第八話 簪、専用機の基礎システム完成/中国からの訪問者
――Side 氷室直哉
1年1組のクラス代表選抜戦(仮称)から1週間後。
とある午前中の休み時間。
「……ひとまず、フレームと基礎装甲、最低限のスラスターって状態だけど……基本的な一通りの動きに浮遊状態の維持、瞬間加速からUIまで完成できた。ありがとう。みんなのおかげで、ココまでこれた」
簪ちゃんの言葉に全員――第四整備室に出入りするオレ、楯無、のほほんさん、虚さんに加えて、オレのストーカーでやってくるようになった一夏や箒、セシリアに乙女センサーとか言って出現するようになった路藤原――が盛大な拍手を贈る。
「約2週間のほぼ1人でそこまで完成させるとは……オレ以上だし、束の背中見えてるレベルかもしれないな……」
「殆ど自力で作り上げたんだから誇っていいわよ、簪ちゃん!私、姉として家族としてとても誇らしいわ!」
「おめでと〜かんちゃん!」
「簪様おめでとうございます!」
「おめでとう、簪さん」
「すごいな……」
「あとは武装の選定とそれにあった調整用数値の設定ですわね」
「本当にすごいわねん。……こんなことなら、プログラミング勉強しておくべきだったかしらん」
そんな感じで祝うオレたち。
「んで――雛形はできたわけだが、ここからフレームや装備をアセンブリして、簪ちゃんの目指すスタイル決めていきたいわけだが……」
オレは懐からちょっとした薄い本レベルの冊子を数冊取り出す。
「こっちがフレーム関連、こっちが手持ち武器、こっちが非固定ユニットや肩武器、コレが背中に装備して肩や腰で展開する装備のカタログだ」
その言葉に集まり覗き込む面々。
「……思ったより多いね」
「……何億円って書いてあるのがあるんだけど、簪ちゃんが払うわけじゃ……ないのよね?」
楯無の言葉に全員がこちらを向く。
「オレの紐付きなのでオレが支払うに決まってる。まあ即座に出せるのが20億くらいだから予算オーバーしそうなら、別途相談だな」
「20億をPONと出せるとか、レベルが違いすぎる……」
「……改めて思うけど本当にとんでもない契約をしたのかもしれない。貞操を差し出すくらいしか出せるものが……!?」
簪がハッとして周囲を見ながら身を縮ませる。
「……火薬庫で火遊びしないでくれ。まだ爆死したくない」
「……はい」
オレは咳払いして空気をリセットする。
「取り出すスタイルの方向性を考えつつ、武器を選んで、武器と相性がいいか、スタイルに合うフレームを選んですり合わせしていくといい」
「その言い方、なおなおは口出しとかしないつもり?」
のほほんさんが首をかしげる。
「オレが口出しするとならそれでってなりそうだからな。オレの趣味コテコテになりかねん。自分のスタイルや得手不得手と噛み合わんのはダメだろJK」
「……直哉の色に染まる……悪くないかも……!?」
「だから火薬庫で火遊びしないで???」
ある意味大多数とは異なる道を進ませた畜生としてはその好感度の高さが今一度納得できない。
ダークヒーローか何かと重ねられてるのだろうか……。
とりあえずどんなコンセプトにするか決まるまで、手が空いたので学園の庭の一角でコンサーティーナで演奏……一先ずカッシーワのテーマを演奏することにした。
――Side ???
「……事務棟ってどこよ……?」
周りに案内板のようなものはない。
正直困り果てていた。
「頑張ってここまで来たのに……?」
何処からが不思議な音色が聞こえる。
二胡のような弦を鳴らすような音じゃない。どちらかと言えば……パイプオルガンや笛のような、空気の動きで音を生み出すような楽器のものな気がする。
明るい雰囲気なのに何処か切ないその音色の方へ、いつの間にか私は歩いていた。
そこには灰色の髪と紅く煌めく瞳の男子が手に変わった楽器をもち、それを器用に動かして演奏していた。
――Side 氷室直哉
演奏してたら見知らぬツインテール美少女が演奏を聴き入ってくれていた。
趣味レベルの演奏だが、音楽を嗜むものとして、自分の演奏を聴き入ってくれるのはうれしいものだ。
演奏が終わると彼女は余韻を十二分に味わったあと、拍手してくれた。
「とても素敵な演奏だったわ。何ていう曲?」
「カッシーワのテーマだ」
「変わった曲名ね?」
「とあるゲームで流れる作中曲だからな。いい曲だろう?」
「うん、そう思う」
会話してたら授業を知らせるチャイムが鳴る。
「……行かなくていいの?」
「今教室に千冬先生が入ったから、全力疾走しても間に合わない。だから開き直ってサボることにした」
「ぇ゙っ、それ大丈夫なの?」
「問題しかないな」
「えぇ……(困惑)」
しゃーねぇだろ、もう手遅れなんだ。時には開き直った方がいいこともある。
「……見たところ転入生みたいだが、こんな時期にとは珍しいな?」
「私は凰鈴音。2ヶ月前に中国の代表候補生になって、少し前に書類手続きがやっと終わって、ここに来れたってわけ。……そういえばここIS学園よね?あなた……4人見つかった男性操縦者の1人……?」
「3人目の氷室直哉だ。よろしく」
オレが手を差し出すと握手に応じてくれた。
「ええ、よろしく。……授業サボってるならお願いしたいんだけど……事務棟に案内してくれる?」
「暇になったから良いぞ」
オレは二つ返事で頷く。
そして事務棟にて何故か待ち構えていた千冬先生に渾身の右ストレートを喰らったりしたが、可愛い子と面識持てたしそこまでダメージないのでヨシ!
せっかく仲良くなった鈴から突然敵視されるという事態が発生。
どうやら一夏(男の姿)が初恋なのが原因らしいがオレに飛び火するのはどうして?(電話猫感)
ソレはソレとして、クラス対抗戦の噂が流れ、束の間の日常が流れていく。
次回 インフィニット・ストラトス+3-1
第九話『酢豚と理不尽と束の間の平穏?』
※予告内容は変更される場合もあります。
次回もお楽しみに!