――Side 地方のゴシップ誌の記者
「はぁ、なんかいいネタないかなぁ……」
「今話題の天上院家嫡男のスキャンダルとか取材できたらいいんですけどねぇ。地方民からしたら遠いですよ」
デスクに頬杖つく部下にジト目を向けつつ――メールをみる。
「おん?なんだこりゃ『IS学園緊急ネット記者会見 記者枠での参加のご案内?』」
メールを見ると、今日の日本時間十三時から、ネットで記者会見を行い、記者会枠として質問する権利があるアカウントを添付するので参加される場合はよろしくお願いします……みたいなことが書いてあった。
「――! おい! パソコン画面の録画とかどうやるんだっけ!? あとお前の弟生放送の切り抜き職人だよな!?今直ぐ呼んできてくれ!!!」
――Side 氷室直哉
「――皆様、当日の通知から6時間という短さの中、当会見のネット中継をご覧いただきありがとうございます」
カメラに向かって挨拶するオレ
「今回、IS学園での襲撃事件の顛末および、生徒の天上院のか夫につきましての内通疑惑などについて、IS学園代表として織斑千冬と」
「IS関係者として篠ノ之束と」
「本件の現場検証と調査を行いました氷室直哉でお送りいたします。また質問につきましては、ある程度の進行毎に事前にメール送りました記者枠アカウントのコメントから拾い回答する形を取らせていただきますのでご容赦ください」
オレの言葉に2人も一礼。
「まずは天上院のか夫氏の黒い蠍との内通疑惑……を告発しました――」
あとは質問をオレが捌き、台本に沿って進行していけば問題ないだろう。
――Side 天上院のか夫
「くそっ!どうなってるんだ!」
個室にて思わず包帯巻かれてる右腕をテーブルに叩きつけてしまった……。
テレビでは、獣畜生を中心とした記者会見が開かれていた。
そして記者会見では最初に亡国企業の内通の疑いがかけられ、襲撃事件の日殺されていたエミリー・オブライエンという教員のことが報告される。
亡国企業との繋がる通信履歴で女性利権団体に様々な情報を漏洩しており、最期の通信に僕と黒い蠍の繋がりに関する告発があり、証拠資料と共に提示された。
同時に、殺害に使われたという武器は――僕が普段携帯していた拳銃で、現場に薬莢、モニター等を貫通した痕跡の証拠が並べられる。
でも――僕は殺してない!
僕は直接手を下したのは、立樹兄さんだけだし……!
そもそもアリーナで爆発?してから記憶無いし……!
『以上から、エミリー・オブライエンは告発情報発信直後に天上院のか夫により殺害された可能性が非常に高いと見ております』
そんな……何で……!?
僕は手を汚してない!
そのはずなんだ……いや、やつは悪だから僕が殺したのかもしれない。でも悪を殺したのだから賞賛されるはずなのに……。
『また黒い蠍と天上院のか夫の通信履歴を洗い出している最中ですが、黒い蠍に彼の兄で故人とされる天上院司や天上院立樹、当時同級生や先輩後輩にあたる人物を事故に見せかけての殺害依頼を行なっていた履歴が確認されています。近い内に天上院家に2人の死亡含め、後日情報を日本の警察に提出しますので――裏取り等を行われることになるでしょう』
獣畜生の言葉に反応するように――コメントには僕のことを殺人鬼や人でなしと罵る内容が溢れる。
「な、なんで――!?」
僕が当主になるために、僕にまとわりつくゴミを掃除するために必要な犠牲だったのだから仕方ないじゃないか!
『……む? ――失礼。……どうやら今回の一件により、火薬庫に火がついて世界規模の大騒動になりつつあるようです』
何がどうなってるんだ!?
『取り敢えず都内病院にいる天上院のか夫については、退院後、学園にて日本首相の交代まで監禁予定――』
あの獣畜生が言葉を言い終わる前にモニターが壁とともに吹き飛ぶ。
そして現れたのはフルアーマーのIS?だ。
『――のか夫だな?』
「そうだけど――お、お前は誰だよ!」
『酷いなぁ。本当の父さんに対してその態度は――』
は?
どういうこと?
僕は天上院家の子供で――
――Side 氷室直哉
こっちのオンライン記者会見(と言う名の天上院吊し上げ報告会)の直後。
『つまり天上院のか夫は首相の弟である天上院定兼依久と愛人の間にできた子供……と』
『はい、当時赤子であった息子を押し付けて何処かに消えてしまい、やむなく私と妻の子として育てました。まさか黒い蠍と手を結び、息子2人を手にかけていたとは――!』
『カッコウの子育てみたいッスね……実の子供を押しのけで巣の親鳥から餌もらってるし』
『あと黒い蠍のアジア方面支部が黒い蠍から離反して『ネオ・スコーピオン』として独立し、天上院のか夫こそ天上院家の正当な後継者として首相の一家を攻撃目標にしてますがそのあたりは……』
『それについては愚弟が関わっている可能性があるとしか……国を第一に考え、尽くしてきた一族としてはこのような不忠極まりない者がでてきてしまったこと……誠に情けない話です』
「想定以上に大事になってるね」
再び緊急会議メンバーが招集され、全員で頭を抱えていた。
テレビの記者会見の内容は正直可愛い方……か?
「取り敢えず状況整理といこうか。織斑先生、ホワイトボードの方を、山田先生と七浦先生は議事録作成をお願いします」
学園長はそう告げると3人が準備を始める。
「取り敢えず束さんが確認した範囲で時系列順に。――まず黒い蠍が天上院のか夫を切り捨てる声明を出した。それに反発するように黒い蠍のアジア方面支部が統括幹部殺害からの離反宣言。『ネオ・スコーピオン』を発足宣言。同時に行動理念を男女公平とし、黒い蠍の幹部以上へ敵対宣言。天上院のか夫は存在を危険視した人間による謀略に嵌められた被害者と宣言した」
「この時点で頭が痛い」
「ちーちゃん頑張ってよ。……んで、何故か女性利権団体の一部がネオ・スコーピオンと合流を宣言。近い内に内ゲバしそうだけどね。あとは日本の与党のうち、天上院家本家の派閥以外が離党や離党からの新党設立とかで割れて大騒ぎ。そして今天上院家が天上院のか夫についてパージしようとしてて、証拠不十分な釈明会見中……かな」
「戦国時代勢力図さながらのサラダボウル感」
「取り敢えずこちらと敵対してる、あるいは敵対しそうな勢力をざっくりまとめるとこうか?」
黒い蠍:テロリスト。アジア方面が離反してる。天上院のか夫パージを選んでる。公平理念が不明瞭。
ネオ・スコーピオン:黒い蠍のアジア方面トップに謀反からの黒い蠍から独立。天上院のか夫を神輿にしようとしてる?行動理念が男女公平、黒い蠍の幹部以上始末しての乗っ取り?
亡国企業:現在Мからの聞き取り調査待ち。行動理念不明。女性利権団体と繋がりある?
女性利権団体:一部が離脱し、ネオ・スコーピオンと合流した模様。行動理念は女性の権利拡充。男性操縦者の殺処分等をIS学園に要請してることもある。
天上院家:現在天上院のか夫パージ中。会見の話通りなら実の息子たち殺されてるし切り捨てに走るのは妥当ではあるが……。行動理念不明瞭。天上院華音の編入予定に変更なし。
「箇条書きだとわかりやすいな」
「取り敢えず天上院家の令嬢については……オレが見といても?」
「……そのあたりは明日以降ね。先に亡国企業の捕虜の取り扱い、次にオランダから来る子について腹括ってもらったら……かしら」
「アッハイ」
そこも既定路線らしい。
他の大人もうなずいている。
「敵対勢力へのスタンスは現状不干渉の放置よりとする。それから整備科の教員の補充だが……織斑先生と氷室君は捕虜の取り調べがあるし、ほかの人も疲れているだろう。教員組は明日、整備科の教員候補について話し合うからそのつもりで。取り敢えず解散――」
学園長がそう宣言し、ひとまず解散となった――。
学園の地下の一角。
尋問用の部屋にてオレ、一夏、千冬先生、しれっとついてきた束が立ち会いの下、Мことマドカの尋問を始めた。
と言っても判明したのは、構成員に『オータム』と『スコール』がいて、他にも『レイン』というコードネームの構成員がいること、ISモドキの生産ラインのいくつかを黒い蠍から強奪していることくらいだろうか。
……思ったより判明してたな。
「……私たちって父親とかどうなってるの?」
おっと、一夏が切り出したな。
「……わたしたちは『プロジェクト・モザイカ』の試験管ベイビーだし、遺伝子もほぼ1から作られた。デザインの元となった親は居るかもしれんが、少なくとも私の知る限りではない」
「……プロジェクト・モザイカ?なにそれ……」
「――平たく言えば優生思想とかの思想家連中が考案し、研究者たちによって実現した、人為的超人作成計画だね。世界大戦の頃には裏世界で計画を試されてて、どこぞのちょび髭も計画に一枚噛んだとか。まあ黒い蠍と亡国企業の抗争に巻き込まれて今じゃ関係者全員死亡、残るのはここにいる3人ばかり……って感じかな」
束の言葉に苦虫を噛み潰したような顔になる千冬先生。
「束さんや、3人にできてる不可視の溝がかなり深そうなんじゃが……」
オレが問いかけると
「取り敢えず――手籠めにして物理的姉妹と◯姉妹になれば、歩み寄りしやすいかなって」
「えっ、ここで? やれと!?」
なんかとんでもないことを束が言い出す。
「学園のホームページにカバーストーリーをお知らせページに追加して伝えてあるし、マドカちゃんも戻れないだろうし、束さんが戻るの許さないから、逃げ場無いかなって」
満面の笑みの束。
ホームページ更新されてるの知った学園長の胃に穴が開かないか不安です(現実逃避)
「やっぱ畜生兎だなお前」
「それほどでも?」
「……初めてだから御手柔らかに?」
困惑しながらも注文つけるあたり強かである。
「取り敢えず……束はお仕置き色強めでいくかね」
取り敢えず織斑一家の家族構成が長女千冬、次女一夏から次女マドカ、三女一夏になったとだけ記録しておく。
織斑家に家族が増えた数日後
オランダ元代表候補生のロランに台湾代表候補生の凰 乱音、タイ代表候補生のヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーに世界でも注目されている天上院家の息女天上院華音が転入する。
何故か5組が作成され、クラス兼任という理由のわからない状況に陥いりながらも奮闘する直哉。
そして整備科の新しい教員と出会い、元七次元端末でもある彼は、奇跡にして数奇な邂逅を果たすことになる――。
次回 インフィニット・ストラトス+3-1
第三十一話『臨海学校準備編 その1』
※予告内容及びタイトルは変更される場合もあります。
次回もお楽しみに!