――Side 織斑一夏
「これで――終わりだ!」
直哉が夢で習い、私に暇な時間教えてくれた「八葉一刀流 二の型 裏疾風」を零落白夜発動しながら繰り出す。
私の攻撃をみる前から回避行動に動いてる相手――千冬姉にそっくりな顔の敵――に初撃をかわされた。
が、振り向きざまに飛ぶ斬撃を当てて、機能停止させる。
「くそ……お前の場所は……私の……場所だったのに……!」
「……私は貴女の事情を何もしらないから言う権利ないかもしれないけど……テロを起こすのは間違ってると思う」
「……くそっ、ここまで……か……」
戦闘で疲労困憊だったのか、Мと名乗る人は武器を取り落とし、倒れ込んだ。
「む、決着ついてたか」
側に現れた直哉……の分身(背中に四とあるので4体目の分身だろう)がそうこぼした。
「うん。ところで直哉の本体は?」
「妙な気配……ナニカサレタヨウダな天上院の鎮圧している。取り敢えず……この娘オレが武装解除しておくけど良いか?」
「お願いできる? ……千冬姉や、私絡みの出自について、聞けるチャンスだから」
誰から、とは言わなかったが、彼は静かに頷いて武装解除し始めた。
「……例えどんな出自だろうとオレは変わるつもりないぞ。お前の前から消えたときは兎も角、今はオレもオレで化け物だしな……」
私が不安そうにしてたからか、ぶっきらぼうな態度でそう告げてきた――。
――Side 路藤原
「――もう弾切れっ!」
火事場の馬鹿力なのか、IS装備用のグレネードバズーカの本体を最後っ屁とばかりに素手で投げつける。
なんか一体に当たって倒せたのでヨシ!
「こちらももう武器ありません! 路藤原さん!このままでは!」
タッグマッチでコンビ組んだ鷹月静寐ちゃんが悲鳴じみた声を出す。
ピットの出入り口にバリケード作って応戦していたが、もう武器はない。
しかしピットにはIS爆破で意識のないコたちや整備科の子、控室で震える女の子たちがいる。
自分も爆発で頭のどこか切ったのか血が片目に掛かって遠近感が狂っているし、武器も使い切った。
生産性のないオカマ1人か、未来ある十数名の子どもたちか、天秤にかけるなら答えは簡単。
「……私が囮に――」
「その必要はない、路藤原」
バリケードの前に黒衣が降り立つ。
「時間を稼いでくれて助かった。そのおかげでオレが間に合ったからな」
こちらを見ながらそういう彼。
しかし
「――氷室さん!前!」
多段ミサイルが氷室に襲い掛かる――が
「一分で終わらせる。その間にトリアージを進めてくれ」
彼は振り返らずに総てのミサイルを細切れにし、器用に不発で解体してみせる。
「――鷹月さん、私たちでトリアージを」
「あの、路藤原さんの優先度高いかと!顔血まみれ!」
「アタシの顔は後回し! オカマは男で女! 男の傷は勲章よ!」
血が少し抜けてもモーマンタイ! 伊達に筋肉ムキムキじゃないのよね!
――Side 天災
「流石に我慢の限界かなー。……お、女性利権団体に亡国企業の手先から天上院のリーク情報のメールあるじゃん。ココに追加情報つけてあげよう。……これでよし! 亡国企業の内通者からの【最期】の密告。密告者の死により、信憑性が増す。……実に理にかなってるよね。ふふ、あのゴミカス、なおくんの平穏の邪魔し続けて、箒ちゃん痛めつけてくれたんだから――自分の立場が危うくなるくらい、覚悟の上だよね?」
私はリークデータが未開封なのを確認し、データを追加したりしてから女性利権団体のサーバーへのアクセスの痕跡を始末し、席を立つ。
今回の騒動であと一仕事ってところかな?
――Side エミリー・オブライエン
「ククク、あとは亡国企業寄りに見える氷室直哉と黒い蠍が潰し合えば我々は高みの見物してるだけでいい。私の成果が高く評価され――」
射撃の音が聞こえた。いつの間にか目の前の端末のモニターに穴があいている。
口から血が出て――胸に穴が空いて――血が広がっていく。
身体に、力が、入らない
床に崩れ落ちる。
「――、――」
なにか、声が聞こえるが、指先が冷えて、身体が熱くて、鼓動と共に、生命が、流れ出て……
追加で発砲の音がした。
遠のく意識の中、私をIS学園に送り込んだあの人の姿が思い浮かんだ。
あの人は……私の死を……パートナー居るし……どうでもいいか……も……
自我という意識の織物が解けて消えていく感覚がした――。
――Side 氷室直哉
「リアル大人な路藤原の同席は理解できるが、何故オレまで職員や生徒会による緊急会議に巻き込まれた?」
(学園手当で即日退院という意味で)軽傷者は学園保健室にて処置され、それ以外は都内病院に、搬送された同日放課後、オレは職員+生徒会(つまり楯無と虚さん)&黒兎隊に束+路藤原という中にオレがいた。
「黒兎隊の監督責任者で、今回獅子奮迅の働きした上、束のお目付け役と第2世代ISコアの運用担当者だからな」
「最初と最後のは違う気がするが……まあいいか」
「私としても、会議が踊ったら軌道修正できる自信無くてね、済まないが頼むよ」
普段用務員のおじさんとして振る舞ってる学園長殿に頼まれたのでやや困りながらも頷く。
「――今回の事件で発生したことについて纏めましょう。」
そういって千冬先生が達筆な字でホワイトボードに書き出す。
・亡国企業の襲撃(目的は織斑一夏?)
・天上院のか夫が黒い蠍とつながっているという情報が学園からリークされた(日本を中心に騒ぎになっている)
・リークした端末のある部屋で整備科の教員にして亡国企業に所属していた(襲撃者にして捕虜になった人物から裏取り済み)エミリー・オブライエンが殺されていた。
「まずは襲撃事件について。Мとなのる襲撃者は、上の人間――オータムとスコールという幹部から鹵獲品の複製であるISモドキと共にIS学園を襲撃するよう命じられたという。М曰く本人の狙いと組織の狙いは共には織斑一夏とのことだが――威力偵察と私は見ています」
「百体近く居たアレが威力偵察の可能性……!? ならもし本気でこちらを潰しにかかるときは――」
学園長が思わず立ち上がる。
「たぶん千は硬いし、下手すれば万単位で来そうだね」
束が頷く。
「Мは司法取引として、私か氷室直哉の保護下になるなら知ってることは全部話すとのこと。直哉――」
「オレを爆弾処理班か何かと間違えてない?実質的不発弾の処理よねコレ」
思わず突っ込む。
「日本政府に渡してもロクなことにならないと私は見てるし……思うところがあるしな」
「引き受ける代わりにそのあたりあとで一夏が手ぐすね引いて待ってるので話し合って、どうぞ」
オレがそう言うと咳払いする千冬先生。
「侵入者について知るのはここにいる者だけだ。裏を返せばカバーストーリーは幾らでも作りようがある。例えば、『亡国企業から離反したから追手が差し向けられ、襲撃と重なる形で学園に逃げ込んだ』とかな」
「わー、ちーちゃんが黒いこと言ってる……」
「襲撃者の取り調べや司法取引モドキについてはオレ、千冬先生、一夏立ち会い必須でやりますんでこの件に関してはここで切り上げが妥当かと」
オレの言葉に千冬先生始め全員が頷く。
「次に2番目と3番目だが――」
「黒い蠍の内通者について、束さんもそのあたり前から探ってたんだけど、ほぼ黒まで来てたのに先越されたから、間違いないと思うよ」
束が資料をテーブルに放る。
内容は会話ログ等。
黒い蠍のことを語りまくってるので明らかに黒だ。
「こちら更識家の調査でも、天上院家の使用人の一部が奴らの息がかかってると判断しました。天上院家では使用人経由で接触していたものと思われます」
「ふむ……学園長。日本政府に渡せば外患誘致罪で死刑確定ですが……」
「そこで私に振るかね」
苦笑する学園長殿。
「私としては生徒は基本庇いたいとは思うが……素行もやらかしていることも私の許せる段階を超えてしまったからね……目下引き渡しは保留としても少なくとも何らかの罰が必要だろう」
「別に保留にする必要は……ああ、今の首相が彼の父親だからですか。政治利用や男性操縦者としての価値からかなりの確率で表向き処刑して牢屋の外でのうのうと生きてる可能性が高いですしおすし。私としては、学園内で『事故』してもらったほうがありがたいのですがね」
楯無が、『理解!』という扇子を開く。
「でもでもリーク情報あるからあっちに放り投げた方が知らぬ存ぜぬできてこっちに火の粉がかかることなさそうだけど……? あんなゴミがなおくんの側に居てほしくないなぁ……」
束が考える素振り見せる。
さっさと天上院パージしたい束、罰を別途与えるが最低でも今の首相が代わるまで引き出しは保留の学園長、正直独立国状態のIS学園で始末しておきたい楯無で割れているようだ。
どう転んでもめんどくさそうだし……チェス盤ひっくり返して考えてみようかな?
天上院視点、天上院家視点、日本政府、日本国民……いくつかの視点から一手閃く。
「――たぶんこのままだと3つの意見で堂々巡りするんで、いっそのことネット記者会見開きませんか?」
「「「はい?」」」
直哉は何を思ったのかIS学園から世界へネット記者会見を開くことに。
そこで何を語り、どのような意思を示すのか――。
一方天上院のか夫は家族、学園、あろうことか黒い蠍からも切り捨てられる。
しかし、捨てる神有れば拾う神ありとはよく言ったもので――?
次回 インフィニット・ストラトス+3-1
第三十話『学年別タッグマッチトーナメントの後始末(後編)』
※予告内容及びタイトルは変更される場合もあります。
次回もお楽しみに!