高評価……高評価をクレメンス……!
――Side 氷室直哉
「ルビーたち大丈夫かな……?」
「高いものばかすか注文してなきゃ大丈夫だろうし、もし足りなきゃ社長さんあたりに泣きついて立て替えてもらうだろうし――なんならあとで色つけて返すし」
後ろを見るアイに対してそう返す。
少女であった時間と母親であった時間がほぼ同じくらいになりつつある彼女は娘のコトが本当に大切なのだと改めて思い知らされる。
「なら……いいか……な? そしたら次は何処に行くのかな?」
「それは――」
オレはそのまま彼女とともにある店に入ることに。
――Side アクア
連れてきた黒川あかねの分析通り、1件目は追手を撒くための店だった。
だが――黒川は次の行動を言い淀む。
「多分ここも……追手とかパパラッチ撒くための店のはずだけど……」
言い淀んだ理由は――入った店がカラオケ店だからだ。
しかも場所は一階と三階に挟まれた場所にある店――階段付近にいれば待ち伏せできそうではある。
「……このビルの裏に窓とかないから……このビル近くで待機かな」
「……入って部屋の側で確認しなくて良いのか?」
尾行を半ば諦めるような言葉にオレは聞き返した。
「多分彼の協力者のお店だから、ストーカー疑惑っていうもっともな理由で追い払われそうだし……ほら、アクアのところの社長さんたちが来たし」
「あ、本当だ」
母さんの里親である2人に追跡任せて、こっちは待ち伏せすればいいと理性は思う。
当たるかわからない可能性より追跡する方が良いと感情は反発する。
「……二律背反か……」
なんて零していたら目の前に突然母さんをお姫様抱っこしてるヤツが現れた。
「――!?」
というか何処から現れた!?
「あ、アクアだ。取り敢えずまたあとで?」
そう言い残すようにヤツが母さんを連れて行く。
「黒川! 次は何処に行くか予想つくか!?」
「多分……いくつか経由すると思うけど……最終目的地は……」
――Side 斉藤壱護
「クソッ、なんなんだあいつ! こっちを煽るような動きかたしてるだろコレ!」
「……何が目的なのかしらね……?」
単なる遊びなのかもしれないが、どうも不自然だ。
ロケしてたルビーの前から居なくなった時のような化け物じみた身体能力を使ってないし、こっちが追いつくようにしてたし――。
「って言ってたら居なくなった!?」
「……多分最後は謎解きして目的地に来いってことみたい」
「え?何でだ?」
オレが問いかけると、ミヤコが近づいてきて――オレの背中から何かを剥がした。
「いつの間にか貼られてたのよ。アイのサイン付きで」
「アイのサインを本物証明代わりに使うとか……」
取り敢えず暗号とやらを解いてアイツにおちょくりされた分締めてやらないと……!
――Side 星野アイ
「――1着はアクアか〜。まああかねちゃんがついてるならそうなるよね」
半ば貸切となってるとある水族館の一番大きな水槽の前で彼と待っていたら、アクアとあかねちゃんがやってきた。
「……そっちの人と仲良しな兎が最近旦那と立ち寄ったってツベッターに書いてたのもあるがな」
「氷室さんはSNSアカウントでめったにつぶやかないから調べるのがそもそも難しいですからね。周りの人の情報でなんとが補完できたって言うのが実際のところです」
「――ママっ!」「――アイっ!」
そしてほぼ同着で佐藤社長とルビーがやってきた。
ルビーに至っては抱きついてきて――
「ママ、大丈夫!? そいつに処女奪われたりとかしてない!?」
私は聖母サマじゃないからね???
「……賭けはオレの負け……か」
「――てめぇ、うちのアイを連れ回して何を――「待って!」」
私は黄昏てる彼と社長の間に立って、彼を庇うように社長へ顔を向ける。
「――彼と賭けをしたんだ。私が彼といきなりデートし始めたら【家族】は心配してついてきてくれるかな、最後まで追いかけてくれるかなって」
「――そしてその賭けに彼女は【最後まで家族がついてきてくれる】と賭けた。そして賭けに勝ったら【氷室直哉は星野アイの腹にある傷跡を無くす治療の提案を、金輪際してはならない】って取り決めをしてたってところだな」
「「「「!?」」」」
彼の言葉にみんなが目を丸くしてる。
……そんなに驚くことかな……??
「――だって、死ぬはずだった私が生きることができた奇跡の証みたいなものだし――私を活かしてくれた、命の恩人さんとの繋がりだから。例えアイドルやタレントで水着とかNGになったとしても、恩人さんのお願いだとしても――」
私は続ける
「――手放したくないんだ。みんなが私を想ってくれてるのと同じくらいには」
「……アイ……お前……」
狡いよね。
わかってるよ。
命の恩人をダシにしてみんなを釣り上げて、
命の恩人には傷跡を治させないことで彼に私を忘れられなくして、
みんなを――私のワガママを押し通すために振り回したんだから――。
「2度目の人生、今から恋を始めたら――みんなは応援してくれるかな?」
――Side 氷室直哉
うーん、これは稀代の悪女ですわ(確信)
「――ということで出歯亀したお家族の皆さん、彼女の傷跡云々は基本会話で触れないように。多分本人的に傷跡云々が相当フラストレーション溜めてたとかもありそうですし」
「お、おう」
「……本当にオレたちと同年代か……?」
「ぐぬぬ……裏で糸を引いてたのがアイさんだとは予想してませんでした……!」
取り敢えず傷跡治療させてもらえないし、ここに残る意味はない。
「ということでオレ帰「まだデートは終わってないよ」」
なんか後ろから抱きしめられた。
「……あの、そっちは女優でタレント。こっちパンピー。息子娘とほぼ同じ年齢との交際疑惑とかスキャンダル待ったなしでは?」
「――今日一日お互いのために空けたのに?」
「……なんで好感度高いんすかね。命の恩人だけでこうならないと思うんだけど……」
「――あの襲撃事件以降からB小町のラストライブの握手会まで、全部私のところだけ来なかったし、専用端末届いてから、頻繁にほぼヌードな自撮り送ってもガン無視だったし――。8年って年月は私に色々教えてくれたんだよ。人間って手に入らないものほど、欲しくなるし、待てば待つほど――その想いが煮詰まるんだって」
段々ホラーなオーラを出し始める星野アイ。
「……あのー、アクアさん」
「アクア、お母さんの邪魔しないよね?」
「おっと急用が出来たから帰るぞ!」
「え?」「なんで私の手ぇ掴んだ!?」
黒川あかねと有馬かなを連れて逃げ出しよった。
「ルビーさんや」
「私とお兄ちゃん産まれたきっかけはママの意思が強かったからだし!社長にゴリ押ししたママにかなわないから!」
アイさんの反応なしにMEMちょさん連れて逃げ出した!
「……社長さん」
「無理。取り敢えず骨は拾ってやる」
「その……無事を祈るわ」
……貸し切りにしたの、裏目に出たかなぁ……。
――Side 織斑一夏
「……直哉、地味に力加減苦手なの自覚してるから、密着状態だと抵抗できないんだよね」
インカムつけて盗聴と盗撮を見聞きしてる他面々が頷く。
「黒兎隊で制圧してもいいが……」
「一夏や箒と同レベルの期間、想いを徹底的に封じ込めて煮詰めてたのを解き放ったみたいだし……好きにさせていいんじゃいか?」
「取り敢えずなおなおはよほどの理由の時以外1人で外に出さないほうがよさそう」
扱いが子供のソレである。
「色んな女の人ひっかけてきそうですしね」
「取り敢えず今夜は匂いの上書きからだねぇ」
うーん、みんな笑顔なのに笑ってない。
……ああ、服剥ぎ取られてる。
これは時間の問題だね。
直哉は意図的に無精子症にできるから子供はできないと思うけど
そんなことを思いながら私たちは一部始終を観察することに。
黒い蠍、ネオ・スコーピオン、亡国企業は蠢動する。
それぞれの目的のために。
そして直哉は――自分のファッションセンスの無さと、美女たちの買い物地獄にてライナーになる。
「みんなのせいじゃない!オレが!オレのセンスが悪いんだ……もう…嫌なんだ自分が…俺を…殺してくれ…もう…消えたい…」
そんなところに救いの手が差し伸べられて――?
第三十七話『臨海学校準備編 その5』
※予告内容及びタイトルは変更される場合もあります。
次回もお楽しみに!