴様が政治家になったのなら、私は安泰なのだがね」

 

「過労死は御免なので」

 

そういって去っていく。

 

……元帥、自分が知ってることを通知するために来たのか?

 

やはり惜しいものだ……。

 

私はメンバーに招集の連絡を出しながら官邸をあとにした――。

 

 

 

 

 

――Side ヤン元帥

 

さてと、困ったね。

 

私は黄昏ながら自室で月夜を見ながら思案に暮れていた。

 

カマ掛けをしらばっくれると思ったのに、普通に反応したし、何ならこちらに誘いをかけるとは……。

 

直哉君とのコネの悪化と国の悪化を天秤にかけるなら前者切り捨てでコラテラルダメージとして抑え込むしかないんだけど。

 

……まあ少なくとも『ドイツ国内でのスタンスの裏取り』ができたのだから、あとは静観してすっとぼけも1つの手とも言える。

 

首相殿も直哉君が宇宙に上がるなら自ずと従えてる娘たちも宇宙に行くからむしろ今の彼とは仲良くしたいまであるのか。

 

……遠回しにこっちに仲立ち仲介しろってことじゃないよね?

 

嫌だしめんどくさいしやりたくないんだけどなぁ……。

 

……黒い蠍のスタンスに『ISを宇宙に上げること』があるようだし、女性利権団体連中とそこに緩い繋がりある亡国企業と本腰据えて殴り合うことを見据えてると仮定すると……。

 

なら同じ女性利権団体に睨まれ気味の直哉君と呉越同舟できると考えたのかな?

 

彼なら親殺してる相手だろうと必要なら手を組めるだろうけど……?

 

『オレの両親を攫った黒い蠍を名乗るヤツから【篠ノ之束の暴挙を止められたなら解放してやる】と言われたが、束と連絡がつかなかったから1人で無謀な救出作戦をするしか無かった。――結局両親は爆殺され、オレは死にかけてカミンコ博士の敷地で倒れてるところをチョビンに助けられたんだ。……2人の死体?爆散したし、しばらくしてから現場調べたけどDNA検査もできないほぼ炭の肉片とかしか残ってなかったけど……』

 

彼の言葉が脳裏に浮かび――違和感を覚えた。

 

……本当に直哉の両親は黒い蠍が殺したのか調べる必要がありそうだね。

 

あの老人の掌の上で踊らされているような気しかしないけど――協力という名の相互利用のメリット等を勘案すると、動くのが最良と来てるのだから仕方ない。

 

 

 

 

 

――Side 鳳鈴音

 

『織斑一夏の籠絡に失敗し、元サブプラン、今はメインプランの氷室直哉の籠絡もできない。最後のプランも天上院さら猫跨ぎされている不始末……』

 

「……申し訳ありません」

 

いや、無理言わないでほしいんだけど……?

 

私は中国の代表候補生を管理する楊管理官から説教を受けていた。

 

『来月には台湾やタイ、オランダに天上院家の長女様が転入されるとのこと。――台湾の代表候補生に後れを取るようなことだけはないように。それが本国からの通達です。』

 

「それができれば苦労しないわよ(はい、わかりました、楊管理官)」

 

『…………良かったわね本音と建前逆転したのが私の前で。もっと厄介な人の前でやらかしていたら人生終わってたかもしれないし?』

 

あっ()

 

『……まあ良いでしょう。しかし――候補生は貴女だけではないのよ。それを努々忘れないように』

 

「……最善を尽くします」

 

私の言葉を聞いたのかわからないくらいのタイミングで通話が切れた。

 

……離婚した父さんは死んだっていう連絡だけ届いてそれっきり。

 

母さんも……正直色に狂ってて私のことどうでもいいみたいだし……いっそのこと、私も一夏たちみたいに……。

 

「……案外アリな気がしてきたのは私が参ってるだけかしら……それはそれとして……転入生に台湾からの候補生……まさか……ね?」

 

 

 

 

 

 

――Side 氷室直哉(分身)

 

「直哉が増えてる……」

 

「本当に分身を体得してるのね……」

 

昼休みに影分身して気持ちよく閃光を演奏+歌唱していたら箒と鈴がジト目でこちらを見ていた。

 

「別にいいだろ」「後で戻るし」「所詮は分身、影法師に過ぎない」「是非もなし」

 

「うわっ!?一遍に喋るな!」

 

「一瞬脳がバグった気がするわ」

 

オレは分身代表として他分身たちを黙らせる。

 

「……んで、たどったの?二人共」

 

「トーナメントが終わったら私たち言いたいことある」

 

「最終目的違うけど途中まで大体同じ。……まあ、ダメ元だけどね」

 

「……今日のウチに言わなくて後悔しない? イベントごとに襲撃受けてるけど」

 

「「それ言うと今回も何か起きそうな気がするんだが(けど)!?」」

 

「「「「「オレらに言われてもなぁ……」」」」」

 

厄介事はあっちからやってくるのでどうしょうもない。

 

「なら……」「いまここで……」

 

「ハイストップ」

 

オレは手で止める。

 

「オレら分身なわけで」「本体別におりますれば」「一応消える時に記憶本体に還元されるけど」「分身に言うセリフじゃないと思うんだワ」

 

他分身が代わりに言いたいことを言ったので

 

「……ちなみに本体は盛ってる淫乱教師2名にお仕置き中だったりする。もうすぐ……あ、両方落ちたな。もし本体に言いたいことあるなら生徒指導室の近くにある備品庫に行って、どうぞ」

 

と締めくくる。

 

すると2人がコケかける。

 

「……こっちが勇気振り絞って言おうと思ったのに……」

 

「だが……(おまえ)らしいな。自分の在り方を貫く姿勢は昔と変わらない」

 

そう言ってから2人は去っていく。

 

……さて、気を取り直して演奏再会するかな。

 

 

 

 

 

――Side 織斑一夏

 

「――前衛の一夏さんに後衛のセシリアさんで役割分担は悪くないと思いますが……。乱戦にもつれ込んだ場合、今のようにフレンドリーファイアや衝突事故が起きるので、お互いの位置を意識するように。戦場では敵の位置と味方の位置、それらも常に意識せねば、思いもよらぬ流れ弾で被弾し、事故が起きることもありますからね」

 

「「はい……」」

 

「まあわかってて私たち乱戦に持ち込んだんですけどね。相手の土俵に立つ必要はない。自分たち有利の盤面を用意するのも戦術ですから」

 

外部講師としてクラリッサさんたち黒兎隊が学園に滞在することになり、アリーナで鍛錬を受け持つとなった。

 

なので、早速相方になったセシリアと共に挑んでみたのは良かったが……。――クラリッサさんとネーナさんにボコボコにされてしまった。

 

「今の戦闘記録……録画欲しい?」

 

「「お願いします」」

 

ファルケさんが聞いてきたので頷く。

 

「ん、わかった。……2人のアドレスにリンク貼ったの送ったから、後で勝手に持っていって」

 

「「ありがとうございます」」

 

「ではそろそろ予約時間過ぎているし、ここまでだな。また予約取るといい。私たちなりに手伝うぞ」

 

「「はいっ!」」

 

私たちがアリーナを出る時に入れ替わるようにシャルとラウラが入っていくのを見かける。

 

……私も頑張ろう。

 

 

 

 

 

――Side 天上院のか夫

 

僕は今、学園から外出して都内のとある高級ホテルの一室にいた。

 

「ではこちらにサインを」

 

胡散臭い男が差し出してきた契約書にサインする。

 

「……のか夫様、内容見なくてよろしいので?」

 

「如月重工は僕の部下のようなものだし、所詮形式的なものだからね」

 

判子もしっかり押して、完了っと。

 

「……確かに。こちらが約束のISです」

 

アタッシュケースにあるシンプルな指輪を受け取り、そこに僕を受け付けない欠陥品を置いた。

 

指輪は僕の右手の薬指に嵌る。

 

ぴったりだ。

 

「今後とも良しなに」

 

「ん」

 

用事済んだから退出を促すと、何故か相手が一瞬顔をしかめたが――僕は気分がいいので見逃す。

 

一礼して去っていく。

 

キアラがそれを見送り――1人の女性を連れて戻ってきた。

 

「――彼女が?」

 

「はい、日向香織さんです」

 

「ご紹介にあずかりました、日向香織です。……のか夫様の為に尽くさせていただきます」

 

「僕の下に入ったのだから大船に乗ったつもりでいるといい。政治家になったら君も自動的に僕の秘書になるし、僕が総理大臣になったらその片腕として頑張ってもらうから」

 

「え?アッハイ。頑張ります」

 

んー?……きのせいか。

 

「取り敢えず、忠誠の証を見せてもらおうか」

 

「へ?」

 

なろう系でも一度底辺を味わってから大きく羽ばたくのがテンプレだし、僕も今はイキってる踏み台をしっかり踏みつけ踏み潰し、世界を遍く照らす絶対正義、崇拝される主人公として君臨してみせる!

 

 

 




とうとう始まった学年別タッグマッチトーナメント。

それぞれ不安と決意と目標を胸に動き出す。

しかし、イベントが素直に進むわけもなく――?

次回 インフィニット・ストラトス+3-1
第二十七話『学年別タッグマッチトーナメントと―― その1』
※予告内容及びタイトルは変更される場合もあります。
次回もお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。