本線から脱線気味の話なので初投稿です。
『綺羅星の輝きに曇りなし!』
――Side 氷室直哉
オレは訳あって――黒髪のカツラにサングラス、チャラめの格好で都内のとある公園のベンチでぼーっとしていた。
「――おはよっ」
声のするほうを向くと、そこには変装でかくしきれないオーラを纏った女性……星野アイが居た。
「――ああ、おはよう」
「待たせたかな?」
「いや、数分前に来たところだから」
「よかった〜それじゃ、行こうか。何処行くか知らないけど、1日開けてあるから」
その言葉に苦笑する。
そして近くに3組ほどの尾行者を見つける。
「……それじゃ――少し鬼から逃げる遊びしようか」
「鬼ごっこ?」
首を傾げる彼女の手を取り、小走りに走り出す。
尾行者たちは――それに驚いたのか、慌てて追跡を始めた。
――Side 斎藤ミヤコ
「やっぱり気が付かれてないかしら? これ」
「だからとてうちのタレントに手を出されたらたまったもんじゃないだろ! 追いかけるぞ!」
途中でお姫様抱っこしてアイを連れて逃げ始めた『彼』を追いかけながら、私たちはそんな会話をしていた。
「――いや、わたしたちもいい歳なのにコレはきついわよ?」
「オレだってそうだよちくしょう!」
「……あら? うしろにいたはずのアクアたちが消えた?」
「大方相方にしてた黒川あかねの分析元に先回りを敢行したんだろう! ルビーに連れて行かれて一緒にいるだろうかなが不機嫌になってなきゃいいが!」
なんて会話をしながら走ったせいで、私たちは途中でバテて、ルビーたちが通り抜けるのを見送るしか無かった。
――Side MEMちょ
「本当にいいのかな。あちこちで話題になってる彼とアイさんの密会尾行なんて」
「あの男は女取っ替え引っ替えしてるんだよ!? ママが手籠めにされたらどうするの!?」
私たちは斎藤社長たちの後ろから彼とアイさんを追いかけていた。
そして私の言葉にルビーちゃんが噛み付いて完全に爆発してる……ボム兵かマルマインかな?
「そうなったらある意味玉の輿になるけどねアンタらは。億単位の金を右から左できる金持ちのパパできるんだし。財産分与されても億単位のお金もらえるでしょ」
「いや、ほぼ同年代のパパとか反応に困るし!今更家族増えても馴染めないって!」
かなちゃんの言葉でルビーちゃんの火にガソリンがぶち込まれたっぽい。
ちなみに玉の輿あるやん、と私も思いました(こなみ)。
「――にしても、途中から専用端末でやりとりし始めたから、何を話してるのか分かんないのに、良くデート?が今日だって分かったわね……」
かなちゃんの言葉に私も頷く。
「ひとりでお出かけとかアイさんちょくちょくしてるし、今日は気合い入ったおめかししてないから、てっきり今日は違うのかと思ってたのに」
「――実はツベッターのママのアカウント入れるようにしてあるんだけど、ママが今朝出かけた直後、例の男に『今日楽しみ』ってメッセージして、そこから会話してたりしたからわかったのよ」
「それ釣り餌……と思ったけど実際会ってるし、アイさんが迂闊しただけ……?」
「なんか腑に落ちないわね……」
私の言葉にかなちゃんも疑問を口にした。
そんなこと言ってると、2人はとある店に滑り込んだ。
私たちもその店――こ洒落た?バーへ滑り込むが――
「いらっしゃいませ。テーブル席かカウンター席、好きな方をどうぞ」
――2人の姿が無い。
「――あの! 私たちの前にカップルっぽいのが入っていませんでしたか!」
凄く前のめりなルビーちゃんが髭のステキなバーテンダーしてる人……恐らくこの店のマスターに問いかけた。
「……当店には個室同士の防音がない、2つの個室と外の音を遮断する特殊な防音がされた2つ個室がありますが、本日はどちらも貸し切りされていまして……」
「――どっちも人いますか!?」
「守秘義務ですので本当は言いませんが……手前は先程鍵がかけられているので、店のルールに基づき、基本私も不干渉です。残りの方は……部屋を散らかさない、誰かがこちらで注文してバーでするべき振る舞いをされるのでしたら多少は目を瞑りましょうか」
2人がすかさずこっちを見た。
え?後ろめたい状況下で私にこのマスターさんとサシで居ろってコト……!? このヒゲマンとかあだ名つきそうなオジサマならアリと言えばアリだけどさ〜
「今月ちょっと機材買い込んで厳しいから――」
2人が無言で万札を私に押し付けて敬礼しやがった!
「……えー、私がココで何かしら飲んだりたべたりさせてもらうので……」
「表向き扱いの未成年として、アルコール類は出さないようしておきますね、MEMちょさん」
……あっ、私今直感で理解した。
多分このマスターさん私の配信のかなり古参さんだぁ(社会的死)
ファンサしなきゃ(錯乱)
私の対応を他所に、2人がサムズアップしてそのまま鍵のかかってない個室に入っていった。
――Side 有馬かな
『ねえ、こんなところで、こんなことしちゃうの……?』
『良いだろ、オレとアイの仲なんだし』
開いてる個室に飛び込んだ私たちは、部屋にあったガラスのコップをもう一つの個室に隣接する壁に当てた。
部屋には変な丸い迷路みたいなのが入ったおもちゃがあったが……どうでもいいか。
そしたらとんでもない声が聞こえてきた。
「ルビー、コレはアウト、手遅れね」
「嫌ァ!脳が破壊される!私のママが寝取られる!」
「寝てから……いや、添い寝くらい幼少期にされてるからいい……いやこの場合は違うのかしら……?」
若干脳がバグって会話が止まりかけた。
「……壁ぶっ壊して乱入できないかな?」
「ストップ!それやったらこの店に弁償請求されるし、その後が下手すれば訴訟や刑事罰モノだから!」
辺りを見回して壁破壊できそうなの無いか探すルビーを私はひきとめる。
『……あっ、やっちゃった……』
『思ったより早いな、アイ。続ける?』
『もちろん!今度こそは最後までやるからね』
「ママとあの男……バーの個室でおっぱじめやがった……!!」
アイさんの最初の言葉の前に何か落ちるような音がしたような……?
いや、それ差し引いてもなんかおかしくない?
終わるの早すぎるでしょ。
「……この壁の向こうで本当に変なことしてるのかしら?」
「いやいや、間違いないでしょ!」
「取り敢えず続きを……? 声がしないわね」
あれ?と思って私は部屋を出る。
ルビーは耳を澄ませてる。
「MEMちょ、誰か部屋出入りした?」
「え?全然?」
……どういうこと??
「……マスターさん。隣の部屋から声しなくなったんですけど……」
「貸し切りの上、前払いされてるので例えば居なくなっても問題ありませんよ」
「いや、けが人とか出たらまずいでしょ」
「両方の部屋を見れるモニターありますので」
「ソレ先に言いなさいよ!」
のらりくらりなマスターに私が怒ると彼は肩をすくめた。
「お客様のプライバシーがありますからね」
「何か起きてたら大変だから確認してよ!」
しれっと隣に現れたルビーの言葉に、マスターは少し面倒そうにしたあと、リモコンを取り出して近くのモニターに向けてボタンを押した。
すると――誰も居ない部屋が2つ映し出された。
「……誰もいないけど?」
「ですねぇ」
「ですねじゃなくて!ママとあの男はどこよ!」
再噴火するルビー。
「――こちらの金額を情報料として追加料金支払っていただけるなら、あの部屋を開けるついでに教えて差し上げますが」
万札2枚要求とはアコギ……いや、でもなんか変ね?
「なっ!? 足元見るなんてサイテー!」
「静かなバーで騒ぎ回るアイドル様よりは場を踏まえて弁えてるつもりですが?」
ソレはそう。午前中からやってるのが引っかかるけど物静かなバーで騒ぎ回るなんて論外やらかしてるのはこっち側だし。
「ルビー、ここでの私たちはアウェーだし、店のルールは店主さんが決めてるモノ。ドカドカ足踏み入れたのはこっちなんだから。下手すると警察呼ばれてアイドルとしてのスキャンダル待ったなしよ?」
「むむむ……」
取り敢えず情報料を差し出すと、彼は彼の背後にある酒瓶を退かしてそこにあるスイッチを動かした。
何かが開く音がした。
「――今あの部屋の鍵を開けましたので入れますよ。実はあの部屋には隠し通路がありまして、そこから外にでられたのでしょう。部屋の使用に際して前払いのお客様には隠し通路の使用を許可だしているので」
隠し通路の時点でもうルビーがいない。
最後まで聴き終えた私がアイさんの居た部屋に行くと――ルビーが何か持って膝から崩れ落ちていた。
「……どうしたのよルビー」
「……エッチなことしてると思ったら……【電脳迷路ゲーム A〜】ってのをやってただけみたい」
「うわ懐かしいヤツ!」
支払い終わったのかMEMちょも合流してそう零した。
「何でこんなところに?」
「店の備品ってあるしさっきの部屋にもあったから多分この店のモノね……」
気が抜けた私たちはへたり込む。
どうやらおちょくられただけらしい。
骨折り損のくたびれ儲けってまさにこのことね……。
社長たちやルビーたちを撒いた直哉とアイ。
しかし一番やっかいなアクアとあかねコンビはまだ諦めてないようで――?
そして直哉がおでーとしてる理由と目的とは……!?
第三十六話『臨海学校準備編? 綺羅星と直哉のおでーと日和?(後編)』
※予告内容及びタイトルは変更される場合もあります。
次回もお楽しみに!