それではどうぞ。
――Side 更識簪
「……」
昼休みに現れた彼が置いていったシミュレートソフトが今の装備でどのように動くか、パソコンの仮想空間でその動きを再現している。
歩くのは……とりあえず前進と後退はよし。
次はホバー移動……あ、転んだ。
すると画面が止まり、システムのエラーと思われる箇所を数カ所ほどピックアップしてくれる。
スラスターの出力が左右で違う……あ、取り付けてある種類が左右で違う。
左右で出力が違うと気が付かないで出力したらこのシミュレートみたいになると思う。
……どこが問題になりそうかすら手探りの暗中模索だった一ヶ月で組み上げた量と、昼休みから放課後の今までの時間で組み上げて修正した箇所がほぼ同等。
……彼が居なければ、本当にかなりの時間がかかっていたかもしれない……。
「本当に悪い!更識さん!かくまってくれ! いやそこの用具入れに入るから誰もこなかったとごまかして!」
ドアを開けて飛び込みながら器用にドアを閉じ、今の言葉を言いながら用具入れに綺麗に入ったのは今頭に浮かべていた男……氷室直哉だ。
ところで誰に追われて――
「ココに入ったハズ――!?」
ドアを開けたのは黒髪の女が2人。
片方は有名なブリュンヒルデに近い気がする。
1人はポニーテールの女だ。
「えっと、ココに男がこなかった!?」
「今さっき飛び込んできたはずだ!見てないか!」
なんでだろう。
……生理的に彼を売りたくない。
「ドア……? 貴方たちが開くまでずっと閉まってたけど」
私は嘘をついた。
「そんなバカな! ん!? 別のドアが開いて逃げる足音がする! ごめん気の所為だった!」
そう織斑千冬似の人が言うと、相方?と共に去っていった。
「………なんで追われてるの?」
「クラス代表で揉めたからISの対戦踏まえて判断ってことになったんだが、そのうち1人がアレ……織斑なんよ」
用具入れから這い出す氷室君。
「!?」
「そんでオレ、試験でブリュンヒルデ撃破したから鍛えて欲しい言われたから逃げた。別件でゴタゴタしてるのに鍛錬してる暇ないから」
「……そう」
織斑一夏……1発殴ったほうが良かったかな……?
あれ?
でも確か織斑一夏は男のはず……。
「織斑一夏はとあるマッドなISの生みの親こと篠ノ之束が変な薬飲まされ、どこぞのら〇ま1/2に近いノリで女になったり、男に戻る身体になってるんだ」
アニメのような話に私はかなり困惑した。
「……いっそ完全に女になれば、女同士ってことで遠慮しなくてすんだのに……」
「なんか変なこと考えてない???」
氷室君が疑いの目で見てきた。心外。
事実だけど……。
「とりあえず撒けたみたいだし、邪魔になるから退散させてもらうわ」
「……待って」
「うん?」
私は彼を呼び止めた。
「……その……色々気にかけてくれてありがとう。あと……いくつか教えてほしいことが……」
「かまわんが……それより」
彼は私の側に来て私の額に手を当てた。
「……!?」
「――整備と調整に夢中になって、脱水症状と熱中症寸前になるのは頂けん。ほれ、この水とこっちのスポーツ飲料水を半分くらいずつ飲め」
彼はそう言って懐から水とスポーツ飲料水のペットボトルを取り出してきた。
そう言えば……ずっとココに缶詰してたから……。
もらった2種類の水が身体に染み渡る。
「……入学初日でコレはシャレにならんよ。のほほんに言って付き添いしてもらったり、オレも暇な時確認するからそのつもりで」
「……本音、怒ってなかった? 遠ざけてたから……」
本音のことが出たから、思わず思ってたことを口にした。
「すごく心配してるが、怒ってはないな。だが……もし過労とかで倒れたら自分のこと責めたりするかもしれん。のほほんとしてるようで、気を遣ったりしてるからな」
「うっ……」
過去に似たようなことがあったので何も言えない。
「とりあえず何だ、のほほんさんに連絡するわ。すっ飛んでくると思うぞ」
そう言って彼は端末で通話をかける。
「……ありがとう」
「どういたしまして?」
「……そこは聞こえてても聞こえないふりしたほうがいいかも」
彼に少し意地悪したら、『だからモテないのかな……』とかこぼし始めた。
……それはそれで、好都合……かな。
――Side 氷室直哉
とりあえず更識簪ちゃんとのほほんさんを和解(違う)させて意気揚々としていたところ、千冬先生に見つかった。
「――えっ、オレひとり部屋じゃないんですか?」
困惑してると千冬先生はため息混じりに告げる。
「貴様は野放しにしていたら何をしでかすか分からん。その点で言えば束と同レベルだぞ」
「天災と同レベルはひどくない???」
「だから夜間脱走しないかの監視役ができる生徒会長と同室にした」
「健全な男の子を女の子の部屋に入れちゃぁアカンやろ。一夏同室のほうがマシまであるでそれ」
思わず関西弁になったぞ?
「路藤原は一夏と同室、天上院は同室にしたヤツに何をしでかすか分からんから個室にしてある。それらを加味して調整した結果だ」
そして部屋にたどり着く。
ドアを開けると――
「おかえりなさい。お風呂にする?ご飯にする?そ・れ・と・も⋯⋯私?」
水着エプロン姿の、どこか簪に似た女性が入り口で三つ指ついて待っていた。
「千冬先生、コレが生徒会長ですか?」
「⋯⋯ノーコメント」
「え?あっ!?織斑先生!?なんで!?」
慌てだす推定痴女。
「声は好みのソレなんすけどね。初対面でコレだから印象ストップ安不可避ですわ」
「⋯⋯やけ酒したくなってきた」
「声しか好みじゃない……!?」
混沌としてきたのでとりあえず上着を痴女に羽織らせ、千冬先生も連れ込む。
「えっと、更識……楯無さん?でよかったんでしたっけか」
「ハイソウデス」
「苗字的に簪ちゃんの姉だよね?」
「おっしゃるとおりです」
「裸エプロンで誘惑するつもりがヘタレて水着下に着けて半端痴女⋯⋯オレ的に日和ったのでマイナスだし、そんな姿簪ちゃんすが見たら失望されると思わなかったんですか?」
「ココ1年話しかけてくれないから、見られても何も言われないかもですが⋯⋯ぐうの音も出ません」
「個人的に家事スキル万能もふもふ尻尾と狐耳ピンク髪になり、嘘つき焼き殺すガールとかとメル友になって出直してきてほしいですね」
「どういうこと???」
「コイツの趣味かなんかなんだろうな」
「訳が分からないわ!!!」
とりあえず2人のバイタルが常人の安定値範囲になってきたのでよし!
「んで、寮生活はともかく、本当にこの人で大丈夫です?」
「織斑先生と比べたら弱いけど……一応学園最強は伊達じゃないのよ?」
「いや、そんな痴女の姿で毎回出迎える生活されたら、勘違いされて社会的に死ぬかもだからチェンジと言いたいんだろうな。残念だがよほどのことがない限り部屋替えは面倒……もとい、他生徒に示しがつかんからな」
「しれっと本音こぼしたぞこの人」
「大人は面子を潰されるのが一番困るから……」
「というわけで仲良くやれよ。あと不純異性交遊は……一夏メス堕ちさせたなら見て見ぬふりしてやる。あとは部屋の当事者で今のうちにすり合わせするといい」
旗色悪くなったせいかそそくさと逃げる千冬先生。
しれっととんでもないこと言ってた気がするが、オレは何も聞いてない。ログにもない、ヨシ!(現場猫感)
「……とりあえず簪ちゃんとの仲を取り持つんで、その痴女スタイルのお出迎えとか勘弁してください」
「もちろんよ!からかうつもりでやっただけだし、簪ちゃんと仲直りできるなら喜んで!でも簪ちゃんに手を出したら地の果てまで追いかけるから覚悟しなさい」
情緒ジェットコースターみたいな人――IS学園の生徒会長――更識楯無と仲良く?なれた!
とりあえず平和な生活送れそうだからヨシ!
とか会話してたらドアをノックする音がした。
覗き穴から見てみると、女の姿の一夏と箒がいた。
「朧!頼むからISの訓練手伝ってくれ!」
そう言えばそんなこと言われてたな(ダチョウ頭感)
でも依怙贔屓するなと言われたりするかもだし……悩ましい!
とりあえず千冬先生に許可もらってくれと先送りにすることでひとまず解決した。
さてと……荷解きしなきゃな(寮生活1日目感)
あとは部屋での取り決め諸々か……少し骨が折れるが、後回しよりはマシだろうて。
――ISコアの数は限られている。そんなところに男操縦者が増えたとなればそれらにコアが割り振られ、誰が割を食うことになる。
その余波が大きな波となり、決闘騒ぎの裏で一波乱を巻き起こす。
次回、インフィニット・ストラトス+3-1
第五話『倉持研騒動と更識家・布仏家と氷室with天災』
※予告内容から変更される場合もあります。